Armored Core〜the case of Velord Rimdortlm〜
2nd case　Time changes a human being.

俺は何かもやもやしたものを内に抱えてガレージへ帰った。
「よう、ヴェロード。無事帰ってきたってことは、勝ったんだよな？」
いつも俺に声をかけてくる整備工だ。
「長いことやってるが、お前みたいに絶好調なのも、珍しいもんだぜ。
ま、何にしろこれでアリーナに登録されたってわけだ。がんばれよ。」
「・・ああ。」
俺の専属というわけではないが、帰ってくるといつも声をかけてくる。
そう言えばスターオブカラミティの整備をしているのも、大体こいつだ。
「パーツをいくつか換装したい。」
「ああ。それならそこにある端末で設定しといてくれ。後でやっとくよ。」
下位アリーナの様々な敵を相手に、バズーカとブレードだけでは少し心許ない。
俺は端末を起動し、レイヴンズ・ネストからショップを呼び出した。
頭部とコアはそのままで、腕部を軽量な物に変更。
脚部は積載量重視の軽量二脚に切り替えた。
中量級並みの積載量を持ちながら重量は抑えられている。
FCSは初期のまま、ブースターとジェネレータを強化し、
機動力はかなり上がるはずだ。
武装は、今ある中で最強の威力を持つブレードを装備。
残りの割ける積載量の半分以上がこれで持っていかれた。
残りはかなり限られるが、右腕にはハンドガン、
そして肩には小型ミサイルを装備した。重量過多ギリギリだ。
結果として多少重くなってしまったが、少なくとも前よりスピードは上がっているはず。
俺は端末を閉じ、部屋へと向かった。





部屋につくと、俺は自分の端末を開き、
いつものように情報収集を開始した。
赤黒いAC。
肩にはビリヤードのボール"9"が刻印されている。
機体名ナインボール。パイロットはハスラー１。
並みいるレイヴン達の中でもトップクラス、いや、間違いなくトップの実力を持ち、
全てのレイヴンの頂点に君臨する男。
それが、俺の復讐の相手だ。
中量二脚型で、腕にはパルスガンとブレード、
肩に二連装ミサイルとグレメードランチャーを装備している。
そして、最大の特徴は奴が改造人間「プラス」であることだ。
脳内に内蔵されたレーダー。
常軌を逸したエネルギー動作効率。
構え無しでのキャノン発射。
ブレード光波。
これらは全て、奴がプラスであるからこそ為し得る業なのだ。
ここまでが、今の所俺の知る、というか、
一般的に知られている事実だ。
俺のスポンサーにつくことになったプログテック社は、
まだプラスの人体改造術を所持していない。
ならばどこが持っているのか。これは容易に想像がつく。
ムラクモかクロームだ。あるいは両方。
二つとも時代の先端を行く大企業であり、
同時にレイヴンにとっては最大の兵器供給源となっている。
こいつらに近付くことができれば、
ナインボールのことも、プラスのことも知ることができるに違いない。
ふとキーボードを打つ手が止まった。
・・時間が、経ったからだろうか。
自分についても、奴についても冷静に分析できるようになってきた。
戦闘中を除いては。
スターオブカラミティに乗り敵ACを前にすると、
いつも自分の中で、あの感情が渦巻いていく。
今日は相手がグレネードを構えたのが引き金だった。
いつもそうだ。何かの事象が引き金となってあの時の感情が蘇ってくる。
悔しさと憎しみと苦渋にみちた、あの感情が。
しかし日常では違った。
出撃前はあんなに気持ちが昂っていたのに、今はその時が嘘のように鎮まっている。
先ほどの苛立ちも、今は消えている。
ずっと一人でいたが、それでも自分が、
復讐を決意した直後よりも変わっていることに何度も気付くのだ。
戸惑いさえ感じる。
悲しみは時間が経てば癒される、というが、
憎しみは、一体どうなのだろうか。
「今日は・・これくらいにしておくか。」
俺は端末を閉じた。





翌日から俺はアリーナに身を投じた。
とにかく早く上位アリーナに進みたい。
それだけを考えて、下位アリーナで戦い続けた。
ずっと戦い続けていたせいもあってか、意外に早く勝ち進んで行った。
機体の整備をしている整備士、ガランをのぞいて、
相変わらず人との交流はないが、それでもやっぱり俺は変わっている。
戦闘中も落ち着くようになってきていた。
そんな中・・それは起こった。



発端はプログテック社からのメールだった。

　『緊急事態です。我が社の研究所が襲撃を受けています。
　　我が社の警備部隊も応戦していますが、全く歯が立たない状況です。
　　どうやら襲撃部隊の中にはACも混じっているようです。
　　あなたのアリーナへの挑戦権を一時凍結します。
　　可及的速やかに襲撃部隊を排除して下さい。』

ここでメールは終わっている。
かなりひっ迫した状況なのだろう。報酬が書き添えられていないし、
挑戦権を凍結するあたりが普段の穏健なプログテックらしくない。
ともかく、スポンサーであるプログテックの被害を、
このまま見過ごすわけにはいかない。
俺はガレージへと走った。
「ガラン、出るぞ。」
「OK！話はついてる。輸送機もすぐだぜ。」
「わかった。」
ACに搭乗した。通常モード起動シークェンス・・完了。
「出してくれ。」
『了解。急ぐぞ！』
俺はこの時、襲撃部隊の中に混じるACの存在を失念していた。
余計なことは考えずに済んだから、それは幸運だったのかも知れない。
もしそのACが、俺の復讐の相手でなかったならば、の話だが。

大学入試で大分間が空きました。第２話です。
どうにか物語は動いているようです。
ヴェロードは、少しだけ復讐の念から解き放ってあげることにしました。
最初から復讐ばかり考えてて復讐してそれで終わり、っていうのは
どうにも書きにくくて・・。
それに、この時期の男の子って、早さの違いはあれ結構変わっていくものだと思うんです。
最初は復讐復讐でも、少し時間が経つと冷静になっちゃうあたり、
ヴェロードはほとんどあり得ないくらい早いんだと思いますが・・。
次回は、おわかりかと思いますがナインボールです。
もう少し登場人物を増やしたりしようかなとも思っています。
さすがにこのままではちょっと・・。
感想のメールもできたら頂きたいです。共感でも批判でも何でもいいです。
それでは。
読んでくれた皆さん、ありがとうございます。そしてこれからも読んで欲しいです。

思ったより落ち着いてきたようで一安心ですね。
でも、次回はあのナインボールとのりターンマッチ。
・・・というより、最初は勝負にぜんぜんならなかったことから
考えると、初めての戦い、と言えるかもしれませんね。
どうなるのか、ドキドキです。（＾＾）

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