Armored Core〜the case of Velord Rimdortlm〜
3rd case　Mistake.

『作戦領域に到達した。』
「了解。ミッションに入る。」
輸送機から外に出た。
目の前には研究所らしき建物。数機のMTが周りをうろついている。
"メインシステム、戦闘モードを起動します"
・・とりあえずあのMTからだな・・・。
俺は高速機動を生かして接近し、正面のMTを斬り捨てた。
「研究所の人間、聞こえたら応答してくれ！」
残りのMTの排除にかかりながら通信を入れる。
そのくらいの余裕はあった。
すると、数秒のノイズの後、声が返ってきた。
『・・こちら警備部隊！専属レイヴンだな！今どこにいる！』
かなり切羽詰まっている・・。
「研究所の外でMTを排除しているところだ。これから・・」
『そんなもの、放っておけばいい！それより早くこっちへ来てくれ！』
声が被さった。かなりマズそうだ。
『今部隊が応戦している！残る敵は一機だけなんだが、かなりの手練だ！』
「その敵がACなのか？」
『そうだ！赤い、化け物みたいな性能のACなんだ！警備部隊のMTでは歯が立たない・・ぐわっ！』
爆発音が聞こえる。この音はグレネード・・赤い、化け物みたいなAC・・。
まさか・・！
「おい！大丈夫なのか！？おい！！」
既に通信は途絶えている。
雑音も聞こえない・・ということは、撃破されたんだろう。
もし、そのACが奴ならば・・当然の結果だろう。
奴にMTでかなうわけがない。
・・もし奴なら・・・今、この場で倒す！！
あのどす黒い感情に支配されることは、最早ない。
頭にあるのはただあの赤黒いAC・・ナインボールを倒すことのみ。
俺はブースト全開で研究所内に侵入した。



研究所内にもMTはうろついていた。
だが、構っているヒマはない。
「邪魔だっ！」
そのままのスピードを保って接近し、両断した。
しかし、内部には相当数のMTがいる。
邪魔になるものだけを破壊し、後は無視して奥へ、奥へと進んだ。
そしてある部屋に出た時、視界が一瞬にして開けた。
「ここか・・？」
他の部屋に比べて圧倒的に巨大なその空間は、柱が一定間隔で乱立していて視界が悪い。
戦闘音らしきものも聞こえなく、静かだった。
どこかに敵が隠れている可能性もある。
俺は、速度を落として慎重に進み始めた。
部屋の中央まで進んだ時、回線を開きっぱなしにしていた無線から音がした。
『ザー・・・ガガッ・・のA・・・ぞくレイヴン・・・』
「そうだ！俺は専属レイヴンのヴェロード・リムドートルムだ！
一体どうなっているんだ！敵は、警備部隊はどうし・・」
そこまで言って俺は通信を切った。
何か音がした気がしたからだ。
再び静かになったコックピット内で耳を澄ますと、奇妙な音が聞こえた。
"・・コォォ・・・ォォ・・"
ブースト音のようにも聞こえる。
レーダーを見た。円の中心に赤い点がひとつ。
・・まずいっ！！
咄嗟に俺はブースト全開でその場から離れた。
グレネードの発射音。ほぼ同時だった。
振り向くと、さっきまで俺のいた空間が爆炎に包まれている。
奴は俺のいる真上の空中からグレネードを発射したのだ。
こんな芸当ができるのは・・・奴だけだ。
通信機をオンにする。
「ハスラー・ワン！！」
振り向きざまにハンドガンを連射した。
何発かは当たったが、殆どは壁に命中する。
（柱が乱立するこの空間ではミサイルは使えない。ほぼ、柱に当たるだろう。
武器はハンドガンとブレードのみ。やることは一つ・・接近するしかない。）
レーダーを頼りに、高速で柱の間を縫っていく。
たまにパルスガンの光が瞬くが、直撃を食らうことはなかった。
状況は奴も同じ。
ハンドガンのロックオンを知らせる音が響いた。
近い。正面だ。
そして不意に、奴が・・・赤黒いACが右側の柱の陰から姿を現した。
柱２本を隔てた空間の距離だ。
「見つけたぁ！」
前進しつつハンドガンの連射を浴びせた。動きが鈍った・・・今だ！
「食らえっ！！」
頭部を狙ってブレードを一閃する。
しかし奴の動きは早かった。
連射が止まった一瞬の間に、急速後退してブレードの有効範囲から離れようとする。
あと少しの所で頭部を反れ、相手の左手を切り落とすのみに留まった。
「待てっ！！」
幸い奴はまだ俺の視界の中にいた。停止している。追撃・・・
「くっ！」
できなかった。俺の真正面で停止した奴は、肩のグレネードの砲身を、
今にもパルスガンのない右手で支えようとする体勢だったからだ。
これで決めるつもりだ。この至近距離であれを食らえばひとたまりもない。
俺が飛ぶのは奴がグレネードを撃つよりも早かったが、爆風で脚がイカレた。
だがそんなことには構っていられない。反動で奴の動きが一瞬だが止まる。
「うおおおおあああっ！！」
ハンドガンを連射。単純だが、これで奴の動きが止まった。
「これで・・・」
ブレードを展開し、降下しながら奴の斜め上方から横凪に斬りつける。
「死ねっ！！」
"ザキュッ"という、いつもの音がした。
脚をやられてまともに着地できないため、空中で姿勢制御しながら奴を見ると、
首から上が見事になくなっていた。
俺の放ったブレードは、狙い通りに奴の頭部を切断したらしい。
奴の動きは、完全に停まった。
「やったか・・？」
"ゴゥッ！！"
突然奴のブーストが火を吹いた。
頭部を破壊したのに、まだやる気なのか！？
答えはYesだ。現に目の前で奴は動いている。
これもプラスの力・・頭部のセンサーやレーダーを破壊されても、
自分独自の機能で光学観測、索敵を行えるのだろう。
『貴様は・・大きすぎる・・。
修正が必要だ・・・』
ノイズに混じって、声が通信機から聞こえた。
何を言っている？修正？一体何を・・・っ！？
一瞬の逡巡の間に、奴は俺の視界から消えた。
ブースト音だけが聞こえる。
「待て！・・・くっ！」
エネルギー切れだ。
無理もない。数十秒間ずっとブースト全開で姿勢制御をしていたのだ。
「・・・はぁ。」
思わずため息が出た。
（やはりプラス・・普通じゃない。わかってたはずなのに・・。
大体、頭部を斬り落としても戦えるのなら、どこを斬れば倒せるんだ？
やはりコア・・パイロットを殺すしかないか・・）
今更奴を殺すことに戸惑いなどない。今回は機を逸しただけだ。
どちらにしろ、奴に逃げられてしまった今となってはどうしようもない。
脚部をやられたスターオブカラミティでは追撃は無理だ。
『・・専属レイヴン、大丈夫ですか！？こちらは研究所です！』
「・・・ああ。ACはもう動かないがな。
そっちはどうなってる？研究所内部の被害は？」
『外部の設備は破壊されましたが、核の部分についてはほぼ無事です。』
「そうか・・ならミッションは８割方成功というところか。
報酬は？メールには書いてなかったが・・」
『それも含めて、あなたとは一度お話してみたかったんですよ、ヴェロード。
私は研究員のエラン・キュービスです。
今回収に向かいますから待っていて下さい。』
「エラン・・そうか、あんたが。」

とりあえず、戦ってもらいました。
次からは少しずつ、戦闘とミッションとナインボール以外の話題も入っていく予定です。
戦闘シーンは・・難しい。
自分で書いててどうも何かしっくり来ません。
「これだ！」っていうのが見つかるまであとどれくらいなのか・・。
わかりません。書いていくしかない。
がんばって書こうと思います。
感想メールも頂いたし。ホント励みになりますよ。
ここまで読んでくれた方も含めて、ありがとうございます。
それでわっ。

おぉ、前回は、呆気なく蹴散らされたヴェロードが、
ナインボールの頭部を破壊するに至るとは！
これで、もはや、ハスラー・ワンの興味は独り占め♪
イヤでも、いずれカレからの誘いがあるでしょう。（＾＾）
え？　どこへって？　そりゃ、黄泉路とか、レテ川の辺とか。（笑）

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