Armored Core〜the case of Velord Rimdortlm〜
4th case　He ran into a woman.

ACを回収した後、研究所の一室に通された。
「さて、何から話しましょうか。」
部屋には、テーブルを挟んで椅子に座っている俺と目の前にいる男、二人しかいない。
男の名はエラン・キュービス。
プログテック社の主任研究員で、その発展は彼の力に拠るところが大きい。
俺が知っているのはその事実だけで、会うのは初めてだ。
「とりあえず、報酬の話からだ。
今回の戦闘でACが大分壊れたからな・・最低、修理費用くらいは出してもらう。
・・その前に報酬の相談をするのはあんたでいいのか？」
「ええ。今回の件については全て私に一任されていますから。
私は一応ここの所長ですからね。」
エランはにこやかに微笑みながら答えた。
「修理については、こちらの責任で全てやらせて頂きます。もちろんタダです。
ここはACの研究所ですから設備も人員も整っていますし、すぐに終わりますよ。」
「それは助かるな・・しかし気前が良すぎないか？」
「今回は特別なんですよ。理由は、わかりますよね？」
「・・ナインボールか？」
「その通りです。
アリーナ１位のレイヴンの、社内１の業績を誇る研究所への襲撃。
何かあると思って、まず間違いないありません。
・・心当たりはありませんか？」
「・・俺がナインボールを追ってレイヴンになったのは、あんたも知ってるんだな。」
「ええ・・まあ。」
エランは、すまなさそうな表情をして答えた。
悪い奴ではなさそうだ。
「いいさ・・気にしない。奴については色々調べたよ。
情報源は当然、レイヴンズ・ネストなんだが、
奇妙なことに、ネストにある情報でもナインボールに関する情報は、
他のレイヴンのと比べて圧倒的に少ないんだ。」
「それはおかしいですね。アリーナ１位でミッション達成率も最高。
最早存在そのものが伝説と化したレイヴンなのに・・」
「だろう？それにもう一つ奇妙なことがある。
聞いてもあんたには余り嬉しくない話だろうが・・。」
「構いません。何です？」
「襲撃にしろ協力にしろ、奴が関わった会社は、必ずそれから短い期間の内に
急に勢力を伸ばしているか、もしくは衰退しているんだ。」
「！・・・」
一瞬彼の表情が強張った。仕方のないことだろう。
自分の力でやっと勢力を伸ばした会社が、
この先短期間のうちに潰されることを予告されたようなものだ。
「とりあえず俺はナインボールを追ってるわけだし、
この会社の専属である限りは俺が全力を尽くして守る。そう好きにはさせないさ。」
「ありがとう。先ほどのあなたの戦いを見ている限り、
あなたはナインボールともほぼ互角に渡り合えるほどの実力の持ち主のようです。
・・あなたになら、この役目を任せてもいい気がします。」
「互角・・か。実はそうでもない。今回は柱が一定間隔で立っていたのと、
奴が俺に隙を見せたのが幸いしただけだ。
何もない場所でまともにやれば、正直勝てる自信はあまりない。」
今なら自分で、自分と奴との距離を冷静に測れる。
変われば、変わるものだ。
「プラス・・ですか。」
「・・ああ。人間離れした技をあんなに連発されたんじゃかなわない。
何回か戦って慣れてきてはいるが・・それでも、な。」
「強化人間については私の方でも一度調べてみます。
ナインボールの素性も含めてね。余り成果は期待できませんが・・」
「やらないよりはまし、か。」
「そういうことです。・・ああ、それから報酬をもう一つ。
この研究所にはいくつか、まだ市場に出回っていないパーツがあります。
優先的にあなたに提供しましょう。実用性は保証しますよ。
リストを作りましたので、見ておいて下さい。」
と言って彼は紙を差し出した。
上から下まで、びっしりとパーツの説明が並んでいる。
すごい数だ・・。
「ありがたく使わせてもらう。」
「私からの話は以上です。」
「そうか。ACの修理は・・まだ終わってないよな。泊めてもらえるか？」
「わかりました。部屋を用意させましょう。」
と言うと電話を手に取り、どこかへ連絡した。
「来客用の部屋が空いているようです。案内しますよ。」
俺たちは部屋を出た。



案内された部屋は、来客用というだけあってホテルの一室のような雰囲気だった。
ベッドにテレビ、冷蔵庫が整然と並んでいる。トイレとバスも完備だ。
デスクの上には端末と電話が用意されていた。
研究所内といつでも連絡がとれるようになっている。
とりあえずラナに連絡を入れないと・・。
端末を開き、レイヴンズ・ネストで自分のIDとパスワードを入力してログインした。
メールが届いている。ラナからだ・・さすがに速いな。

　『どういうつもりだ？
　　ミッションの依頼と契約、報酬の支払いは全て私を通じて行う。
　　企業と直接のコンタクトは許されない。それが規則のはずだ。
　　いいか、二度とするな。今度同じことをすればお前へのサポートは打ち切りになる。
　　以上だ。』

どうやらこちらから連絡するまでもなかったようだ。
・・二度とするな、か。どうやら守れそうにない。
さっきのエランとの話からすれば、今後このようなことは続くと考えた方がいいだろう。
レイヴンズ・ネストの支援が得られないとなると・・・・
どうなるかはさっぱり見当がつかないな。
その時はまた考えればいい。
俺はナインボールを倒せればそれでいいのだ。
レイヴンズ・ネストの支援がなくなったとしてもそれは変わらない。
「・・今日はもう寝るか。」
俺はシャワーを浴びにバスルームへと向かった。





翌日。
ACの修理が終わって、今後について少しエランと話してから俺はガレージへ帰った。
「よう、ヴェロード。昨日はどうした？帰ってこなかったじゃねぇか。」
「研究所でACの修理と、報酬とかの話をしてたんだ。」
「ああ、そうか。今回はネストからのミッションじゃなかったもんなぁ。
　それと関係があるかどうかは知らんが、昨日誰かお前に会いに来てたぜ。」

・・・俺に客？

「・・レイヴンか？」
「いや、それもわからねえ。大体お前さんがいるかどうかを聞いて、
後はすぐ帰っちまったんだからな。二十歳くらいの女だったぜ。」
女？ラナではないだろう。
ますますわからない。
大体レイヴンになってから、人付き合いなど全くないのだ。
人が訪ねて来る理由がない。話があるならメールですればいいはずなのに。
「おい・・これどうなってんだ？」
機体を見ていたガランが呆れた声を挙げた。
「どうかしたか？」
「右手にもブレードのスロットがついてるぜ・・。」
言われて見ると、確かに手のひらと肘の中間部分には、左手のと同じ
ブレード用のスロットがついている。まだブレードないが。
どうやら腕をパーツごと交換したらしい。
「・・・エランだな。」
「こんなコトしちまっていいのかよ・・ネストの規格にはこんなのないぜ。
これ、違法改造っていうんじゃねえのか？？」
違法・・か。じゃアリーナでは使えないな。
「二刀ブレード、ね・・・いいかも知れないが、
使えないんじゃしょうがないからな。取り外してとっといてくれ。
代わりにつけるのは前と同じやつでいい。」
「OK。」
（さて・・と。）
俺は部屋に戻って端末に向かった。
アリーナへの挑戦を再開するためだ。
下位アリーナ制覇まで後一人というところまできていた。
ここまで無敗だ。あと一人、アヴェンジングローズを倒せば、
上位アリーナへの挑戦権が獲得できる。
早速俺は対戦申し込みをした。
指定日時は今日の午後４時。
約一時間後、了解の旨を知らせるメールが届いた。
試合開始まであと３時間。俺はACに搭乗しアリーナへと向かった。



アリーナ、レイヴンの控え室。
俺は長椅子に座って考え事をしていた。
訪ねてきた女のことが気になっていたのだ。
今の所知り合いに女はいない。
・・・研究所襲撃のこともあるし・・重なるもんだな。
"シュッ"
控え室の扉が開いた。時間が来たようだ。
「ヴェロード・リムドートルム。時間だ。」
女のことはとりあえず心にしまって、俺は格納庫へと向かった。
頭の中が戦いへと切り替わっていく。
今回戦うACはD・G・H。赤い重量４脚。
武器腕のマシンガンに、肩にはグレネードと６連装小型ミサイル。
頭部は高性能レーダーを搭載。武装的には隙のない機体だ。
遠距離ではミサイル。中間距離ではグレネード。
接近すれば武器腕マシンガンで蜂の巣、といったところだろう。
下位アリーナに順位はない。詳しい実力のほどはわからないが、
成績から判断して、上位にいることは確からしい。
格納庫に着いた。既に起動シークェンスは済ませてある。
コックピットのハッチを閉じるのと同時に、目の前の扉が開いた。
目の前にバトルフィールドが広がる。
戦闘モードを起動すると、ディスプレイに文字が表示された。
"READY"
目の前には赤い４脚AC。
"GO!"
俺はブースト全開で移動を開始した。ミサイルが来ると予測して。
しかし目の前には、火の玉が迫っていた。
「くっ！」
咄嗟にジャンプして回避。ダメージはない。
（この距離でグレネード！？こいつ・・）
着地した目の前にはミサイルが４発。これも何とか回避した。
ミサイルはともかく、グレネードは完全に射程外のはず。
（まさか、最長距離FCSか？でも・・）
グレネードに最長距離FCSを使ったのでは、サイトの大きさが最小になる。
それで遠距離の高速機動しているACを狙うとは・・。
人間離れした狙撃技術だ。
一つの考えが俺の頭によぎる。
（・・まさか、な・・・）
こちらも小型ミサイルで応戦するが、相手は重量級だ。大したダメージは与えられない。
「・・・やっぱり、斬らなきゃだめだ。」
攻撃が途絶えた一瞬の隙を突いて、俺は接近を開始した。
多少のダメージは覚悟するしかない。
ミサイルの雨が止んだ代わりに、俺を襲ったのはマシンガンの嵐だった。
機体を左右に振って大ダメージを避けながら、ブレード圏内に入り
ブレードを起動した時、オンにしたままの通信機から女の声が響いた。
『そんなに近付いていいの？』
「・・・！！」
目の前には、グレネードの銃口がこちらに向かって向けられていた。
回避に気取られて気がつかなかった。いつのまにかマシンガンの音は止んでいる。
『最初の攻撃を全部回避したのはあなたが初めてだわ。やるわね。』
「・・回避できないのはレベルの低い奴らだろ。一緒にするな。」
『せっかくほめてやってるのに、言ってくれるわね・・。
降参しないの？この距離で直撃を食らえば、あなたも死ぬわよ。』
「俺は・・・」
『！？』
言うと同時に俺は真上へ飛び上がった。一瞬で奴の視界から消える。
『しまった・・』
「死なないっ！！」
空中で反転、動き出す前に奴の頭部めがけてブレードを突き出した。
刃が頭部を抉り取る。
『くあっ・・！』
着地と同時に、右手のハンドガンと左手のブレードをコアに突きつけた。
「奴を倒すまではな・・・。まだやるのか？」
『いえ・・降参ね。』
俺は両手を下ろし、格納庫へと向かった。

第４話です。
いつか入らない時がくるんだろうか・・と思いつつも、
結局毎回入ってくる戦闘シーンは相変わらずしっくりきません。
新キャラは男か女かどっちにしようか迷いましたけど、やっぱり女ということで。
いい加減男書くのも飽きてきたし・・。
次回はヴェロードと彼女との話がメインになる・・かも知れません（笑）
結構行き当たりばったりで書いてるから、大体しかわかりませんけど
大筋は結構練れてきてます。
中途半端な展開にはしないつもりなので、今後を楽しみに、
見守っていただければ幸いです。
それでは。ここまで読んでいてくれてる方、どうもありがとうございます。

ふむ、謎の女性レイヴン登場ですね。
接触を図ってきたということは…彼女もまた、ハスラー・ワンから
ラヴコールをされていたりするんでしょうか？（＾＾；）
今後が楽しみですね♪

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