Armored Core〜the case of Velord Rimdortlm〜
6th case　Be rash!

ガルシティ。
決して大きくはなく、ただの一地方都市に過ぎないが、
廃棄された施設が、大破壊以前のものも含めて至る所に存在し、
それを好都合とする組織はしばしばこの地で非公式の実験などを行ったりしている。
いつかそれは人々の間で噂となり、よってこの都市に対するイメージは、
さほど良いものとは言えなかった。
とはいえ治安はそれほど悪くなく、企業の子飼いとは言えガードは有効に機能している。
そんな街のある廃工場の中で、戦いは間もなく始まろうとしていた。





「着いた・・ここか？」
俺はマップを頼りにガルシティへと向かい、
どうにか時間内に指定の場所に入ることに成功していた。
さっきの工場とさほど変わらない、殺風景な場所だ。
通路が奥へと続いているのを見つけ、俺は奥へと歩を進めた。
通信機をオンにして、口を開いた。
「来たのはわかってるんだろう？俺はヴェロード・リムドートルムだ。
上位アリーナ２０位のランカーレイヴン、どこにいる？」
『その先の大きな空間だ。早く来い。待ちくたびれたよ。』
淀みのない、若い凛とした感じの声がした。
男の言葉が終わると同時に、視界が開けた。
何もない、ただの広い空間だ。
小細工なし、か・・。
『はじめましてを言いたいところなんだが、今から殺し合いする奴への言葉じゃないな。』
淡い青の、見たことのない型のＡＣが立っている。
・・機体が、宙に浮いている？
武装は火炎放射器と大口径レーザーキャノン・・恐らく基準違反だ。
「殺し合い？」
『そうさ。お前に退く気はないんだろう？』
「・・・ああ。」
『そして俺にもない。だが上位アリーナへの挑戦権は一つだけだ。
フフフ・・楽しいねぇ。どちらかが死ぬまでこの戦いは終わらないんだよ。』
・・愉悦。
殺し合いを前にしてこの男は愉悦を感じているのだった。
澄んだ声色で言われると、言葉は余計に病的に響く。
「・・・」
『それより、片腕でいいのか？見たところ違法改造とは言え、右手一本じゃ・・、
いや、やめとこう。どうせお前は死ぬんだ。それはベストな状態だろうと変わらないんだ。
ちょっと早いか遅いかだけの違いなんだよ。大丈夫。痛くしないからねぇ。』
男の口調が更に歪んだ。聞いていて胸くそ悪い・・。
「ごたくはもういい。・・・行くぞ。」
俺は、全速で移動を開始した。
同時に奴の機体も上昇を始める。重武装だけあって緩慢な動き。
『さあ、いい声で啼いてくれよぉっ！！』
"ギシュンッ！！"
空中から、肩のキャノンが放たれた。それが意味する物は・・。
回避しつつ通信を入れる。
「お前、プラスか！？」
『だったら何なのさぁ！ほーら止まってると死ぬよぉ！？』
"ギシュンッ！！"
発射から１秒も経っていないのに、銃口は二度目の咆哮を上げた。
プラスが放つ違法改造のキャノン。しかも威力はグレネ−ド並み。
・・・これが上位アリーナかよ・・。
右に回避する。本来なら左手のあった部分が光に包まれた。
相手は空中だ。これでは近付けない。
いくらプラスでも、キャノンをあんな勢いで連射していればエネルギーは切れるはずだ。
俺は何とか回避を繰り返しながら、奴が降りてくるのを待った。
『くっ・・すばしこい奴め！』
予想通り、エネルギーが切れたらしい。今や奴は、空中にとどまることはできない。
・・・さあ・・降りて来い。
目で降りてくる奴の動きを見ながら、俺は奴の背後に回り込みつつその時を待つ。

そこで、
ふと、疑問が湧いた。
２０位とはいえ、こいつは上位アリーナレベルだ。
これほど簡単にやられるような隙を作るものだろうか？
こんなに致命的なのは、下位アリーナの奴でもそうは作らなかった。
何かおかしい・・。
俺の勘が危機を告げた時、すでに目の前には奴の背中があった。

右腕のブレードを起動し、トリガーを引く。
直後、目の前が深紅に染まった。
『はははは！！かかったかかった！』
・・・炎・・火炎放射器！？
あれを至近距離でまともに浴びると凄まじいダメージを受ける。
ただの炎ではない。兵器用に特別開発された燃料による、ＡＣの装甲をも削る超高熱。
「ぐっ！！」
後ろにいるのに・・・火炎放射器もカスタマイズされているのか！！
不意を突かれて脱出が遅れた。
ディスプレイの、レーダーとセンサ−類の表示が全て消えている。
頭部を集中的にやられたらしい。幸い光学観測は生きていた。
状況は、大きく奴の有利に傾いた。
『まだ生きてるのか。お前が初めてだよ。
み〜んな、火あぶりになって死んでったんだよ。苦しみの声を上げながらな・・・。』
・・おしゃべりな奴だ。とっとと黙らせたいが・・・。
手持ちの武器はハンドガンとブレード。
相手の装甲からして、ハンドガンで削り殺すのは無理だ。
となれば、接近するしかない。
しかし近付けば背後からでも火炎放射を食らう。
普通に考えればもう打つ手はない。普通に考えれば、だ。
・・・・・・。
一つだけ、思い付いた。
我ながら無茶苦茶だが、やらなきゃどうせここで死ぬ。
道は一つしかない。
『さーてどんな死に方がお望みかな？』
「火あぶりにしてくれよ。どうせもうエネルギーはないんだろ？
　考えもなしに連射するからそうなるんだよ・・・装備は玄人ばりのくせに、頭は悪いんだな？」
・・・・・。
一瞬、間があった。
『フッ・・フフフッ・・・何を言ってるのかな？フフ、フ・・・』
「殺すのが好きなだけあって良い笑い方するじゃないか。気持ち悪くてもう死にそうだ。」
『身の程をわきまえろ！！この死に損ないめ！貴様の命は僕が握ってるんだぞ！
もっと怯えろよ！這いつくばって命乞いしたら助けてやる！』
「くそくらえだ。」
『この野郎！！調子に乗りやがって・・いいだろう、殺してやるよ！
せいぜい苦しませてからな！』
とうとう奴は、俺に向かって接近を開始した。
ブーストがないため緩慢な動きだが、滑るようにして近付いてくるので気味が悪い。
・・・もう少しだ。もう少し・・・
「今だ！！」
俺はブーストジャンプで跳び上がった。
『何やってるんだよ！？死んじゃうんだよぉ！！』
火炎放射器の砲口が俺の方を向く。
だが、すぐに視界から消えた。俺は奴の真上にいる。
『あれ・・あれ！？動かない！動かないよ！？』
ACはその設計上、地面から上方に67度までの範囲しか攻撃できないようになっている。
一つ目の狙いはこれだった。ここまでは問題ない。
問題はこの先。
『どこに行ったんだ！？火であぶってコロスんだよぉ！！！』
そのまま天井スレスレまで上昇。
両足を後ろに振りかぶり、頭を下にする。
ブーストをオフ・・・一瞬の無重力状態。
続くわずかな衝撃。スターオブカラミティの脚が天井に着いた。
「・・・行くぞっ！！」
天井から"離陸"。
今、俺は奴の直上にいる。完全な死角。
そして全開のブーストと重力による加速。速度は尋常ではない。
ロックオンサイトに表示された、敵との距離を表す数値も小さくなっていく。


"400"


"300"


"200"


"100"
ここだ！
『どコダぁ！？コロすコろスこロスコろ「死ね！！」
ブレードを起動し、構えた。
それだけで充分だった。
"ガギィィィン！！"
プラズマガスがコアに到達するのがはっきりと見える。
そして、轟音とともに俺の機体は地面へ激突した。
衝撃がコックピットに伝わり、ベルトが身体に食い込む。
「ぐぁっ・・・」
喉の奥で血の味がした。
ひとしきり揺さぶられた後、俺は意識を失った。

第６話です。
今回はかなりの難産でした。
どうにかしてブレ−ド戦闘面白くならないかなぁ・・と、
色々考えて、更に結構な紆余曲折の結果がこれなんですが、
面白いでしょうかね？これ（笑）
面白くないかなぁ・・。
状況としては面白いかも知れないんだけど、文章力が足りない。
うまく表現できないんです。
はぁ・・。
悩みです。
もっと上手くなりたいですね・・。

Ｐｌｕｓのタンク型って厄介ですよね。
いつまでも浮遊しながら上から攻撃を延々としてくるから。
ＡＣＰＰの頃、苦労してたのを思い出しました。（＾＾；）

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