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食事も終わりかけた時、食堂にけたたましいサイレンが鳴り響き、職員が数人やってきて叫んだ。
「みんな！すぐに地下シェルターに避難するんだ！
今街はレイヴンの襲撃を受けているらしい。もうじきここへ来るかも知れない！
さぁ、急いで！」
途端に食堂は騒ぎになった。食堂にいる全員が出口へ雪崩れ込む。
俺は何だか現実感がなくぼーっとしていたところを、カレンさんの声で我に返った。
「ヴェロードくん！はやく・・・」
「う、うん・・・」
レイヴンが、街を、襲撃している。
俺は心の中で、その言葉を何回も反駁していた。
・・・何だ・・・？この、そわそわして落ち着かない感覚・・・
レイヴンが、街を、襲っている？
レイヴンが・・・ＡＣが・・・・・ＡＣ？
ＡＣが、街を、襲っている？
俺はＡＣが街を襲っている光景を想像した。
住宅が炎に包まれている。倒壊するビル。逃げまどう人々。
ACの火器が火を吹く。建物は一瞬にして破壊される。人は一瞬で死ぬ。
街を包み込む炎は、燃え移る物が存在する限り全てを灰に帰すまで、赤く、紅く、燃え続ける。
その中に立つＡＣ。装甲が炎の色を反射して紅く見える。
紅い・・・ＡＣ。
そのイメージが頭をよぎった時、唐突にそれは起こった。
大きな地響きが一つ、通路を揺らした。同時に周囲の動きがピタリと止まる。
（・・・何だ・・・？）
無気味なほどの静けさが辺りを覆った。
１０秒ほどの間の後、聞き覚えのある轟音が響き渡る。続いて何かが崩れる音が遠くで響いた。
これは・・・グレネードの発射音。
何が起こったのかは、ＡＣを知らなくても容易に想像できる。
堰を切ったように再び周囲が動き出した。大勢の悲鳴が通路に響き渡る。
俺とカレンさんもシェルターへと走った。
再び轟音が、今度は背後で響く。振り返ると、ビルへと続く通路の天井が一斉に崩れて行くところが見えた。
天井に空いた穴からひざをついて砲身を構えるＡＣの姿が見えると、俺は立ち止まった。
「ヴェロ−ド君！何して・・・」
掴まれた腕に一瞬力がこもったが、すぐに無くなった。
目の前にいるＡＣは俺達の”死”そのものだ。
「俺・・死にたくない」
呟いた瞬間、鋭い音と共に右から左へ細い光の線が過った。
構えていたグレネードが爆散し、回避行動をとったＡＣは視界から消えた。
「助かったの・・・？」
ＡＣの交戦音が聞こえる。
「ね、今のうちにシェルターへ行こう？」
・・・
「ね？ヴェロ−ド君！」
・・・
「俺・・・」
・・・ドクン・・・
「え？」
・・・ドクン
「行かなきゃ」
後ろを見ずに走った。
瓦礫をよじ登り地上に出る。紅い二脚ＡＣに、赤い四脚と青い重量二脚のＡＣが攻撃を仕掛けていた。
すぐ近くなのに、不思議とちっとも危険は感じなかった。
辺りを見回す。瓦礫と化したビルの合間にたたずむキャリアーが目にとまった。
俺はそこへと走った。
私達は苦戦していた。二対一という状況、それも兄さんと一緒に戦っているのに、だ。
「兄さん、これは・・・」
『ああ。恐らくＬシリーズの一体だな。敵さんもようやく本気になってきたってとこか？』
「でも、たかが一人の人間の始末に投入するなんて不自然じゃない？」
『・・・おっと危ねぇ！さてね？旧時代の遺産の考えることは俺にはわからんよ。』
パルスライフルがＤ．Ｇ．Ｈの装甲を灼いて行く。咄嗟に上空へと回避した。
「どうやら考えるのは後回しね。こいつを何とかしないと・・・」
『ああ。しかしタフな野郎だぜ・・武器はパルスライフルとブレードだけなのにこうも手こずるとはな。』
俺はキャリアーに近寄り、運転席の扉を開いた。
「ヴェロード！？ヴェロードじゃねぇか！何でこんなところに・・・」
「・・ガラン！？」
そう言えばしばらく見ていない顔だった。
ガランという名の整備士。以前は俺のいたガレージの一整備員だった。
少しの間の後、何か思い出したような顔でガランは口を開いた。
「・・・なるほど。ヴェンジェンスの言ってたのはこいつのことだったのか。」
「何？」
「・・ん？こりゃあ・・・。
おい！話は後だ！お前のＡＣが後ろに積んである！それで今すぐ出ろ！」
「・・・・・」
「・・・聞いたよ。お前さんに何があったか。ためらう気持ちはわからんでもない。
だがお前さんは自分の足でここへ来た。ＡＣに乗って戦うためにここへ来たんだろう？」
「・・・ＡＣに乗って、戦う・・・」
「そうだ。その気持ちがなけりゃ、ここへは来なかったはずだろ？」
「・・・ああ・・そうだ。俺は戦うために、ここへ来たんだ。」
孤児院のこととか、カレンさんのことは、不思議と頭には浮かばなかった。
ただ一つ、感じたことは・・・。
「死にたく、ないんだ。」
ライトニングバロンが、立て続けにパルスライフルを食らいよろめく。
「兄さん！無事！？」
『ああ・・・しかしさすがにそろそろヤバくなってきたな・・・。装甲が半分以上は削られてる。そっちは？』
「もう限界が近いわ。まさかここまでとはね・・・っく！」
銃口がこちらを向いた。急いでビルの陰に隠れた横を、青白い光が掠めて行く。
『こりゃ尻尾巻いて逃げるしかないかな・・・』
「冗談・・って言いたい所だけど。さすがにコレじゃあね・・・・あいつ、やっぱり来なかったわね。」
『ああ。ま、仕方ないだろ。期待はしてないさ。』
その時、レーダーの片隅に赤い光が現れた。
「・・え？まさか・・・」
『よりによって２体目投入かよ・・・こりゃ、マジで終わったかな。』
「・・・兄さん・・・・見て。」
『あー？もう確認するまでもないだろ？・・・・・・・オイ』
二人の・・いや、増援の一機も含めた３機の目の前に、予想を大きく裏切る光景が広がっていた。
空中に浮かぶ紅いＡＣのコアから、腕が、続いて頭が、そして脚部が切り取られて行く。
青白いプラズマガスが横切るのと同時に、まるでバターか何かのように、切断されて行く。
５秒ほどの間だったろうか。最後にコアの中心を貫かれて、一体のナインボールが活動を停止した。
『・・・何だ？ありゃあ・・・』
ブレードが抜き取られ、コアが落下を始める。ばらばらにされたナインボールがいた空間には、
両腕からブレードを生やした無骨なデフォルトカラーのＡＣが佇んでいた。
もう書くの止めたんだろうと思われていてもしょうがないんですが、まだ書きます。
何とか書きます。がんばって書きます。
１２話です。
別にそうどうってことはないんですが、何とか１２話は年内に書きたい、と思い立ち、
バァーッと書いてしまいました。それでもそれなりに時間は掛かりましたが(-_-;)
やっと創作意欲と時間と気持ち的な余裕（中だるみとも言う）が出てきたので、書くことができました。
年が明けると、最近までのに輪をかけて忙しくなるのでまた滞ってしまうかもしれません。
それでも、書きます。稚拙でも。最後まで。
もう、読んでくれている人いるのかな？という感じなのですが、
もし居られたら、本当にありがとうございます。そしてこれからも、読んで欲しいのです(^_^;)
それでは、良いお年をお迎え下さい。
> それでは、良いお年をお迎え下さい。
ご、ごめんなさい（T_T）
戴いてから一ヶ月遅れの掲載になってしまいました。
ナインボールをバッサバッサと切り倒す〜（＾＾）
なんとなく、―マスター オブ アリーナ―の最終面を思い出しました。
ヴェロードが辿り着いた、ある意味、シンプルな答え。
でも、人が戦う理由って、そういうものなんでしょうね。
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