Satan　Is　Charity　−プロローグ「月と太陽と星」−

月と太陽と星が輝いている幻想的な紅い世界。
首をしめる心の壊れた少年。
首をしめられながらも抵抗しない心の壊れた少女。

「気持ち悪い」

少女の声にハッと正気を取り戻し立ち上がる少年。

「ははは、何やってるんだろう。」

しかし少年の声に少女は反応がしない。

「ははっ、涙も、もう出ないよ」

少年は純白い巨大な顔に泣きそうな顔で語りかけている。

「これが僕のしたことか・・・・・・」



少年は全てをわかっていた。
この紅い世界は、この星の全ての生物が一つに溶けた世界だったから・・・・・・
自分が何になってしまったかをも推測していた。


「第十九使徒・完全なる『リリン』が僕らか・・・」

少年は少女に話かけるがやはり返事がない。

「その考えは間違えている。貴様は完全なる『リリン』ではない」

月とも太陽とも星とも違う巨大な光が二人の前にあらわれた。

「だっ誰！？」

少年はそれが何でもよかった。話さえできれば・・・・・・。

「私はリリンの言葉で言えば神にあたるものだ」

「貴方は、何故此処へと」

「それは貴様が目醒めたためだ」

「僕ですか？」

「先に言った通り。完全なる『リリン』は、そこの娘だけだ。
貴様は人類のいう二十番目の使徒『ルシフェル』とでも言うべき存在であり私にかなり近い」

「僕がですか？使徒と貴方じゃ力が違う・・・それに補完じゃあそんなもの生まれるはずない」

「私の力がわかるなら貴様は使徒より強い。
それに私は言っただろう、目醒めたと、貴様の心は光と闇がせめぎあっていた。人が耐えられないほどに、そして・・・」

「インパクトのエネルギーで体が作り替えられたですね？」

「そうだ」

「僕はこれからどうなるんですか？」

「貴様は人類で言えば使徒だが、正確には神にも等しい存在だ。私はそれを聞きにきた。・・・貴様はどうしたい」

「どうって・・・」

少年は戸惑っていた。人生で初めて選択権を手に入れたから・・・

神は少年の答えを静かに急かすこともなく待つ。

月と太陽と星が一回りしたとき。


「みんなを・・・世界をなおすことはできますか？」

それは少年の最後の希望。

「できないことは、ないだろう・・・だが」

「本当ですか！？」

少年に顔に希望の光が輝きだす。

「ああ・・・貴様の力を暴走させるように引きずり出す。それに私の力を上乗せしコントロールし、そのエネルギーで世界を包み込み。原始の海を分解・再構築する。危険はない・・・・・・貴様以外はな」

少年の顔に不安がよぎる。

「どういう事ですか？」

「貴様は一定期間ただのリリンに近い存在になる。
あとエネルギーを引きずり出す時に、貴様は負の存在になり、虚数空間に堕ち、別世界へ向かうだろう」

「そ・それって！？」

少年の心に不安が膨れ上がる。

「貴様なしで再構築された世界は、もはや貴様の世界ではない。つまり、貴様は還ってきた者たちには、二度と会えない」

少年は衝撃を受けた。

「やめておくか？」

少年は迷いを振り切るように、

「いえ、やりましょう。」

「何の為にだ？」

少年は神に宣言する。

「僕がみんなにひどい事をした償いだからとか、僕がみんなに必要ないからじゃないんだ。
ただ・・・・・・・・・・・・ただみんなに生きていてほしいから！！」

少年は真摯に、決意の、優しい宣言。

「いいだろう。気に入った！。
貴様がもう一つの世界に向かうえるよう、後押ししよう。そこでは、ほぼこの世界と同じ事が起こるだろう」

「なら、僕がその世界を変えてみせます。あんな思いは、誰にも味わってほしくない」

「歴史の修正力は強い。貴様だけでは無理だ、後で私から力を送ろう。役に立つはずだ」

「すみません」

「気にするな。私は貴様を気に入ったからな」

「なら・・・・・・ありがとう！」

紅い波が打ち寄せる浜辺
月と太陽と星が見守る紅い世界。

「後のことは頼みます」

「まかせておけ、望むようにしよう。・・・そうだ、貴様の名は？」

「僕の名は・・・・・・シンジ・・・碇 シンジです！」

「また、会おう！シンジ」

「はい！行ってきます！」
神から放たれた蒼い光に触れると、シンジに六対十二枚の紅い羽が生える。

『もうみんなとは、会うこともできない。けど、別世界で別人になってしまうけど、僕はみんなを救ってみせる。
だから・・・行ってきます。
さよなら、母さん。
さよなら、父さん。
さよなら、大切な人たち。
さよなら、みんな』

その時、確かにシンジは聞いた。

『気ぃ付けて行ってこいや！シンジ！！」

『あなたは、もうしかっり生きているわ。頑張りなさい、シンジ君」

『シンジ、行ってこい』

『一人でも生きられたらとか、人類の生きた証とかそんなものあなたは、望んでなかったのね。
なら、望む通りに頑張りなさい。あなたは、頑張れるわ。『月と太陽と星』がある限りどこだって天国になるのだから・・・・・・
気を付けて行きなさい。私の愛しい子シンジ」

紅い世界が光に包まれ、動きだす。
シンジの壊れた心が癒されていく。

物語はまだ終わらない。

初めまして、遇善です。ここでは、作品について補足させてもらいます。
　まず最初にシンジの心ですが、この話だけで強引でしたが治しました。
理由は、断罪とか復讐などをさしたくないな、なんて軽い気持ちだけです。
次に題名にあるＳａｔａｎですが、悪魔より魔王の意味をあてます。
最後に作中にある
――――‡――――
ですが場面の移り変りを示してます。

では皆さん御感想・ご要望ありましたらお送りください。

自称「神」というのも怪しいですが、ひとまず、望みどおり、
時間軸の戻った世界へと降り立つことに…。
さてさて、どうなることやら♪