Satan　Is　Charity　−第１話「使徒襲来」Ａパート−

西暦２０１５年


常夏となってしまった日本のとある駅

「緊急警報をお知らせします。
本日12時30分東海地方を中心とした関東中部全域に特別非常事態宣言が発令されました。
住民の方々は速やかに指定のシェルターへ非難してください」

閑散とした駅に一人の少年があらわれる。

「懐かしいな、本当に・・・・・・」

少年の真上を戦闘機や巡行ミサイルが飛びかう。

ズゥガァァーン！

巡行ミサイルが何かにあたり、その何かは、山からあらわれる。

「変わらない・・・・・・変わらないね」

山からあらわれた何かは、黒い人型の体に、髑髏の仮面を被ったような巨大生物だった。
それも見るだけで、生理的嫌悪を感じさせるほどに不気味だった。
しかし少年の顔には、驚きも恐怖もない、むしろ余裕が見える。

「あっ！危ない！」

少年は突然駆け出すと、近くにいた人影を庇った。

ドガッシャァーン！！

人影がいた場所に戦闘機が墜ちた。

「大丈夫？怪我はない？」
少年は、庇った相手を立たせながら聞いた。

「は、はい、だいじょぶです。ありがとうございます」

相手は、突然の事に驚きながら答えた。

「そう、それはよかった。君、名前は？」

少年は微笑みながら聞いた。

「わたしの名前は、碇・・・・・・碇 ユウミです」

『少女』がすこし頬を染めながら答える。

今まで、突然の「税金の無駄使いだな」的なミサイルの音にも、
冗談は、漫画だけにしろと言いたくなる怪獣にも、
動揺しなかった少年が・・・・・・

「うぅぅそぉだあぁぁぁー！！」

自己崩壊しかけていた。

１０分前
閑散とした駅に非難勧告が流れる中

「やっぱり、電話もダメ、これからどうしよう？」

碇 ユウミは、困りながらも、とりあえず駅から出る。

「あれっ？ひと？」

ユウミの前に消え入りそうな少女がいた。

その少女は空色の髪と、赤い目をしている。

ズゥガァァーン！

「きゃっ！」

突然の音に、驚きながら周りを確認すると・・・・・・

「いない？」

一瞬後に空色の髪の少女はなく、代わりに山から怪獣があらわれる。

「う・そ・・・」

ユウミはパニックにおちいり、何も考えられなくなり、そのため戦闘機に反応できなかった。

そして二人は出会った。

現在
少年は驚き、ユウミは、少年の声に固まる。向かい合ったままで

パシュ
ズゥドオゥゥーン！
キキィーイン！
バン！

「お待たせ！・・・ユウミちゃん
・・・・・・・・・と、誰？」

間一髪で再度の戦闘機の爆発から二人を守る女性。
しかし、迎えの対象が死ぬかもしれない状況で異性と見つめ合っているように見える予想外な光景が出迎える。
それは、かなり頑丈な彼女の精神でさえも固めてしまう。

「ハッ！速く逃げなきゃ！」
少年が再起動する。

「ハッ！そ、そうね！乗って」

その声に女性も再起動し、まだ固まっているユウミを無理矢理車に押し込み、発車する。

「た、助かりました。ありがとうございます」

後部座席に乗り込んだ少年が運転席に話し掛ける。
「気にしなくてい〜わよ、舌噛むかもしれないから、ちょ〜っち待ってくれる？」

車は町を全力で駆け抜け、怪獣から離れる。

「みんなが怪獣から離れていきますよ！」

ユウミの声に女性が叫ぶ。

「こんなところでＮ２地雷を使うわけ〜！！」

車の後方の怪獣が光に包まれる。

「伏せて！！」
ガッズゥゥゥン！！


物凄い風が光から放たれ彼等が乗っている車が吹っ飛ぶ。

爆発で出来た荒野

「だ、だいじょ〜ぶ？」

車から抜け出しながら女性が尋ねる。

「はい、大丈夫です」
「な、なんとか無事です」
他の二人も同じようにしながら答える。

「そいつは、結構。ところで、あなたは？」

女性が少年に尋ねる。

「僕は駅で迷っていたんですよ。名前はシンジです」
少年は、微笑みながら名乗った。
その微笑みは、綺麗で透明だった。

二人の女性はその微笑みに見惚れてしまい。

「わ、私の名前は、葛城 ミサト、ミサトでいいわ。二人とも」

と車を運転していたグラマーな黒髪の女性が答えるので精一杯だった。

車のバッテリーがいかれたので、代わりの物を他の車から無断で『借りて』走る車の中。

「こんな事していいんですか？」

彼女がミサトさんに聞いている。

それにしてもなぜだ、とシンジは思う。

彼女がこの世界の僕らしい、確かに顔は似ているけど、僕より母さんに似ているかな。髪は黒くてショートカットにしてある、目も黒く、見た感じ優しい性格だと思う。
シンジの感想としたら『なんでここまで似ていて女の子なんだよ！しかも、なんか妙にあってるし！』と本人が聞いたら怒りだすようなものだった。

「い〜の、い〜の♪　ところで、お父さんのお仕事聞いてる？」

ミサトは話を誤魔化すために話を変える。

『って、ミサトさん！いきなりその話題は駄目でしょ』

とシンジは心配した。

ユウミは、顔をすこし上に向け顎に人差し指をあて、真剣に言う。

「悪の組織の一員で・・・・・・その組織は、黒がイメージカラーなんですよね？」

シンジはユウミの予想外な答えに『嘘だ、嘘だ！父さんが組織の一員だなんて〜！』と錯乱し、
ミサトは『だから、何時も黒い服を着ているのね』と納得しかけて、慌てて訂正する。

「ち、違うわ、お父さんの仕事は、国家公務員よ。私は、あなたのお父さんの部下って訳。詳しくはこれ読んで」

ミサトはそういうと、『ようこそＮｅｒｖ江』と書かれた冊子を渡す。

ユウミはそれを受け取りながら

「すみません、あんまり、お父さんの事、知らないんです」

ユウミの顔はそう語った時、一瞬だけ哀しげなものに変わった。

カーリニア・ジオフロント行き

一行はカーリニアで地下に降りていく途中。

ユウミが難しい顔で冊子を見ている。

「これなんて読むんだろう・・・・・・ネ〜ブ？」

「それはネルフって読むんだ」

ユウミは突然、話し掛けられたので驚いながら、

「よ、読めるんですか？」

シンジは微笑みながら

「読めるよ、神経とかそんな意味だったと思う」

ミサトが感心したように話す。

「物知りね〜！シンジ君」

「そうでもないですよ」

シンジの微笑みは、苦笑に変わった。

シンジにとって、
知識は全ての生物から受け継いだだけなので、誉められても、自分は何の努力もしていないので罪悪感に苛まれるだけだった。
しかしシンジは気付かないが、膨大な知識を完璧に記憶し続ける事だけでも凄いのだが・・・


シンジがそんなことを考えていると、

「わ〜！ジオフロント」

ジオフロントが見えて来たらしくユウミのはしゃぐ声が聞こえてきた。
そこは地下なのに明るく、天井からビルが生え、下には森が広がっていた。
そして、森の中にピラミッドのような建物がある。

ミサトがピラミッドのような建物を見ながら、

「あれが私たちの秘密基地ネルフ本部」

ミサトは自慢げに話す。
「人類の砦となるところよ」

『それを聞いて、よけい観光気分になったんだよな・・・戦争するって思わなくて
・・・ミサトさんもわかってるなら言えばいいのに・・・』
と考えてシンジは、そういう問題じゃないな、と考えるのをやめた。

ネルフ・通路

ネルフの通路をミサト、ユウミ、シンジの順で歩いていた。

「ミサトさん、いつお父さん所に？」

ユウミが前を行くミサトに尋ねる。

「ご、ごめんね。ここ広くって」

と言いつつも地図から目を放さないミサト。

『ミサトさん、なんで僕の時より迷ってるんですか？
・・・・・・あと僕、部外者なのに注意しないんですか？もしかして忘れてる？』

同じ場所を７回通ったとき、後ろエレベーターが開き声が掛かる。

「どこへ行くの？２人とも
・・・・・・・・・ってなんで部外者がここに？」

綺麗に金に染められ、黒眉がなければわからない金髪の白衣を着こなした女性がエレベーターから出てくる。

「あ〜リツコ〜♪ってなんでシンジ君がいるの！」

「ずっと一緒だったじゃないですか、もしかして忘れてたんですか？ミサトさん」

シンジは考えたくなかったことを不満顔で言った。

「そ、そんなわけないじゃない！あっ！そうそう、リツコ、彼は戦闘区域で迷子だったのを保護したのよ」

白衣の女性が呆れながらミサトに言う。

「あなた、また迷っていただけでなく、保護した人間の引き渡しも忘れたのね」
うぅっと唸るミサト。

「やっばり忘れてたんだ。それに自分の基地で迷ってたなんて」

シンジは前の世界でからかわれ続けられた仕返しとばかりからかう。

「うっさいわね〜！戦場で迷子になってた子に言われたかないわよ♪」

ミサトも冗談に冗談でツッコむ

白衣の女性は二人の漫才を無視し、

「あたしは技術一課、Ｅ計画担当博士、赤木 リツコ。
よろしく、碇 ユウミさん」

リツコはユウミに挨拶する、それにユウミも挨拶を返す。

「はい、よろしくお願いします。赤木さん」

リツコはユウミの反応を観察するように見ながら続けた。

「いらっしゃい。お父さんに会わせる前に見せたいものがあるの」

ユウミは『なんか、冷たい人だな？』と考えながらも、

「わかりました」

と答えた。

返事を聞くとリツコは振り返り、

「ミサト、ケイジに行くわよ。あと彼も連れてきて」

しかしギャーギャーうるさく騒ぎ続け、聞いてない二人。

リツコの顔に青筋が浮かび、白衣より注射器が出される。注射器にはなぜか虹色に光輝く液体が入っている。

ピタっと二人合わせて動きが止まり、次の瞬間。

「すみません、すみません二度としません、もうしません」
「ごみん、リツコ、んじゃ〜！行きますか〜！」

二人して謝る様子に、
「ちょっと待って。なんで・あなたまで・恐がる・の・か・な？お姉さんに言って御覧なさい？」

シンジはリツコに注射器を片手に迫られ・・・

（逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、
逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げて良いんだ）

「ミ、ミサトさんが、あれはマッドだって・・・」

「ち、ちょっと、シンジ君！？」

ミサトが弁解しようにも相手が悪かったが、今回は以外にも、

「馬鹿やってないで、さっさと行くわよ、みんな」

と言って歩き始めた

『よかった〜♪リツコ、今日、機嫌が良さそうじゃない♪』

が、リツコがミサトの横にきたとき、

「うふふふ、
後で覚えときなさいね。ミサト」

とミサトにしか聞こえない小さな声で呟きミサトを戦慄させた。

ケイジ行きゴムボート

一つのゴムボートが、
シンジにとっては懐かしく。
ユウミにとっては始めてみる。
そんな赤い水の上を走る。

「総員第一種、戦闘配置、繰り返す、総員第一種、戦闘配置」

それが流れ出すとリツコとミサトは関係者しかわからない難しい話を始める。
ユウミはそれを見てどうしようもない不安にかられ、一言だけ隣にいたシンジに漏らした。

「なんか・・・無理矢理、レールに乗せられてる感じがしませんか？」

と

どうも、遇善です。今回も皆さんに楽しんでいただけたらうれしいです。では、今回の解説を始めます。
最初にパート数の後にある言葉は、言うなれば副副題ですので流しても結構です。
しかし、その話の誰かの言葉に関係するので予想してみるのもおもしろいと思います。
次に使徒の事を今回は怪獣で書きましたが、深い意味はありません。
この作品では正式な名前が出るまで表記をぼかしているからです。
次に碇ユウミの名前です。
ただユイさんの名前に３に関係するものを付け語呂を良くしただけで、意味もへったくれもないです。

では、皆さん御感想・ご要望があればお送りください。

ユウミちゃん、どうも原作シンジよりも、少しだけ周囲が見えて、
前向きな感じですね。漫画版シンジのように気力なしでもなく好印象♪
…シンジが女の子に生まれていたら、男の子のときよりも周囲がやさしく
してくれたのか、はたまた、再構成されたこの世界がたまたまそうなのか。
シンジ君の悩みは尽きないかもしれませんね（笑）