Satan　Is　Charity　−第１話「使徒襲来」Ｃパート−

第三新東京

ガアアァン！

夜の街に周りのビルより巨大な紫の鬼が現われる。
そして、鬼の前方には、同じくらいの大きさの天の御使い、使徒と呼ばれるものがいた。

「エヴァンゲリオン・初号機、リフト・オフ！！」

バシュン

そして鬼の戒めが天使を殺す為に外された。

「ユウミちゃん、まずは、歩いてみて」

ミサトが最初の指示を出す。

「・・・・・・・・・・・・・・・」

しかし、鬼は動かない。

「ユウミちゃん？聞こえてるの？」

再度、声を掛けるが反応がない。

「通信は、大丈夫なの？」

「問題ありません、初号機、回路正常です」

第三新東京・初号機・ユウミ

ミサトさんが何か言っているけど、わたしはそれを、理解できない。
何故なら目の前の恐怖に飲まれていたから・・・

『本当に、それで良いの？』

彼の言葉が不意に頭に過った。

駄目だ、こんなんじゃ駄目だよ！

新たに決意を固めると不思議とわたしは落ち着く。

「大丈夫！？ユウミちゃん！！」

「大丈夫です。ミサトさん」

「ホント！良かった、それじゃ、まず歩いてみて」

「わかりました」

歩く、歩くイメージを思う。

「歩いた！！」

歓声が聞こえる。

「キャッ！」

集中が乱れ、わたしは転んでしまった。

「早く、立って！ユウミちゃん！！」

気付くとわたしの目の前に使徒がいた。

グワッ！
ガシッ！

わたしは使徒に頭を捉まえられた。

ガシッ
グググググッ！
ベキッ！！

「ッアァァァァァァァ！！」

使徒はわたしを持ち上げながら、わたしの左腕を折った。

「ユウミちゃん！あなたの腕が折られたわけじゃないわ！落ち着いて！」

ミサトさん！けど！痛いんですよ！！

パシュ！
パシュ！
パシュ！
パシュ！
パシュュューン！
ズドーン！
ブッシャァァァー！

わたしは頭に異物が入る感覚と、何かが噴き出るのを感じたのを最後に気を失った。

ネルフ・発令所

スクリーンの初号機は、頭を使徒の手から打ち出される光の槍で貫かれた後、ビルに打ち付けられる。

「頭部破損っ、損害不明っ！」
「制御神経断線！シンクログラフ反転！パルスが・・・ 逆流していきます！」

次々と報告される状況。

「作戦中止！パイロット保護最優先！
プラグを強制射出して！！」

ミサトがすぐに指示を出す。

「だめです！完全に制御不能です！」

「なっ！何ですって！！」

絶望に発令所が魅入られそうになる。

「初号機！再起動！！
自ら顎部ジョイントを引きちぎりました！！」

オペレーターからの報告にリツコが驚き、気付く。

「シンクログラフはマイナスのままなのよ！動けるはず・・・
―まさか！暴走！？」

グォォォ！

使徒に向かって走りだす初号機。

バシュッ！
シュッ
ドコン！
グルンッ
ズドンッ

初号機は使徒の攻撃を躱し、使徒を蹴り、その反動で跳び上がり、着地する。

「フッ、」

今まで黙っていたゲンドウが笑みを零す。

「勝ったな」

傍らの老人が呟いた。

グオォォォォォ

初号機が再度、雄叫びを上げながら使徒に向かう。

ヴォンッ
ガァイン

初号機が使徒の出す壁に阻まれる。

「ＡＴフィールド！？」

驚くミサト。

「やはり使徒も持っていたんだわ！
フィールドをはってる限り使徒には近付けない！」

どうしようもないといった感じのリツコ。

ブン
シュウゥゥ
ビシッ

初号機の左腕が光る。

「左腕復元！！」

「ええっ！」

「一瞬にして？」

さらに驚く二人。

「初号機もＡＴフィールドを展開！
位相空間を中和していきます！」

バリバリバリバリ！
ブウゥン！

初号機は使徒のＡＴフィールドに手を入れ開ける。

「す・・・凄い、使徒のＡＴフィールドを無理矢理こじ開けた！」

ウォォォ！

初号機は使徒に馬乗りになり、使徒にある紅い球を殴り始める。

ブンッ
ドガッ！
ブンッ
ドガッ！
ブンッ
ドゴッ！
ブゥン
バガッ！

使徒は、自分の命が無いと判断すると、初号機に抱きつく。

「まさか！自爆！？」

ミサトが叫ぶ。

カッ！


ドッ！



ズドオォォォン！

閃光の中で爆発音だけが響く。

閃光が薄れ、初号機の姿が確認される。

グウオォォォォォォォォォォン！！

初号機はまるで天の敵対者のように叫んでいた。
その声は、人の本能を恐怖で染め上げる。
体が無意識に震え、動けなくなるほどにそれは、恐ろしかった。


「か、回収班、急いで！！」

ミサトの声に皆が我を取り戻す。

「初号機、停止確認！パイロット生存確認！
回収班出動！救急隊急げ！」

発令所が、喧騒に包まれるとリツコがミサトに話し掛ける。

「あれを聞いて、よく平静を保てたわね、伊達に軍人じゃないって感じかしら？」

「馬鹿言わないでよ、あれに似たのを昔、一度味わってただけよ」

リツコは恐怖心より好奇心が勝ったのか、いつもの態度を取り戻す。

「いつ？」

「15年前、南極で」

リツコはそれを知っていたので驚かないで質問を続ける。

「どんな感じだったの？」

「あれが羽を拡げる瞬間と似てると思ったわ」

黙ってミサトを見るリツコ。

「それは、とても綺麗で、自分が死ぬかもしれないってのに、ずっと見ていたわ。
けど今回は逆ね、恐いから目が離せない」

ミサトはそう言うと発令所から出ていく。

「恐怖と美しさ、か・・・まるであの二人の様じゃない」

リツコは発令所の最上段 を見上げながら呟く。

リツコの視線の先にいる男は、傍らにいる老人に話し掛ける。

「先程の初号機の声、委員会に提出しようと思います」

何もなかったように話すゲンドウ。

「お、お前、そんな事よりもシナリオが狂う可能性が出てきてるんだぞ！
どうするんだ？お前だって聞いただろう、あれを！」

先程の声で冷静さを失い、興奮気味に答える

「シナリオは変わりません、そして、あれを聞せれば今後は、よりやりやすくなります。」

ゲンドウは平然と返す。

「碇、お前は先程の声に何も感じないのか？」

その様子にもっともな疑問を投げ掛ける。

「所詮、声は、声ですよ、
何を恐れるんですか？」

何でそんなことを聞くとでも言うように答える。

ここにも一人、悪魔の声に動じない怪物がいた。

第三新東京・ビルの屋上

戦闘が終わったばかりの街を見下ろす少年。

「彼女も嬉しかったんだろうな」

少年の目には、紫の鬼が思い出される。

「さぁ、行こう、僕の約束、彼女の使命を果たしに」

少年の背に十二枚の白い羽が生える。

「やはり、人から頼まれたのなら、果たさなければいけないのか？」

少年は、ビルからゆっくり爆心地に降りていく。

「欲しいものを、楽して手に入れようなんて、僕にはわからないよ」

爆心地に降り立った少年は左手を天に突き出す。

「こ、これは！？そうか、そういうことか！」

少年の左手に青い光が集まる。

「さぁ、彼女の使命を果たさしてくれ」

少年に集まった青い光は 徐々に小さくなる

「独り言だよ」

少年の声に反応したのか青い光は消え去る。

「よし！終わった！」

月も星も無い空を見上げる少年が呟く。

「君を理解しようと真似してみたけど、結局わからない。君は何を考えてたんだろう？」


少年は羽をはためかせながら、空へ昇っていく。

「それでは、皆さんお疲れさまでした。」

少年は誰もいない爆心地に振り返り挨拶をすると、何処かへ飛び去った。





第一話 『使徒襲来』
終了

Now Writing

恐怖と美しさ、で上にいる２名（冬月、ゲンドウ）を見るリツコさんって･･･
ミサトさん、そこでリツコさんの怪しい審美眼に気づかなくちゃダメですよ（笑）

最後に出てきた少年って…誰なんでしょう（＾＾；）