Satan　Is　Charity　−第２話「知らない天井」Ｂパート−

病院・病室

「お邪魔します・・・って、シンジ君、何かしたんですか？」

ユウミが病室に入ると、綺麗な空色の髪の少女と、その少女の包帯から片方だけ見えている赤い瞳からの絶対零度の視線の受けるシンジが目に入った。

「さ、さあ？ね、ねぇ、キミ、そんなに見ないでくれないかな？」

「なんで？」

「そんな目で見られるの慣れてないんだ」

「そう、なら今、慣れれば構わないでしょ」

「そうじゃなくてさ・・・・・・リツコさん、なんとかしてくださいよ」

「そうね、レイ、やめなさい」

シンジが堪らずリツコに助けを求め、リツコもそれに応じるが、少女はシンジを見ることをやめない。

「まぁ、いいわ。彼女は綾波 レイ、エヴァ、つまり、エヴァンゲリオンのパイロットの一人よ」

「シンジです。よろしく」

「碇 ユウミです。よろしく、綾波さん」

「碇？」

レイはユウミが言った碇という言葉に反応し、リツコに尋ねる。

「そうよ、レイ、彼女は碇司令の娘よ」

「そう・・・・・・」

レイは一言そういうとまた、シンジを見続ける。

「綾波さん、シンジ君に何か、あるの？」

「別に・・・・・・・・・・・・ただ見ているだけ」

「そ、そう？」

シンジが泣きそうになってきたので、ミサトが助け船を出す。

「んじゃ、リツコ、私達はそろそろ、行くわ」

シンジ達が出て行った後、しばらくして、リツコにレイが問い掛ける。

「彼は何で此処に来たんですか？」

「えっ！シンジ君？彼は、私が連れてきたの。でも、彼はネルフに関係ないから、あなたも関わる必要は無いわ」

リツコはレイと必要性の無い、人との接触を、何で自分が許可したかを考え始めたので、レイの小さな呟きを聞き逃していた。

「私と同じ感じがする・・・・・・貴方、誰」

ミサトの車、ルノー

「わたし、嫌われちゃたのかな？」

病室でのレイとの会話を引きずっていたのでつい話してしまう。

「そんな事ないわ、レイはみんなにもあんな感じだったし・・・」

「嫌われたのは僕の方だと思うけど、あんな目で見られていたんだし・・・」

「そうなのかな？うん、そうだと良いな」

『そう、キミは僕が綾波に嫌われた方が良いと言うんだね・・・それに綾波に、いきなり嫌われたとしか思えない。確かめようにも、もう、綾波に会う勇気がない。
ねぇ、どうしたら・・・ どうしたら良いんだ僕は？・・・ 母さん』

ユウミがショックから立ち直り、代わりに落ち込んでいくシンジ

「し、初号機、電力もないのに起動いてます」

「そんな、エントリープラグも入れてないのに動くわけ無いです・・・・・・って何で、こんな時に戻って来ないんですか！せんぱーい！早く帰ってきてくださーい！」

とある地下基地では某人型決戦兵器の目が光ていたという・・・

ネルフ・カートレイン乗り場

「ミサトさん、ここで僕は降りさしてもらいます」

シンジもショックから立ち直り、これからミサト達がネルフに行くのに気付き、話し掛ける。

「そうね、何だか悪いわね、気を回して貰ちゃったみたいで」

「いえ、気にしないでください」

シンジが車から降りるとミサトはカートレインにルノーを乗せる。

「なんで、シンジ君はこんな所で降りたんでしょうか？」

「たぶん、シェルターに連れて行った娘が教えたんでしょうね。ネルフは国連直属の機関なんだけど、非公開組織でもあるから、あまり民間人をネルフに入れることができないの・・・・・・前回、私のミスで入っちゃったけどね♪」

「そうだったんですか」

とユウミが納得すると、二人は笑い合った。

ネルフ・司令室

暗くて、天井と床に何かの紋様が書かれている広い部屋に、四人が机を挟んで向かい合い、話している。といっても２、３メートルは離れているが。

「ユウミ、お前には、あれに乗って使徒を倒してほしい」

「あんなのが、まだ来るの？」

「ああ、そうだ、その為にパイロットを一人でも増やしておきたい所だが、どうするんだ？」

「一度、関わった事だからやらせてもらいます。そのかわりに・・・・・・」

「なんだ？」

「あっ、あの、その・・・・・・お父さんと一緒に暮らせないかな？」

言い辛そうに、やや俯いて目を潤ませて頼んでくるユウミにゲンドウは、

「問題な「碇！それは問題があるだろ！」

ゲンドウの横にいた、白髪の老人が答えを遮る。

「突然、大声を出してすまなかったね。私はネルフの副司令、つまり、君のお父さんの補佐をしている、冬月 コウゾウという者だ。よろしく」

「は、はい、よろしくお願いします。冬月さん」

ユウミの言葉に頬を赤く染めながら説明する冬月。

「う、うむ、先程、君の希望を断ったのには理由があるんだ。
一つ目は保安上の面だよ、ネルフの司令と世界的に貴重なチルドレン、つまりエヴァンゲリオンのパイロットが一緒にいるとテロなどの標的になりやすいからね。
もう一つは、碇は家を留守にしがちでね、君が寂しい思いをするのでは・・・・・・と考えたからだよ。もっとも二つ目は、私個人の老婆心からの理由だがね」

「そうですか・・・・・・・・・じゃあ、わたしは一人暮らしをする事になるんですか？」

「よかったら、わ「いや！葛城くんの所に行くことになるだろう！」

「ちょっ！司令！私の所で、ですか？」

「何か問題があるのかね？葛城一尉」

「・・・・・・・・・ありません」

ゲンドウは冬月の提案を声で遮り、ミサトを司令の権限をちらつかせて納得させると、

「今日は疲れただろう、ゆっくり休め」

そう言ってミサトとユウミを退席させる。

「碇、お前！」

二人が出ていった後、冬月がゲンドウに詰め寄る。

「なにか、問題ありましたか？冬月先生、あれなら保安面も大丈夫ですよ」

「くっ！覚えておけよ」

自分が保安上の事を言った手前、反論できない冬月。

『しかし、冬月さん、か・・・・・・・・・ユイ君、君の娘は 立派に育っているよ』

冬月はふと、ユウミを思い出し、今は逢えない教え子にユウミの事を報告した。

第三新東京・街頭

「シンジ君♪調子ど〜う？」

「最悪です、タツミさん・・・・・・」

街をあてもなくぶらついていたシンジは突然に掛けられた声にそっけなく答える。

「あら♪ちょっとしたおつかいをして貰っただけじゃない♪」

「何が、ちょっとしたおつかいじゃない、ですか・・・・・・・・・おかげで僕は彼女に僕以外の記憶を大分取られました」

「あら♪他人の記憶なら良いじゃない♪知識はあるんでしょ？」

「はい、そうですけど・・・問題はそれを知った時の僕の考えも取られてしまって、皆が何を考えていたかが全くわからないんです」

シンジは苦り切った顔をする。

「それは♪それは♪でちゃんと持ってる、アレ」

「はい、どうぞ、あなたはこれをどうするんですか？」

シンジは青く光る宝石を女性に渡す。

「こうするのよ♪」

宝石をペンダントに付け、シンジの首に掛ける。

「これは、言わば天使の卵、彼女から力を貰わなくても少々の事ができるようになるわ。そうね〜♪今のあなたなら空を飛ぶぐらいかな？」

「えっ！じゃあ最初から僕の為に？」

「そうよ♪私は嫉妬深いからね♪・・・・・・たとえ、それが他人の記憶だとしても貴方が貰ったものなら私は絶対、私以外の誰にも譲らせないわ」

「タツミさん、途中からマジになるの止めて下さい、恐いですから」

「そう♪なら、もうしないわ♪、あっ！それ使いすぎに注意してね♪生まれちゃうから♪じゃ、バイバ〜イ♪」

「う、生まれる、何が・・・・・・・・・って、せめて、答えてから行ってくださいよ！」

シンジが気付くと女性はいなくなっていた。

ルノー

「さーって！今日は、パーっとやらなくちゃね♪」

ミサトはルノーをかなりの速さで飛ばしながら、横で外の景色を眺めているユウミに話し掛ける。

「ミサトさん、無理しないでください、わたしが家にくるの、迷惑でしょうし」

「なんで？」

「だって、初めて聞いた時反対したじゃないですか」

ミサトは少し考えると、
「ちょっと、寄り道するわよ」

とユウミに断ると、ルノーの進行方向を変える。

第三新東京・高台の公園

高台にある此処からは第三新東京の街が一望でき、そこには、夕陽に染まり赤くなった山や空き地が見えた。

「綺麗・・・・・・でも淋しい街ですね」

「そろそろ、時間ね、よく見ていてね」

ウウウウウウウウウウウゥゥゥゥ・・・

街にサイレンが鳴り響き、

ガゴン！

ズオォォォォォォォォォォォ・・・

ゴオォン

空き地だった所が開き、そこから、ビルが生えてくる。まるで、それは植物の成長の様に力強くユウミには見えた。

「これが、この街の本当の姿、私が住んでる街よ、そして、これからは、あなたも住むことになる街よ
・・・・・・本音を言うと実は今日、来てほしくないのよ、私ん家」

「やっぱり、そうですよねあんまり知らない人が家に来てほしくないですよね」

悲しそうに俯くユウミに言い辛そうにミサトが説明する。

「いや・・・そういうんじゃなくてね、私ん家、今、足の踏み場の無いほど散らかってんのよ・・・あなたが、それでも良いなら家に来なさい」

「ホントですか？よろしくお願いします！」

「そう！んじゃ、パーっといきましょ♪」

その時、わたしはミサトさんが、嘘をついてるって思ったんだ。けど、それはわたしの為の優しい嘘だと思ったから、甘えちゃったんだ。後で何があるとも知らずに・・・・・・。

今回は補足するような事はありません。

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ユウミがフォローされると代わりに沈むシンジ（笑）
なんかほのぼのしていていいですね〜。

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