Satan　Is　Charity　−第２話「知らない天井」Ｃパート−

第三新東京・高台の公園

「あれっ？シンジ君、こんな所で、どうしたの？」

帰ろうとしたミサトがシンジを見付ける。

「えっ！え〜っと僕は高い所に登って宿泊できる所を探そうと思って・・・ミサトさん達は？」

さすがに思い出深い、ここからの夕陽を眺めに来ましたとは言えないシンジ。
「うふふ♪内緒、そんな事より、シンジ君、今日、寝る場所無いの？」

「ええ、住むところも決めずに来ましたから・・・・・・」

「そうなんだ。ねぇ、ユウミちゃん、どうしたい？」

「えっ、・・・ミサトさんさえ、良ければですけど・・・泊めてあげられませんか？」

「よし♪じゃ、シンジ君も一緒に来なさい！」

「えっ！どこへ行くんですか？」

「イ・イ・ト・コ・ロ、よ♪」

シンジにとっては懐かしい台詞を聞きながら車に押し込まれて行く二人。

キャァァァー！・『く、車が横に、もう、いやぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・ 』

「スピード落としてください！ミサトさん！」・『あれ？ペンダントの光り方が変わった、そうか！これは、僕に反応しているのか！あぁ、光が弱くなっていく・・・・・・・・・』

二人の意識が遠退いて逝くとき、運転手の顔を見た、それは全ての重圧から解放された獣がいた。

コンフォート17・ミサト宅前・ユウミ

ふらふらしているわたしとシンジ君、コンビニ袋をぶら下げて、スッキリした顔のミサトさんが、横に荷物が置かれたドアの前に着いた。

「さっき、言った通り、物凄く散らかってるから♪」
それじゃ

「お、お邪魔します」

「待ちなさい！ここはあなたの家になるのよ・・・なら 、ね」

は、恥ずかしいなぁ、ホントに言わないと駄目？

「た、ただいま」

「お帰りなさい、じゃシンジ君もあがって♪」

ミサトさんのお帰りなさいって、なんか、くすぐったい。

「それじゃ、お邪魔します」

家に入ってみると棚とか机とかに、お酒の空瓶や空き缶がいっぱい並んでた。

「じゃ、私は着替えてくるから、机の上を片付けてくれる？」

「わかりました、ミサトさん」

なんで？ミサトさんはともかく、シンジ君！どうして！なんでこの状況で平然としていられるの！？

「覗かないでね、シンジ君♪」

「の、覗きませんよ！」

「そう言われると、アレね、シンジ君、私の体ってかなり凄いのよ、見てみる？」

「な、何、言ってるんですか！か、からかわないで下さい！！」

シンジ君、真っ赤になってる、かわいいかも♪

「はぁ〜、ミサトさん、なんであんな事、言うんだろ。まぁ、いっか、僕が片付けるからキミは食事の用意を頼むよ」

「わかったわ、それじゃ、始めよう」

だいたいの物はできたかな？冷蔵庫、なにか入ってるかな？

「氷・おつまみ・お酒ばっかり、こんなんでミサトさんの生活、大丈夫なのかな？」

「大丈夫だと思うよ、これからは、キミがいるんだろうし」

それって・・・・・・・・・

「もしかして、わたしが家事をするんですか？」

「そう、人より早い花嫁修業だと思って頑張ってね」

うぅ、やっぱり、・・・花嫁修業、か・・・頑張ってみよう

ミサト宅・ダイニングルーム

「あ〜ら♪ご飯、作ってくれたんだ〜♪」

着替え終わったミサトが出てくる。

「はい、けど、コンビニの冷凍食品ばっかりですよ？」

「いいの♪いいの♪これが結構、おいしいのよ」

「はぁ〜、ミサトさん・・・・・・これからは、わたしが頑張って家事をします」

「そう？ならその言葉に甘えちゃうわよ♪」

「じゃあ、食べましょうか？」

二人が食べ始めるがユウミは口にしない。

「どうしたの？ユウミちゃん」

「あの・・・・・・こういうの良いですよね、家族って感じがして・・・」

「私もそういうの好きよ♪結構、気が合うわね♪」

カシュッ
ゴク、ゴク、ゴク、ゴク、ゴク

「ぷっはあ〜、早く食べないと無くなっちゃうわよ♪」

「はい、そうですね、ホントだ♪おいし〜♪」

机の上にあった料理が殆ど無くなった時。

「はぁ〜、おいしかった、ごちそうさまでした」

「じゃ、お風呂に入りなさい、風呂は命の洗濯よ♪」

ミサト宅・風呂場

ガチャ

クワッ！

「ぺ、ペンギン？キミ、こんな所でなにしてるの？」
ユウミの膝ぐらいまでのペンギンが風呂場にいた。

クワワ

ペンギンは浴槽を指差す。

「お風呂に入ってたの？一人では入れるなんてえらいね」

クゥ〜♪

「じゃ、私もお風呂に入らせてもらうね」

クゥウワ

ざっぶーん

「風呂は命の洗濯ね・・・けど、お風呂は、嫌な事をよく思い出すんだけどなぁ」

そう呟くとペンギンを抱えながらユウミは自分の考えに入り込んでいく。

『今日は色々なことがあったなぁ、シンジ君に寝起きを見られた事、綺麗な夕陽、始めての家族、お父さんとの話』

「そして、綾波 レイさん・・・・・・」

「レイがどうかしたの？ユウミちゃん」

「み、ミサトさん！なんで入ってるんですか！？」

突然、ミサトに声を掛けられたのでユウミは慌てる。

「良いじゃない♪女同士なんだし♪あら、ペンペンも一緒なんじゃない♪」

クワッ

「そ、そうですけど・・・ミサトさん、このコ、ペンペンって言うんですか？」」

「そうよ♪新種の温泉ペンギンのペンペン、仲良くしてあげてね♪」

「わたしも今日からこの家で暮らすことになったの、よろしくね♪ペンペン」

クワクワ♪

ペンペンとユウミが、ふざけあってているのを暫らく見ていたミサトが、

「そろそろ、愛しのシンジ君がヒマしてるから、はやくあがらないと嫌われるわよ♪」

「み、ミサトさん！、そ、その！か、からかわないで下さいよ！」

今までのからかっていたミサトが、真剣な顔で尋ねる。

「ねぇ、ユウミちゃん、本当に、ここに来て良かったの？」

湯あたりしかけているのか、頬を赤く染めながら、ユウミは答える。

「ミサトさん・・・わたし、今とっても、楽しいです。それじゃ、先にあがりますね」

ザブーン

ガチャ

バタン

ユウミが風呂場から出ていくのを見届けた後。

「ちょっち、はしゃぎ過ぎたかな・・・案外、見透かされてるのはこっちかもね」

クワッ！

「そうね、そんな事より、ユウミちゃんって、脱ぐと凄いわ♪着痩せするタイプね？」

クゥゥウ？

意味の解らないミサトの言葉にペンぺンは唸るしかなかった。

ミサト宅・ベランダ

シンジはベランダの手摺りにもたれながら、自分のわからない事を考えていた。

『・・・使徒の名前には何かしら意味がある。なら、僕はどうして『ルシフェル』なんだろう？・・・・・・そういえば、使徒の名前の意味が解らないのが、何体かいたな・・・・・・』

シンジは青い光を放つ宝石に話し掛ける。

「きみは、自分の事をどれだけわかっていたんだろうね？」

「ねぇ、シンジ君、誰に話しているの？」

突然、後ろからユウミに話し掛けられたのに、シンジはそれを当然の事の様に振り返らず答える。

「遠くて、近い兄弟に、ちょとね」

「何か光ってる様だけど、何してるの？」

「これ、・・・これはね、さっき言った兄弟の形見が光ってるんだよ・・・・・・」

「そうなんだ、ごめんなさい」

シンジは振り向き、ユウミの顔を見ながら話す。

「キミは何を話したいのかな？」

「シンジ君は、なんでもわかっちゃうんだね」

ユウミがシンジの横に並ぶ。

「・・・・・・・・・・・・実は、わたし、此処に来てとっても楽しいんだけど、知らないことばかりで、どうしたら良いのかもよくわからないの」

「そうなんだ」

「シンジ君は、そんな風に思える事、ないの？

「実は僕も同じなんだ」

「シンジ君も？」

「うん、僕は知らない事ばかりだよ。けど、それは、今からいろんな事を知っていく事もできる、という事の裏返しだと思う」

シンジのペンダントが強く輝きだし、ユウミはシンジの黒い瞳に引き込まれる様に見つめる。

「それに、どうしたら良いのか、わからなくても自分で考えないとね」

「けど、わたし、もしかしたら、なんにも考え付かないかもしれないよ」

「その時は、相談に乗るよ、今の僕にも、それは出来るはずだから」

ユウミはシンジが真剣に答えてくれたので、不安が軽くなるのを感じた。

「ふぁ〜、安心したら眠くなってきた」

「今日はいろんな事があったからね、ゆっくり休むと良いよ」

「相談、乗ってくれて、ありがと・・・・・・・・・おやすみなさい、シンジ君」

シンジは、全てを包み込む夜の様に微笑み、返事を返す。

「おやすみ」

ユウミがベランダから出てってから暫らくして、

「何時まで、そうしてるつもりですか？ミサトさん」
「いや〜、バレてるとは、思わなかったわ。何時から気付いてたの？」

ミサトがベランダに出てくる。

「最初っから・・・ミサトさんが来たのは、たぶん、彼女が相談を持ちかけてきたぐらいかな？」

「そうよ♪脅かそうと気配を消したのに残念ね。そうそう、お風呂、空いたわ」

「わかりました、ミサトさん」

ガラッ

シンジはベランダから出ていく時、振り返り、

「相談があるなら、ミサトさんのも、乗りますよ」

そう、ミサトに告げる。
ガラッ

「いっちょ前な事、言ってぇ♪・・・・・・・・・けど、嬉しかったわね、あの使徒を倒したときより・・・」

ミサト宅・ユウミの部屋

「・・・また、知らない天井ね・・・・・・・・・当たり前よ、この街で知ってる所なんて、ないもんね」

バフッ

誰かが近づいてくるので、咄嗟に寝た振りをする。

スゥー

「言い忘れていたけど、ユウミちゃん、今日から、よろしくね・・・・・・って、寝ちゃってるか、・・・おやすみ、ユウミちゃん」

スゥー

辺りに誰もいなくなると、ユウミは自分に言い聞かせるように呟く。

「そうだよね、知らないなら、知っていけば良いんだよね、家族も、この街も」

ユウミは、今度こそ、眠り始める。その顔には自然と微笑んでいた。


第二話 「知らない天井」 終了

さて、前回、補足するような事がありませんと書きましたが、実は今回の補足で、しているものがあります。
本編でなぜかシンジは、レイの名前を風呂で呟いてます。その違和感を消すために、本作ではレイが早く登場することになりました。まだ、属性は、決めてないので深い意味は無いです。
今回のパートタイトルはミサトです。ミサトは相手に言いづらいから、ユウミは恥ずかしいから、本心を隠しています。
ミサトは隠しているのを感じて、ユウミが、わざと、明るくしている自分を見抜かれていると思い、本心が所々に出てしまいます。
まぁ、ユウミは自分の事で一杯ですから、なにも気付いてないんですけど・・・

では、皆さんご意見・御感想ありましたら、お送りください。

とりあえず、同居生活も順調な滑り出しといったところでしょうか。
今後、どうなるか楽しみですね（＾＾）

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