Satan　Is　Charity　−第３話「疲れる一日」Ａパート−

ネルフ・シュミレーションルーム

「ユウちゃん、学校どうだった？♪」

訓練が始まる前にミサトがユウミに話し掛ける。

「どうだったじゃないです。どうして言ってくれなかったんですか？」

「あら、学校で何か問題でもあったの？」

不機嫌そうに答えるユウミにリツコも尋ねる。

「実は学校で・・・・・・・・・」

学校・2-A教室・ユウミ

「おはよう、洞木さん」

「おはよう、碇さん」

私が挨拶しているのは、洞木 ヒカリさん、学校では、2年A組の学級委員をしている。家では、家事全般こなしているらしく、ミサトさんの家の家事を受け持っているわたしの相談に、よく乗ってくれる。

「今日、転校生が来るらしいわよ、碇さん、知ってた？」

「ううん、全然知らない、誰から聞いたの？」

「男子が話してるのを聞いたのよ、あっ、先生が来たみたい、じゃ、次の休み時間にね」

転校生、か、どんな人だろう？

先生が来たらしく、みんな、自分の席へ戻っていく。

「起立、礼、着席」

「皆さん、おはようございます。え〜、今日は、皆さんに、お知らせがあります。君、入ってきて下さい」

ガラッ

入ってきたのは、短めの黒い髪で、引き込まれそうな黒い瞳を持ってる、優しそうな女の子の様な顔の男の子。

見た事がある様な気がするけど、彼は、この街に来て、二週間になるんだから、違う人だよね。

「今日から、皆さんと一緒に勉強することになる、シンジ君です。彼は、事情があって名字がありませんが、仲良くしてあげてください」

シンジは、少し赤くなりながら自己紹介する。

「今日から、皆さんと一緒に勉強することになりました、シンジです。よろしくお願いします」

そう言うと、シンジは微笑んだ。

ネルフ・シュミレーションルーム

「・・・って事があったんです。しかも、その後、何故か教室中がピリピリして・・・」

『たぶん、アレを見たから、互いを牽制してたんでしょうね。けど、この娘、現場にいながら、本当に、気付かなかったの？』

リツコは、アレ、もとい、シンジの微笑みを見た経験から、瞬時に状況を推測する。

「けど、なんで、ミサトが関係するの？」

「シンジ君が教えてくれたんです。なんでも、保護者になられた方が、ネルフの職員らしくて、その人が、ミサトさんに報告していたらしいんです」

「ごみん、ユウちゃんを驚かそうと思って黙ってたのよ♪」

「そんな事より、ユウミさんは、エヴァの基本構造は覚えてるわよね？」

「はい、確か、エヴァは、通常、エヴァの背中に付いてるアンビリカル・ケーブルっていう、大きなコンセントみたいな物から、電力を供給してもらって動いていて、それが無くなると、約一分ぐらいしか、動けないんですよね」

リツコの眉がピクッと動く。

「そうよ、動かし方は、どうかしら？」

「え〜っと、エヴァは、わたしの脳にある、Ａ10神経っていう神経を介してシンクロしていて、考えるだけで動いてくれます。
だけど、シンクロはエヴァに受けるダメージを、わたしに痛みとして伝える事にもなって、それを無くすには、エヴァが動かない程にシンクロを抑えなくてはならなくなり、実質、無理。つまり、科学の限界。でよかったですか？」

リツコの眉がピクピクッと動く。

「じ、じゃあ、インダクション・モードは？」

「う〜ん、と・・・」

リツコの顔に笑顔が浮かぶ。

「わからないの？しょうが「待って下さい」・・・何？」

「インダクション・モードは、エヴァの操作が、機械的操作で行なわれている、トリガーを引くと銃の引き金を引くという動きが、シンクロの動きよりも優先される射撃用の操作方法です」

ブチッ！

「わかっているなら、射撃訓練、始めるわよ！！」

リツコが訓練開始を怒鳴る。

バーチャル世界に、前回、倒した使徒の様な的が現われる。

ズドドドドドド！

的に向かって、バーチャルの弾が放たれていく。

ズドーン！

的が十字に爆発する。

「？なにが、いけなかったんだろう？」

ズドドドドドド！

ズドーン！

「リツコが、キレてる事？」

ズドドドドドド！

ズドーン！

「はい、聞かれたから、精一杯、答えたんですよ」

ズドドドドドド！

ズドーン！

ズドドドドドド！

「知らなくていいわ、普通の人間にはわからないから・・・・・・もちろん、私もわからないわ」

ズドーン！

ミサトの呟きは、爆発音と被り、ユウミにしか、聞こえなかった。

翌朝・コンフォート17・葛城宅

「ミサトさん！起きてください！ご飯、冷めますよ！」

朝からユウミは、自分の通う、第一中学校の制服姿でミサトに声を掛ける。

クワワッ！

「ま、いいか、昨日、遅くに帰ってきたみたいだし・・・、ハイ♪ペンペン、ご飯だよ♪」

クワッ♪

ペンペンに魚を乗せた皿を差し出すと、ユウミも朝食を食べ始める。

「ペンペン、おいしい？」
クワッ♪

「ありがと、なんか、嬉しいな♪」

ユウミは、ペンペンが嬉しそうに鳴いたので、自分も嬉しくなる。

「ごちそうさま、まだ時間があるし、洗い物、済まして行こう」

ユウミは、食器を洗いながら、ペンペンに話し掛ける。

「ペンペン、今日も、お留守番、よろしくね♪」

クワッ！

ユウミが洗い物を終わらせる。

「それじゃ、いってきまーす♪」

クワワ♪

ユウミは、ペンペンに見送られ、マンションの前でゴミを捨てた後、学校へ向かう。

葛城宅・ミサトの部屋。

ゴミがそこら中に散らかっていて、部屋主の生活能力が伺える。

プルルルルル、プルルルルル！

「あによ〜、宿直の次の日ぐらい、ゆっくり、寝かせてよ〜」

ゴソゴソゴソ

ガチャ

「もしもし〜、って、なんだ、リツコか〜」

『なんだ、じゃないわよ！あなたね、なんてものに、許可、出したの！』

ミサトは、リツコの話を聞きながら、台所へ、向かう。

「なに？なんか、あたし、許可したっけ？」

『・・・チルドレンの保安強化』

カシュ

ゴク、ゴク、ゴク、

ミサトは、エビチュビールと書かれている缶を片手に説明する。

「ああ！それね！だってさ、問題視されてた、あの場所の警護が、なんとか出来るじゃない♪」

『問題は、どうして、こんな優秀な人材を、配属するの？。技術部、いえ、私は手放したくないわ！』

「それは、私も言ったんだけどね、本人の強い希望に押し切られて・・・」

『ミサト、正直に言いなさい。もしかして、ビール、３ケースで、きょ』

ガチャ

「なんで、リツコはあたしが、ビールもらったの、知ってんのよ」

ミサトは気付いていない。リツコは、３ケース、と正確な量まで尋ねていた事に・・・・・・

第一中学校・2-A教室

「ねぇ、洞木さん、なんか、みんな、ピリピリしてない？」

クラスの女子が、シンジに話すのを、互いに牽制する中、女子のヒカリに話し掛けるシンジ。

『ヒカリ！好きな人がいるんだから、シンジ君に関わらないで！』

という、女子達の考えに感付いているヒカリは、

「ご、ごめんなさい、シンジ君、お願いだから、話し掛けないで」

と、涙目で言うしかなかった。

「「どうしたの？洞木さん」」

シンジとユウミが、声を合わせてヒカリに尋ねたので、教室の温度が更に下がる。

『ふ、二人とも、私に恨みでもあるの？』

ガラッ

ヒカリが涙を零しそうになった時、教室の扉が開く。

「み、みんな、先生が来たわ、席に着いて！」

この時、普段、生徒から、ボケてるんじゃないか？、と噂される老教師に、ヒカリは心の底から感謝した。

「起立、礼、着席」

「え〜、皆さん、おはようございます。実は、今日から、このクラスの副担任が変わります」

ガラッ

腰まである黒い髪を揺らしながら、切れ目の女性が教壇に立つ。

「今日から、皆さんに、こちらの先生と数学を教える事になりました、大海 タツミです。オオウミ先生って呼んでね♪」

ワァァァ！

男子の歓声があがる。

「ってわけだから♪よろしくね♪シンジ君♪」

男子の視線が、シンジに突き刺さる。

「な、なんで？なんで、タツミさんが・・・だいたい、ネルフはどうしたんですか！？」

「私♪今日から技術部から学校のチルドレン警護に移ったのよ♪」

「そ、そんな・・・学校生活が崩れていく」

「シンジ君、オオウミ先生と知り合いなの？」

ユウミの問いに、シンジではなく、タツミが答える。

「知り合いもなにも、保護される者と保護する者のカ・ン・ケ・イ・よ♪ちなみに初めて逢った時に二人っきりで一晩過ごしたわ♪」

「ふ、不潔よ〜！」

タツミの言葉に、2-Aの良心が叫ぶ。

「タツミさんが保護者でしょ！あと、なにが、一晩過ごしたわ、ですか！シェルターに連れて行ってもらってただけです！」

「え、え〜っと、勘違いして、ごめんなさい」

「私は、何時でも、そんな関係になりたいと思ってるのに♪」

「タツミさんは、黙ってて下さい！！」

こうして、シンジの長い一日が始まった。

クラスメイトに涙目で応えるヒカリちゃんが可愛いですね（＾＾）