Satan　Is　Charity　−第３話「疲れる一日」Ｃパート−

ネルフ・発令所

「いい？ユウミさん、敵のＡＴフィールドを中和しつつパレットライフルで一斉射。ただし、パレットライフルの弾は、劣化ウラン弾だから、弾着の煙が多いの、撃ち過ぎに注意してね」

「その後、敵が健在なら射撃を続行か、近接攻撃に移るか、私が指示するわ。なにか質問ある？」

リツコとミサトから作戦が伝えられる。

「ありません」

静かに答えるユウミ。

「じゃ、行くわよ！」

全ての準備が終わり、初号機がリニアに搬入される。

「エヴァンゲリオン、初号機、発進！！」

バシュ！

第３新東京市・初号機・ユウミ

ガシャン！

地上に打ち出された後、わたしは、高いビルの陰に隠れた。

あれが今回の使徒・・・

使徒は、なにかを待っているかの様に、じっと街に佇んでいる。

「やらなきゃ！」

ジャキ
ズドドドドドドドドドドドドド

わたしは、ビルの陰から出て、使徒に弾を放つ。

《『バカ！注意、受けたでしょ！』》

しまった！煙で使徒が見えない！

シシュッ

！？
ズゥン！

スパァン

煙が退くのを待ってた、わたしにピンクの光が鞭の様に襲い掛かり、パレットライフルが切断される。

あ、あぶなかった！！倒れなかったら、代わりにエヴァが・・・

《『ライフルは・・・無理ね！接近戦に移行！！ユウミ、自分の判断でナイフ装備して！』》

ビュンビュンビュンビュンビュン

ドガッ！ガゴッ！ズガン！ドドン！

初号機を狙った光の鞭は、躱され、街をビルを切り裂いていく。

は、速い！近づく隙がないよ！

バヂッ！

きゃ！

《『アンビリカル・ケーブル断線！！、エヴァ内蔵電源に切り替わりました！！』》

《『ユウミさん、活動限界まで4分53秒よ！』》

《『焦らずに、新しいケーブルを繋いで！』》

くっ！

背を打ち付けたらしく、立ち上がるのが遅い。

シュル

光の鞭がわたしの足首に巻き付く。

ブンッ！

「きやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！」

わたしは、その状態から投げ飛ばされた。

５分前・シェルター

「しまった！あの二人が居ない」

シンジが二人の姿がないことに気付く。

「そうみたい、前と同じように、ね」

珍しく真剣なタツミ。

「行くのは、構わないわ。けど、誓約には、気を付けてね、貴方が苦しむ事になるから・・・・・・」

タツミの瞳に緋が宿る。
「わかってる、今は、動くつもりは、ないよ」

シンジも眼に決意を込めて答える。

「それなら良いわ。私も行ってあげたいけど、これでも教師だから、義務があるのよ・・・」

ひどく残念そうなタツミ。

「わかってますよ。それじゃ、二人を探してきます」

シンジが声を掛けると、既にタツミの瞳は、元に戻っている。

「頑張ってね、シンジ君♪いってらっしゃい♪」

この時、シンジは、気付いていなかった。自分が言った、二人を探しに行くという部分をある人物に聴かれていた事に。

第３新東京市・神社のある山

山の中腹で観戦していたトウジとケンスケ。

「おい！なんか、こっちに来とるで！」

「う、うそだろ〜！」

空から紫色の物体が降ってくる。

「「ぎやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・」」

ダダアァン！！

漸く二人が見える所まで辿り着いたシンジが惚け気味に呟く。

「も、もしかして、間に合わなかったとか？」

発令所では、即座に状況確認が進む。

「ダメージは！？」

「問題なし、いけます！」
《『うっそ〜！』》

状況確認中にユウミの動揺が叫ばれる。

「どうしたの！？ユウミ！」

発令所がスクリーンに注目する。

山に叩きつけられた初号機の指の間に震える二人の少年がいた。

「速く立って！急いで立って走るんだ！」

駆け付けたシンジが二人に叫ぶ。

「そ、そんなこと、い、言うたかて、う、動けへんのや」

トウジがなんとか、返事を返し、もう一人は、気絶する。

《『し、シンジ君、なんで、そこに！？』》

初号機の外部マイクからミサトの声が届く。

「ミサトさん！僕が二人をなんとかしますから、使徒を！」

発令所の皆が呆気に捕られている間に、使徒が初号機に迫る。

「こっのおぉぉぉ！」

シンジのペンダントが青く輝き、二人を持ち上げる。

《『あ、ありえないわ！二人の重さは、100キロはあるのよ、彼の腕では、無理な筈！』》

シシュッ

「あ、危ない！」

バシッ！

初号機が使徒の光の鞭をＡＴフィールドで覆った手で掴み取る。

「ぐうぅぅぅぅぅぅ」

フィードバックの痛みに耐えるユウミ。

「ミサトさん！後、少し、保たせて下さい！そうしたら、反撃できます！」

鞭とＡＴフィールドの光の中で、シンジが二人を抱え、走りながら叫ぶ。

《『・・・ごめん、シンジ君、反撃は、無理よ』》

「「なんでですか！？」」

耐える二人の声が重なる。

《『実は、もう一人いるのよ、そこに、女の子が！』》

「「はぁ！？」」

「あ、あれや、転校生！」
辛うじて話せているトウジが茂みを指差し、シンジに教える。

「ほ、洞木さん！？」

そこには、へたりこんだヒカリがいた。

『どうする！？これ以上の重さは、今の僕じゃ無理だし、かといって彼女を見捨てるわけにもいかない！』

シンジは、考えた末に、

「ごめん！」

「なんや！いきなりいぃぃぃぃ・・・」

シンジは、安全な所までトウジたちを投げ飛ばす。
ズジャアァァァァァァァ

50メートル位先の森に落ちる。

《『そ、そんな馬鹿な！？人を、あんなに投げられるわけないわ！？』》

《『そ、そんなこと、どうでもいいでしょ！
初号機、ホールドに、エントリープラグ排出して！』》

プシュ！

初号機の脊髄から人が入れる位の白い筒が出てくる。

《『シンジ君、彼女を連れて乗り込んで！』》

「はい！・・・洞木さん・・・行くよ」

「え、ち、ちょっと！？」

シンジは、ヒカリを抱き抱えると初号機に走り、エントリープラグに入り込む。

プシュュウ

ドボン

エントリープラグの中は、不思議な水と、ピッチリとしたレオタードの様な物を着て、使徒を睨むユウミがいた。

「み、水！？」

「大丈夫！すぐ慣れるわ」

「い、碇さんがパイロットなの？」

「そうだけど、集中が乱れるから静かにしてね」

「わかったわ」

動揺しているヒカリにユウミは、冷静に答える。

「み、ミサトさん・・・時間が無いんです・・・速く指示・・・ください」

《『シンジ君！大丈夫！？』》

ミサトは、シンジの顔を見て尋ねる。

「な、なんとか・・・しますから・・・指示を・・・」

青い顔で息も絶え絶えに話すシンジ。

「ミサトさん、どうするんですか？」

活動限界まで２分を切ったので、適切な判断を求めるユウミ。

《『ユウミ！もう無理だわ！使徒を投げ飛ばして、撤退しなさい！』》

「はい！わかりました！」
ミサトの命令にユウミが頷く。

『今、コイツを倒せなかったら、より被害が大きくなる、そんなの・・・』

「・・・・・・・・・・・・・・・駄目だ」

シンジが呟くとプラグ内の空気が変わる。

「？、み、ミサトさん！エヴァが動きません！」

《『な、なんですって！リツコ！？』》

《『な！？、これは、シンクロ・グラフが反転してるわ！』》

初号機の内蔵電源のカウンターが止まる。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・行くよ！」

ブンッ！

《『初号機、目標を投げ飛ばしました！』》

《『どうなってるの！これは！？』》

《『暴走よ、たぶんね』》

初号機は、右手を振りかざし、握り締める。

ズジャアァァァァァァァ

山肌を滑り降りて、使徒の前に出る初号機。

ブシャャャ！

使徒の光の鞭が初号機の腹に刺さる。

「ッ！・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

ズブ、ズブ、ズブ、ズブ

初号機は、腹に刺さった鞭を物ともせずに、ゆっくりと使徒に近づいていく。

ウオオォォォォォンッ！

ブォン！

バギッ！！

初号機は、声をあげながら右手を振り下ろし、使徒の紅い珠を叩き潰す。

カナ、カナ、カナ、カナ、カナ、カナ

夕陽の中で巨大なオブジェが立ち尽くし、蜩の声だけが響き渡る。

《『し、初号機、目標、共に沈黙！』》

通信機から、オペレーターの報告が聞こえる。

「だ、大丈夫？」

なにが起こったのか、わかってないが、とりあえず安否を確かめるユウミ。

「・・・うん、大丈夫みたい」

少し元気の無さそうなヒカリが答える。

「僕も・・・なんとか」

シンジは、息をするのも辛そうにしながら答える。

「ぜ、全然、大丈夫じゃないよ！」

「そ、そうよ！少し休んだほうが良いと思うわ」

明らかに無事じゃなさそうなシンジに二人は、驚く。

「そう？・・・なら少し・・・眠らせて・・・もらうよ」

シンジは、そう言うと気を失う。

一時間後・ネルフ・発令所

回収作業が終了し、ミサトは、シンジの容体を尋ねる。

「大丈夫なの？シンジ君は」

「はい、医療班の話では、身体的には、極度の疲労だけみたいです」

「彼、新型の身体強化装置を使っていたそうよ、その副作用が極度の疲労らしいわ」

「なんで、光ってたのよ？身体強化するだけなんでしょ」

「それは、身体強化に電気を使い、筋力を無理に動かす仕組みらしいから、過剰分の電力がプラズマの様になって光ったのね」

リツコの説明を聞きながらミサトは、後ずさる。

「で、電気で身体強化・・・・・・危ないから、あたしには、使わないでね」

少し汗をかきながら、辺りに目線が逃げるリツコ。

「わ、私じゃないわよ」

コホン、と咳払いするとリツコは、説明を続ける。

「あれは、大海さんが作ったもので、筋力を約15パーセント位、強化するらしいわ。それ以上は、危険だからリミッターを付けてたらしいんだけど・・・」

「シンジ君は、二人を救けるためにリミッターを外したわけね」

「そういう事、大海さんは、シンジ君なら二人を連れ戻せると考えたから送り出したみたい。『マギ』にも判断させれば同じ結論だったわ」

「なるほど、正しい判断だったわけね。それでシェルターから出た子達は？」

「今は、反省室に保護してるから、好きになさい」

「わかったわ、私が話をするから、事後処理、お願いね」

ミサトが発令所から出ていく。

『私は、なにかあると思ったけど、マギの回答は、不審な点なし、か・・・・・・』

「先輩、指示をお願いします！」

「そうね、まずは・・・・・・」

発令所の喧騒の中でリツコは、取り留めの無い思考を断ち切る。

？？？

なにも見えないほどの暗闇の中で二つの赤い光が踊る。

「ふふ♪隠蔽工作は、完了したわ♪『マギ』ごときに頼り過ぎてるのは、駄目ね♪あんなにバレバレな嘘が見破れなくなるんだから♪」

暗闇の中で赤い二つの光が消える。

「さぁて♪私もお見舞いに行こうかな♪」

文中にある《》は、通信機かマイク越しを表しています。さらに、《》の中の『』は、人物が話していることを示しています。
今回のパートタイトルは、リツコです。

では、ご意見・御感想ありましたら、お送りください。

１４歳少年が腕の力で、５０ｍ、同じ体格の少年を投げた（笑）
…リツコさん、忙しいからって、ボケちゃダメですよー。
しかし、何気にトウジ＆ケンスケ、頑丈ですね♪
リツコさんの実験材料にちょうどいいかも（＾＾）