Satan　Is　Charity　−第８話「災いのマモノ」Ｃパート−

新横須賀港

戦闘を潜り抜けた艦隊が入ってきたので港中が慌ただしくなっている。
そんな中で三人の男が艦隊の筆頭である空母から陸揚げされる弐号機をを眺めている。

「加持のおっさん、いつになったら碇はん達は降りられるんですか？」

「あぁ〜、折角の戦闘シーンがぁ〜」

「おいおい、子供が実際の戦闘なんか見たがるもんじゃないぞ。後、おっさんは止めてくれ、これでもまだ若いつもりなんだからな」

勝利の立役者であるユウミ達と違い、加持とトウジ達はする事もないのですぐに空母から降りられた。

「おっ！ほらほら、お待ちかねのお姫様達が降りてきたぞ」

お揃いのプラグスーツを着ているユウミとアスカがエレベーターで空母から降りてくる。

「ねぇ〜、惣流さん、やっぱりなんか恥ずかしいよぉ〜」

「アンタ、女なんだから別にいいじゃない？結構赤も似合ってるし」

「そ〜かな♪けど、お気に入りの服は海の底か〜・・・」

なんて会話をしているとユウミ達もトウジ達に気付く。

「あっ！トウジ君達だ！お〜い♪」

ユウミは手を振るがアスカは知らんぷりを決め込んでいる。

「な、なんちゅ〜カッコや！！」

「うおぉぉぉ！このシャッターチャンスを逃してなるものか！！」

トウジは絶叫を上げ、ケンスケはカメラを構える。

「え！？・・・何を言ってるの？これは私の服はエヴァを乗せていた船ごと沈んじゃったから着ているだけで・・・
ってみんなお願いだからそんなに見ないでよぉ〜」

ユウミは顔を赤らめながら恥ずかしそうにモジモジしながら抗議する。

「そ、そら難儀なこっちゃな。せやけど、なんや水着みたいやの〜？」

「くぅ〜♪なんていいポーズをとってくれるんだ♪」
「ほぉ〜♪初々しい感じが中々・・・」

三人はユウミの抗議で止められるはずもなく凝視し続ける。

「ちょ、ちょっと〜、見ないでって言ってるのに〜・・・」

目を潤ませて始めているユウミに段々と三人の目が危なくなってくる。

パンッ！
パンッ！
バキッ！

アスカが男達に平手打ちを加えていく。ご丁寧にケンスケのカメラにはグーである。

「アンタ達やり過ぎるとユウミに嫌われるわよ！後、加持さんも鼻の下を伸ばさない！」

突然の事だったので誰もが言葉を失うが

「あ、すまんかったわ」・「悪かったよ、今度から気を付ける」・「いやぁ〜、あまりにも彼女が可愛かったからさ」

とすぐに謝った。若干大人一名反省しているかどうか分からないが・・・。

「加持さん、車回してくれない？大至急ネルフ本部に行きたいの」

「うん？本部に何かあるのか？着任の挨拶なら明日でも構わないんだぞ」

「ううん、別にないんだけど、年頃の女の子二人がこんな格好じゃいられないでしょ」

「ああ、なるほどな。けど、残念だったな。俺は葛城のに便乗させてもらうから・・・」

加持が断ろうとしていると一台の車が近づいてくる。

「加〜持〜、残念ね♪この車はあたしとリツコとアスカとユウミの四人で定員よ♪」

その車には運転しているミサトと資料を読んでいるリツコが乗っていた。

「おいおい、なら俺はどうすればいいんだ？これでも今日中に終わらせなけりゃならない仕事があるんだぞ」

加持は自分の持っているスーツケースを視線の高さまで持ち上げる。

「そんな事知ったこっちゃないよ。じゃ二人とも乗って。後、鈴原君と相田君、私達はネルフに行くから、悪いけど二人で帰ってくれる？」

「「わかりました」」

車に乗り込みながらユウミがトウジ達に話し掛ける。

「今日は危険な所に連れていってごめんね。二人とも気を付けて帰ってね」

「おう！碇はんも気を付けて、ってミサトさんらがおるから大丈夫か♪」

「だな。今日はスリルがあって楽しかったよ、誘ってくれてありがとな♪」

「・・・・・・ありがと、二人とも」

ミサトはユウミが最後に乗り込んだのを確認すると

「んじゃ、二人も乗り込んだみたいだし行くわよ♪」

「お、おいおい！ホントに置いて行くつもりなのか？葛城〜！」

加持の事など無視して、意気揚々とアクセルを踏もうとする。

「ちょっと待って、ミサト」

『おっ！流石リッちゃん、俺と葛城との仲を取り持ってくれるのか〜♪』

加持はもう一人の友人に心底感激していた。

「加持君、一言、言わしてもらって構わないかしら？」

「構わないよ、リッちゃん」

リツコは額に右手を当てて苦笑しながら言い放つ。

「無様よ」

ザクゥ！

「それじゃあミサト、行きましょうか？」

「オッケ〜♪とばすわよ！！」

ミサトが運転する車はもうスピードで走り去り。後には背中から哀愁を漂わす加持が一人残っていた。

移動中・車中

かなりの速度で走る車の中で愚痴るミサトをリツコがあしらうという流れが永遠と行なわれている。
ユウミは興味深そうに聞いているが、そのやりとりに飽きたアスカは外の景色を眺めている。

「まったく、あの馬鹿は何にも変わらないわね！」

「あら、よかったじゃない？昔のまんまなら、彼まだアナタに気があるかもしれないわよ」

「だぁれがあんな奴と！」

「はいはい、喧嘩するほど仲がいいのはわかったから静かにして頂戴。珍しいデータが採れたんだからゆっくり検証させて」

「だぁ、かぁ、らぁ、あんなのに思いを寄せられても困るのよ！」

「ミサト、うるさいって言ってるのがわからないの？」

このやりとりはネルフに着くまで続けられた。

ネルフ・通路

タツミはセカンドチルドレンが到着したと聞いてシンジの病室に向かっていた。

「久しぶりね。確か研修でドイツに来てた時以来だっけ」

Ｔ字路を曲がろうとした時背後から声を掛けられる。

「そうなるわね。惣流・アスカ・ラングレー」

タツミが振り返ると私服に着替えたアスカがいた。

「人をフルネームで呼ばないでって何度も言ったでしょ！」

いささか気分を害したのかアスカは顔をしかめる。

「そういえば、そうだったわね」

こちらも機嫌がよくなさそうである。

「なによ。なんか機嫌悪そうね？」

「まぁね。あなたの捜し物でちょっと話があるの」

「な、なにかあったの？アイツに・・・」

「ええ。ここじゃアレだからちょっと来てくれる？」

ネルフ・司令室

いつも通り薄暗い部屋でゲンドウと加持が密談を交わしている。

「いやはや、波乱に満ちた旅でしたよ。やはりこれの所為ですか？」

加持はスーツケースを机の上に開く。

「ここまで復元されています」

スーツケースの中には異形の胎児の様なものが琥珀のように固められていた。

「硬化ベークライトで固めてありますが生きています。人類補完計画の要ですね」

「ああ、そうだ「楽園を追われしモノ、最初の人間アダムです」

「な、誰だ！？」・「・・・・・・・・・・・・」

突然ゲンドウの言葉を遮った声に加持は拳銃を抜き周囲を警戒する。

「そんなに警戒しなくても何もしません。加持リョウジさん」

気が付くと加持の隣には素人目にも高価そうな服を着こなしている少女が立っていた。

『お、おいおい、この部屋には俺と司令しかいなかったし、ドアも開かなかったのに何故この少女はここにいるんだ？
それにこの娘の顔はユウミちゃんにそっくりじゃないか！？』

驚きに固まっている加持を尻目に二人は話し始める。

「・・・何の用だ？」

「あれ？聞いてませんか？それを貰いに来たんです。後、お父さんの仕事ぶりを見に来たんです」

ゲンドウの声には拒絶の色があるのに対して、少女には親愛の色が見える。

「・・・・・・・・・好きにしろ」

少女はスーツケースを閉じ、持ち上げるとお辞儀をする。

「では、加持さん、ゆっくりしていってください。お父さんも体に気を付けてくださいね」

少女は部屋から今度はドアを使って出ていく。

「司令、あの娘は一体何者なんですか？知り合いみたいでしたけど・・・」

「・・・・・・君が知る必要は無い。退出したまえ」

「・・・わかりました」

加持はゲンドウの珍しく退出命令を出したので名残惜しそうにしながらも出ていく。

「くっ！老人共め！！」

ジオフロント・森林

何の変哲も無い森林なのに、どこか浮き世離れした銀髪の少年がいることで幻想的な雰囲気が漂っている。
「・・・なに、してるんですか？」

制服を着ているユウミが銀髪の少年に話し掛ける。

「別に何もしてないさ。ただこの景色を見るのが久しぶりだったから眺めていたのさ」

「へぇ〜、そうなんですか。わたし、この辺りに来たのは初めてだから・・・」

「そうなのかい？」

少年は意外そうな顔をする。

「うん。あそこにあるピラミッドみたいな建物からあまり出た事無いから」

ユウミはネルフ本部を指差す。

「ふ〜む、それは残念な事だね。碇 ユウミさん」

「どうして、わたしの名前を？」

「知らない者はいないさ。失礼だけど君は場所を考えた方がいい」

「あっ！そっか。ジオフロントにいるんだからネルフの関係者の方ですよね」

顔を真っ赤にするユウミに少年は悪戯っぽく微笑む。

「君は帰らなくていいのかい？もうすぐ日が暮れるよ」

「もうそんな時間なんだ・・・それじゃさよなら」

「ああ、さようなら」

少し駆け出した所でユウミは止まり振り返る。

「あ、あの〜お名前は何ていうんですか？」

「ボク？ボクは渚 カヲル。シナリオの協力者さ」

「？何をしているかわからないけれど、お仕事頑張ってくださいね」

今度こそユウミは走り去っていく。

「ふふ、シンジ君もそうだったけど、彼女もガラスの様に繊細だね」

カヲルはユウミが走っていった方に向かって心底嬉しそうに微笑んだ。

「貴方がそんな表情をするなんて、よっぽど妹が気に入ったのですか？」

カヲルの微笑みが冷たいモノへと変わっていく。

「君と双子の姉妹だと思えない程優しく繊細だからね」

カヲルの背後の木にスーツケースを持った礼服の少女がもたれ掛かっていた。

「15年前からの付き合いなんですから、そう邪険にしなくてもいいんじゃないですか？」

少女はさも心外そうな顔をして抗議する。

「いつも通り、またボクになにか頼み事があるんだろ？
ドイツに戻ってこの世界のボクの世話をする以外ならほとんどの事をするよ」

カヲルはそんな様子を無視して話を進める。

「まぁ、それも急務ですけれど・・・、今回はこれの処分をお願いします」

少女はスーツケースを地面に置く。

「それで、他には無いのかい？」

「CODE707に通ってもらいます」

「了解したよ（フフフ、楽しみだね。あそこには彼女や旧い知り合いがいるし、何よりシンジ君と一緒に・・・）」

カヲルが妖しく微笑み始めた頃には少女はいなくなっていた。

ネルフ・開発区

日が暮れてきたので今日の作業は終わったようで道具や資材だけが残されている。
何故こんな場所があるかというと、実は第3新東京市とジオフロントは一応機能しているがまだ完成はしていないからである。

「で、どうしてこんな場所に？アンタならどこでも隠蔽できるんじゃないの？」

アスカとタツミは人気や監視カメラを避けてここに来ていた。

「最近、金髪の魔女さんの監視が厳しいのよ。セキリュティーも上がってきてるし・・・」

「リツコもやるわね。で、アイツに何かあったの？」

「実はね。あなたがこの世界にいるのをあの人にも隠してほしいの」

「なんで？アイツの事だから自分が知ってるのに相手は知らない、っていう状況に限界きてるんじゃないの？」

「それもそうなんだけど他の事でもまいってきてるのよ・・・。ま、とにかくお願いね」

「・・・わかったわよ（アンタがシンジの事しか考えてないヤツだって知ってるからね。だ・け・ど・・・）」

立ち去るタツミにアスカは不敵に微笑んでいた。

特になし。

申し訳ありません。現在、感想文は準備中です。