新世紀エヴァンゲリオンＥＸ は、けいけい さんが Green Gables に投稿連載している作品です。
第７．７７話は外伝なので、本編を読まれてからのほうが一層、楽しめることでしょう。
※最初に説明があるので読んでもわからない、ということはありません。
今日も壊れきっている第三新東京市第一中学校２−Ａに、怪しげなジャージメンの
声が響き渡った。
「い、碇さん！」
「はい、なんでしょうか？」
そう応えたのは碇シンジ・・・もとい碇ユウキだ。
碇ユウキ・・・それは、碇シンジの女装中の呼称である。
ユウキの存在は第一中学校内において、ほぼ諸手をあげて歓迎された。
なぜなら、その姿があまりにも清楚かつ可憐だったからだ。
元々、ショタコンの作戦部長を一目で魅了したほどの美少年であったシンジは、
技術部所属の某オペレーターの何気ない一言が原因で、パイロット仲間である
ファーストチルドレンの罠にはめられて第一中学校の女子制服を着せられたのだ。
その姿を見たとあるイインチョ〜はこうのたまった。
『・・・ユ、ユウキさん・・・ス・テ・キ（ハァト）』
そして、事情は人類の命運を背負うべき特務機関ネルフ本部でも同じだった。
こちらでは、まず上層部が揃って撃墜された。
某ヒゲの総司令曰く
『・・・問題ない・・・ユウキのままでいい・・・』
某白髪の老副司令曰く
『・・・昔のユイ君を思い出すな・・・いや、ユウキ君の方が・・・』
某ロンゲオペレーター曰く
『ユ、ユウキちゃん！お茶でも一緒にどう！？』
某眼鏡のオペレーター曰く
『こ、これは・・・なかなか・・・い、いや！僕は葛城さん一筋だ！』
そんなわけで、シンジは週に一度、ユウキ化する事をレイによって命ぜられた。
もちろん、某ヒゲが全面的にレイをバックアップしているのは言うまでもない。
レイは速攻で自らが委員長となって『碇ユウキ応援委員会』を結成。
第一中学校の生徒のほとんどがこの委員会に何らかの形で関わっており、ネルフ本部内
にも同じ組織が結成された。
その役目は『碇ユウキ』の完全な形での補完とされているが、実際のところは
どうなのかとの問いには、皆、口を濁して語ろうとはしない。
まぁ、簡単に言うとアイドルのファンクラブのようなモノで、ユウキの私生活での
生写真や、それがプリンとされたＴシャツ、ピンバッジなどが販売されているのだ。
その売り上げは、ほとんどがユウキの生活に必要なモノ、つまり様々な衣服や
カツラ等の購入にあてられている。
そして、週に一度の『その日』が訪れると、関係各所はあわただしくなるのだ。
某特務機関の保安部や諜報部は総司令直々の命令によって、全力をもって市内各所で
ユウキの護衛にあたる事になる。
もちろん、碇ユウキという人物が何者であるか、完全に理解しているはずの彼らも、
その視覚的魔力からは逃れられない。
「・・・くっ・・・も、もう・・・ダメだっ！」
突然、頭を抱える黒服の男。
「お、おいっ！・・・みんな！コイツを抑えろっ！」
その横に立っていた別の男が慌てた様子で叫びながら、呻きだした男を背後から
羽交い締めにした。
「う・・・うおおぉぉぉっ！ユウキちゃ〜ん！ラブリィっす〜！」
そう叫びながら顔を上げた男の視線の先には・・・
「・・・ねぇ、洞木さん。これは？」
「あ・・・これは良いわね。ユウキさんになら似合いそうね・・・」
ファーストチルドレン綾波レイと洞木ヒカリがウィンドウの中にある白いドレスを
見ながら会話していて、その少し後ろに、碇ユウキがぼ〜っとした表情で立っていた。
「このバカ野郎！・・・おいっ！連れて行け！」
「はっ！」
必死に押さえていた男は慌てて駆けつけた部下達に錯乱した男を渡して、
ため息をついた。
このように、鉄壁の防御を誇る第三新東京市を影で支えている精鋭揃いの保安部と
諜報部が一番被害を受ける日・・・それが、『碇ユウキの日』だった。
もちろん『彼女』が街に出るとナンパ男達が群がってくるのだが、常にユウキの側に
ついて回っているレイとヒカリに撃墜され、不届きな事を企む連中は某親バカ司令の
命令によって、保安部及び諜報部の手で『始末』されている。
その影響を受けてか、近頃では繁華街の治安が良くなってきたと市民から報告がある。
もっとも、そんな事はユウキ本人にしてみれば何の関係もなく、今日もあちこちで
その微笑みをばらまいて、多くの人数を撃墜しまくっていた。
新世紀エヴァンゲリオンＥＸ
第七．七七話 ユウキ、料理
「・・・くぅ〜・・・やっぱり碇さんって良いよなぁ〜！」
「当然だ！俺なんか相田から写真買ったぜ！」
「なに今更言ってんだよ！そんなの常識だろ！？」
「ところがどっこい、今回のは新作でな！そ〜れ、見たいか、見たいかぁ！？」
「た、頼むっ！見せてくれっ！」
「・・・見せても良いが・・・明日の昼飯・・・おごれよ？」
「おうっ！おごる、おごるから！」
「良かろう・・・これだっ！」
「おおおおおぉぉっ！」
などという会話が同じ教室内でかわされているにも関わらず、ユウキ本人は少しだけ
微笑みながら、レイ、ヒカリ、トウジ、ケンスケと共にお手製の弁当を食べていた。
そんな微笑ましい昼食の一シーンだったのだが、突然、トウジが真っ赤になって
ユウキに声をかけたのだ。
それが冒頭のシーンである。
それに対して、お弁当を食べていたユウキが顔を上げて応えたのだが、トウジは
真っ赤になって俯いたまま、ピクリとも動こうとしなかった。
「・・・・・・？」
それを不思議に思ったユウキは、少し首を傾げてトウジを見た。
もちろんそのシーンも専属カメラマンであるケンスケによって撮影されている。
ちなみに周囲では、あまりにも破壊力のあるその姿によって、完全に昼食が中断して
しまっているが、ユウキ本人は気付いていない。
当然、皆の心の中では絶叫があがっている。
（うおおおおおおぉぉぉぉぉぉ〜〜〜〜〜〜〜っ！！！可愛いっっっっっ！！！）
そんな事にも気付かずに、ユウキが再び口を開いた。
「・・・あの・・・トウジ君？どうかなさったのですか？」
「は、はいっ！そ、その・・・・・・い、碇さんに頼みがあるんや！」
しばしのためらいの後、トウジはそう言ってユウキをみつめた。
その瞬間、レイとヒカリはアイコンタクトを計った。
（・・・洞木さん・・・）
（わかってるわ！鈴原がとんでもない事を言ったら・・・）
隣に座っている少女達がそんな事を考えているとは知らずに、ユウキはもう一度
首を傾げた。
「え？・・・私に・・・ですか？」
『委員会』の教育のたまものか、それともシンジ自身の環境適応能力の高さゆえか、
完全に『お嬢様系』に設定されたユウキは、慣れた様子で女言葉を使ってみせる。
もちろん『ユウキの日』以外の日には男言葉を使っている。
どうやら、シンジの中に、『碇シンジ』と『碇ユウキ』の境界線があるらしい。
・・・碇シンジという少年は、なかなか器用なのかも知れなかった。
もっとも、そうでもなければ無理矢理女装させられている環境に慣れるなどという事は
出来なかったかも知れないが・・・
「はいっ！碇さんでなきゃ、あかんのですわ！」
トウジが思いっきり頷いた。
「・・・なんでしょう？私に出来る事なら、構いませんけれど・・・」
微笑むユウキに、トウジは顔どころか全身を真っ赤にして言った。
「そ、その・・・わいのうちに、飯を作りにきてもらえんでしょうかっ！？」
その発言に、教室中が凍り付いた。
「・・・・・・えっ？」
しばらくの沈黙の後、ユウキが目をぱちぱちと瞬かせて聞き直した。
「頼んます！この通りですわ！」
トウジはそう言いながら、椅子から降りて土下座した。
「・・・あの・・・」
それを見てユウキが何か言おうとしたが、それをレイが遮った。
「ちょっと！鈴原君！何をいきなりトチ狂ってるの！？」
「・・・ちょ、ちょっと待てや！こ、これには訳があるんや！」
自分を睨みつけてくる紅の瞳に、トウジは慌てて両手を振った。
レイの横で『鬼委員長』洞木ヒカリも自分を睨みつけている事に気付き、トウジは
冷や汗＆脂汗をだらだら流してずるずると後ずさった。
もちろんその他のクラスメート達も、殺意すら込めた瞳でトウジを睨んでいる。
その時、トウジに最強の味方が現れた。
「ちょっと待って下さい、綾波さん」
「！？・・・ゆ、ユウキちゃん！？」
振り返って声の主を確かめ、驚きの声をあげるレイ。
「・・・トウジ君、どういう訳なんですか・・・？」
「い、碇さん！良いんでっか！？」
顔を明るくして大声で言うトウジに、ユウキは少しだけ困ったような顔を見せた。
「・・・とにかく、訳を聞かせて下さいませんか？」
「は、はい！・・・そ、その・・・こないだの繁華街の事・・・覚えてまっか？」
頷いたトウジは、顔を赤くしてそう言い、ユウキの顔を見た。
『繁華街の事』とは、ユウキが赤木ナオコにホテルに呼び出された際、電話でトウジを
呼び出してナンパ男達からガードして貰った件のことだ。
「あ・・・はい。あの時は、ありがとうございました」
すぐにその事に思い至ったユウキは、少し申し訳なさそうな顔をして言い、
丁寧にお辞儀した。
「い、いや、あれくらい、かまへんですわ！」
慌てて言うトウジ。
他の者達は何の事なのかさっぱりわからず、首を傾げている。
「・・・でも、お待たせしてしておいて、結局・・・」
「い、碇さん！そないなこと、気にせんで下さい！」
「・・・でも・・・」
「・・・そないに気になるんでしたら、わいの頼み、聞いて下さい！」
「あ・・・は」
思わず頷きそうになったユウキの声を、レイの大声が遮った。
「ちょっと待ったぁ！『この間の繁華街の件』って何よ？」
「・・・」
あの時の事を思い出して黙り込んでしまったユウキに代わって、トウジが事情を
説明した。
「・・・ってなわけや」
「それじゃ、鈴原君がユウキちゃんをガードしてホテルまで送っていったのね？」
「おう！」
レイの問いにトウジは自信満々で頷いた。
どうやら、ユウキに頼りにされたという事実がかなり誇らしいようだ。
「ユウキちゃん、それって、もしかして・・・ばーさんに呼び出された時の事？」
レイがふと思い当たって尋ねると、ユウキは少し怒った様子で応えた。
「・・・ばーさんじゃなくて、ナオコさんです！」
「あ、ご、ごめんね。ナオコばー・・・博士の時ね？」
急にユウキが怒った事に少し驚きながらレイが聞き直した。
（・・・そう言えば、シンちゃんってば、あのばーさんを信用してるみたいね・・・
大丈夫かしら・・・？）
「・・・はい」
レイの考えている事になど気づきもせずに、ユウキが頷いた。
教室内は、初めて怒ったユウキの姿に、静まり返っている。
いや・・・あちこちで、ぼそぼそと話し声が微かに聞こえる。
「・・・おい、碇さんの怒った顔も可愛いな・・・」
「あぁ・・・碇さん・・・俺も怒って・・・」
「・・・危ない奴だな、お前・・・」
そんな声など聞こえていないヒカリが口を挟んだ。
「それで、なんでユウキさんが鈴原の家にご飯を作りに行かなきゃならないの！？」
「おう、そうや！その時に、妹が碇さんに会いたい言うてついてきよったんや！」
ヒカリの強めの言葉も気にせず、トウジが言った。
「・・・そう言えば、ミユキちゃん、お元気ですか？」
突然ユウキが尋ねた。
「あ、はい！メチャメチャ元気ですわ！・・・そのミユキの奴が事もあろうに
『あたし、あのお姉ちゃんのご飯が食べてみたいな〜』なんてぬかしよって・・・」
そう言って、ユウキにもう一度頭を下げるトウジ。
「そんな訳ですわ。碇さん、たのんます！このとおりや！」
「・・・わかりました」
ユウキが頷いたとたんに、教室中の人間が勢い良く立ち上がった。
「ダメよっ！絶対だめっ！」
その中の一人、洞木ヒカリが大声で叫んだ。
「な、なんで・・・？」
「男の家になんて行ったら、ちょっとした隙に（ピ〜ッ！）なことをされたり
（がお〜！）な格好させられたり、（ごごご〜！）な写真を撮られて脅されたり
しちゃうわっ！ダメよダメダメ、絶対にダメッ！」
かなりヤバい単語を連発しながら真っ赤になって首をぶんぶん振っているヒカリ。
「・・・・・・・・・」
その姿と言葉に、ユウキを初めとしたクラスメート達は完全に固まっていた。
完全に暴走したイインチョが活動停止したのは、昼休み終了を知らせるチャイムが
鳴った時だった。
結局、ユウキは、守ってくれたトウジへのお礼、という事でレイを筆頭とする
『委員会』の者達を納得させる事が出来た。
ユウキ−シンジとしても、第三使徒戦でミユキに怪我をさせた事への罪悪感があり、
その償いもしたいと思っていた矢先の事だったので、これは良い機会だと思ったのだ。
ユウキに説得されたレイは放課後になると、学内ネットワークを使って『委員会』の
『第一中委員上層部』に非常召集をかけ、さっさとどこかへ行ってしまった。
『ユウキちゃんに何かあったら、殺すからね！』とトウジを脅しながら。
もちろん、『副委員長』であるヒカリもレイについて行ったため、今日は珍しく
トウジとケンスケがユウキの『お供』をして一緒に帰っていた。
「・・・ホンマにええんでっか？」
トウジがおずおずと尋ねた。
「はい。こんな事でよろしければ・・・」
そう応えて微笑むユウキ。
その姿をビデオカメラで捉えながらにやけているケンスケ。
もっとも、ケンスケがにやけているのは、この映像の売り上げの事なのだが。
「・・・まるで夢みたいや・・・碇さんの手料理が食えるなんて・・・」
浮かれきった様子で呟くトウジの姿に、ユウキはもう一度笑った。
「ふふっ・・・」
微笑むユウキを憧れの眼差しで、その微笑みを向けられるトウジを殺意の籠もった
眼差しでそれぞれ見ている周囲の視線に、こういう事には聡いケンスケだけが気付いて
背筋を震わせた。
「・・・あら？・・・ケンスケ君、どうかしたんですか？」
ケンスケが身体を震わせたことに気付いたのか、ユウキがケンスケを見て尋ねた。
「い、いや、何でもないよ。それより、今度の日曜、一緒に買い物に行くんだろ？」
（・・・出来るだけ碇の気をトウジの方に逸らさないと・・・俺はまだ、死にたくない
からな・・・）
そう考えながらのケンスケの問いに、ユウキが頷いた。
「はい」
「そうや！・・・またこないだみたいになるのは、碇さんもイヤやろ。せやから、
わいが迎えに行くことにしたんや！」
大声で自慢げに言うトウジ。
その言葉を受けて、周囲の視線がそれだけで着火しそうなほどアツくなってトウジに
突き刺さった。
「・・・そ、そうか。それじゃ、今度の日曜は碇とトウジの初デートか」
厳しくなった周囲の視線に気付いたケンスケがカメラを降ろして言うと、ユウキと
トウジは同時に真っ赤になった。
「そ、そんな・・・」
そう言いながらも、なぜか真っ赤になって俯くユウキ。
「な、なにを言うとるんや！デートやないわ、アホ！ただ、碇さんのかいもんにわいが
つきあう、言うとるだけやないか！」
さらに大声になったトウジ。
それを受けて、周囲の雰囲気は腐海と化した。
（・・・あ〜あ・・・トウジの奴、死ななきゃ良いけど・・・ま、自業自得か・・・）
ケンスケは簡単に友人を見捨てて、赤くなったユウキの撮影を再開した。
「・・・そ、それに、妹のミユキも一緒やし・・・」
言い訳っぽく小声で呟くトウジのセリフは、誰の耳にも届かなかった。
そして、運命の日曜日。
シンジは、やっと慣れてきた女物の服をミサトに着せて貰った。
「・・・シンジ君、いえ・・・ユウキちゃん。本当に良いの？」
ミサトが真剣な表情で尋ねた。
「はい。・・・それがトウジ君とミユキちゃんのお願いですから・・・」
頷いて言うユウキは、『委員会』が揃えて持ち込んできた沢山の服の中からミサトに
見繕って貰った薄いピンクのワンピースと同色の帽子を身につけ、それに可愛らしい
ポシェットを肩から下げて、なおかつピンク色のルージュまでしており、これから履く
靴は着ている服に合わせてピンクのローヒール、なおかつ足の露出しない白の
ハイソックスという『フル装備』である。
その姿は、どこから見ても『清楚なお嬢様』ルックである。
もちろん、ストレートロングのカツラも忘れてはいない。
このカツラはネルフの特注品で、『本人が外そうと思わない限り、絶対に外れないわ！
カツラとしての品質は最上級・・・髪の質も、頭部へのマッチングもね』と、リツコが
胸を張って断言するほどのモノだった。
ちなみに下着も女物で、胸にはパットが入って『女らしさ』をかもしだしている。
「・・・あなたがそう言うなら、私はもう何も言わないわ。楽しんでいらっしゃい」
そう言ってニッコリ笑うミサト。
あらかじめ、シンジから事情を聞いていたのだ。
初めは、『シンジが女装して男の家に料理しに行く事』に反対していたミサトだが、
シンジが『トウジ達に償いたい』と自分の気持ちを話すと、ため息をついて頷いた。
（・・・ここでシンジ君の不興を買っても良いことは何も無いわね・・・それなら、
こっそりと見守るのが上策か・・・）
腐ってもネルフの作戦部長であるミサトは、そう考えたのだ。
そして、劇は開幕した。
葛城家のチャイムが、来客を告げたのだ。
「は〜い！・・・行ってきます、ミサトさん」
「行ってらっしゃい・・・」
ミサトはリビングを出て行くユウキを見送った後、携帯電話を掴んで短縮ボタンを
押した。
「・・・今、ウチを出たわ。後はよろしく」
シンジが玄関のドアを開けると、そこには馴染みの少年が立っていた。
「おはようございます、トウジ君」
微笑んで挨拶をするユウキ。
だが、トウジから返事は返ってこなかった。
トウジは、ユウキのあまりの可憐さに、言葉が出てこなかったのだ。
ユウキがそんなトウジを不思議に思う前に、トウジの後ろから聞いたことのある声が
聞こえた。
「おはようございます。ユウキさん♪」
「・・・あ、ミユキちゃん。おはようございます」
トウジの背後に、トウジの妹の鈴原ミユキが立っているのに気付いたユウキは、
ミユキにも微笑んで挨拶した。
「はい！・・・兄ちゃん、何ぼけっとしてるの？」
嬉しそうに頷いたミユキは、何も言わずにユウキを見つめている兄に声をかけた。
「・・・お、おう！い、碇さん！おはようございます！」
ユウキの『極上』の姿に見とれていたトウジはミユキの声で我に返り、全身真っ赤に
なりながら慌てて挨拶した。
「ふふっ。おはようございます、トウジ君」
「全くもう・・・兄ちゃん。いくらユウキさんが綺麗だからって、じっと見てたら
失礼でしょ！」
ミユキが諫めるように言うと、トウジは慌ててミユキの口を塞ごうとしたが、
その前にミユキは最後まで言い切った。
「それとも、ユウキさんにみとれててぼ〜っとしちゃったのぉ？」
そのミユキの言葉に、トウジだけでなくユウキも真っ赤になって俯いてしまった。
「・・・」
「あ、あの、い、碇さん！そ、それは・・・」
すでに真っ赤の領域を通り越しているトウジが慌てて否定しようとしたが、
ユウキは耳まで赤くなりながら上目遣いにトウジをちらりと見て、また俯いた。
そのユウキの初々しい姿に、トウジは完全にノックアウトされてしまった。
（うっ！？・・・い、碇さん・・・わいは、碇さんを・・・護るんや・・・そうや！
わいは絶対にユウキさんを護るでぇっ！）
俯くユウキの仕草に胸を高鳴らせながら、トウジはそう考えて拳を握り締めた。
「うふふっ♪・・・ほら、そろそろ行きましょ♪ユウキさん、兄ちゃん♪」
にこにこ微笑みながらミユキがそう言った。
三人は、繁華街にある第三新東京市で一番大きいと言われている『白鳳デパート』に
到着した。
もちろん、ユウキは周囲の男達の注目を集めまくっているが、トウジが側にいて、
なおかつ楽しげに会話を交わしている事から、ユウキに近づこうとはしない。
トウジがユウキから離れた瞬間にユウキをナンパしようとして、飢えた狼達が隙を
うかがっているのは言うまでもない。
「・・・で、今日は何を買うんですか？」
「う〜ん・・・取りあえずは、晩ご飯のおかずを買おうかと思いますけれど・・・」
ミユキの問いに、昨日のうちに決めてあったメニューを頭の中に思い浮かべながら
そう答えるユウキ。
「おかず、ですか・・・それって、ナマモノですか？」
少し考えてから、再び尋ねるミユキ。
「・・・ええ、それも買う予定ですけれど・・・」
少し首を傾げて答えるユウキ。
その姿に、ユウキを見ていた男達は一撃で撃墜された。
「それじゃ、後にしません？どうせですから、他の買い物を先にしちゃいましょう♪」
にこっと笑って言うミユキに、ユウキも少し考えてから頷いた。
「そうですね」
「・・・『至宝』は現在『白鳳デパート』入り口にて談笑中。どうぞ」
ユウキ達の姿を人混みに紛れて見ていた者が、その手に持っていたトランシーバーに
語りかけた。
その姿は、コート＆サングラス、それにコートと同色の帽子というものだ。
どう見ても尋常ではないその格好に、周囲の者達は好奇の視線を向けていた。
『了解。以後も監視を続行せよ』
「了解。以上」
トランシーバーから返ってきた声に短く応えて、そいつはユウキに視線を戻した。
「まず最初に服を見に行きましょ！」
「そうですね」
ミユキに引きずられるように歩き出したユウキ。
その横には、顔を赤くしたトウジが並んで歩いている。
（・・・碇さん・・・こうして碇さんと並んで歩けるなんて・・・夢みたいや・・・
そうや！服の一着もユウキさんにプレゼントすれば・・・もしかしたら・・・
『ありがとう、トウジ君♪』
『碇さんのためなら、わいは何でもします！』
『・・・』
『い、碇さん！？な、なんで泣いとるんですか！？』
『・・・うれしいんです・・・トウジ君が私なんかの事を、こんなに想って下さってる
なんて・・・』
『・・・碇さんっ！』
『トウジ君っ！』
そしてわいらはしっかり抱き合いながら熱いちゅ〜を交わすんや・・・
『・・・碇さん・・・』
『・・・トウジ君・・・』
『・・・わいなんかで・・・ええんですか・・・？』
『・・・（こくり）』
そして、二人は夜の街へ消えて行くんや・・・）
ご都合主義丸出しの妄想に駆られながら、トウジはユウキの横顔を見つめた。
もちろん、ユウキが実はシンジである事など、全く覚えていない。
「・・・？・・・どうかしましたか？」
その視線に気付いたユウキが、トウジの方を見て尋ねた。
「い、いえっ！なんでもありまへん！」
慌てて正面を向きながら応えるトウジの姿に、ユウキはまたもや首を傾げた。
「・・・ここですね♪ほら、ユウキさん。行きましょう♪」
「あ、はい」
ミユキがユウキの手をとってブティックの方へ引っ張って行くと、トウジが
慌てて声をかけた。
「お、おい、ミユキ！わいはどないするんや！？」
「兄ちゃんはその辺で待ってて！・・・それとも、女の園へついてくる？」
悪戯っぽい表情を浮かべて応えるミユキに、トウジは少しだけ頬を赤くして
応えた。
「な、なんでわいがそんなとこへ行かなアカンのや！わいはここにおるで！」
トウジは先ほどの妄想を実行しようと考えていたのだが、ミユキの『女の園』という
言い方に、思わず男のプライドが引っかかってしまったのだ。
（・・・あちゃ〜・・・わいのアホっ！なんで素直に『碇さんにプレゼントします！』
って言えんのかいな・・・）
マリアナ海溝よりも深く後悔しながら、トウジは唇を噛み締めていた。
「最初からそう言えば良いのに・・・それじゃ、ユウキさん、行きましょ」
「そうですね。それじゃ、トウジ君。少しの間だけ、待っていて下さいね」
ミユキに急かされたユウキは、済まなそうな顔をしながら言った。
「はいっ！必ずここで待ってます！一歩も動きまへん！安心して行って下さい！」
トウジは、ユウキのセリフに、直立不動の体勢をとって応えた。
「・・・わぁ・・・色んな服がありますねぇ・・・」
「そうですね・・・」
ミユキとユウキはブティックの中に入って辺りを見回した。
「・・・いらっしゃいませ。何かお探しでしょうか？」
二人を見て、店員の女性が近づいて声を掛けてきた。
「あ、い、いえ・・・」
少し退き気味のユウキ。
ユウキにしてみれば、自分が本当は男である事がばれては困るので、必要以上に
他人と接触したくないのだ。
「・・・ちょっと、自由に見て回りたいんです。ごめんなさい」
ユウキの様子を見たミユキがフォローして、ユウキの手を取って手近なところに
飾ってあったベージュのスーツの方に連れて行った。
「・・・ありがとうございます、ミユキちゃん」
「良いんです。もしかしたら、将来のお姉ちゃんになるかも知れませんし・・・ね？」
そう言ってにこっと笑うミユキに、訳が分からないユウキは目を瞬かせた。
「え？お姉ちゃん・・・ですか？」
「はい！兄ちゃんとユウキさんが結婚したら、私のお姉ちゃんでしょ？だから・・・」
「け、結婚なんて・・・」
瞬時に真っ赤になるユウキ。
「まだ先の話ですけどね♪」
楽しそうに微笑むミユキ。
「・・・そ、そんな事・・・」
「うふふ・・・あ、この服なんか、ユウキさんに似合いそうですよ？」
そう言ってウインドウに飾ってある服を指さすミユキに、ユウキは苦笑した。
「・・・『至宝』はブティックに入った。『ブラックジャージ』は店の外にて待機中。
指示を」
『了解。ただちに作戦αにかかれ』
「了解」
そんな会話が交わされている事も知らずに、トウジは直立不動のまま、立っていた。
（・・・しもた〜！これじゃ、便所にも行けへんやないか〜！だが、わいは負けへん！
碇さんに誓ったんや！一歩もここを動かんと！わいは碇さんに操を立てるんや〜っ！）
必死に何かを耐えているトウジに、背後から声が掛けられた。
「・・・あの〜・・・鈴原トウジさん・・・ですよね？」
「・・・お、おう・・・」
その声に答えながらも、振り向きはしないトウジ。
（・・・この声は女やな！しかも、声はなかなか可愛い・・・っ！わ、わいは何を
考えとるんや！？わいは碇さんひとすじ、そう誓ったはずやないか！）
「・・・ちょっと、お話があるんですけど・・・」
「そんなら、前に回ってくれへんか？ちょっと訳ありでの・・・」
「・・・これで良いですか？」
そう言ってトウジの前に回り込んできたのは、第一中でも五本の指に入ると
言われている美少女だった。
もちろん、トウジも顔と名前くらいは知っている。
ケンスケの『商売』を手伝っているのだから。
「・・・あー、おまえ、確か一年の・・・」
「はい。篠山ナツキと申します」
そう名乗った美少女は、少し頬を染めて上目遣いにトウジを見た。
「その篠山ナツキが、わいに何のようなんや？」
並みの男ならその仕草に顔を赤らめるくらいの反応を見せるはずだが、
トウジはいたって普通の様子で尋ねた。
トウジの脳裏には、ケンスケから聞いた『篠山ナツキ』のデータが浮かんでいる。
（確か、ケンスケはウチのがっこで５本の指に入る売り上げだ、言うとったな・・・
ま、一番はやっぱ碇さんやけどな・・・あぁ、碇さん・・・今日も綺麗やで・・・）
「・・・ください！」
ユウキの事を考えていたトウジは、ナツキが言った言葉を聞いていなかった。
「な、なんやて？すまん、もう一度言ってくれんか？」
そう言うトウジに、ナツキは目を潤ませた。
「・・・な、なんや・・・？」
その時、実にタイミング良く、ユウキとミユキがブティックから出てきた。
「・・・あ、碇さん！」
目敏くユウキを見つけて大声で呼ぶトウジ。
ナツキも振り返ってユウキとミユキを見た。
「お待たせしました、トウジ君・・・あら？そちらの方は・・・？」
ユウキが、トウジの前に立っているナツキに気付いて尋ねた。
「・・・あの・・・碇ユウキさん、ですよね？」
ナツキはユウキを見て、確認するように尋ねてきた。
「え・・・は、はい・・・」
「・・・私、第一中１−Ａ、篠山ナツキっていいます。よろしくお願いします・・・」
「え、ええ・・・」
いきなり自己紹介されて、戸惑ったようにトウジを見るユウキ。
「で、その篠山が、わいに何の用や？」
ユウキの視線を受けて張り切り気味のトウジが尋ねると、ナツキは頬を染め、
トウジを見つめて言った。
「は、はい！・・・その・・・わ、私・・・鈴原さんの事が・・・好きです！」
その言葉に、すぐに反応できた者は居なかった。
「「「・・・・・・」」」
トウジもユウキも、ミユキさえも、目を丸くしてナツキを見ている。
「・・・あ、あの・・・もしよろしければ・・・私とお付き合いして下さい！」
顔を真っ赤にしてそう言ったナツキの姿に、トウジは思考停止していた。
（・・・な・・・なんや・・・？・・・わいが好きやて・・・？）
「・・・」
端から見ると、ナツキを見たまま黙り込んでしまっているトウジに、おずおずと
ユウキが声をかけた。
「・・・あ、あの・・・トウジ君？」
「はっ！・・・い、碇さん！？こ、これはちゃいますねん！わいは、こいつとは何でも
ありまへんで！今までも、それから、これからもずっと、何でもあらへんのや！」
ユウキの声で我に返ったトウジは慌てて言った。
「・・・そんな・・・」
トウジの言葉を聞いて、涙目になるナツキ。
「・・・あ・・・」
ユウキがナツキを見て小さく声をあげた。
「・・・ごめんなさい！」
ナツキはそう言って、足早に走り去ってしまった。
「・・・な、なんや、全く・・・い、碇さん、あんなん気にせんで下さい」
トウジは走り去るナツキの後ろ姿を見送ってから、ユウキを振り返ってそう言った。
（そうや！わいは碇さん一筋なんや！これで碇さんも、このわいの燃える気持ちを
わかってくれるやろ・・・）
そう考えて、妄想モードに入ろうとしたトウジだが、ユウキは少し怒ったような顔で
トウジを見ていた。
「・・・トウジ君・・・」
そう呼ぶ声にも、微かに怒りが混ざっている。
「な、なんですか・・・？」
予想外のユウキの反応に戸惑いながら聞き返すトウジ。
「・・・あれじゃ・・・いくらなんでも、あの娘が可哀想です！」
怒った顔でトウジを睨み、少し強い口調で言うユウキ。
「・・・せ、せやかて・・・」
「・・・トウジ君が、そんなに人の気持ちの分からない人だとは思いませんでした」
ユウキはそう言って、冷たい眼差しでトウジを見た。
「い、碇さん・・・」
呆然とユウキを見て呟くトウジ。
「・・・兄ちゃん、いくら何でもあれは酷いんじゃないの？」
ミユキが小さくため息をついて言った。
「な、なんでや！？わいは・・・」
「・・・鈍感バカ兄貴・・・」
そう言って、もう一度ミユキがため息をついた。
それからしばらくの間、トウジはユウキに口をきこうとはしなかった。
「・・・ねぇ、ユウキさん。そろそろ、兄ちゃんを許してあげて下さいよ」
ミユキが、自分達の後をとぼとぼとついてくるトウジをチラッと横目で見て、
ユウキに小声で言った。
「・・・」
「・・・それだけ、ユウキさんの事を想ってるって事なんですから・・・ね？」
ミユキがそう言うと、ユウキは頬をピンクに染めた。
「・・・み、ミユキちゃんがそう言うなら・・・」
「よかった・・・。兄ちゃん、ユウキさんが許してくれるって！」
振り返ってトウジに言うミユキ。
「ほ、ホンマでっか！？」
思いっきり叫びながらユウキの側に駆け寄るトウジ。
「・・・トウジ君も悪気があった訳じゃなさそうですから・・・」
「え、ええ！そうなんですわ！決して悪気があった訳やないんでっせ！」
必死に頷きながらトウジはそう言った。
「・・・それじゃ、良いです」
ユウキがそう言ってにこっと微笑んだ。
その顔を見て、トウジはもとより、ミユキさえも頬を赤くして立ちすくんでしまった。
（・・・ほ、ホントに綺麗な笑顔するんだ・・・）
「・・・作戦αは一時的に成功するも、現時点では失敗と思われる。次の指示を」
『了解。機を見て作戦βを実行せよ』
「了解。以上」
三人の姿を見ていた怪しい人影は、トランシーバーから聞こえてきた言葉に、
ニヤリと笑みを浮かべて応えた。
「・・・でも、トウジ君って結構モテるんですね」
「と、とんでもあらへん！そんなこと・・・」
「あら、でもさっきの女の子は・・・」
「あ、あれは・・・」
「・・・うふっ。冗談です」
「い、碇さん・・・」
「あははっ♪兄ちゃんの負け〜♪」
楽しげな会話を交わす三人。
だがその三人に、アロハシャツを着た「いかにも」といった感じの若者が絡んできた。
「・・・おうおう、兄ちゃんよぉ・・・えらく可愛い娘ぉ連れてんじゃねぇか？」
「ああ？なんや、われぇ」
トウジがその若者−チンピラを睨みつける。
さりげなくユウキとミユキを庇う様にチンピラとの間に入っているのは、さすがと
言えるかも知れない。
「・・・お前だけじゃなくて、俺にも良い思いをさせろって〜んだよ」
「けっ！ふざけんやないでぇ！」
「・・・姉ちゃんよぉ、俺とちぃっと付き合ってくれよぉ」
チンピラに声をかけられたユウキは、ミユキを自分の後ろに庇うようにしながら、
トウジの後ろで怯えた顔をしている。
「・・・」
「碇さんには指一本触れさせへんでぇ！」
トウジが視界の片隅にユウキの怯えた顔を捉え、キレた。
いきなりチンピラに殴りかかるトウジだが、チンピラはあっさりとその攻撃を避けた。
「・・・おっと！・・・それじゃ、お前を先に沈めてやらぁ！」
そう言ってチンピラも構えた。
「碇さん！ミユキを連れて逃げぇ！」
トウジは油断無くチンピラを見ながら、背後のユウキに声をかけた。
「・・・で、でも・・・」
戸惑うユウキ。
「はよせんかい！」
「・・・行きましょう！」
トウジの怒鳴り声に、ミユキがユウキの手を取って叫んだ。
「え、ええ・・・気をつけて！」
「わかっとりますがな！碇さんの手料理を食うまでは死ねまへん！」
トウジがそう応えると、ユウキはミユキの手を取って一目散に走り出した。
ユウキとミユキが走り去ったのを知って、トウジはチンピラに精神を集中した。
「・・・さぁて、行くでぇ・・・」
「・・・はぁ、はぁ・・・み、ミユキちゃん・・・だ、大丈夫・・・です・・・か？」
「はぁはぁはぁ・・・は、はい・・・」
ユウキとミユキは、いつの間にか、ユウキ邸・・・つまりコンフォート１７近くの
マンションに駆け込んできていた。
繁華街から全力で駆けてきたので、二人ともかなり息が上がっている。
しばらく呼吸を整えてから、ユウキが呟いた。
「・・・トウジ君・・・大丈夫かな・・・」
そう言いながらも、これまでに買った荷物−今晩のおかず−はしっかりとその手に
持っている。
「・・・兄ちゃんなら、大丈夫だと思いますよ。あれで結構、打たれ強いんです」
同じように呼吸を整えて応えるミユキ。
その戯けた言い方に、ユウキは思わずくすっと笑った。
「・・・そうですね」
いつも余計な事を言っては、洞木ヒカリによって攻撃されている姿を思い浮かべて
ユウキはそう言った。
「それじゃ、そろそろウチに行きましょう。きっと、兄ちゃんもすぐに帰ってくると
思いますから・・・」
出来るだけユウキに心配させまいとしているミユキの気持ちがわかり、ユウキは
微笑んで頷いた。
そして、辺りが薄暗くなってきた頃。
「・・・お帰り、兄ちゃん。遅かったんだね。もう六時だよ？」
「お、おう・・・」
出迎えたミユキに、トウジは疲れ切った声で応えた。
第一中でも有数の『強者』として有名なトウジは、体格差があったチンピラを何とか
叩きのめしたものの、周囲にいた男達がなぜかトウジに攻撃してきたのだ。
それは、ユウキと一緒にいたトウジへの嫉妬によるものだったのだが、そんな事は
わからないトウジは、必死になってその場から逃げ出して来たのだ。
もちろん嫉妬に狂った男達がトウジを追いかけ回し、結局、振り切るのにこの時間まで
かかってしまったのだ。
「・・・どうしたの？疲れ切ってるけど・・・大丈夫？」
そんな事情など知らないミユキは、不思議そうに尋ねる。
「お、おう・・・そ、そうや！ユウキさんは！？」
「・・・料理中。ねぇ、兄ちゃん。ユウキさんって本当に家事が似合うよね♪」
ミユキがニヤッと笑いながらそう応えると、トウジは自慢げに頷いた。
「おうっ！世の中に碇さんほど家事の似合う人はおらへんでっ！」
「あれだけ家事全般が上手なら、硬派の兄ちゃんでもお嫁さんに欲しいでしょ？」
さらにニヤケながらミユキが言うと、トウジは鼻息も荒く応えた。
「なに言うとんのや！碇さんなら家事なんて関係あらへん！今すぐにでもわいの嫁に
欲しいわい！」
「・・・ですって、ユウキさん♪」
「・・・へっ！？」
「・・・あ、あの・・・」
ミユキの言葉に驚いてその背後を見たトウジの視界に、顔どころか全身を真っ赤に
したユウキの姿が映った。
「・・・」
赤くなって俯いてしまったユウキに、ミユキがクスクス笑いながら言った。
「ね？言ったとおりでしょ？」
「・・・」
それには応えずに真っ赤になっているユウキに、トウジがミユキを見て言った。
「み、ミユキ！お前、碇さんに何を・・・」
「え？私はただ『兄ちゃんがユウキさんをお嫁さんに欲しいって言ってましたよ』って
言っただけだけど？」
悪戯っぽい笑みを浮かべて応えるミユキ。
「なっ・・・」
絶句するトウジ。
「・・・あ、あの・・・そ、そろそろ夕食の支度が出来ますから・・・」
ユウキはそう言って、さっさと奥へ行ってしまった。
「・・・『ブラックジャージ』は帰宅した。『至宝』はすでに目的の行動に入っている
模様・・・指示を」
トウジの家の真ん前の電柱に隠れながら、怪しげな人影がトランシーバーに向かって
言った。
『了解・・・最終作戦を実行する。現時点より五分後、作戦行動に入る』
「了解。作戦の速やかなる成功を祈る。以上」
そう応えてニヤリと笑う怪しい人影だった。
鈴原家では食事は居間でとるらしく、今時珍しい丸テーブルが綺麗な畳の上に
置かれていた。
着替えてきた（といってもやはり黒ジャージ姿）トウジが席につくと、ユウキが
お皿を持ってきた。
「はい、お待たせしました」
「おおっ！これが碇さんの手料理・・・」
感動のあまり目に涙さえ浮かべているトウジ。
「クリームシチューとスペアリブ、それにサラダです。沢山召し上がって下さいね」
そう言いながら手際よく皿を食卓に並べていくユウキ。
さすがにミサトの世話を一手に引き受けているだけの事はある。
その後ろにはミユキが別の皿を持って立っている。
どうやらユウキを手伝っているようだ。
すでにトウジの目は目の前の料理に釘付けで、今にも直接かぶりつきそうな雰囲気で
ある。
三人分の食器が食卓に揃い、ユウキとミユキが席に着こうとした時、鈴原家の電話が
鳴った。
「・・・」
当然のように無視を決め込むトウジは料理の事しか考えていない。
「・・・全くもう・・・。ユウキさん、先に食べていて下さい」
ミユキがため息をついて席を立ち、電話を取った。
ユウキは、すぐに戻ってくるであろうミユキの後ろ姿を見ている。
「もしもし？・・・ああ、お父さん？どうしたの？・・・え？・・・ええっ！？」
ミユキの驚愕の声に、さすがのトウジも心配そうにそちらを見た。
「・・・う、うん・・・で、でも、今朝言ったでしょ？兄ちゃんの学校のお姉さんに
料理を作ってもらうんだって・・・うん・・・えっ！？・・・う、うん・・・一応、
言ってみるね・・・それじゃ・・・」
難しい顔で電話を切ったミユキにトウジが言った。
「なんや？おとん、なんて言うとったんや？」
「あのね・・・ねぇ、ユウキさん。これって、三人前しか無いんですよね？」
いきなりユウキの方を見て尋ねるミユキ。
「・・・え？あ、シチューの方はおかわりできるように、余分に作ったけど・・・」
突然の質問に少しだけ戸惑いながらそう応えるユウキ。
「それじゃ、良いのかな・・・」
「おい、ミユキ。なんなんや？」
「・・・うん。あのね、父さんが職場の上司を連れて来るんだって。で、その人達に
夕食を御馳走したいから、余分に作っておいてくれって・・・」
「なんや、珍しいのう・・・おとんが仕事の人をウチに連れてくるなんて・・・」
「うん。それも、一人じゃなくて、最低でも三人なんだって。だから・・・」
そう言ってちらりとユウキを見るミユキ。
「・・・そ、それじゃ、私はこれで・・・」
そう言ってユウキは席を立った。
「ゆ、ユウキさん！？どこへ行くんでっか！？」
慌ててトウジが引き留める。
「お父さんの会社の方がいらっしゃるなら、私は失礼した方が・・・」
残念そうに言うユウキ。
トウジの家で夕食を取ってくる事はミサトに伝えてあるため、帰ってもペンペン以外
誰もいないのだ。
おまけに自宅の冷蔵庫の中身は今朝の朝食でほぼ使い切ってしまったため、帰っても
食べる物が無い。
それだけに、この夕食はユウキが精魂込めて作り上げた自慢の逸品だった。
いつもとは違う顔ぶれで食べる食事に、ユウキは少しだけ期待していたのだ。
「かまいまへん！全くかまいまへん！そやろ？ミユキ！」
今までに見たことが無かったほど必死なトウジの様子に、ミユキも思わず頷いた。
「う、うん。・・・ユウキさん。お父さんも、ユウキさんにも同席して貰おう、って
言ってましたし・・・」
「・・・でも・・・」
ミユキの言葉に少しだけ心が動かされたのか、ユウキはトウジをちらりと見た。
もちろん、そんなユウキの様子にトウジが反応しないはずがない。
「わいも碇さんと一緒に食べたかったんですわ！」
「・・・」
その言葉に赤くなるユウキ。
本当に、自分が男であることを忘れているかのようだ。
「・・・あ〜あ〜・・・お熱い事で・・・」
ミユキがからかう様にボソッと呟くと、トウジも自分が何を言ったのか理解して、
真っ赤になった。
「・・・うふふっ♪ほら、それじゃ、いただきましょ♪」
「お、おうっ！いただきまっせ〜！」
「はい、どうぞ」
ユウキが言い終わる前に、トウジは早くも食べ始めていた。
その食べっぷりを見て、ミユキが呆れた声を出す。
「・・・兄ちゃん、少しは味わって食べたら・・・？」
「なに言うとんのや！しっかり味わっとるで！・・・碇さん、うまいでっせ！」
「・・・良かった・・・」
ホッとした様子でニッコリ笑うユウキ。
その笑顔を思いっきり直視してしまったミユキはなぜか胸が高鳴るのを感じ、それを
誤魔化すために、慌てて食事を開始した。
（・・・な、なんであたし、ユウキさんの笑顔を見てドキドキしてるの・・・？）
戸惑いを隠してユウキに微笑みかけるミユキ。
「・・・ホントだ！すごく美味しいです♪」
「ふふっ・・・おかわりもあるから、沢山食べて下さいね」
そう言って微笑むユウキに、ミユキはもう一度胸を高鳴らせた。
三人の食事が終わった頃、玄関が開く音がした。
「・・・帰ったぞぉ」
「あ、お父さんだ。・・・お帰りなさ〜い！」
玄関から聞こえた声にそう返して、ミユキが席を立った。
「・・・トウジ君、お茶です」
「あ、すまんです」
ユウキが差し出した湯飲みを受け取りながらぼんやりと考える。
（・・・あぁ〜・・・こうしてると、まるでホンマもんの夫婦みたいや・・・）
「それじゃ、先に片付けちゃいますね」
ユウキはそう言って、上に何も残っていないお皿を持って台所に行った。
両手を後ろについて上体を支えながら、その手際の良さに見とれるトウジ。
そこへ、体格の良い中年の男が入ってきた。
「・・・お、飯は終わったのか？」
「おぉ・・・おとんか・・・」
食後のけだるさに包まれながら父親を見上げるトウジ。
「なんや、トウジ。しゃきっとせんかい！お客様の前やぞ！」
そう言いながらニヤリと笑うトウジの父親、鈴原アキオ。
「・・・お客様やて？」
「おう。こちらがわいの職場の同僚、伊吹マヤさんや。・・・それに、お前と同じ
学年の女の子が二人や！」
自慢げに言うアキオに、トウジは姿勢を改めて廊下の方を見た。
「初めまして、鈴原トウジ君♪伊吹マヤです。よろしくね？」
そこにいたのは童顔のショタコンこと、伊吹マヤだった。
「・・・は、初めまして・・・鈴原トウジです・・・」
むろん、マヤと会うのは初めてのトウジはその本性も知らずに、思わず頬を赤く
染めてしまった。
一般世間的に言って標準的に『可愛い』と評価されるであろう容姿を持つマヤから
微笑みかけられては、中学二年という微妙な年頃の少年としては無理もない反応だ。
「・・・ど〜も〜、鈴原君♪」
そう言いながらマヤの横から顔を出したのは・・・
「っ！？あ、綾波！？・・・なんでワレが・・・」
蒼銀の髪と紅の瞳を持つ少女、綾波レイだった。
「・・・わ、私もいるわよ、鈴原・・・」
さらに、お下げとそばかすがチャームポイントの少女、洞木ヒカリもいた。
「なっ・・・い、イインチョまで・・・」
すでに茫然自失状態のトウジ。
「・・・兄ちゃん、なにぼ〜っとしてるの？」
アキオの背後からミユキが顔を出して尋ねた。
「・・・お、おう・・・」
取りあえず返事はしたが、答えようが無いトウジ。
「・・・鈴原君、ユウキちゃんは？」
そんなトウジにレイが尋ねた。
「・・・い、碇さんなら、あっちにおるで・・・」
そう言いながら台所の方を指すトウジ。
「ほう・・・どれ・・・父親として、息子の大事な恋人に挨拶してくるか・・・」
ニヤッと笑って言うアキオ。
もちろん、アキオはネルフに所属しているだけあって、ユウキが実はサードチルドレン
碇シンジであることは承知している。
「お、おとん！？」
アキオの言葉に、顔を真っ赤にするトウジ。
「・・・ユウキさんのお手伝いしてこよ〜っと」
ミユキはそう呟いて台所に行った。
「・・・」
トウジの様子を見て、互いに顔を見合わせるレイ、マヤ、ヒカリの三人。
「・・・ほれ、トウジ。そんなとこにおらんと、どかんかい。・・・さあ、伊吹さん。
そちらの二人も、お座り下さい」
アキオが言って三人が座ると、台所からミユキが来た。
「お待たせしました〜・・・はい、ユウキさん特製シチューで〜す」
そう言いながら、食卓の上にシチューの入ったお皿を並べる。
「・・・おお、良い匂いだな。これは美味そうだ」
シチューを覗き込みながら言うアキオ。
「うん！ユウキさんって、とってもお料理が上手なの。すごく美味しいんだよ♪」
ミユキが自分の事を褒められたかの様に、嬉しそうに答える。
「ユウキちゃんはうちのクラスでも１，２位を争う位の料理上手だからね♪」
レイがにこにこしながら口を挟んだ。
「そうなんですか。ってことは、あなたがたも、兄ちゃんと？」
ミユキがレイとヒカリを等分に見て尋ねた。
「ええ、同じクラスよ。ね、綾波さん」
「うん。・・・あ、ユウキちゃん♪」
レイがヒカリの言葉に頷いて、台所から来たユウキに気付いて声をかけた。
「え？・・・あ、綾波・・・さん！？それに洞木さんと・・・マヤさんまで・・・」
驚きの声をあげて三人を見比べるユウキ。
それでも、持っているお盆は揺れもしないところが、いかにも主夫らしい。
「・・・貴女が、碇ユウキさんですね？」
ユウキを見たアキオが標準語で声をかけた。
アキオは、使おうと思えば標準語を使えるのだ。
というのは、元々アキオは関東の出身で、ネルフに入る前に関西に遊びに行ったことが
あり、その時に関西弁を身につけてきたのだ。
とはいえ、その覚え方が非常に半端かついいかげんだったので、怪しげな関西弁使いに
なってしまったのだ。
トウジはアキオの喋り方を聞いて育ったので、まともな関西弁を喋る事が出来ない。
そんなわけで、トウジの関西弁は本場の人が聞いたらかなり変に思うであろう言葉遣い
をするのだ。
「えっ？は、はい・・・」
いきなりアキオに声をかけられて、ビクッと肩を震わせるユウキ。
「ワシはトウジとミユキの父親で、鈴原アキオと申します」
「あ、ど、どうも・・・」
「・・・息子達がお世話になっている様で、申し訳ありません」
そう言って頭を下げるアキオ。
「い、いえ・・・こちらこそ、とう・・・す、鈴原君には、お世話になって・・・」
「ははっ。このバカ息子の事は、『トウジ』と呼んでやって下さい」
「あ、はい・・・」
「・・・それにしても、トウジ。お前にこんな可愛い娘を捕まえる甲斐性があったとは
全く思ってもみなかったぞ」
アキオがニヤリと笑いながらトウジに言った。
「な、なに言うとんねん！」
「・・・」
真っ赤になりながら怒鳴るトウジと、真っ赤になりながら沈黙してしまったユウキ。
対称的な二人を見て、アキオは再びニヤリと笑った。
そして、一部の者を除いて楽しい夕食の時間が過ぎ去った。
「・・・それじゃ、失礼しますね」
マヤがアキオを見て言った。
「ホンマに送らなくてもええんでっか？」
玄関まで見送りに出てきたアキオが尋ねた。
「はい。私が車で皆を送りますから」
マヤがそう言ってちらりとレイを見た。
「お邪魔しました〜♪」
「・・・お邪魔しました」
「・・・お、お邪魔しました」
上からレイ、ヒカリ、ユウキの順だ。
「い、碇さん！」
アキオの横に並んでいたトウジが声をあげた。
「・・・はい？」
「晩飯、ごっつ美味かったでっせ！」
「そうです。ユウキさん、ごちそうさまでした」
トウジの横に居るミユキもそう言って頭を下げた。
「あ、いえ・・・お粗末様でした・・・」
頬をピンク色に染め、少し俯いて応えるユウキ。
「「「「「「・・・」」」」」」
あまりにも可憐なその姿に、思わず黙り込んでしまう皆。
（・・・い、碇さん・・・ステキや・・・ステキやでぇ！）
目がハート型になっているトウジ。
（・・・あぁ、天国のお母さん・・・イケない道にハマってしまいそうです・・・）
頬をピンク色に染めているミユキ。
（・・・こ、これが『碇ユウキ』の力なのか・・・思わずめまいがしたぞ・・・）
耳を微かに赤くしているアキオ。
（・・・きゃ〜っ！ユウキちゃん可愛いぃ〜っ！）
トウジと同じく目をハート型にしているマヤ。
（・・・ゆ、ユウキさん・・・可愛すぎるわ・・・）
なぜか動悸の激しいヒカリ。
（・・・し、シンちゃん・・・ホントに女装が似合ってるよね・・・ゲンちゃんが
こだわるわけだわ・・・）
やや、顔を赤くしているレイ。
「・・・そ、それじゃ行きましょ」
「あ、そ、そうね」
六人の中で最初に気を取り戻したレイの言葉にマヤが頷いた。
こうして波乱の日曜日はその幕を閉じた。
後日、『委員会』が篠山ナツキに『ユウキちゃん生写真エプロンバージョン』を渡して
いるところが目撃された。
「・・・これが報酬よ」
「きゃ〜っ♪ありがとうございます♪」
にこにこ顔で受け取った写真をじっと見つめているナツキ。
その姿を見て、レイがニヤリと笑った。
日曜日にユウキ達の後をつけ回していた謎の人物は、某眼鏡のミリタリーオタクで、
ナツキは『委員会』の『命令』に従ってトウジに告白しただけだったのだ。
そして、ユウキ達に絡んできたあのチンピラも、『委員会』に名を連ねている非番の
諜報部員だったのだ。
ナツキの目的は『ユウキにトウジを嫌いと思わせる事』で、諜報部員の目的は
『トウジをユウキ達から一時的に引き離す事』だった。
これらの作戦を練ったのはレイ＆ヒカリ＆マヤの『委員会』上層部で、最終的な目的は
トウジとユウキのこれ以上の親密化を阻止することだった。
そのために『委員会』に名を連ねているナツキと諜報部員を使ったのだ。
もちろん義理堅いシンジの事だから、どうやっても最終的にはトウジの家に料理を
作りに行くだろう。
そこで、レイ達はトウジの父親がネルフ技術部に在籍している事を利用して、自分達も
ユウキの手料理を味わおうと言うことになったのだ。
当然、これはトウジに対する監視の意味も込められている。
そして、技術部内では唯一のリツコの直接の配下といえる立場のマヤと、
ファーストチルドレンとしてのレイに、単なる一技師の鈴原アキオは逆らえなかった。
アキオはネルフ内では珍しく『委員会』には所属していない者なのだが、権力には
勝てなかった。
この面子が揃えばヒカリもついてくるのは当然の結果だった。
こうして、トウジが夢見ていた『ユウキとの愛を深める一日』は、文字通り夢で
終わってしまったのだ。
ちなみに、トウジ本人はその事に気付いておらず、『わいはユウキさんを守ったで！
これでユウキさんもわいにメロメロや〜！』などと妄想していた。
この時、トウジの脳裏にはナツキの事など残ってはいない。
そして、謎の人物としてこき使われた眼鏡は・・・
「・・・くぅ〜っ！あの日に撮った写真は自由に売り放題！おまけに売り上げの上納は
普段の半分で良いときた！これは儲かるよっ！さて、今夜も徹夜だ！ありがとう！
シンジ、いや、ユウキちゃん！」
そう叫びながら、自宅のパソコンに向かっていたという。
次の日の昼過ぎ、眼鏡の自宅のパソコンがクラッキングを受け、保存されていた
映像データが全て抹消されていたが、彼がそれに気付くのは、その日の夕方だった。
「・・・うおおおおぉぉぉぉぉっ！！！お、俺の映像データがあああぁぁぁぁっ！！
元データはすでに綾波に渡した後だと言うのにっ！なぜだぁぁぁっ！」
彼が悲痛な叫びを上げている頃、某特務機関の司令執務室では怪しげなヒゲ眼鏡が
白髪の老紳士と白衣の美女と共に、可憐な美少女の映像を堪能して
ニヤリと笑みを浮かべていたのは、言うまでもない。
さらに別の場所では、長髪とダイナマイトボディの持ち主が、金髪の親友と共に
同じ映像に見入っていたのも、言うまでもない。
第七．七七話 完
後書き：
今回は特別編です。
ＹＯＫＯさんにリクエストをいただきましたので、書いてみました。
本編のシンジ君（ユウキちゃん）とは全然違う雰囲気になってしまいましたが・・・
こんな感じでどうでしょうか？ＹＯＫＯさん（＾＾）
さて、作者は皆様の感想を心待ちにしております。
誤字・脱字のお知らせ、矛盾な点の報告なども受け付けておりますので。
それでは、失礼します。
感謝の言葉：
うんうん、ユウキちゃん（シンジ君）、本編（エヴァＥＸ）よりも精神侵食能力が
飛躍的に増大しているようですね〜。
事情を知っているはずのアキオすらクラッときてしまうほどとは。
トウジ君の恋心も儚く散る運命にありますが、一時の夢を見るくらいは
許されるでしょう。（笑）
ケンスケの皮算用がご破算になったのは予想できたこととはいえ笑えました。
・・・それにしてもＮＥＲＶの面々、すっかり侵食されきってますね。
けいけい さん、素敵な作品、ありがとうございました。
本編である新世紀エヴァンゲリオンＥＸが連載されているのはGreen Gablesです。
気に入った人は今すぐＧＯ！です。
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作者のけいけい さんへの感想メールはこちら（VZU04622@nifty.ne.jp）まで。
読者からの反響は作者のやる気を湧き出させます。
続きが読みたい人は、感想メールを送りましょうね。