ふと……目が醒めた。

　　　知らない天井……何処だろ、ここ。

　　　……思い出すんだ……確か――そう、突然の手紙。

　　　それで、この第三新東京にやってきたんだ。化け物……使徒の襲来。

　　　それから……葛城さんが迎えにきて、ジオフロントを見たんだ。

　　　「そう、これが私たちの秘密基地ネルフ本部。世界再建の要、人類の砦となる所よ」

　　　施設では迷って大変だった……。そのせいであの白衣の人、赤木さんに怒られて。

　　　それから……そう、それから――。

　　　「久しぶりだな」

　　　１０年、ぶりの再会。

　　　捨てられてから、初めての。

　　　「あなたが乗るのよ」

　　　目の前のロボット……エヴァ……。

　　　乗れるわけ無い、乗れるわけが無い。

　　　「……出来ません」

　　　――母さんを、殺したキカイなんて――

　　　「でも、貴方にしか乗れないのよ？」

　　　「こんな……キカイになんて、乗れません」

　　　父さん、何を考えてるんだ……。

　　　見上げて映る父は、とても怖いものに感じた。

　　　「シンジ君時間が無いわ」

　　　「……母さんを」

　　　「え？」

　　　「母さんを殺したキカイになんか、乗れません」

　　　シン……と静まり返ったような、そんな気がした。

　　　「初号機のシステムをレイに書き直して。再起動！」

　　　「了解、全作業を中断。再起動にはいります。」

　　　でも、一瞬の事で気が付けば、知らない女の子が担架で運ばれてきた。

　　　痛々しい……体の至る所に包帯が巻かれている。

　　　「はぁっ……はぁっ……」

　　　起き上がるのも辛そうだ……僕の代わりに、この子が乗る……らしい。

　　　担架から降りようとして、その子は床に崩れ落ちた。

　　　「くうっ……」

　　　……！　酷い怪我だ。

　　　駆け寄って抱き上げると、僕の手は真っ赤に染まっている。

　　　――血、紅い血。

　　　「……この子の他に、出来る人は居ないんですか！？」

　　　「今はもうシンジ君しかいないの」

　　　「そんな……」

　　　この子、死ぬよ……。

　　　――また、目の前で誰かが死ぬのを見るだけなのか――

　　　「退いて」

　　　退いてって……立てもしないのに……。

　　　あんなキカイに、乗るなんて嫌だ。嫌だ……けど……。

　　　見殺しに、出来るわけがない、じゃ、ないか。

　　　「……やります、僕が乗ります」

　　　「双方向回線開きます。シンクロ率、２１．１％。ハーモニクス全て正常値。暴走ありません」

　　　「初めてのシンクロで起動させるなんて……」

　　　「パイロットが極度の緊張状態ですが、それでも良い数値です」

　　　「シンジ君、大丈夫。きちんと起動したからリラックスして」

　　　……言われなくても、わかってる。

　　　でも、怖いんだから、仕方ないじゃないか。

　　　それに……なんだか、誰かに見られているようで――落ち着かない。

　　　それで……、そう。あの使徒とかいう化け物と、戦ったんだ。

　　　「シンジ君、しっかりして！早く、早く起き上がるのよ！」

　　　「エヴァの防御システムは？」

　　　「シグナル作動しません」

　　　「フィールド無展開！」

　　　この時は、ただ痛かっただけだった気がする。

　　　エヴァも怖くて、使徒にはやられる……今思えば、情けない。

　　　「シンジ君よけてっ！」

　　　まぶしい光。

　　　その後、使徒が消えていた。少しの間だけ記憶が無い。

　　　……僕が、倒したんだろうか……。

　　　それで、気を失って、ここに運ばれたのか。

　　　本当に、とんでもない話だ。

　　　少し……寝よう……。

　　　「一人でですか？」

　　　「そうだ。彼の個室はこの先の第6ブロックになる。問題は無かろう」

　　　病院での検査みたいなのが終わって、僕が住む場所を決められている。

　　　「はい」

　　　「はいって……ちょっと、シンジ君！それでいいの？」

　　　「……ええ」

　　　一人の方が気楽でいい。それに……何処だって一緒だから。

　　　「むぅ……。ちょっと来て！」

　　　納得してないような顔で僕を連行する。

　　　なんだよ……。

　　　「だから〜シンジ君は私の所で引き取る事にしたから。上の許可も取ったし」

　　　それから、僕の意思は関係無くコロコロと話は進んでいく。

　　　一人ではなく、葛城さんが僕を引き取る……だそうだ。

　　　反対は、した……けど。

　　　「……いえ、別に大丈夫です」

　　　「却下。大体、中学生一人で置いておくなんて出来ないわ」

　　　……放って置いてくれればいいのに。

　　　そんな会話の後、今は赤木さんに電話しているようだ。

　　　少しもめているようだったけど、どうでもいいか……。

　　　「さーて、今夜はパーとやらなきゃね♪」

　　　葛城さんのルノーに乗せてもらって、僕の住むところに向かっている。

　　　……やるって、何を？

　　　「何をです？」

　　　「もちろん新たなる同居人の歓迎会よ♪」

　　　そんなの、してもらわなくてもいいのに。

　　　「シンジ君、言いたい事があるならはっきり言葉にしないとダメよ」

　　　「そうですか……」

　　　「むぅ……そこよ！そこ！今、絶対に言葉を端折ったでしょ！？」

　　　……五月蝿いな。

　　　なんでこの人、いちいち突っかかって来るんだろ。

　　　「いえ」

　　　「あ゛〜〜〜〜〜〜〜！嘘突いたあああああああああああああ」

　　　「くっ……！」

　　　鼓膜が破れるかと思った……。

　　　とても五月蝿い。それが彼女の第一印象。

　　　「……前見て運転してください」

　　　「話を反らしたでしょ？反らしたでしょ？」

　　　「いえ……」

　　　……ばれた。

　　　「と・も・か・く！これから一緒に住むんだから、もっとお互いの親睦を深めなきゃ」

　　　そんな話しだったっけ……？

　　　「歓迎会の前に、寄っていきたい場所があるの」

　　　好きにしてください……。

　　　彼女が連れてきたのは第三新東京が見渡せる所だった。

　　　「なんだか……」

　　　「ん？」

　　　寂しい……街だ……。

　　　「時間よ」

　　　サイレンが鳴り響いて、ビルが生えてくる。

　　　「これが使徒迎撃戦用要塞都市第3新東京市、私たちの町よ。そして……」

　　　「あなたが守った町よ」

　　　　実感は、無かった。

　　　「シンジ君の荷物はもう届いてると思うわ。実は私も先日この町に引っ越してきた ばっかりでね〜。さっ、入って」

　　　「……お邪魔します」

　　　「む……！シンジ君？」

　　　……なんだよ……また何か言ってくるのか？

　　　「ここは貴方の家でもあるのよ」

　　　知ってる……。

　　　「ここで使うべき言葉は何でしょう？」

　　　「いいでしょう……そんな事は」

　　　……彼女が何を言わせたいのか。

　　　もちろん分かってはいた。

　　　「むうううううううううううううう！ダメでーす。はい、きちんと言って」

　　　「……」

　　　言わないとずっとこのままの気がして、諦めた。

　　　「ただいま」

　　　「……」

　　　今度は彼女が沈黙した。

　　　……違う……のか？

　　　ぎゅううううううううううううううううううううううううううううううう

　　　……？？？？？？？

　　　何故、抱きしめられてるんだろうか。

　　　「あの……」

　　　「あはっ、ごめんごめん」

　　　 ……なんなんだよ……。

　　　少し顔が熱いような気がする。

　　　「おかえりなさい」

　　　……部屋の中は戦場だった。

　　　「ねえシンジ君」

　　　お風呂で疲れと汚れを落とした後、少し真剣な顔で葛城さんが話し掛けてきた。

　　　「はい？」

　　　「あの……エヴァを見た時、お母さんを殺したって、あれどういう意味？」

　　　……知らないのか。

　　　「そのままの意味です」

　　　「そんな事があったんだ……ごめん、私何も知らなくて」

　　　別に責めてる訳じゃないのに。

　　　「葛城さんが悪いわけじゃ、ないです」

　　　「……ありがと。だから、乗る時に嫌がってたんだ」

　　　「ええ……」

　　　今も、だけど。

　　　「じゃあどうして乗る気になったの？」

　　　………………。

　　　「……なんとなく」

　　　「嘘突いたあああああああああああああああああああああ！」

　　　「ぐうっ……！！」

　　　本日二度目の、音波攻撃。

　　　……そんな事までいわなきゃならないのか……。

　　　「見殺しに……したくなかったから、です」

　　　「……そっかあ、シンジ君って何時もぶすっとしてて、思ってる事言わないけど」

　　　悪かったですね……。

　　　「優しいんだ」

　　　To be continued……

　　　次回予告

　　　ミサト「えっと、今回は導入話みたいな感じなんで、結構省かれてます……だって」

　　　リツコ「確かにね……」

　　　ミサト「……登場人物がシンジ君を含めて4人……危険だわ」

　　　リツコ「どのあたりが危険なのかしら？」

　　　ミサト「次回予告のキャラコメントがし難いじゃない！！」

　　　リツコ「だから私が来たのではなくて？」

　　　ミサト「あたりまえでしょ！もし司令が来たら……」

　　　ミサト「さーて次回は！」

　　　ゲンドウ「……」

　　　ミサト「な、なんとシンジ君に魔の手がっ！」

　　　ゲンドウ「問題ない……」

　　　リツコ「…………全くもってダメね」

　　　ミサト「そーよ……」

　　　リツコ「で、次回は？」

　　　ミサト「くっくっく……良くぞ聞いてくれました」

　　　リツコ「……」

　　　ミサト「優しいんだ」

　　　シンジ「……違うと、思います」

　　　ミサト「ああ、照れちゃって……もう、お姉さんは……！」

　　　ミサト「次回、青い果実を……」

　　　すぺーーん！

　　　ミサト「ぐはっ」

　　　リツコ「お止めなさい！」

　　　ミサト「じょーたんよ、じょうだん」

　　　リツコ「当たり前でしょ！？全く何考えてるの！」

　　　ミサト「と、言うわけで次回もお楽しみに〜〜〜」

　　　リツコ「次回予告なの……？これ？」

感謝の言葉：

ユイ消失の記憶を持つ…意外にほぼ原作風な雰囲気ですね〜。
原作シンジよりは、少しだけ前向き…でしょうか（＾＾）
さてさて、どうなることか、今後の展開が楽しみです。

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