「番組をごらんの皆さん、お待たせしました。アリーナバトルの時間です。
　連勝記録も未だ土付かずの２６勝目♪　ただ、ブレード戦闘に
　大きな不安が残る…と多くの雑誌で指摘されたエルシィでーす」

　延々と見てるほうが呆れるほど、近距離でブレードを振り回し、
　立った２００ちょっぴりのＡＰを削るのに、２０００ものＡＰを
　代わりに失ったのでは批難されるのも仕方ない。

　まぁ、エルシィもそのあたりはわかっているようで、ちと、
　いつもよりトーンダウンしてたりする。

「まぁ、前回は、ライフル射撃、ブレード戦闘がメイン、更に
　回避が制限される地形だったからな。
　オープンフィールドで戦って、初めて全体的な評価が決まる」

「うん。だから運命の神様、いいＭＡＰにして♪」

「…ＭＡＰ毎に戦い方を研究する…ってほうに、
　少しは熱意を向けたほうがいいぞ…」

　アルフは努力と根性で生きるより運頼みをしてしまうエルシィを見て
　少し呆れたようにコメントすると、今回の対戦相手たるファイアクレストの
　機体データを表示した。

ＲＡＮＫ　２３ ＰＩＬＯＴ：ファイアクレスト　 Ａ．Ｃ．：グローリアス

ＲＡＮＫ　２４ ＰＩＬＯＴ：エルシィ　　　　 Ａ．Ｃ．：ジェーン�U

逆間接型の機体にミサイル、 ロケット弾、スラッグガンを搭 載し、遠距離砲での射撃戦を好 むレイヴン。

一般公募で選ばれた異色の レイブン。収支状態が凹むまで 戦い続けると公約しており、現在 賭けの対象としても注目度Ｎｏ１。

	ファイアクレスト		エルシィ
ヘッド	ＨＤ−２００２		ＨＤ−ＯＮＥ
コア	ＸＣＬ−０１		ＸＣＡ−００
アーム	ＡＷ−Ｓ６０／２		ＡＮ−２０１
レッグ	ＬＢ−４３０３		ＬＮ−Ｄ−８０００Ｒ
ブースター	Ｂ−Ｔ２		Ｂ−ＶＲ−３３
ジェネレーター	ＧＲＤ−ＲＸ７		ＧＢＧ−ＸＲ
ＦＣＳ	ＴＲＹＸ−ＱＵＡＤ		ＦＢＭＢ−１８Ｘ
右腕武器	なし		ＷＧ−RＦＭ１１８
左腕武器	なし		ＬＳ−２００１
右肩武器	ＷＣ−ＳＴ１２０		Ｍ１１８−ＴＤ
左肩武器	ＷＲ−Ｍ７０		ＷＭ−Ｓ６０／６
備考	なし		ＳＰ−ＪＡＭ ＳＰ−ＡＸＬ ＳＰ−Ｓ／ＳＣＲ ＳＰ−Ｅ／ＳＣＲ




	ファイアクレスト		エルシィ
ＥＰ	３９４８／６８１０		５０６８／８２０７
ＬＥＧＳ　ＷＰ	３９４９／４１８０		４７１９／４７２０
ＣＯＲＥ　ＷＰ	７６２／２４５０		１６８９／２７７０
攻撃力	３２５３		１９０８
防御力	２５２７		３６１９
安定性	２５０５		１２００
機動性能	６２４０		５８１０
移動性能	２９１０		２６９０
旋回性能	１３３０		１１２０
上昇性能	２０００		２０００
レーダー性能	１５９４		１７４３
レーダー有効範囲	６００		７９８
ＦＣＳの機能性能	９９４		９４５
総合ポイント	１６１１９		１４２８０
評価	ＦＩＮＥ		ＯＫ
ＡＰ	７４６７		８６７７
ＷＥＩＧＨＴ	６５９６		７１４５
ＰＲＩＣＥ	４３３３００		７６８８００


「立派なＦＣＳに、ミサイル腕で、肩には中型ロケットと、スラッグガン〜。
　水平発射タイプのミサイルだから、平地での撃ち合いは不利で、
　近距離戦闘は、ロケットが当りそうだから避けたいところ、
　狙い目はスラッグガンを使おうと膠着姿勢になった時〜と」

「レーダーも装備しているから、視界外だからといって、
　安心できないだろう。機動力は向こうが上だが、大差が
　ついている、というほどではない」

「外のＭＡＰになりますように」

「…鍾乳洞だったら目も当てられんな」

　　　・・・ふぅ

　大丈夫、連続して鍾乳洞なんてこないもん、という雰囲気バリバリな
　エルシィを見て、アルフは気付かれないように、溜息をついた。

マップはランダムに選出され・・・夜間雪原マップとなった。



なだらかな起伏が続く広大な雪原。 中央に街灯があり、若干、明るいが 他に光源がなく、相手を目視しにくい。 マップ下方を川が横切っているが、 水飛沫が発生するためそこを選択 する利点はない。


「うーん、得意なＭＡＰだけど、逆脚タイプとの戦いは
　初めてなのがちょっとだけ不安ね」

「エルシィの好きなＷＭ−Ｓ６０／６も、飛行中の敵には
　なかなか当らないから…だろ？」

「そ。とりあえず発射タイミングを注意してみるわ」

「遠距離有利のエルシィ、中距離有利のファイアクレスト…か」

「あーん、もう、あの一撃さえ避ければパーフェクトだったのに」

「ま、自分に有利な距離を維持し続けることは出来たんだ。
　十分、合格点は貰える出来だったぞ」

「それは、まぁそうなんだけど♪」

　いつものようにリプレイ映像が背後に表示されている。
　漆黒の闇を緩やかに飛翔しつつ距離を詰めていくが、
　ブースターの炎を見つけたエルシィは、最遠距離で
　小型ミサイルをロックオンすると、次々に撃ち放った。

　距離を縮めようとするファイアクレストだが、両機に
　ブースター移動速度は大差がないため、降り注ぐミサイルを
　回避しながらでは、思うように接近できず、被弾を繰り返す。

　遠距離からロケットを撃っても、当然だが至近弾になることもなく、
　たまに距離が近くなった時に、スラッグガンを構えて撃とうとしても、
　その頃には、エルシィは距離を離してミサイルをばら撒いている。

　途中、武器腕から発射したミサイルが１回だけＨＩＴしたが反撃もそれまで。
　遠距離で低いジャンプを繰り返すエルシィの動きは、
　水平飛行してくるミサイルが地形に衝突することになってしまい、
　至近距離にまで近づくモノすら稀な有様である。

　追加弾倉のおかげで、９０発に増えた小型ミサイルの雨の前には、
　武器腕の脆弱な装甲では耐え切ることはできず…、
　定番のライフル射撃を見ることもなく、ファイアクレストの愛機、
　グローリアスは炎に包まれることになった。

「というわけで、久しぶりに圧勝♪
　やっぱり、オープンフィールドは戦いやすいわ」

　えっへん、と胸を張る姿が可愛らしい。
　どーも、単調な戦い方しかできないという非難は記憶の外に
　捨ててしまったよーである。

「…しかし、複数の武装を――」

「最近、軽量ＡＣに翻弄されたり、重装甲ＡＣを削るのに苦労したり、
　動きにくいＭＡＰがあったり、もー、ストレスが溜まってたんだから。
　今日は、圧勝したんだし、点心じゃ済まないわよ♪」

　よほど不平不満があったのか、それともブレード戦闘の練習が性に合わず、
　愚痴をこぼしまくっていたことが影響しているのか…。
　もぅ、奢ってもらえるもの、と決めかかったエルシィは、
　既に気分も半分くらいは中華料理のコースメニューへと
　飛んでいってしまっているようである。

　もっとも、満面の笑みを浮かべる姿は、見てるだけで微笑ましく、
　プロデューサーも、高視聴率ＧＥＴの速報に大らかな気持ちになったようだ。
　アルフに対しても経費ＯＫ、とサインを送っている。

「ＯＫ、どこに行くんだ？」

「それはもぅまっかせて。さっき、”こっちの料理ショウ！”で
　美味しそうなお店を見つけたんだから♪
　あ、では、皆さん、次回の番組をお楽しみに〜」

　ちょいと引き気味な気がしないでもないアルフを引っ張って、
　エルシィは、去っていってしまった。

　…予定時間より早い展開だが、スタッフもどーもそのあたりを
　予想して準備を怠ることもないらしく、別収録しているＡＣパーツの
　テスト風景などの映像などを流して、穴を綺麗に埋めてたりする。

　見事な連携プレイ、という奴かもしれなかった。

毎度のことだが、収支決算は次週に持ち越しとなった。
　…当然だが、完勝したのに、装備変更などするわけもない。
　こんなんでいいんだろうか…。

次回予告

細かいブースト機動を繰り返し、低空飛行を心掛けたこともあって、
　エルシィは「機体がなんか変」と思いながらも、完勝したことで、
　”ま、いっか”の一言で済ませてしまった。

　些細と思えることでも注意し、先に手を打つのがレイヴンなのだが、
　素人なエルシィがそんなことまで気が回るわけもない。

　次の対戦相手は、苦手なＡＷ−ＭＧ２５／２を装備した
　４脚ＡＣなのに（^^;）

　次回　第２８話「サン・ダウナーの駆るアーベントレーテとの対決！ 」
　こうご期待♪

後書き

２ヶ月ぶりの更新になりました。
うーん、マシンの不調さえなければ、先月にはアップしている
はずだったんですけど。

応援してくださってる皆さん、ごめんなさい。

さて…そろそろ、ＡＣ１のデータで訓練を繰り返して
促成栽培されたエルシィにも、厳しい戦いが増えてきました。
とはいっても、ＭＡＰや機体相性にもよるんですけど、ね。

今なら、ＡＣＰＰのアリーナは余裕でクリアなんですけど、
当時は随分、苦労したものでした。
書いていると、なんだかちょっと、懐かしい気分になってきます。

次の話も、読者の方からの反響があれば…その時に書きますね。（＾＾；）