「番組をごらんの皆さん、お待たせしました。アリーナバトルの時間です。
連勝記録も未だ土付かずの２５勝目♪　ただ、ちょっと、今後の戦いには
　不安要素が残る、と言われ始めてるエルシィです♪」

　機体を変えずに延々と戦い続けた挙句、弾切れ寸前で、辛うじて
　勝利した、というデスマスター戦の結果、そろそろ俄か仕込みの
　急造レイヴンでは、限界ではないか、という噂が流れ始めたりしている。

　無論、エルシィの熱烈なファン達は、それを否定するが、それはごく少数。
　レイヴンとしての能力にはかなり歪みがあることはだいたいバレてるので、
　専門誌でも、そろそろ敗北するのではなにか、と囁かれているのだ。

「ＡＣを刷新した後の最初の戦いだから、な。
　今後を占う意味でも、今日の試合は重要だぞ」

「わかってるもん。重装甲ＡＣ相手でも勝てるよーに、
　だからこそ、弾数増やしたんじゃない♪」

「…それが上手くいけばいいんだが、な」

　アルフはちょいと溜息をつくと、今回の対戦相手たるスプレッドスターの
　機体データを表示した。

ＲＡＮＫ　２４ ＰＩＬＯＴ：スプレッドスター　 Ａ．Ｃ．：イーグルランダー

ＲＡＮＫ　２５ ＰＩＬＯＴ：エルシィ　　　　 Ａ．Ｃ．ジェーン�U

重装甲タイプのパーツ構成に よって耐久力を高め、武装を充 実させた機体を駆る。そのＡＰ は人間型最大級。

一般公募で選ばれた異色の レイブン。収支状態が凹むまで 戦い続けると公約しており、現在 賭けの対象としても注目度Ｎｏ１。

	スプレッドスター		エルシィ
ヘッド	ＨＤ−ＲＥＤＥＹＥ		ＨＤ−ＯＮＥ
コア	ＸＣＨ−０１		ＸＣＡ−００
アーム	ＡＮ−８６３−Ｂ		ＡＮ−２０１
レッグ	ＬＮ−ＳＳＶＲ		ＬＮ−Ｄ−８０００Ｒ
ブースター	Ｂ−Ｔ２		Ｂ−ＶＲ−３３
ジェネレーター	ＧＲＤ−ＲＸ７		ＧＢＧ−ＸＲ
ＦＣＳ	ＴＲＹＸ−ＱＵＡＤ		ＦＢＭＢ−１８Ｘ
右腕武器	ＷＧ−ＸＰ２０００		ＷＧ−RＦＭ１１８
左腕武器	ＬＳ−２００１		ＬＳ−２００１
右肩武器	ＷＭ−Ｓ４０／２		Ｍ１１８−ＴＤ
左肩武器	ＷＣ−ＳＴ１２０		ＷＭ−Ｓ６０／６
備考	重量過多		ＳＰ−ＪＡＭ ＳＰ−ＡＸＬ ＳＰ−Ｓ／ＳＣＲ ＳＰ−Ｅ／ＳＣＲ




	スプレッドスター		エルシィ
ＥＰ	５５３３／６８１０		５０６８／８２０７
ＬＥＧＳ　ＷＰ	５４０９／５４００		４７１９／４７２０
ＣＯＲＥ　ＷＰ	２１１４／３６００		１６８９／２７７０
攻撃力	２１８６		１９０８
防御力	３７１７		３６１９
安定性	２１５０		１２００
機動性能	３５８０		５８１０
移動性能	１４８０		２６９０
旋回性能	１１００		１１２０
上昇性能	１０００		２０００
レーダー性能	１５９２		１７４３
レーダー有効範囲	５９８		７９８
ＦＣＳの機能性能	９９４		９４５
総合ポイント	１３２２５		１４２８０
評価	ＯＫ		ＯＫ
ＡＰ	９３４１		８６７７
ＷＥＩＧＨＴ	８１５９		７１４５
ＰＲＩＣＥ	４６４７００		７６８８００


「レーダーも搭載してる、ＦＣＳも立派、全ポイントに武装設置、
　おまけに実弾防御もかなりあるし、ＡＰは２脚型ＡＣで最大〜、と。
　…強そうなのに、どーして、この順位なの？」

「防御は最高だが、武装は小火力を多く叩き込むタイプばかりだ。
　上位連中には、火力偏重の偏った奴も多いから、削る前に、
　倒されることもあるんだろう。
　それに、ＡＣの重量に比べて、ブースターとジェネレーターが、
　非力なのも、弱点といえば弱点だ」

「ふーん。でも、なんか、あんまり簡単って感じがしないんだけど」

「それがわかるだけ、成長した証拠か。
　そう、エルシィの機体は実弾兵器ばかり、それに攻撃力も並だ。
　奴の重装甲を崩すのは容易じゃない」

「結局、今回も苦戦するのね」

　とほほ、と愚痴をこぼす態度もどこか芝居がかっている。
　１．５倍に増える追加弾倉があれば問題なし、と考えているのだろう。


対戦マップ決定

マップはランダムに選出され・・・鍾乳洞マップとなった。



レッグパーツのジャンプだけで天井に衝突する ほど上下機動が制限されるＭＡＰ。夜間雪原ほど ではないが起伏もあり、所々にある柱が視界を 遮るなど、狭いながらも多彩な戦術を駆使する 余地はある。水が溜まっている場所は起伏がなく、 移動時に水飛沫をあげるため注意が必要である。


「嘘ぉ…」

「偶然とは恐ろしいもんだ」

「な、何、へーぜんとしてるのぉ？
　小型ミサイル９０発がなかったら、火力半減以下じゃない！？」

「垂直発射タイプのミサイルを装備する者は、ＭＡＰ選択によって、
　その優位を失うリスクを負う。わかってたことだろ？」

「あぅ…なんか、お先真っ暗」

　エルシィの目には、鍾乳洞の暗い風景が、さらにどんよりどよどよに
　見えてきたようである。

　いつものように背後のディスプレイにリプレイ映像が表示されている。
　開始早々、パルスライフルの連射を浴びて、大きくＡＰを削られるが、
　その後はレッドゾーンギリギリまでブースターを吹かし続けて、
　高速移動を続けることで、中距離での射撃戦を有利に進めた。

　途中、スプレッドスターが距離を離そうと、水面へと逃走したが、
　機動力に大きな差があるだけにそれも果たせなかった。
　付かず離れずの微妙な距離を保ち、延々とライフルを叩き込まれたのである。

　エルシィ　　　　　　ＡＰ 6315　ライフル 0/300　小型ミサ　85/90
　スプレッドスター　ＡＰ　227　パルス　161/200　小型ミサ　28/40　スラッグガン　76/80

「ここまでいい感じにきたのに弾切れ〜。
　横移動ばっかりなせいで、ブースター、使い続けてたでしょ？
　いつ、チャージングするんじゃないかって心配だったもん。
　やっぱり、このＭＡＰは苦手」

「スプレッドスターは、中距離を移動するエルシィを負うのがかなり大変だったようだ。
　それに、やはりブースター移動が辛かったらしい。
　ジェネレータに余裕がないせいで、パルスライフルの攻撃も散発的だったし、な」

「うん。それは良かったんだけど…。
　もー、ここからが大変。だって、背中の小型ミサイルは当たらないんだから」

「結局、１分近く追い掛け回す事になったわけだな」

「そーいうこと」

　エルシィ　　　　　　ＡＰ 4479　ライフル 0/300　小型ミサ　79/90
　スプレッドスター　ＡＰ　0　パルス　146/200　小型ミサ　21/40　スラッグガン　76/80

　その後、強引に接近して振り回すブレードがまるで当たらず、
　追い掛け回すたびに、パルスライフルを叩き込まれて、ボロボロになった。

　しかし、さすがに、残りＡＰ227ではどうしようもない。
　エルシィが振り回し続けたブレードがやっとあたり、やっと勝負が終わった。

「やっぱり、弾倉を装備しておいて正解だったわよね。
　だって、今回、もし、ライフルが２００発しかなかったら…」

「残ＡＰ３０００近くをブレード１本で削り倒す計算になる」

「それ、無理。ぜったい、無理！
　あんなに振っても当たんないんだから」

　下手な鉄砲、数打ちゃ当たる…とは言うが、
　今のエルシィのブレード技術はほとんどソレに近い。

「もう少し、訓練したほうがいいな。
　見てるほうも疲れたぞ」

「は〜い。訓練場で地道に練習しまーす」

　いつになく殊勝なことを言ったりしてる。
　やはり、目の前の相手を斬れずに、延々と反撃を食らい続けたのは、
　かなり無様なことだ、と自覚できたのだろう。

「収入は４１０００Ｃ、残金合計は４４２５１００Ｃだ」

「貯金ね」

「ま、そうだな。
　今必要なのは、機体強化よりも、訓練だろう」

「…ぐぅ」

　アルフの一言にエルシィが文句を飲み込んだ。
　…レイヴンは結果で語る。
　アルフの言葉はいつも簡潔だった。

次回予告

ここにきて露呈してきたエルシィのレイヴンとしての技能の偏り。
射撃戦闘が雑、ブレード戦闘はボロボロ、偏食気味の
お子様のように武装の使い方も順番に一個ずつ。

周囲の予想通りに破綻する日はくるのだろうか…！？

次回「第２７話ファイアクレストの駆るグローリアス」
こうご期待♪　更新頻度は皆さんからの声援に比例します。（＾＾；）