Ｅｘｔｅｎｄ−Ｍｉｓｓｉｏｎ：０１　「Ｃｌｏｃｋｗｏｒｋ」

「……ん〜、何か良い仕事無いかなぁ……」

ちょっと暇が出来たんで、朝から端末を操作して、良さそうな仕事を探している。
とは言え、遠くまで行くのは嫌だし、う〜ん、これはって言うのは中々…………
ん？あー、こりゃどーも……どーすっかなぁ………

『市街地襲撃』、依頼主はクローム本社。内容は………ガル＝シティ市街地での破壊行為……って、ほとんどテロじゃんねぇ。市街地を襲撃してめぼしい物を適当に破壊しろ、か。
んで？力あるものに頼らざるを得ないって言っても、それがクロームとは限らないでしょうに。ムラクモもあるし、私のようなレイヴンを雇ったって良いわけだし……金がかかるか。ま、身勝手な言い分はどーでもいいや。
続きは……作戦行動時間は３分。長引かせるとどんなトラブルが……ってガードが出てくるだけでしょう？
で、報酬は破壊状況に応じて、か。ふむ、期間が長いな………１週間の間に契約、実行、か……裏を取る間はありそうだね。そんじゃ、受諾だけしとくか。



で、翌日。私は裏通りにある骨董品に顔を出す。

「トム爺、生きてる？」

「……お前さんのツケをキッチリ取り立てるまでは死んでも死にきれんわ」

………やな爺さんだ。ま、これでも裏社会では１、２を争う程の腕を持つ情報屋って言うんだからねぇ……人格捻くれるのも当然か。

「あー、そのうちね。で、ちょっと聞きたいんだけど」

「今までの分を払ってからにしろ」

「……クソジジィ」

「……聞こえとるぞ、マリィ」

「…………今までのはおいといて、今回分はちゃんと払う。それでいいでしょ？」

「……それで勘弁してやるわい。で、何が聞きたい？」

ようやく聞く気になったトム爺に、私は何気ない様子で訊ねる。

「ガル＝シティ・ガードで最近レイヴンとか雇ったって話、聞いてる？」

「……アリーナに出ないレイヴンを１人雇ったそうじゃ。あんまり情報とか気にしないお前さんでも知っとると思うが……ランカーＡＣ・ヴァルキュリアＣ」

「………ロスヴァイセ、ね」

………まぁ、依頼者からしてそんな予感はあったんだけど、よりによってランカーか。

「お前さんのようにアリーナにも実績にもランクインしない……しないように努力する変わり者もいれば、世間に知られるランカーもいるし、彼女のように表で知るものが少ない者もいる……不思議な商売だな、レイヴンってヤツは」

そんなの放っとけって。

「２００００でいい？」

「１００００で充分だ。その分、今までの何とかしろ」

「……今度ね」

「……今ので１７回目だとおもうが？その台詞は」

……ホントにやなジジィだわ。
私は無視して店を出た。



家に戻って、色んな所から集めておいたデータをひっくり返して検索する……ランカー・レイヴン。この言葉には２つの意味がある。
１つは、アリーナでの順位（ランキング）を持つレイヴン。一般的にランカー・レイヴンと言った時はこっちを指す。
もう１つは……依頼達成率から算出される、ネスト内部の実績・表に出ない順位（ランキング）の事。今回の相手はこっちに当たる。
正直、アリーナのランカーは確かに実力はあるが１対１に慣れたヤツが多く、私としてはあんまり驚異には感じない。こいつらと戦場で会ったとしたら、軽くとまでは言わないけど、必ず勝つ自信はある。
でも、今回の方のランカーは別だ。依頼達成率の高さがランクの基準って事は、様々な状況に対応出来る腕や経験を持っているって事であり、ひいては、かなり手強い連中って事でもある。
状況次第では、こっちがやられる。危険な相手だ。

「……っと、有った有った……機体構成くらいは把握しておかないとね。有名税は高く付くわよね、ホントに」

裏のルートで仕入れた、ランカーの機体構成表……さて、ヴァルキュリアＣはっと……ん、これだ。
レーダーが無い、ブレードが無い…………強化人間用ってことか。武装はスナイパーライフル（ＷＧ−ＲＦ／５）とスラッグガン（ＷＣ−ＳＴ１２０）……基本は遠距離で狙撃、近付かれたらスラッグガンで牽制して距離を開ける。装備が少ない分、機動性は高いと見ていい……おそらくは強化レベル３………エネルギー制御まで可能のはず。だとすれば、構え無しでキャノンを撃てるから、スラッグガンも撃ち放題。こっちも遠・中距離でやり合う方が得策か。
それに加えて破壊活動用にそこそこの威力と弾数を必要とする……ダメだな。ヴァルキュリアＣとはやれない。逃げつつ依頼を果たすしかないわね、これは。
さて………そうと決まれば、今度はガル＝シティのＭＡＰを出してっと………そこそこの高さの建造物の方が多い。なら、ビルの屋上から屋上へ逃げ回れば何とかなるかな？
よし、方針も決まったし、決行は明後日だな。連絡しておこう。



「こんちゃ〜、ジェフいる？」

「マリィさん、どうしました？」

おなじみのフォート・テクニカ工場に顔を出す。
お目当ての人物はいなかったが、ま、話は通じるから良いか。

「ユーリ、機体組んで欲しいんだけど」

「どんな構成ですか？」

ブラッドウィドゥ開発チームの中でも一番の若手であり、工科大学を飛び級で卒業した才媛でもある、少女と言っても良い外見の技術者……ユーリ＝カツラギ嬢が、奥の方から出てきて尋ねてくる。

「脚はＤ、ＸＰ２０００とＭ１１８−ＴＤ、ＲＺＴ−３３３で頭はＨＤ−Ｈ１０と腕がＡＮ−Ｋ１、ＦＣＳはＴＲＹＸ−ＱＵＡＤ……おまけに月光（ＬＳ−９９−ＭＯＯＮＬＩＧＨＴ）ってとこでお願い。多分、ちょい余裕くらいだと思う」

「………そうですね……５０００は割ってます。いつ取りに？」

「明日。朝一で来るから、今日中にヨロシクね」

「解りました。あと、一緒に行って…………」

「ダメ。今回は大きいのいらないから」

「……分かりました」

つまんなそうな顔のユーリ……でも、マジでいらんのよ、アレは。



「………ん〜、も〜飲めましぇ〜ん…………」

いつもの如く、人の家でテーブルに突っ伏したまま寝こけてしまうユーリ。
全く、家はあんたの別荘じゃないんだぞ？

「ほら、そんなとこで寝ない。ベッド行きなさい、貸してあげるから」

「ふぁ〜い」

千鳥足でベッドルームに歩いてくユーリ………倒れ込むようにベッドに突っ伏した。
しょうがないわね、ホントに。
毛布を掛けてやってから端末の前に座る。

「さて、明日の確認でもしとこうかねぇ………」

端末を操作してもう一度データを確認する。
…………何度見てもやな相手だ。
ブレードが無いのは、その距離まで近付かせない自信からだろう……実際、スラッグガンの斉射に耐えられないだろうな……スラッグガンって言うのがくせ者なんだよね。拡散なんだよね、アレ。
広がる弾幕は、距離がある程避け難い……威力は大したこと無いけど。これが、近付く程避け易くなる替わりに、食らった時は複数の弾丸が機体を叩く。制動がそれほど掛からないのが実はヤバイ。いつでも避けられると思うから食らってしまうけど、それこそが運の尽き………ヴァルキュリアＣは立ったまま撃てる……それは、移動しながらでも撃てると言う事であり、どこまでも……弾切れまで当てる事すらも出来るってことだ。
流石にそんだけの弾丸を食らい続けると、発熱量もダメージも結構凄い事になっている。
あとはスナイパーライフルで削りきられるだけ……空中から撃ちまくれる上に、ほとんど着地しないで良いってんだからねぇ。
構えないのが一番怖いって事なんだよね、結局。
やっぱ、やり合わないのが一番。どうしてもっていうなら、スラッグガンを撃たれる前に懐に飛び込むか、ミサイルで遠距離からってとこだろう。
今回はマジでパス。
予定通り、どこかの屋上を陣取って、来たら牽制しつつ逃げる。これでオッケー。
戦闘データをシミュレートしてみるか…………うーん、やっぱやれなくないけど、やり合うならＡで構成してもう少し手持ちを強化しないとなぁ。そんじゃなきゃＢでごり押し。
ま、多分大丈夫だとは思うけど、やって見るしかないわよね。
よし、そうと決まったら鋭気を養う為に寝よう！



待避通路……このクラスの区画なら、こんな分かり難いのもあるって知ってはいたけど、実際にこうも見つからないってのはどうだろうね、ガードさん？

『戦闘モード、起動』

コンピュータが起動を報告してくる…………よし、行くか。
ウィドゥを通路から飛び出させると同時にめぼしい信号や街灯を薙ぎ倒す。
流石に、車は怖いなぁ………人が乗ってたらって思うとねぇ。
ま、停電くらいは勘弁して貰いましょ。
機体を手近なビルに乗せ、目の前の発動機を撃ちながら着地。あとは適当に見える発動機やタンクを撃ち壊す。

『そこのＡＣ、直ちに停止しろ！』

来たか……もう少し遅いかと思ってたけど…………計画が漏れてたかな？
ま、いいや……ガード１機、１５００Ｃ追加だし………一般人を巻き込むのは好きじゃないけど、ガードとしてこっちに牙を剥くヤツを放っておける程人道主義でもないしね。
さて、何者だ？………ふぅん、ガードウォーカーか。こりゃまたありきたりな機体だ事で。
ま、届くヤツにはパルスライフルを叩き込んで、そうじゃないのは放っとくことにしましょ。
パパッと数発ずつ撃ち込んで………おお、街灯代わり？
そんなことやってるうちに周囲に目標が無くなった………移動しながら、ガードのＭＴを２機程撃破。で、また適当なビルに上る。
減っていくカウント……気が付くと…………

「………ん、と、後１分ちょい、か。そろそろ出てくるかな？」

そう呟きながらレーダーに目を向けると、高速で近付いてくる点がある………間違い無い……来た、ヴァルキュリアＣだ。
さっきまでのＭＴ相手とは違い、こっちも動きながら対応しないと痛い事になる。
発動機の陰に隠れながら他のビルのそれを撃ち、距離を見てやばくなったらブレードで壊してから移動する。

「うむ、何とか予定通りにいきそうね」

時折飛んでくるスナイパーライフルの弾丸をかわしながら、ウィドゥをビルからビルへと奔らせていく。
で、ついでに、狙えるＭＴは吹き飛ばしていきましょうかねぇ。
と、そんな事してる間に、ディスプレイしてたカウントが減り続けて…………

「そろそろ……よし、リミット！退却しますか………」

もう、これ以上遊んでる必要は無いわよね。予定通りの待避通路に機体を向かわせる……しっかり付いてくるガード。ホント、お仕事熱心ねぇ。さっすがにヴァルキュリアまでは追ってきてないか。
適度にまいて、待機していた輸送車に乗って逃げる……これで終わりだね。いや〜お疲れ様、私。



帰ってみると、綺麗に片付いた部屋……掃除してから帰ったのか。
置き手紙にもそれらしい事が書いてある………さて、念の為、依頼人に送る前に戦闘データを確認しておくか。
…………こっちがずっと離れるように移動していたせいか、スナイパーライフルが散発的に飛んできてるだけだ。
ＭＴのマシンガンはどーでもいいけどね。この場合。
さて、信号機が１５本に街灯が２７本、発動機が１２台のタンクが７基。それに、ＭＴが７台っと………締めて４００００程、か。ま、良い儲けではあるわよね。
そんじゃ、コピー取って送信、と……ＯＫ。後は振り込みを待つだけよん。



あれから数日………無事に振り込みも済み、そのお金で生活費の払い込みも済んだ…………ううっ、ちょっと情けないなぁ。
依頼主にもそれなりに満足してくれたみたいだし……次の仕事もあるかな？
アリーナの控え室で端末を操作して確認してると、私の次に試合をしてたヤツが戻ってきた。

「何ニヤけてんだ？」

人の顔見るなり言う台詞がソレか？いーじゃん、別に。
ま、気分も良いし、答えてあげるが世の情け、ってね。

「ちょっと潤ってるのよん」

「なら奢れよ」

………脳みそ膿んでんのか？

「寝言は寝て言え。そんじゃお先」

控え室を出て、取り敢えずカフェへ。
見覚えのある姿を見つけて、そのテーブルへ近付いて、っと。

「お待たへ〜」

「お疲れ様でした。で、データはすぐに出ます？」

「出ないよ。まだガレージ行ってないもん。明日には工場持ってくからそん時に吸い出してよ」

「…………そうします」

待ち合わせしてたユーリと軽い会話のキャッチボールなんぞをしてから、向かいのイスに座る。

「あ、ちょっと………カフェ・オ・レお願い」

「マリィさん、ホントにマイペースですねぇ………」

「そぉ？」

「……いいですけど」

膨れっ面でコーヒーなんて飲んでも美味しくないでしょうに。
お、来た来た…………私も注文したカフェ・オ・レを口に運ぶ。

「…………こうしてると、マリィさんってこの場所に合わないですねぇ」

「そお？どこがどう合わないって？」

「……はぁ…………忘れて下さい」

「あっそ。ま、いいけどね」

取り敢えず、今日は奢るの止めとくか。



それから数日……何気なく端末を覗くと、幾つか依頼がネストに上がってた。
その中から、更に絞り込む…………ふむ、あんまし良いのは無いなぁ。
ん？………指名？
何々？あ、これ、こないだのクロームのだ。

『警備システム攻撃』……依頼主は同じクローム本社の一部門。オカムラ博士の暗殺……きな臭い話ねぇ。
で、その協力を依頼？とにかく全部読んでみるか………博士は現在ムラクモの研究機関に在籍し、その部門でのムラクモの業績は彼の研究成果によるものが大きく、その存在が失われればダメージは計り知れない……出たな、お得意の企業論理。
ま、いいや……で、何をしろって……博士は現在旧ジリエラシティに滞在しているが、当然ながらそれなりの警備が敷かれており、その中でも、追尾型爆弾が厄介、と。で、それを全部排除しろ……ねぇ。無茶言ってるわねぇ。
報酬は４００００Ｃ……前払い１５０００の成功報酬２５０００ね。それなりか………正直、安いわね、コレ。
それでも、指名された以上、出来るとふんでくれてはいるんだよなぁ…………しゃーない、今回は引き受けるか。



「構成変えて」

工場の事務室に飛び込むなりユーリを掴まえて、開口一番、それだけ言う。

「いきなりですね………でも、何でです？」

ん？そーいや…………

「………ジェフは？」

「本社で会議中です。で、構成を変える理由は何ですか？」

「依頼向け。脚はＡ、手持ちはＰＰＫ（ＷＧ−ＸＦｗＰＰｋ）で、頭はＨＤ−ＯＮＥ。背中は両方とも追加弾倉（Ｍ１１８−ＴＤ）にして」

む、何よ、その顔。余計な事考えるなよぉ。

「…………極端ですねぇ。背中、本当にそれで良いんですか？」

「いいの。今回は弾数がいるのよ。他は変更無し」

「………４８００ちょっと……マリィさん、計算してきてるんですか？いつもいつもちゃんと重量が収まるようになってますけど」

不思議そうにこっちの顔を見るユーリ。ま、一応、ウチの端末でシミュレートしてきてるからね。

「そーよ、悪い？」

「たまに何も見ないで構成変更する時も、ちゃんと数字的に合ってるんですけど、暗記してたりします？」

「そりゃ幾つかは覚えてるし、おおよそくらいなら即興で計算出来るけど」

「…………レイヴン止めて、専属のテストパイロットになりませんか？研究員兼務で」

「イ・ヤ・よ。私は今の仕事が好きなの。それより、とっとと変える」

「はいはい……」

ブツブツと何か言いながらも、ユーリはコンピュータに向かった。



今回はＡの四脚モードで出撃。
予定のポイント近くまで運んで貰い、そっから目的のビルへ移動。で、動き出した警備システムの追尾型爆弾……通称「スーサイダー（自殺者）」を排除………想定では３０機程だったんだけど、トム爺に調べて貰ったら倍以上の８０機が配備されてるってか。

「……贅沢って言うか、クソ迷惑って言うか…………ま、しゃ〜ない、弾数はあるし、数発ずつ巻き込むようにしていけば節約も出来るっしょ」

なんて独り言を呟いてると、呼び出し音が鳴る。

『そろそろ機体を投下します。後は自力で目的地まで移動をお願いします』

「りょーかい。そんじゃお達者で」

『成功と無事の帰還を祈ってます。では』

輸送機のオペレータとの挨拶を済ませたら、機体が落ちていくのを感じる。
切り離されたウィドゥは、重力任せに落ちていく……って、いい加減ブースト噴かしてどっかその辺のビルにでも乗るか。
目的のビルを前にして、ウィドゥは隣にある高架の足場に降り立った。



「………さぁて、始めますか………」

ビルを見上げる。
こっからじゃよく分かんないけど、最上面に二つのタワー状の構造部が有る。
結構高くて、撃ち下ろしに向いてる…………そこを取って飛んでくる自爆機を叩き落とすか、動きながら集中されないようにするか……うーん、護る仕事じゃないし、このタワーを壁にしても良さそうだなぁ。
機体をブースタージャンプで一気に屋上に上げ、レーダーに目をやる。
うぉっ、赤い光点がドドッと増えた！
視界に入ってくる点はかなりの数……しゃーない、旋回しながら次々と落とすしかないな。
光弾を叩き込んで粉砕……こんどは右の方を……左、右、右後ろ、左前、流石にＰＰＫだけに１、２発で落とせるけど、ホントに数が多い。
残弾がドンドン減っていく…………シャレになんないなぁ。

ドムッ！

え？全然関係ないところから銃弾が飛んできた？
レーダーを見る……タワーの上に光点……ＡＣか。
別働隊か、他のトコに雇われたのか………何にせよ、今は敵じゃないなら、放っとくしか無いな。
こっちとあっちの攻撃でスーサイダーは急速に数を減らしていく。
数分の後、光点は消え失せた……１つを除いて。

『警備部隊排除完了……引き続き障害を排除する』

女の声………嫌な予感がして、床に空いた穴を潜り下の層にウィドゥを滑り込ませる。
鈍い音が数発、上の金属板を叩く………上からの攻撃だ。

「……物騒ね、全く。どこの誰かは知らないけど………」

『ＡＣを確認。ランカーＡＣ・ヴァルキュリアＣです』

コンピュータの解析完了……何だかなぁ。

「訂正。ロスヴァイセさんね……そっちも狙いは要人かしら？」

『…………』

ブースター音がして、向こうが動いてるのが分かる………答えないのは性格なのかどうなのか。
レーダーの高度を見ながら、こっちも上に移動する。

「寡黙なのも良いけどさ、少しは返事くらいしたら？ま、こないだの事もあるから口も聞きたくないってのも分からなくもないけどさぁ」

『…………』

……無愛想だなぁ、全く。
今、ヴァルキュリアは下にいる………とは言っても、光点の移動速度が変わらないから、飛んだままってのは分かる。
プラスだもんねぇ…………少しずつ上がってきてる……ヤバいな。
横に滑らせてタワーの影に隠れた瞬間、拡散弾がタワーを打つ。

「ったく、装備を知ってなかったら避けられないっての」

ウィドゥをバックさせながら、ちょっとしたひらめきが浮かぶ………可変レバーを入れて、モード切替……しながら、縁から落ちる。



下の層で待つ…………光点が一度かなり上の方で止まってから、ゆっくりと降りてきている。
タワーの上に行ってから、上面にこっちがいない事を確認して、降りてきてるんだ。
で、この後一気にブーストしながら飛び降りてこっちを撃つつもりだってのはなんとなく分かる。

ガガガガガガッ！！！

下向けに撃たれたスラッグガンが、ウィドゥの頭の「下」を叩く。
ぶら下がったままのこっちは、よく見えるヴァルキュリアに普通に撃ち込んでやる。

『…………っ！』

「悪いわね、規格外で。そんじゃ、お疲れ様」

取り敢えず、チャージギリギリまで連射して、ヴァルキュリアをドンドン向こうへ追いやる。

『レイヴン、聞こえますか？』

オペレータの声が聞こえた。

「こちらブラッドウィドゥ。障害は排除したわ」

『了解です。この後は当社の方で処理いたしますので、機体を回収に参ります』

「そぅ？じゃお願い」

『はい』

で、周囲を見渡して見ると、ヴァルキュリアは逃げたみたいだ。レーダーにも何も写ってない。

「……取り敢えず、万事ＯＫってとこかな」

機体を上面に上らせて、ヘリを待つ。
………これっきりにしたいねぇ、ロスヴァイセとは、さ。



「…………何で映像が逆さなんですか？」

「そりゃとーぜん、逆さになってたからよ」

ユーリが戦闘データを解析してる横で覗いていたのだが、唐突に質問されたので、取り敢えず答えてみる。

「……三半規管、丈夫なんですね」

「昔、飛行機の操縦訓練とか受けた事有るから」

「…………本当に、ここの職員に転職しません？」

「しないっつったでしょ」

缶コーヒーを啜りながら、ユーリの実のない質問に答える。

「惜しいなぁ………マリィさんみたいな人がいたら、開発もう少し楽になるのに」

「私は今の仕事が良いの。もういい？よけりゃ帰るから」

「あ、はい、お疲れ様です」

声を掛けてくれたユーリに手を振って、私は帰路に着く。
さて、明日はどうなるやら…………ま、明日は明日の風が吹くってね。

お久しぶりです、ＡＢＣです。
マリィさん、帰ってきました。と言っても、タイムスケジュールは本編の中頃となりますが。
これを書くに至った経緯は至って単純（洒落じゃないんですが……）、ＮＥＸＵＳの発売です。
つまり、この「Ｅｘｔｅｎｄ−Ｍｉｓｓｉｏｎ」は、ＮＥＸＵＳのＲＥＶＯＬＵＴＩＯＮ　ＤＩＳＫのＭＩＳＳＩＯＮをマリィとブラッドウィドゥで攻略したとしたら？って事です。

「ＣｌｏｃｋＷｏｒｋ」、時計仕掛けとか機械仕掛けといった意味で使われます。また、そこから、正確なとか規則正しいという意味もあります。
この世界（ＡＣの背景世界）では、淡々と仕事をこなす様もこう言えるのではないでしょうか？
通り一遍の単純な仕事しかできないガード、正確な攻撃をするけど意表をつかれると弱そうなイメージのプラス、口調こそ丁寧だけど人の命など気にした風もないオペレータ………皆様はどう思われたでしょうか？

一応、３、４編ほど書くつもりです。
で、纏まってから投稿する事になるでしょうから、この文はあんまり意味無いかも知れないですね。
あとがきは、作者の戯言の方が多いので、流してやって下さい。
では、またいつか。

掲載が遅れてごめんなさい（T_T）
NEXUSバージョンのミッションでしたね。
ぶらさがって下に射撃かぁ…いいなぁそれ♪

さ、読んだ人は感想メールを送りましょう♪