「あーあ、猫も杓子もアスカ、アスカかぁ」
転校から３日後……アスカは人気の的になっていた。
「ま、みんな平和なモンや。写真にあの性格は写らへんからなぁ……」
そんな文句を言いながら、ケンスケとトウジは、隠し撮りのアスカの生写真を売っていた。
「でも、やっぱ、一番人気って……」
「みなまで言わんでも分かっとる……アイツは性格までええからな」
「……それを殴ったことあるんだよね、トウジ……」
「もう、ええちゅうねん……アレは悪かった思っとるんやから……」
「何が？」
「何がって、そりゃなぁ、ワシがユウカ殴ったことや……って、ユウカ?」
「あー、こんな物売ってるんだ。ふーん、よく取れてるねぇ」
ユウカは２人の前に膝を抱えて座り込み、２人が売ってる写真を見た。
「わ、わ、ちょ、ちょっと待って?」
「お、おい、ユウカ、お前が見るモンやないって?」
「こんな事ばっかやってるから怒られるのよ」
後からやってきたヒカリが言う。
「まったく、この男共は情けないわねぇ。バッカじゃないの！」
アスカが追い打ちを掛けた。
レイは、一瞥をくれるだけで何も言わない。
「何で、お前らこんなとこにおんねんや?」
「何でって……アスカの案内してたの」
「そしたら、こっちに移動する男子が多いじゃない。だからついでに見に来たんだけど……はぁぁ、情けない」
「……行きましょう」
言いたいことを言った上に呆れかえるヒカリに、レイは先に行くように促す。
「そうね、こんな連中、捨てとけばいいわ。行こ、ユウカ」
アスカが、ユウカの腕を取って立たせる。
アスカとヒカリに引っ張られつつ、ユウカはトウジとケンスケに軽く手を振りながら去っていく。
「……ホント、オアシスだよなぁ……」
「……ちゅうか、他の女共が悪すぎるんかもなぁ……」
やや呆然としつつ、トウジとケンスケは嵐の去っていった方を見つめていた……
第九話 苦い選択
ネルフ本部・第二制御室……リツコが端末を操作している。
そこへ加持がやってきて、後ろからリツコに抱きつきながら囁く。
「相変わらず仕事の虫かい」
「あら、加持君。久しぶりね」
「こんな美人を放っておくなんて、ここの連中も見る目がないな」
「そんなことばかり言って……でも、いい加減にしておかないと、あそこで怖いお姉さんが睨んでるわよ」
リツコがペンで指す先に、ミサトがファイルを手に立っていた。
「……まったく、どうしてアンタってそうなのよ！」
「そんなこと言ったって、これが俺の性格なんだし……」
「悪いけど、ケンカならどっか別の所でやって」
リツコが一言突っ込む。
「まぁまぁ、リッちゃん、そんなに気にしないで。それより葛城、君が怒ること無いだろ？もう、俺とはなんでもないんじゃなかったっけ？」
「なんですって……」
「ん、それとも、まだ俺に未練でもあるのかい？」
「……アンタ、そんなにぶん殴って欲しいの？」
ミサトが押し殺した声で言う。
加持は流石に、ドアの方へ逃げる。
「アンタ、弐号機の引き渡し済んだんだから、さっさと帰んなさいよ！」
「いや、昨日辞令が出てね。ここに居続けさ」
「冗談でしょ?」
「冗談でこんなこと言ってもしょうがないだろ……」
フィーフィーフィー……
警報が鳴る。
「なんだ？」
「まさか、敵襲?」
ミサトが叫ぶ。
発令所……司令席にゲンドウの姿はない。
「警戒中の巡洋艦『はるな』より入電、紀伊半島沖にて巨大な潜行物体を発見」
「データ来ます。……確認、波長のパターン”青”、使徒です！」
日向が報告する。
「碇のいない時に来るとはな……総員、第一種戦闘配置！」
冬月の号令が下る。
「先の戦闘によって第３新東京市の受けたダメージは現段階で復旧率２６％……実戦における稼働率は皆無と言っていいわ」
ミサトが、状況を説明する。
「したがって、今回の迎撃は上陸寸前の目標を水際で迎撃……アスカ、ユウカちゃん、いいわね！」
『了解！』
『分かりました』
初号機と弐号機が立ち上がる。
「赤木博士、零号機はいつでも出せるようにしといて！」
『いいけど、必要かしら？』
「念のためよ。保険はあったほうがいいでしょ」
『分かったわ』
「後は、敵さん次第ね……」
ミサトは一人呟いた。
「あーあ、二機もＥＶＡ使えば負ける訳無いじゃない」
『ミサトさんにも、考えがあると思うけど』
ＥＶＡ同士は、ある程度近ければ、画像付の通信が可能となっている。
弐号機のコックピットには、アスカの手元にユウカの映るモニターが表示されている。
「アンタって、ホントお人好しねぇ。ま、いいわ。アタシが先に出るから、援護よろしく」
『うん、分かった』
その時、海面が盛り上がり、異形の巨人が現れた。
『来た！』
「行くわよ！」
弐号機がＥＶＡ用の薙刀、ソニック・グレイヴを構え走り出す。
初号機がパレット・ライフルを撃って援護する。
「ぬぅああああああ！」
アスカが叫ぶ。弐号機がジャンプし、一気に使徒の真上からソニック・グレイヴを振り下ろす！
「やっぱ、アスカって凄いなぁ……でも、あの使徒って確か”復活”するんだよね……」
ユウカは、初号機を移動させ始めた。
その間にも、弐号機は一息に使徒の身体を二分する……
『どうっ！コレがアタシの実力よ！』
アスカの声が入ってくる。
『ナイス、アスカ！』
ミサトの声も聞こえた。
ユウカは、初号機を弐号機の元に走らせる。
そして……二つにされた使徒は、変化を始めた。
アスカは弐号機を歩かせて去ろうとしている……その後ろで使徒は二体に分裂した！
『ぬわんてインチキ?アスカ、まだ生きてる！』
『マジで?』
慌てて振り向く弐号機に、分裂した使徒の片方が襲いかかる。
そして、分裂したもう一体は……水中に消えた。
（ダメだ、注意したって間に合わない！）
ユウカの眼に”視えた”映像……その”未来”を回避する手は、ユウカには一つしか思いつかなかった……
使徒の手が弐号機に突き刺さる瞬間、初号機が弐号機を押し飛ばす。
「いった〜い、ちょっとユウカ、何するのよ?」
そう言って弐号機を起き上がらせたアスカは、信じがたい物を見た。
それは、二体の使徒の爪で前後から腹部を貫かれた初号機だった。
「ユウカ！」
『アスカ、下がって！』
ミサトの命令が飛ぶ。
だが、アスカはその場を動けなかった……
二体の使徒は、動きを止めた初号機を二体掛かりで持ち上げると、海中に放り投げた。
「こンのヤロォォォォォォォォォッ！」
アスカは絶叫を上げて、ソニック・グレイヴを振るい、片方の使徒を袈裟懸けにする。
しかし、使徒は瞬時に再生してしまい、まったく効いてないように見えた……
「なんで、なんで……アンタ達は動いてんのよォッ！」
『アスカ、下がりなさい！作戦は……失敗したの！』
「くっ……なんでよぉぉぉっ！」
まったく攻撃を気にしない使徒。
弐号機は仕方なく引き下がり……ｎ２爆雷の炎が使徒を灼いたのは、その後、２０分ほど過ぎてからであった。
数時間後、ネルフ本部・ブリーフィングルーム。
そこには、ユウカを除く、ほとんどの人間が集まっていた。
「情けないな……敗退、しかも初号機は中破か」
冬月が呟く。
「申し訳ありません……」
ミサトは思いきり頭を下げた。
「国連軍のｎ２爆雷で、使徒の抗生物質の２８％を消却。現在使徒は自己修復中です」
マヤが状況を報告する。
「所詮は足止めに過ぎん。再侵攻は時間の問題だな」
「まあまあ、副司令……立て直しの時間が稼げただけ、儲けものっスよ」
憮然としている冬月を加持が宥める。
「弐号機パイロット、君の仕事は何だと思うかね？」
冬月が尋ねる。
アスカは、しばし考えた後答える。
「……ＥＶＡの操縦です」
「……碇ならこう言うだろうな。『使徒の殲滅』だと……心に留めておきたまえ」
冬月はブリーフィングルームを後にした。
次いで、日向、青葉、マヤ、リツコ、ミサトの順で退室していく。
加持は、優しくポンとアスカの頭を叩いてから出ていった。
そして、アスカとレイだけが取り残される……
「偉そうな事言ってたのに……」
「な、何よ、アンタなんて、出撃して無いじゃない！余計なこと言わないでよ！」
「許可があれば出撃していたわ……」
「ファースト、アンタ……」
レイの声に、普段は見せない感情が籠もっていたのを、アスカは感じ取った。
それは、焦りとか悔しさと言った、苦い感情だった。
「あなたが本当に天才なら、何故ユウカさんが怪我しなくてはならないの？」
「……だって、まさか生きてて、しかも分裂するなんて思わなかったもの……」
「……ユウカさんがいなかったら、怪我してたのはあなたよ」
「分かってるわよ、そんなこと！」
「もし、ユウカさんに何かあったら、私はあなたを許さない」
「こっちだって困るわよ！私のために……」
アスカを一際冷たい目で見るレイ。
屈辱に耐えながら、レイを見返すアスカ。
明かりの消えたブリーフィングルームで、２人の少女が睨み合っていた。
憂鬱な顔のミサトの前に、山のように書類が積まれていた。
「とりあえず、これで全部かしら」
「コレ、全部？」
リツコは、さらに一通の封筒をミサトに差し出して言う。
「あと、これがＵＮからの請求書」
ミサトは、一瞥して、他の書類の上に放ってしまう。
「リツコ、初号機の修復、どのくらいかかる？」
「そうね、他を差し止めて、総掛かりで５日ってとこかしらね。動かせるようにって程度なら……と言うのが前提だけど」
「ふーん。ユウカちゃんの様態は？」
「シンクロによる、神経へのリバウンド……今日明日は絶対安静、まともに戦闘可能になるのは早くて５日後ってとこね」
「使徒の方は？」
「『ＭＡＧＩ』の計算では、ほぼ５日で修復して再侵攻するって計算」
「……全部、５日休み、か」
イスの背もたれを軋ませる。
「ところで、起死回生のアイディアあるんだけど、いる？」
「ホント？助かるわァ。さすがは赤木リツコ博士！」
「残念だけど、それ考えたの私じゃないの……加持君よ」
「加持ィ?」
「いらないなら別にいいけど、一応見てみたら？」
サーバからコーヒーを注ぎながら、リツコはにこやかに言った。
ＥＰＩＳＯＤＥ：９ Ｂｏｔｈ ｏｆ Ｙｏｕ，Ｄａｎｃｅ Ｌｉｋｅ Ｙｏｕ Ｗａｎｔ ｔｏ Ｗｉｎ！
ユウカが目を開けた時、見慣れた真っ白い天井が見えた。
「あれ……私……どうしたんだろ？……」
「あら、お目覚め？」
「……赤木博士？」
ユウカの病室には、リツコが来ていた。
「高いシンクロによる、ダメージの反動……内臓に少しばかり影響が出ていたわ」
リツコが、ユウカの状態を説明する。
「それで、使徒はどうなったんですか？」
「ＵＮ軍の新型爆雷で受けたダメージを修復中……初号機も修復中だけどね」
「ごめんなさい……ＥＶＡ、傷つけてしまって……」
神妙な顔で謝るユウカに、リツコは微笑みながら言葉を継ぐ。
「そうね、でも……貴女のお陰で、弐号機は無事だったわ」
「アスカ、無事だったんですか……よかった」
「……貴女自身は明日一杯入院だから……明後日、ミサトが迎えに来るまで大人しくしてなさい」
「分かりました、赤木博士」
「もっと砕けた呼び方でいいのよ、ユウカさん」
「え？それじゃ……リツコ……さん」
「まあ、いいでしょ。公式の場でなければそう呼んでくれていいから……それじゃ、お大事に」
それだけ言うと、リツコは病室を後にした。
遡ること、３時間ほど前……ミサトは、加持の立てた作戦案を検討していた。
そして、リツコは傍の席で端末をいじっていた。
「今の状況で、この作戦は……難しいわね」
ミサトが呟く。
「ミサト、ある程度は妥協したら？」
「うーん、でも、上手くやらないと……ユウカちゃんが犠牲になった意味が無いもんね……」
「まぁ、必要なことがあったら言って頂戴……可能な限り協力するから」
「そうね、そんじゃ悪いけど、ユウカちゃんのお見舞い、行ってくんない？」
「どうして？」
「だって、気になってしょうがないもの」
「分かったわ。じゃ、ちょっと様子を見てくるわね。何か言伝とかあるかしら？」
「とりあえず、状態だけ確認してきてよ」
「はいはい」
リツコは、立ち上がるとコーヒーを一気に飲み干し、部屋を後にした。
「あら、ここにいたのね。随分捜したわよ、２人とも」
ミサトは、無言でブリーフィングルームにいるレイとアスカを見つけた。
「ちょうど良かったわ。チョッチ説明したいことがあるから、そのままで聞いてくれる？」
レイもアスカも、大人しく従う。
「シミュレーションの結果、分離した使徒はお互いを補い合ってることが分かったの。つまり、二体で一体ってこと……」
「それで、どうすればいいの、ミサト？」
「焦んないで、アスカ。要するに、あの使徒を倒すには分裂した２つの核に対する２点同時荷重攻撃しかないの。つまり、２機のＥＶＡによる、タイミングを完全に合わせた同時攻撃。現段階で動かせるＥＶＡは零号機と弐号機……あなた達にやってもらうしかないわ」
ここまで言って、ミサトは一息付く。
表情の変わらないレイと、不満そうなアスカの顔を見てから、ミサトは続きを話した。
「その為には……あなた達の協調、２人の完璧なユニゾンが必要となるの。２人ともここまではいいわね」
頷くレイとアスカ。
ミサトは、満足そうに話を続ける。
「と言うわけで、あなた達２人には、使徒殲滅予定の５日後まで、この本部内の一画で一緒に生活して貰うわ……」
「ちょ、ちょっと、ミサト……」
口を挟もうとするアスカを制して、ミサトは言う。
「なお、時間がないので命令拒否は許されません。部屋は……」
ブリーフィングルームの端末を操作して、ミサトはある部屋を表示する。
「ここ。作戦直前まで２人で呼吸を合わせる様に。レイ、いいわね」
「命令なら……」
「アスカは？」
「何で！アタシ一人だって、今度は負けない！」
「そうはいかないわ……この作戦以外での勝率は、皆無に等しいの。単独であの使徒に勝てる見込みはハッキリ言って０よ。それに、もしアスカが拒否するって言うんなら……」
「どうするってのよ?」
「時間は足りないかも知れないけど、ユウカちゃんにやってもらうわ」
「できるわけないでしょ！入院してるのよ、あの子！」
「それでも、よ。状態がまともだろうとそうじゃなかろうと、それが、あなた達に与えられた任務であり、あなた達が果たすべき責任なの」
冷徹に言い放つミサト。
アスカは、唇を噛んで俯く……少しして、顔を上げたときには、決意の炎が眼に宿っていた。
「いいわよ、やってやろうじゃないの！」
「それじゃ、２人とも早速移動して頂戴。部屋にウォークマンあるから、そのメロディを完璧に覚えてね」
アスカは機嫌悪そうに出ていった。
レイは、出口で足を止め、ミサトを見る。
「何、レイ？」
「ユウカさん、無事なんですか？」
「命はね。明日まで絶対安静。意識は戻ったようだけど、あなた達は任務優先。この作戦が終わったら会いに行くといいわ」
「分かりました」
レイもようやく出ていった。
ミサトは、溜息をつく。
「……リツコのヤツ、連絡くらい入れなさいよね」
「あら、帰ってきた方が早かっただけなんだけど？」
リツコが声をかける。
「へ？あ……お帰り。で、どうだった？」
「結構元気だったわよ。意識もしっかりしてたし」
「サンキュー、リツコ。後は、作業の方よろしく」
「そっちもね……お仕事頑張りなさい」
２人は、別々の方向へと歩き出した。
「ファースト、いい?」
「……何？」
ベッドに仁王立ちしたアスカが、レイに向かって言う。
「やるからには、完璧なモノを目指すからね！」
「……」
吠えるアスカに対して、レイはチラリと一瞥しただけだった。
「それと……アンタのことレイって呼ぶから、アンタもアタシのことアスカって呼んでいいからね」
顔を赤くして、そっぽを向きながらアスカはそう告げた。
「それ、命令？」
「違うわよっ！……ユウカがアタシのことそう呼んでるし、そう呼び合った方が、お互いやりやすくなるんじゃないかと思っただけよ」
「分かったわ……アスカ」
「よし、そうと決まれば、今日は寝ようっと」
「音楽、聞かないの？」
「聞きながら寝るのよ。これ、小さい割に性能いいから、オートリバースでエンドレスで聞いてれば、自然に憶えながら眠れるわ。じゃ、明日早いからお休みぃ」
アスカは、ベッドに潜り込んでしまった。
レイはヘッドフォンを耳に当て、ウォークマンを動かした。
アスカは、今日の自分を振り返る……
（あの化け物、絶対に許さない！このアスカ様をコケにした上に、ユウカまで傷付けやがって……）
レイは、音楽を聴きながら、思いふける。
（ユウカさんの替わりに、私、かならず勝つ……）
「これが、振り付け、レイが青の方ね。今日は、足元……ステップのパターンだけ憶えてくれる？」
そう言いながら、ミサトが床に敷いてあるシートを指差す。
「……ってことで、このシートの光った所を、次々と正確に踏んでね。じゃ、スタート！」
軽快な音楽が流れる。レイとアスカは、音楽に合わせて点滅する光を踏んでいく。
最初の内はほとんど正確に２人一緒に踏んでいるが、次第にずれていく。
「……ダメね、これは……」
ミサトは、呆れ顔で呟いた。
「ものになりそうかい、葛城」
「……加持……聞かないで、お願いだから……」
「……そんなにひどいのか？」
「……アンタ、あの作戦、初号機と弐号機で考えてたでしょ」
「……じゃあ、アスカとレイは全然合わないのか……」
「基本的に水と油ね。そのままじゃ、混ざりようがないわ……」
ミサトは、大きな溜息を漏らした。
「じゃあ、葛城は諦めるのか？」
「まさか、何とか２人にモノにして貰うわよ」
「……補助案、いるか？」
「何よ、それ？」
「あのな……それで……」
加持は、ミサトに耳打ちする。
「ま、やってみましょ。……あんまし乗り気しないけどね……」
翌日、レイとアスカは朝から訓練を繰り返していた。
だが、２人のテンポはどうしても合わない。
「だぁあ、もぅ！レイ、アンタもう少しこっちに合わせなさいよ！」
「……リズムに合わないのはアスカの方よ」
「あのねぇ、アンタに合わせてチンタラやってられないのよ！」
「能力があるなら、パートナーに合わせてペースダウンするのも容易いハズでしょう？」
「それじゃ、勝てないでしょうが！」
「どう、２人とも。少しは合ってきた？」
ミサトは、練習用の部屋に脳天気なノリで入ってきた。
しかし、２人の様子を見て、険悪なのに気付く。
「あー、全然みたいね」
「……ちょっと休憩していい、ミサト」
「いいけど」
それを聞くと、アスカはへたり込んだ。
トレーニングウェアに染み込んだ汗が、どれだけ訓練を頑張ったかは分かる。
だが、ミサトの立場は、それをよしとは出来ない。
「……いいわ、入って」
「はい、お邪魔します」
ミサトが、ドアを開けると、車椅子のユウカが入ってくる。
「ユウカ?」
「ユウカさん……」
「久しぶり。ミサトさんに無理言って、連れてきてもらっちゃった」
驚くアスカとレイに、照れ笑いを浮かべながら、ユウカはそう言った。
「アンタ、それ……」
「え？あ、車椅子？今日は大人しくしてろって意味だって」
「そうよ、この子……歩いてこようとしてたんだから」
ミサトは呆れたように話す。
「ユウカさん、大丈夫？」
「うん、ちょっと怠いけど、他は平気だよ」
「そーゆー事だから、ユウカちゃん見学しててね。２人は練習始めて」
ミサトの声に、２人はステップの練習を始める。
だが、その様子は完全に噛み合っていないようだった……
あとがき
どうしても、そりの合わないレイとアスカ。ミサトさんが言う通り、水と油です。
特別な方法を使わないと、決して混ざらないほどに質の違う２人です。
どうやったら、この２人でユニゾンなんて出来るんでしょうね？
次回は、この続き……使徒との決戦を書きます。
ユウカの為に……完璧なユニゾンを作り上げたアスカとレイ。
使徒との再戦の時が刻一刻と迫る。
次回、『重なる心』。
手に入れるモノは……
作成日付：２０００／１２／２７
改稿日付：２００１／０２／０５
感謝の言葉：
傷ついたユウカのことを気遣い、怒りを露にするレイちゃん。
心が育っている証拠ですね。
どうにもレイとアスカは合わないようですが、ユウカちゃんが
がんばろうにも、病院で休んでいなくちゃいけない状態なだけに
ちょっと心配です。
そういえば、トウジ達が、ユウカのことを外見も性格もいい、と
言ってましたが、微妙に的を外している気がするのは
気のせいでしょうか？
内面を直接的に表現するアスカとはタイプが違う、というだけで
それほど大差があるわけじゃない、と思えるんですけど・・・。
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第１０話「重なる心」に進む。
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読者からの反響は作者のやる気を湧き出させます。
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