「……ユウカちゃん、見ててどう思う？」
「……え、と……コメント、差し控えていいですか？」
「……いいわ、言いたい事分かったから」
レイとアスカのユニゾン訓練は続いていた。
それを見ていたミサトは、連れてきたユウカに、感想を訊いた。
……その結果は、惨憺たる物だった。
「……ユウカちゃん、出来る？」
「……出来ると思いますか？」
「どうだろね？でも、２人が最後まで合わなきゃ……ってことで、これ、憶えてね」
ミサトは、ユウカにウォークマンと振り付けのリストを渡した。
パラパラと捲ってみる。
（……同じだ……これなら多分出来る……）
「はい、とりあえず、憶えます」
「ん……じゃ、そろそろ戻る？」
「そう、ですね……」
ミサトは、ユウカの車椅子を押して出ていった。
音楽を止めて、アスカが座り込む。
「練習……続けないの？」
レイが尋ねる。
アスカは、荒い息を整えると、立ち上がって言う。
「ちょっと休憩しただけでしょ……さ、始めるわよ」
「……ユウカさん、思っていたより元気そうだった」
「そーね。でも、今度の戦闘には間に合わないから……アタシ達がやるしかないのよ、いいわね！」
アスカは、気合いを入れ直して、練習を再開した。
「見てどう思った。正直に聞かせて」
作戦部のオフィス……ユウカを連れてきたミサトは、さっきの練習の感想を再び訊いた。
「何か、ちぐはぐって言うか、噛み合わないって言うか……」
「そうね……アスカは１人で勝手に進んでしまってるし、レイは正確だけど、決して相手に合わせようとしてないわ……このままじゃ、また負けるわね」
「……私は出撃出来ないんですか？」
「……あなたの状態、初号機の修復経過……どっちも、直接戦闘は許せないけど、援護射撃くらいは可能ってとこ……」
「それじゃ……」
「でもダメ。正確に、二体の使徒に同じ行動をさせる為には、息の合った２機のＥＶＡによる同時攻撃しか意味が無いの。今のあなたじゃ、参加させるだけ無駄よ」
「……２人の為に、囮になるくらいは出来ます……」
「何言ってるの?そんなこと、あの２人だって喜びやしないわよ！」
ミサトは、ユウカの発言に、本気で怒った。
ユウカは首を竦める。
「……それより、あなたに２人を上手く説得して欲しいのよ」
「説得……ですか？」
「そう。完璧なユニゾンが出来るようにね」
「でも、何を言えば……」
「まかせるわ。部屋はコレを使って……」
ミサトが小さな紙片を渡す。
ユウカが広げて見ると、本部内のある区画のマップだった。その中の一つの部屋に印が着いている。
「ここ……ですか？」
「ええ、とりあえずは部屋でくつろいでいて」
「はい」
ユウカは、一礼して作戦部オフィスを出ていった。
第拾話 重なる心
翌日……アスカとレイが練習している部屋。
ミサトが入ってくる。
「……レイ、アスカ、とりあえず通しで一回やってみて」
ミサトの言葉に、２人はダンスを始めた。
途中までは問題なく踊っているが、曲のテンポが変わる瞬間に調子が狂い始め、結果、とても成功するとは思えなくなる。
「……昨日、ユウカちゃんを連れてきて喝を入れようと思ったのに……逆効果よね、加持のバカたれ……」
ミサトは、２人に聞こえないくらいの小声で嫌味を言った。
「入ります」
声をかけて、ユウカが中に入ってくる。
キチンとトレーニングウェアに身を包んでいる。
「ユウカちゃん、その格好……」
「体が鈍っちゃうんで、ここで一緒に動かしてていいですか？」
「……ここは運動場じゃな……」
「いいじゃないか、葛城……彼女がいたって問題ないだろ」
ユウカの後ろから加持が顔を出すと、ミサトの話を遮る。
「加持ィ……アンタ、何しに来たの?」
「加持さん」
アスカが呟く。
「俺も彼女と一緒で、１人で暇してたんでね」
ミサトの問いかけをサラリとかわして、加持は折り畳みイスに座る。
「……ホントに、アンタ何考えてんの？」
加持の隣に立ったミサトは、小声で訊く。
「……俺の考えじゃないよ、彼女に頼まれたのさ」
「頼まれたって、何を？」
「ま、黙って見てなよ……」
その間にも、ユウカは黙ってストレッチを始める。
レイとアスカは、手を休めて、その様子を見ていた。
「ねぇ、ユウカ……アンタ、大丈夫なの？」
「……何が？」
「何が……って、アンタの身体よ。無茶してんじゃないの？」
「別に……それより、レイさんでもアスカでもいいから、一回一緒にやらせてくれない？」
「あのねぇ……アタシとレイがやってるのって結構難しいことよ。それに、かなりキツいんだからね」
「いいから、レイさん……やろ」
ユウカは、レイの手を取って広いところへ行く。
音楽に合わせて、２人が踊り始める。
ユウカは、アスカのパートを正確に、しかも、レイのスピードに合わせて踊ってみせる。
「あら、ま……パーフェクツ」
「いつ憶えたんだろうねェ」
「……何で、あんなに簡単に踊れるのよ……」
踊り終えると、今度はアスカの手を掴む。
「さ、今度はアスカの番」
「な、ちょっ、ちょっと……」
座り込むレイ、ミサトは、レイに尋ねる。
「アスカと較べてどうだった？」
「……答えなければいけませんか？」
「出来れば……ね」
「……ユウカさんは、自分から合わせてくれます」
ミサトは口をつぐんで、考え込む。
（ユウカちゃん、何をしたいの？）
その間にも、ユウカとアスカは完璧なダンスを踊っていた。
「またまた、完璧ね」
「いや、驚いたねどうも……」
「ユウカさん……」
踊り終わって、息をつくアスカ。
ユウカは、またレイに手を差し出して言う。
「さ、レイさん。もう一回踊ろ」
「ちょっと、ユウカちゃん……あなた、病み上がりなのに無理しちゃダメで……」
「葛城、いいじゃないか……俺達は見てようぜ」
加持は、ミサトのセリフを途中で止める。
「な、何言うのアンタ?」
「俺は、お前を止めるように頼まれてるからな……」
「そんな無茶苦茶な！」
その間にも、ユウカはレイと一緒に踊っている。
「……さっきより、早くなってる？」
アスカは、ユウカとレイのテンポが、先程より少しばかり早くなっているのに気付いた。
その呟きを聞いたミサトも、２人のダンスを見る。
踊り終えたユウカは、荒い息をつきながら、再びアスカを誘う。
「少し休んだら？」
「いいよ、それより、もう少し付き合ってよ、アスカ」
強引にアスカを立たせて、またダンスを始める。
そのテンポは、さっきアスカと踊った時より少し遅かった。
それを見たミサトは、ユウカの思惑に気付いた……
その後、さらに二回ずつ２人と踊ったユウカは、息を切れ切れにしながら、部屋の外に出ていく。
「私、用事思い出したから、ここで失礼します」
パタンと閉じたドア。
「加持、２人のダンス見てて！」
ミサトは急いで部屋の外に出る。
そこには、苦しそうに倒れているユウカの姿があった。
「やっぱり、無理してたのね！」
「ミサト……さん……ハァ……疲れちゃいました……」
「……どうして、こんな無茶な事を?」
青ざめた顔に無理矢理笑顔を浮かべて、ユウカは言った。
「他に……考え……思い……つかなかった……から……」
ミサトは、廊下にある端末を使って、人を呼ぶ。
暫くしてやってきた救護班に、ユウカを連れて行かせた。
「……どうして、あの子って……こんな無理ばかりするのよ……」
その様子を見送りながら、ミサトはポツリと呟いた。
ミサトは、静かに部屋に戻ってきた。
その顔は、もの凄く不機嫌そうである。
「ん？お帰りかい、葛城」
気付いた加持が声をかけた。
「……アンタ、分かってて協力したの？」
「まぁね……それより、見なよ、葛城」
ミサトは、加持の指す方を見た。
レイとアスカのダンスに、違和感が無くなってきていた。
「彼女の思惑通り、か」
「ああ、少しずつそれぞれを矯正したのさ。見事なモンだね」
ダンスが終わる。息の荒い２人が、ミサトの元に駆け寄ってくる。
「「ユウカ（さん）は?」」
「無理して、病室に逆戻りよ。２人の練習が上手くいってないって言ったら、それを気にしてね……自分が倒れるまで無茶しなくてもいいのに……」
「おい、葛城……」
加持に声をかけられ、ミサトは口を滑らせてしまった事に気付いた。
「何よ、それ?」
「ユウカさん、大丈夫なんですか？」
「え、あ、ちょ、ちょっと待って。２人とも落ち着いて……今、彼女は疲れて眠ってるだけなのよ」
「ホントなの、ミサト?」
「嘘付いてどーすんのよ……彼女のことを心配するなら、彼女のためにもあなた達は完璧なユニゾンを完成させなさい」
渋々引き下がった２人は、再びダンスの練習を始めた。
「ねぇ、レイ」
「……何、アスカ？」
「ユウカ……大丈夫かな？」
「……私達に出来ることをしましょう」
（そう……ユウカさんの為にも……）
レイは、立ち上がって身体を動かす。
「ったく……ユウカやアンタにばかりいい所持ってかせやしないからね！」
アスカも腰を上げて、練習を始めた。
今や、２人の動きは完璧にユニゾンとなり、一拍のズレもない。
踊りを終えた時、２人は奇妙な連帯感を感じていた。
そして、そのまま意識を失い、深い眠りについていく……
ＥＰＩＳＯＤＥ：１０ ＴＲＩＮＩＴＹ
ネルフ・第一発令所……正面のメインモニターには、使徒の姿が拡大されていた。
「いよいよ、敵さんのお目覚めね……」
発令所には、ミサトとリツコが立ち、司令席の横に冬月、少し下がったところに加持、オペレーター席に日向、青葉、マヤがいる。
いつもの面々だ。
「そうね。ミサト、作戦は上手く準備できたの？」
「も〜バッチシよ！発進準備は？」
マヤが答える。
「零号機、初号機、弐号機ともに準備中です。ただ、パイロットが……」
「……発進準備は進めておいて。目標が強羅まで来たら出撃よ」
そう言うと、ミサトはメインモニターを睨み付ける。
「目標、強羅絶対防衛線突破！」
「現在、山間部を第３新東京市に向かい侵攻中！」
モニターには、再び融合して、一体になった使徒が映し出される。
「また一体かぁ……作戦案Ｂで行くわ。３機とも所定の位置に配置！」
「葛城一尉、作戦案Ｂとは？」
冬月が尋ねる。
「ハイ、これは、目標が再び一体で侵攻してきた場合、初号機の攻撃によって再び分離させ、予定通りの２点同時荷重攻撃にて目標を殲滅します」
「分離させるだけの攻撃は可能なのかね？」
「ハイ、ポジトロンライフルでの集中射撃ならば、十二分なダメージと思われます」
「いいだろう。前回のような失態は許されんぞ?」
「承知しています」
ミサトの表情は、自信に満ちあふれていた。
初号機コックピット内……ユウカは、浅い眠りについていた。
不意に、通信が入る。
「はい……」
『ユウカちゃん、いい？作戦Ｂでいくから、初撃よろしくね』
「了解です、ミサトさん」
まだ、ユウカの顔色はよくない。だが、ここで引き下がるわけにいかないのは、誰よりもユウカ自身がよく分かっていた。
使徒が第３新東京市にたどり着く。
初号機が迎え撃つ。
ポジトロンライフルが火を噴き、光弾が使徒に吸い込まれる。
使徒は、動きを止めて、分裂を開始した。
『今よ、零号機、弐号機、発進！』
ミサトの号令に合わせ、零号機と弐号機が発進口より出現する。
分裂した使徒の、それぞれの前に降り立つ２機のＥＶＡ。
「いい、レイ。一気に決めるわよ」
「了解、内部電源が切れる６２秒で殲滅……」
２機のＥＶＡの動きは、正確に左右逆の動きをする。
ジャンプすると、使徒に急降下して膝蹴りを決める。
たじろぐ使徒を後目に、後方に退くと、武器庫ビルからパレットライフルを取り出し構える。
使徒が顔から光線を放つが、ＥＶＡはバック転で回避して、射撃を行う。
使徒は、両腕を伸ばして、ＥＶＡが隠れた兵装ビルを切り裂く。
だが、ＥＶＡの姿はすでにそこに無く、低い姿勢で使徒の懐に潜り込んでいた。
『いける！もう少しよ！』
２機のＥＶＡの掬い上げるようなキックが２体の使徒を吹き飛ばす！
使徒は、再び合体体勢を取る。
そこへ、ジャンプした２機のＥＶＡが、コアにキックを決めた……
合体することを許されず、使徒は……爆発する。
『着地のタイミング……外れたわね』
『……』
２機のＥＶＡは、爆心地のクレーターの中で倒れていた。
『ま、結果としてはまぁまぁかな……』
『……そうね』
『ところで、そっち動く？』
『いいえ。そっちは？』
『動くわけ無いじゃん。完璧に電池切れ……』
『回収まで待つしか無いわね……』
『最後、締まらなかったなぁ……』
レイとアスカの会話は、発令所に筒抜けだった。
「随分うち解けたみたいね」
リツコが呟く。
「そうね。あの子達が言ってるように、回収班出して」
「分かりました、回収班、ＥＶＡ零号機と弐号機の回収に向かって下さい」
ミサトの指示に、日向が回収班を促す。
「最後が決まらんな……」
冬月はポツリと漏らした。
歓声と笑い声に包まれる発令所……ただ、マヤだけが異常に気付いた。
「初号機パイロット、生命反応低下しています！」
「何ですって?」
ミサトが振り返る。
「自力で戻れそうにないみたいね……初号機にも回収班廻して。それと救護班も……」
リツコが新しい指示を加えた……
「あー……まただ……」
「当然ね。ちなみに、今は面会謝絶中よ」
「……リツコさん？」
「そう。ミサトは結果報告におわれてるから替わりにね」
「ありがとうございます」
「お礼なんていいわ。ＥＶＡのチェックだけなら指示を出しておけばいいことだもの」
そう言いながら、リツコは携帯用の端末に何か打ち込んでいた。
「何のデータですか？」
「……気にしなくていいわ。ただの事後報告書だから」
「えーと、私、何でここにいるんでしょうか？」
「戦闘中に気を失ったのよ、貴女は……」
「ご迷惑をお掛けします……」
神妙な顔で謝るユウカ。
リツコは、思わず吹き出してしまう。
「あ、あのぉ……私、何か変なこと言いました？」
「いいえ……昔会った、ある人を思いだしただけ……」
「……？」
「様子も確認出来たし、静かな所で仕事も捗ったし……研究室に戻ろうかしらね」
そう言うと、リツコは帰り支度を始めた。
「２・３日はこのまま面会謝絶。その間は、発令所の誰かが様子を見に来るはずよ。ミサト以外がね」
「ミサトさんは？」
「責任者の仕事をして貰ってるだけよ。碇司令が、今、いらっしゃらないから」
それだけ言って、リツコは出ていった。
翌日、ユウカの部屋に客が現れた。
ショートカットの女性……顔は記憶にあるのだが……
「あの、お姉さん、どなたですか？お顔は知ってるんですけど……」
（えーと、名前……なんだっけ……）
「私、伊吹マヤ。先輩……赤木博士の直属の部下にあたるの。実験とかで何度か顔は合わせてるけど、ちゃんとした挨拶は始めてね。よろしく、ユウカさん」
「あ、はい……こちらこそ、よろしくお願いします」
「今日は、発令所を代表してお見舞いに来たの。少し話してっていいかしら？」
「どうぞ、大歓迎です」
ユウカは、満面の笑みでマヤを迎えた。
時間にして３時間ほど、２人は取り留めのない話をしていたが、昼食の時間になって、マヤは帰っていった。
さらに、その翌日。
長髪の青年が、ギターケースを背負って現れた。
「やぁ、聞いてた以上に元気そうだね」
「えーと？どなたでしたっけ？」
「名乗るのは初めてかな？俺は、司令部付きのオペレーターで青葉シゲル。よろしく」
「青葉さんですか……よろしくお願いします」
「ところで、ユウカちゃん……でいいかな？」
「いいですよ」
「ＯＫ、それじゃ、ユウカちゃんは音楽好きかい？」
「？嫌いじゃないですけど……」
「そうか、それじゃ、何か弾いてあげるから、リクエストとかあるかい？」
そう言いながら、青葉はギターを用意する。
苦笑を浮かべながら、ユウカは昔のバンドの曲をリクエストした……
青葉は、１曲弾いては解説をして、また弾いては解説をする、といった、ゆっくりしたペースで弾き語りを聴かせてくれた。
ユウカが満足した頃、昼食の時間になって、青葉は帰っていった……
暗闇の中に声だけが響く……
「碇君、あまり我々を失望させないでくれないかね」
「全くだ。我等の望みは『人類補完計画』の速やかなる遂行なのだよ」
「これまでのＥＶＡシリーズの補修費用……どれだけの国家が苦しんでいる事か……」
「左様。君の都合だけで、あまりにも使い過ぎている」
「……碇、君の本来の仕事はどれだけ進んでいるのかね？」
「……若干、遅れがちですが、まだ修正可能範囲内です。ただし、今後、使徒を速やかに殲滅できれば……の話ですが」
ゲンドウは、淡々と言葉を綴った。
「フン……いいだろう。予算面に関してはこちらで処理する」
「下がっていい」
ゲンドウは静かに部屋を出ていく。
それを確認して、新たな議題が持ち上がった。
「碇の娘……あの力は驚異的だ……」
「うむ、これからの計画遂行において、良きに付け悪しきに付け注意が必要だな……」
「……あの力、上手く我々の為に使わねばならん」
「何かしら、手を打っておくべきだ……」
「……今はとりあえず監視だけに留めておこう……下手に刺激して、悪い結果が出るのは避けねばならんからな……」
議長然とした、バイザーの男の言葉を聞いて、他の男達も退出していく。
そこに残ったバイザーの男……キール・ローレンツは、１人呟く。
「碇よ……お前が何を考えているかは知らぬが、こちらにもそれなりの考えがあるのだぞ……忘れるなよ……」
「……冬月か、結果はこちらでも把握している」
『そうか……で、戻るのはいつだ？』
「明日にはこちらを立つ。明後日の予定だ……」
『分かった。その様に対処しよう』
「すまん……ところで……」
『……ユウカ君の事か？単なる体調不良だそうだ……やはり、心配か？』
「……それならいい……戻るまで、よろしく頼む……」
『碇……もっと素直になった方がいいぞ……』
「今更、変わり様もあるまい……」
ゲンドウは、通信を切った。
その顔には、僅かに安堵の笑みが浮かんでいた。
ミサトが病室に入った時、ユウカはスヤスヤと眠っていた。
「あらぁ、お休み中かぁ……」
ミサトは備え付けのイスに座ると、愛おしげにユウカの頭をそおっと撫でる……
その時、ユウカが目覚めた。
「あ……れ？ミサトさん？」
「よく寝てたわね……どう、調子は？」
「はい、大分いいです」
笑顔で答えるユウカ。
「ホント〜?こないだの事もあるし、信用できないな〜」
茶化したように言うミサト。
「そんなぁ〜信用して下さいよ、ミサトさん」
「ま、いいでしょ。早く帰ってきて貰わないと、また、ウチの人口増えたしねぇ」
「え？増えたって……誰が？」
「アスカよ。結局一緒に預かる事にしたの。そうね……午後には２人も来ると思うから、ゆっくり待ってなさい」
「は〜い」
４時頃、ユウカが病院の待合室で本を読んでいると、レイとアスカが目の前を通った。
「レイさん、アスカ」
ユウカが声をかけると、２人はキョロキョロ辺りを見回す。
ユウカは、後ろから近付いて、ポンとレイの肩を叩く。
「はーい。２人ともどーしたの？」
悪戯そうな笑顔のユウカが、２人の目に入った。
「アンタ、こんなとこで何やってるのよ?」
「ユウカさん、大丈夫なの？」
「うん、大丈夫」
そう言って、またベンチに戻る。
レイとアスカが、ユウカを挟むように座った。
「……ユウカ、アンタってホンットに無茶するわね」
アスカが呆れたように言う。
「そう？そうかなあ？」
「ユウカさん、今度は私が守るから……」
レイが真摯な眼でユウカに訴える。
「そんな……それより、戦闘の事教えてよ。私、気を失ってたからさ……」
３人は、揃って病棟へ移動していった……
その様子は、まるで仲の良い姉妹のように見えた。
あとがき
前回、ユニゾンを組ませる作戦を立てましたが、レイとアスカでは、なかなか上手くいきません。
ミサトから、レイもアスカも相手に合わせようとしないのを知って、ユウカは賭に出ます。
２人と一緒に、でも、微妙にテンポを変えながら踊る……『彼』が練習したものと同じだからこそ、ユウカにも出来たのですが。
無理をしたユウカが倒れて、初めてレイもアスカも彼女の考えを悟り、彼女のために協力をします。
『こんな、ありきたりな、単純な方法でいいのか?』と思われる方もいらっしゃるでしょうが、演出重視・イメージ重視のエヴァンゲリオン、その二次小説ですので、展開の流れを重視して、無理矢理こんな形にしました。
気に入らない方、ご容赦下さい。
次回、灼熱の溶岩の底に眠る、使徒……
いかなる方法を持って、ネルフはこれに対処するのか？
次回、『灼熱の底へ』。
……どうぞ、よろしく。
作成日付：２０００／１２／３０
改稿日付：２００１／０２／０５
感謝の言葉：
バラバラだったアスカとレイも、ユニゾンに成功して、今後の
葛城家での生活も順風満帆って感じですね。
ゲンちゃんはユウカが心配なようだし、ＮＥＲＶとしては、今後の体制に
不安はなくなってきたような気がします。
が、ゼーレの暗躍も始まるようなので、そのあたりの展開は要注目でしょう。
さ、続きが読みたいと思った人は感想メールで催促しましょう♪
トップページに戻る。
第１１話「灼熱の底へ」に進む。
作者のＡＢＣさんへの感想メールはこちら（abebeabebe@ksn.biglobe.ne.jp）まで。
読者からの反響は作者のやる気を湧き出させます。
続きが読みたい人は、感想メールを送りましょうね。