今から遡ること、１５年前……西暦２０００年、南極。
現在ではセカンド・インパクトとして知られる、大災厄（カタストロフィ）が起きた。
風が唸りを上げ、雪煙が舞う。
その中を、何者かが人を抱えて歩いていた。
その人物は、目の前に見えた脱出カプセルに近付き、血に染まった手で蓋を開けた。
その時、強い風が吹き、崩れ掛けていた屋根が吹き飛ぶ。
そこから、自ら光り輝く巨人の姿が見えた……
カプセルに収められた少女が、頬に滴った血に気付き、眼を覚ます。
「お父さん……？」
カプセルの蓋は、少女を護るように力強く閉じられ、その男は力つきたようにカプセルに覆い被さる。
そして、強大な衝撃波が全てを吹き飛ばした……
南極を覆い尽くすような雲の中から、天空に伸びる光の翼……
それは、ゆっくりと羽ばたくような動きを見せる。
波間を漂う、脱出カプセル……そのハッチが開かれ、胸元を押さえながらヨロヨロと立ち上がる少女。
その眼前には、巨大な２本の光の柱がそびえ立っている。
少女は、胸に下げた十字架のペンダントを握りしめた……
現在、ネルフ本部。
リツコの実験室に、今はリツコとマヤ、そしてユウカがいた。
ユウカの健康状態を確認するために、リツコに呼ばれていたのだった。
「……特に異常はなさそうね。もう服を着て良いわよ」
「はい」
ユウカが制服を着ている間にも、リツコとマヤはテキパキと作業を進めていた。
「あのぉ……リツコさん、前から聞きたいことがあったんですけど、質問して良いですか？」
「そうね。何かしら？」
作業の手を止めずに、リツコが聞き返す。
「はぁ……セカンド・インパクトについてなんですけど、学校で、隕石の衝突って聞いたんですけど本当なんですか？」
「……あなたには教えてもいいかも知れないわね。アレは、本当の原因は全く違うの。……あの時、人類は、最初の”使徒”と呼称する人型の物体を発見したの。でも、その調査中に原因不明の大爆発を起こしたのよ。それが、セカンド・インパクトの真相……」
（やっぱり、同じ事を言ってる……でも、原因は分かってるハズなのに……）
リツコの説明を聞いたユウカは、自分の持つ『記憶』と照らし合わせる。
納得したような表情を作り、ユウカは一礼して部屋を出た……
第拾伍話 奇跡の価値は
ミサトは、部屋の中で身支度を整えていた。
胸元に、傷跡が見える。
鏡に写ったそれを見て、ミサトは苦しげな、そして切なげな表情をする。
窓の外に雨が降りしきり、雷鳴が轟く。
その、一瞬の光が、机の上に置かれた十字架を浮かび上がらせた……
「いや、ほんまに助かったわ」
「悪いね、お邪魔して」
トウジとケンスケは、ユウカから借りたタオルで頭を拭いていた。
「しょうがないよ。急に降り出したんだもんね」
そう言いながら、ユウカは紅茶を淹れる。
テーブルには、５つのカップが載っていた。
「あら、来てたの？」
ミサトが部屋から出てくる。
ケンスケは、そのジャケットの襟章に目を留まらせた。
「この度は、御昇進おめでとうございます」
「……ありがと」
ちょっと困ったような顔をしながら、ミサトは礼を言った。
そして、そのまま外出した。
「？ケンスケ君、ミサトさんに何か変わった所あった？」
ユウカは、カップに紅茶を注ぎながら尋ねる。
「気付かなかったのかい？ミサトさんの襟章、線が２本になってたんだ。一尉から三佐に昇進したんだよ！」
「よう気が付くな、そんな細かいとこまで……」
意気込んで話すケンスケの様子に、トウジが呆れた顔をする。
「そうなんだ……」
ユウカは、ケンスケとトウジにカップを手渡した。
「うん、これは絶対お祝いすべきだよ！ユウカちゃん、ミサトさんが早く帰ってくる日っていつ?」
力説するケンスケ。
ユウカとトウジは額に脂汗を浮かべながら、聞いていた。
「あ……そうね……明後日、かな？」
「明後日だね?じゃ、パーティーの準備、任せてよ！」
そう言って、一人で勝手に盛り上がるケンスケであった……
ネルフ本部・第二作戦会議室。
「……で、先日の被害状況は？」
入ってくるなり、ミサトが尋ねる。
「はい、電線の物理的な切断が２７箇所、プログラム操作による巧妙な隠蔽工作が１０箇所発見されました……現段階で、５８％まで復旧しています」
マヤの報告が行われる。
「やはり、誰かが故意にやったってことね」
「身柄を確保した連中から、情報は手に入りませんでした……」
ミサトの呟きに、日向が答える。
「何者であろうと、目的はここの調査ね。復旧ルートから構造は推測できるもの。『ＭＡＧＩ』にダミープログラムを走らせといたから全体の把握は出来なかっただろうけど……」
「シャクなヤツらね」
リツコの意見を聞いて、ミサトが感想を漏らす。
「捕まえた連中、もう少し締め上げますか？」
「多分、無駄ね……しょうがないから、市外に放りだしときましょ」
日向がミサトに耳打ちするが、ミサトは、あっさりと諦めている。
「でも、本部初の被害が人間にやられたなんて、やりきれないですね」
マヤは、憂鬱げに呟いた。
「それにしても……内部に手引きした者がいることは間違いないわね」
「今、調査部が所員全員の動向を詳しくチェックしてるわ」
「そう……終わったらアタシの方にも報告頂戴ね」
ミサトは、そう言い残して出ていった。
リツコは、そのドアを見ながら呟く。
「……案外、核心は近くにあるものよ、ミサト……」
葛城家のキッチン……テーブルには、イスの上に立つケンスケと、その前で顔を見合わせているユウカとトウジの姿があった。
「さぁ、ミサトさんの御昇進祝賀パーティーの準備を始めようではありませんか！」
ケンスケが熱弁を振るうが、ユウカとトウジは呆れ顔だ。
「なあ、ユウカ……綾波とアスカはどないしてん？」
「２人とも本部に行ってる。ただ、アスカは助っ人を寄越すって言ってたけど……」
「戻ってこんのか？」
「ううん、７時くらいにミサトさんと一緒に帰ってくるって……」
ピンポーン
玄関のチャイムが鳴る。
「はーい」
ユウカが玄関に向かい、ドアを開ける。
「こんにちは、ユウカさん」
「あ、ヒカリさん……そうか、アスカが言ってた助っ人って……」
「うん。お邪魔していい？」
「どうぞ」
ユウカは、ヒカリをキッチンまで連れて行く。
「お？委員長やないか」
「鈴原君、相田君、こんにちは……それでユウカさん、私は何をすればいい？」
「うーん、それじゃ、２人で料理の準備しようか」
ユウカがそう言うと、ケンスケもトウジに向かって言う。
「よし、俺達はあっちの部屋を飾り付けよう。いくぞ、トウジ！」
「へぇへぇ……ほな、上手いモン頼むな、委員長、ユウカ……」
疲れたような感じで、トウジはケンスケに付いていった。
冷蔵庫を覗いたユウカは、思いついたように携帯を取り出す。
「どこへ掛けるの？」
ヒカリの問いに、ユウカは軽く微笑んで答えた。
「マナに。材料足りないみたいだから、買ってきて貰おうかなって」
そう言ってる内に、相手に繋がったようだ。
「それでは、ミサトさんの御昇進を祝って、乾杯！」
ケンスケの合図で、全員が乾杯をする。
ミサトが上座で、缶ビールを手にし、ユウカ、レイ、アスカ、トウジ、ケンスケ、ヒカリ、マナの７人がジュースを入れたコップを持っている。
ペンペンは、ユウカの膝の上に座らされていた。
並べられた料理をみんなでつまむ。
「よっ、お招きに預かるよ」
「こんばんは、失礼するわね」
加持とリツコが遅れてやって来た。
２人は、ミサトの傍に腰を下ろす。
「葛城、昇進おめでとう。司令と副司令もこれで安心して留守に出来るってモンだな」
「そうね、それだけ信頼されているって事よね」
加持とリツコがなかば冷やかすように言った。
「え、父はいないんですか？」
ユウカは、２人の発言に対し思わず聞き返した。
「ええ。碇司令は、今南極にいるわ」
リツコの答えに、ユウカは思いを巡らせる。
（そうか……アレ、取りにいってるんだ……なら、今度はあの使徒か……時間がずれても、起きることは変わらないって事か……）
海面は赤紫に染まり、無数に突き出る塩の柱が見える。
この地はかつて南極大陸と呼ばれた地……その、死に絶えた海を進む艦隊。
旗艦とおぼしき重巡洋艦のブリッジには、ゲンドウと冬月の姿があった。
併走する空母の甲板上には巨大な棒状の物体が乗せられていた。
「いかなる生命の存在も許さない死の世界、南極……いや、地獄と言うべきかな」
冬月はそう呟いた。
「だが、我々人類はここに立っている。生物として、生きたままでだ……」
「科学の力で守られているからな……」
「科学は人の力だよ」
ゲンドウが言う。
「その傲慢が、１５年前の悲劇……セカンド・インパクトを引き起こした……結果、この有様だ。与えられた罰にしてはあまりに大きすぎる。まさに死海そのものだよ」
冬月は周囲を見渡して言った。
ゲンドウはそれに答える。
「だが、原罪の汚れ無き、浄化された世界だ」
「二度と有って欲しくはない事だ……」
「失敗はせんよ……今度は……確実だ」
ゲンドウは口の端に僅かに笑みを浮かべた。
「第６サーチ衛星より目標の映像データの受信を確認！モニターへ回します！」
青葉の絶叫のような声が発令所に響き渡る。
メインモニターに映し出された姿は、シュールレアリスムの絵画に厚みを加えたような不可思議な物体だった。
それが身体を振るわせると、衛星が砕かれて消える。
最後に衛星が送ってきた映像は、可視状態のＡＴフィールドが迫ってくる様であった。
別の衛星の映像に切り替わる。
使徒は、左の突端を分離し、地上に降下させた。
モニターに、今までの落下地点を全て重ね合わせた状態で地図が映し出される。
「たいした破壊力ね。さっすがＡＴフィールド」
ミサトが呆れたように零す。
「落下のエネルギーと質量を利用しています。使徒そのものが爆弾みたいなものですね」
マヤが現在判明していることを報告する。
「とりあえず、初段は大ハズレ。で、２時間後の第２射がそこ……」
「後は確実に誤差を修正しています」
ミサトの呟きに、マヤが補正を加える。
「学習してるってことか……」
衛星からの映像が映る。
使徒の周囲に爆炎が見えるが、使徒にはまったく効果が無いように見えた。
「新型ｎ２爆雷による攻撃の効果も確認できません」
「……以後、使徒による電波攪乱のため消息は不明」
日向と青葉の報告が続き、ミサトの頬に汗が浮かぶ。
「……来るわね、多分」
「次はここに、本体ごとね」
リツコはあっさりと言い放つ。
「南極への連絡は？」
「使徒によるジャミングのため、未だ繋がりません」
「『ＭＡＧＩ』の決議は？」
「全機一致で撤退を推奨しています」
マヤの報告を聞いたミサトは、少し考え込む。
そして、おもむろに言った。
「日本政府各省に通達……ネルフ権限において特別宣言Ｄ－１７を発令します。半径５０㎞以内の全市民はすぐに退避させて。松代には『ＭＡＧＩ』のバックアップ要請」
「ここを放棄するんですか?」
日向が驚いて尋ねる。
ミサトは、落ち着いた表情で淡々と答えた。
「いいえ。ただ、みんなで危険な橋を渡る必要はないわ」
女性用化粧室、ミサトがコンパクトをしまおうとしていると、リツコが入ってきた。
「あなたの勝手な判断でＥＶＡを３機とも捨てる気？」
「ＥＶＡに賭けるだけよ」
「葛城三佐！」
「現責任者は私です。やれることはやっておきたいの。使徒殲滅は私の仕事だから……」
そう言って、立ち去るミサトの背中に、リツコは吐き捨てるように言う。
「仕事?笑わせるわね。自分の復讐のためでしょう?」
ミサトは答えることなく戻っていった。
ＥＰＩＳＯＤＥ：１５
Ｓｈｅ Ｓａｉｄ，”Ｄｏｎ’ｔ ｍａｋｅ ｏｔｈｅｒｓ ｓｕｆｆｅｒ
ｆｏｒ ｙｏｕｒ ｐｅｒｓｏｎａｌ ｈａｒｔｅｄ．”
ミサトは、ブリーフィングルームに３人のパイロットを集めて作戦を説明する。
「……落下予測地点にＥＶＡを配置。ＡＴフィールド最大で直接使徒を受け止めるの。単純でしょ？」
アスカが質問する。
「使徒が予測コースを大きく外れたら？」
「その時はアウト」
「機体が衝撃に耐えられなかったら？」
「その時もアウトね」
「勝算はどんなもん？」
「神のみぞ知る、ってとこかしら？」
質問したアスカは呆れかえる。
ユウカも苦笑いを浮かべる。
「これで上手くいったら、まさに奇跡ね」
アスカが溜息と共に呟くと、ミサトがしれっとして言い放つ。
「奇跡ってのは、起こしてこそ初めて価値があるのよ」
「つまり、なんとかしてみせろって事ね……」
「済まないけど、他に方法が無いの」
そう言うと、ミサトは脇に抱えていたボードを手にする。
「今回の作戦では、原則として遺書を書いて貰うんだけど、どうする？」
「別にいいわ。死ぬつもりなんか無いからね」
「私もいい」
「え……と、私もいらないです」
それを聞くと、ミサトは無理に笑顔を作り、言った。
「済まないわね。終わったらみんなにステーキでも奢るわ」
「約束だからね、思いっ切り食べるから覚悟しなさいよ！」
「ありがとう、ミサトさん」
アスカがミサトに指を突きつけるように言い放ち、ユウカは嬉しそうに微笑む。
レイは何も言わずに、何か考えてるように見える。
ミサトは、プラグスーツを着て、再び集合するように言った。
ユウカ達はブリーフィングルームを出て、エレベーターに乗る。
アスカがつまらなそうに口を開く。
「ミサトも古いわね。御馳走と言えばステーキなんて、やっぱセカンド・インパクト世代って事ね」
「私、行かない……肉、嫌いだもの」
「ま、ミサトの給料なんてたかが知れてるし、他の店選ぶからアンタも来なさいって」
アスカは、どこからか取り出したガイドブックを片手に、レイの肩を軽く叩いてそう言った。
ユウカがポツリと呟く。
「ラーメンくらいかなぁ。ウチの家計から見ても……」
アスカは、それを聞いて固まってしまった。
発令所、メインモニターに第３新東京市の地図が表示される。
「これが、『ＭＡＧＩ』が予測した落下地点よ」
「こんなに広いのォ?」
ミサトのあっさりとした言葉に、アスカが思いっ切り大声を上げる。
モニターに番号が表示される。
「これが、それぞれの待機場所。使徒の落下地点が定まったら、そこへ向けて、全機最大速で移動、使徒を受け止めて殲滅。いいわね」
３人が頷く。
ミサトは、それを振り向きもせず、命令を下す。
「ＥＶＡ各機、発進準備！」
３人のパイロットが出ていった後、発令所にはいつもの顔ぶれが残った。
「あなた達も退避して。ここは私一人でいいから」
ミサトがそう言うと、青葉と日向が言い返す。
「いえ、これも仕事ッスから」
「子供達だけ危ない目には遭わせられませんよ」
「あの子達なら大丈夫よ。もしＥＶＡが大破しても、ＡＴフィールドが守ってくれるわ……結局は、ＥＶＡの中が一番安全なのよ……」
ミサトは、独り言のように呟いた。
「目標を最大望遠で確認！距離、約２万５千！」
青葉が報告する。
「おいでなすったわね」
ミサトはニヤリと笑みを浮かべる。
「ＥＶＡ全機、スタート！『ＭＡＧＩ』による落下予想地点、エリアＢ－２。肉眼で捉えるまでとにかく走って！そこからは、あなた達の判断にまかせるわ！」
ミサトの言葉に従って、ＥＶＡが走り出した。
零号機が、後ろに聳える山々を、見る間に小さくする。
弐号機が高圧線の上を飛び越え、その衝撃で電線が揺れる。
初号機がビルの谷間を駆け抜ける。
（お願い、ガンバって……）
初号機のコックピットで、ユウカは意識を集中させる。
初号機の走るスピードが、少しずつ加速される。
雲を割って、使徒が姿を現す。
初号機が、使徒の真下に走り込む。
「止まってぇ！」
初号機が両腕を天に差し上げ、ＡＴフィールドの壁をもって使徒を受け止める。
衝撃や熱をＡＴフィールドで緩和しても、その落下エネルギーを伴う質量は尋常ではない。
初号機の両腕に亀裂が走り、体液が吹き出す。
「ウグゥゥゥッ……ウァァァァァァァァァッ！」
ユウカは、逆流する腕の痛みに耐え、『力』を初号機の全体に広げる。
初号機は、使徒を完全に支える格好となった。
『ごめんなさい、もう少し我慢して……』
零号機が駆け込み、プログナイフで使徒のＡＴフィールドを切り裂く。
『お待たせっ！真打ち登場ってね！』
弐号機が、零号機が作った切れ目から見える使徒に、プログナイフを突き立てる。
『くぉのぉぉぉぉぉぉぉっ！』
弐号機は、刺したナイフを力一杯ねじ込む。
使徒は、力無く初号機のＡＴフィールドに被さり……大爆発を起こした。
『ふぅ……なんとかなったわね』
『ユウカさん、腕、大丈夫？』
アスカがようやく息を吐き、レイは初号機からユウカへのフィードバックを心配する。
「……だい……じょ……ぶ……だよ」
ユウカは、疲れた身体にむち打って、それだけ答えた。
「申し訳有りません、司令。私の勝手な判断で初号機を破損してしまいました」
ようやく、南極のゲンドウと通信が繋がった。
プログスーツから普段着に着替えているユウカ達も、この発令所にいた。
ミサトは、開口一番、謝罪する。
『葛城三佐、使徒は殲滅出来たのか？』
「はい……」
『ならいい。御苦労だった、葛城三佐……パイロットはいるか？』
「はい、全員揃ってます」
『うむ……よくやった、これからも頼むぞ』
（アメのつもり？まぁ、好きに言ったらいいわ。あなたなんかに媚びる気もないし……）
ユウカは冷めた表情で、その言葉を聞いていた。
アスカとレイは、普通に返事したようだったが……
「さあって、ミサト。行くとこ行きましょうか」
ゲンドウとの通信が済んだ後、アスカが言った。
「え？ま、まさか今から？そ、それはちょっと……」
ミサトの頬が引きつる。
それを見たリツコが言う。
「あら、約束でもあるの？ならいいわよ、行ってらっしゃい」
「そ、そんな、リツコぉ……」
「明日の朝一番で書類に目を通してくれればいいから」
リツコはサラリと言い放った。
ミサトは力無くうなだれる。
「決まりね。レイ、ユウカ、とっとと行くわよ！」
アスカは、ミサトの腕を取り引きずっていった。
レイも素直に後を付いていく。
そして、ユウカも続こうとした時、リツコが声をかける。
「待って、ユウカさん。少しいいかしら？」
「はい」
「さっきの貴女の態度のことだけどね……貴女がいくらお父さんのことを嫌っていても、あそこで返事しないのは良くないわ」
「リツコさん……」
ユウカは顔を伏せる。
「まだ中学生の貴女に言うのは酷かも知れないけど、公私混同せずに、状況を考えて行動して欲しい……それだけよ。憶えておいてね」
そう言って、リツコはモニターの方に向いた。
ユウカは、黙ったまま一礼して、発令所を後にした。
アスカは、ミサトを屋台のラーメン屋に連れてきた。
「ミサトの財布の中身なんて、とっくにお見通しよ！」
「アスカ……」
「アタシ、フカヒレチャーシュー大盛りでね」
「ニンニクラーメン、チャーシュー抜き……」
「ミサトさん、ありがたく頂きます……塩バターコーン一つ」
３人の少女達が屋台のラーメンを待っている。
ミサトは、溜息一つついて、一緒に食べる覚悟を決めた。
「我々がいない時に現れたか……」
ゲンドウが呟く。
窓の外には、未だ死の海の光景が広がっている。
「だが、葛城君はなんとかしてくれた様だな」
冬月は、外から眼を離すことなく話しかけた。
「そうでなくては、まかせる意味も無い」
ゲンドウはそう言って、視線を空母に向けた。
「これが手に入ったのだ……もうすぐだよ、ユイ……」
その呟きは、冬月にも聞こえていなかった。
あとがき
ミサトの過去……セカンド・インパクト……どうしても向き合わないといけない現実。
今回は、重い話から始まります。
そして、どうしようもない状況……巨大な使徒への対処です。
まあ、変わり様もないんですが……
とりあえず、こんなもんでいかがでしょうかね？
どこからともなく現れ、恐怖を与える使徒……『ＭＡＧＩ』を支配して、自爆を迫る。
次回、『秘やかな侵入者』。
乞う御期待。
作成日付：２００１／０１／１１
改稿日付：２００１／０２／０５
感謝の言葉：
戦闘終了後のリツコさんのちょっとした一言。
ＴＶ版より優しさを感じたのはＹＯＫＯだけでしょーか？
鱶鰭チャーシュー・・・どんな屋台なのか興味津々。
ラーメン、食べたくなりました。
さ、続きが読みたいと思った人は感想メールで催促しましょう♪
トップページに戻る。
第１６話「秘やかな侵入者」に進む。
作者のＡＢＣさんへの感想メールはこちら（abebeabebe@ksn.biglobe.ne.jp）まで。
読者からの反響は作者のやる気を湧き出させます。
続きが読みたい人は、感想メールを送りましょうね。