「大変な事になったねぇ。どうするんだい？」
　
闇の中、キールに問いかける声。
　
「まるで神……か。だが、この事実……公表するわけにはいかん」
　
「おや？他の委員達はまだ知らないとでも？」
　
「そうだ……この件は、まだ私の手元にのみ、ある」
　
声は、楽しそうな色を含んだ。
　
「じゃあ、どうするんだい？」
　
「映像をいじる。光を消せば、あくまでも暴走した参号機を初号機が押さえ込んだように見えなくもない」
　
「隠す、のか……まあ、いいんじゃないかな。それはそれとして、具体的な対策をとる必要はあるんじゃないかな？」
　
「分かっている。その為のお前だ……」
　
「……僕も楽しみにしているよ」
　
声が遠ざかっていく。
１人、キールは闇に向かって呟く。
　
「そうとも……我々の手に寄らぬ神は必要ない……いや、地上に神はいらない」
　
　
人類補完委員会。
ゲンドウは、今回の件をどう報告すべきか悩んでいた。
だが、実際には、参号機の暴走として、片付けられていた。
不信を抱きながらも、そのまま押し通す事にして、ゲンドウは口をつぐんだ。
委員会の招集が終わり、ゲンドウとキールが差し向かいになる。
　
「碇、今回の件、私の一存で不問にした」
　
「……そうでしたか。ありがとうございます」
　
「だが、我々に神はいらない……初号機、およびそのパイロットは、出撃を控えろ」
　
「使徒に対して、現在最も有効なのは初号機ですが？」
　
「それでも、だ……いいな、碇。必要なら、こちらは実力行使も厭わぬぞ」
　
「肝に銘じておきましょう」
　
キールの姿が消える。
ゲンドウは、考え込んだ。
（……今更、私が何をしようとも、無駄になる……ユウカ……お前は何者なのだ……）
　
　
司令室。
ユウカは、ゲンドウの座る司令席の前に立っていた。
ゲンドウの横には、冬月もいる。
ユウカの肩を抱くように、左手を吊ったままのミサトが立っている。
　
「初号機の無期限凍結。及び、パイロット碇ユウカの無期限の拘禁を命ずる」
　
ゲンドウは、静かに話す。
　
「待って下さい、司令！理由は何ですか！」
　
ミサトが噛みつく。
　
「命令違反だ。その件に関しては、君と赤木君以外の、メインスタッフ全員が分かっていることだ」
　
「しかし、今、初号機が使えないと、使徒への対処が難しくなります！」
　
「参号機の修復は順調だし、パイロットの状態が安定次第、再起動テスト、その後、配属が決定している。零号機、弐号機と合わせてＥＶＡが３機……物量的には問題無いハズだ」
　
「そう言う問題ではありません！」
　
「これは、決定事項だ。君は黙っていたまえ、葛城三佐」
　
なおも、ミサトは食い下がる。
　
「ですが……初号機の凍結はともかく、パイロットの拘禁というのは……」
　
「いいんです、ミサトさん」
　
ユウカがミサトを押しとどめる。
そして、まるで物でも見るような眼でゲンドウに視線を合わせた。
　
「この人……碇司令は、そんなことでもしないと、自分の心が守れない人なんですから。別に殺されるわけでも、パイロットを止めさせられるわけでも無いんだし、入院してるのと変わらないですよ」
　
初めて、人間味の欠けたユウカの声を聞いたミサトは、一瞬、寒気がした。
　
「そう言う訳だし、大人しく罰は受けますよ……ただ、今日一日待って欲しいんですけど？」
　
「……いいだろう、明朝０７時をもって、無期限の拘留とする。それまでは、葛城三佐」
　
「は、はい！」
　
いきなり呼ばれたミサトは、慌てて返事する。
　
「君が監視しておくように」
　
「……分かりました」
　
「では、行きたまえ」
　
ユウカとミサトが退出する。
ゲンドウは、大きな溜息を漏らした。
　
「碇、私はどうなるのかね？」
　
「……１ヶ月の減俸だ」
　
「あくまでも見せしめ程度か」
　
「お前にまで引っ込まれては、運営が成り立たんよ」
　
「そうか、では、私も退出しよう。少し休んでいろ」
　
「ああ、スマン……」
　
冬月は、司令室を出て発令所へ向かう。
（碇、少々焦りすぎだな……虚勢を張っている用にしか見えない……哀れに見えるよ）
そんなことを考えながら……
　

ときおり入る描写への不安。
ユウカちゃん、どうなっちゃったんでしょう？
初号機が凄まじい活躍をしているだけに、気になります。

結局、ゲンちゃんの措置も、実行力が伴わなかったですが・・・
ゼーレの老人達の行動も要注意でしょう。

さ、続きが読みたいと思った人は感想メールで催促しましょう♪