「おいトウジ知ってるか？今日転校生が来るんだぞ、それも２人！」
第壱中学校２−Ａでは情報通の相田ケンスケが、友人のジャージ少年鈴原トウジにこんな事を話していた。
「ほぅ……で、どないなヤツなんや？」
「なんでも一人が男子、一人が女子らしい」
そんなこんなで時は過ぎ、ホームルームが始まる。
「では、２人とも入ってきて下さい」
担任の声に続き、入ってくる少年と少女。
彼らの姿を見た瞬間、教室は一気に騒がしくなる。
なぜならば、少年は中性的な顔立ちの美少年、少女は幼い雰囲気の美少女だったからである。
「それでは、自己紹介をしてください。碇君からどうぞ」
そう言われて、「美少年」碇シンジはにこやかに言う。
「碇シンジです。何か聞きたい事があれば、休み時間にでもどうぞ！！これからヨロシクお願いします！！」
教室の女子から沸き上がる黄色い歓声。
「では、水野さん」
「ハイ！」
俗な言い方をすれば「ロリっぽい」サキは、ニコニコッと笑いながら大きな声で自己紹介を始めた。
「水野サキって言いまーす！！まだ知らないコトがたくさんあるけど、仲良くしてね☆」
その屈託のない笑みにトリコにされた男子多数。
多数の女子からも「可愛い！」と騒がれている。
サキは一瞬にして、２−Ａのマスコット的存在になったのであった……。
使徒は生身のシンジによって溶かされたので、エヴァの出番は無かった。
よって、「パイロットというのはホント？」などと聞かれることも無かった。
だからといって平穏な学園生活なのかと聞かれると、それは違う。
むしろ、「１度目」よりも騒がしくなっていた。
なぜか？
それは、彼が人気者になったからである。
その外見や明るい性格は、女子生徒だけでなく男子生徒からも人気があった。
しかし、彼はあまり媚びない。
あくまでマイペースを貫くのである。
そのマイペースとは……
「やあ、綾波！」
「……な、なに？」
「今日も可愛いね」
「な、何を言うのよ……」
誰が見てようとお構い無しにこの調子である。
ポッと頬を染めるレイは、男子生徒達の間で人気赤マル急上昇。
しかしシンジから奪える自信のある者など皆無であった。
そして、ターゲットはもう一人の転校生・サキに絞られる。
（（（（サキちゃんと付き合えるのなら……例えロリコンと罵られようと構わない！！））））
異様に盛り上がる男子生徒達。
当のサキはというと、そんな視線に全く気付かずレイにベッタリ。
その光景を見て、思春期真っ最中の男子生徒達は妖しすぎる妄想を働かせる。
妄想力が臨界点突破し、なぜかトイレに駆け出す男子生徒も希にいるとか。
しかし、そんな平和（…？）を乱す者が現れた。
シンジとサキの転校から２週間後。
「綾波レイ！水野さんを賭けてワシと勝負や！」
そう、この関西弁らしき言葉でお分かりの方も多かろう、鈴原トウジ（ジャージ）である。
彼もサキのトリコになった者の一人であった。
ちなみに、この発言を聞いて某委員長が石化していたとか。
「……あなた、誰？」
レイの冷静な答えに、クラス中からトウジへクスクスと嘲笑が届く。
「お、オノレはクラスメイトの名前も知らんのかっ！」
「私はあなたじゃないもの」
「ちゃうわ！常識としてやっ！！」
「ダメ…。碇君が呼んでる」
ビシッとレイを指差すトウジを、レイはサラッと無視。
スタスタとシンジの席へと歩いていった。
ちなみにシンジは別に呼んでなどいない。
「ま、待たんかい！」
トウジはグイッとレイの肩を掴む。
「……どうしてそういう事を言うの？」
「さっき言った通りや！ワシが勝ったら水野さんを貰う！」
「……どうしてそういう事を言うの？」
「そ、それはやな……」
「……どうして？」
「ワ、ワシが水野さんにホレたからや！」
「そう、よかったわね」
そう言って、またもやスタスタと歩き出す。
「ま、待て！勝負はジャージコ−ディネイトや！審査員はケンスケとイインチョと水野さんで……」
「……さよなら」
もはや意地でもレイを引き止めようとするトウジ。
「に、逃げるんか！ワシから逃げるんか！？」
「命令があればそうするわ」
「じゃあ、逃げるな！ワシと勝負や！！」
ここで、レイがクルッとトウジの方を振り向き、一言。
「……どいてくれる？」
シンジが席にいない事に気付いたレイが、急遽方向転換。
「……碇君の匂いがする」
そう呟くと、今度は廊下へ向かって歩いていった。
その時、教室に渦中の人が登場。
「あ！レイお姉サマ！！」
サキである。
人目もはばからずレイに抱き着くサキ。
「レイお姉サマのニオイがする……」
そう言いながら、クンクンとレイの首筋の匂いを嗅ぎ始める。
まさに妖しさ大爆発。
「み、水野さん！おなご同士でそないな事したらアカンです！！」
トウジがその妖しげな光景にストップをかける。
しかし、恍惚の一時を邪魔されたサキはトウジをジッと見ると、
「……レイお姉サマに近づかないで」
と、ひどく無感情な声で言い放つ。
サキに精神的攻撃を受けたトウジはグサッと来るが、ココで退いては男がすたるとばかりにサキに告白。
「み、水野さん、ワシの事、どない思っとりますか！？」
いきなりそんな事を聞かれ、サキは不思議顔。
しかし、非常に、いや非情に正直に答える。
「……ジャージ」
「へ？い、今なんと……」
「ジャージ。ジャージのヒト」
「ほ、他には何か……」
「うーーーん…………悪いヒト」
「！？ワシ、そないな事は……」
「たしか、ジャージ着てるのって校則違反じゃ？」
「うっ！そ、そないな事言われましても、これはワシのポリシーでして……」
「……アセくさそう」
グサグサグサグサッ！！
コレはかなりキマッた。
「だから、レイお姉サマに近づかないで。ニオイがうつったらイヤだから」
かなりヒドイ事を言ってのけるサキ。
しかも、全くの本心であるからトウジにとって救いようがない。
「ボクの大好きなレイお姉サマを汚されたくないんだ」
そう言った後、レイの首筋をペロリと舐める。
「あっ………！！」
「「「「「「「「「「おおっ！！」」」」」」」」」」
サキの行為とレイの声に騒然となる教室。
教室を飛び出し、トイレに向かってダッシュする男子の姿もチラホラ見えた。
「コラコラ、２人とも。そういう事は帰ってからしようね」
「「碇（君、くん）！！」」
その時、シンジが颯爽と登場。
ちなみにこの時点で既にトウジは再起不能（リタイヤ）である。
「トウジ」
シンジが真っ白な灰と化したトウジに声をかける。
ちなみに、この２度目の世界ではシンジとトウジは前ほど親しいワケではない。
「………なんや？」
再起不能なトウジだが、最後の気力を振り絞ってシンジに応える。
「あんまりサキさんを怒らせると、目からビーム・手からパイルの二段コンボを食らうから注意するんだよ」
「碇……何を言っとんのかワシにはサッパリや……」
「必殺技だよ」
「ワシがアホやってん……」
鈴原トウジ、ここ（２−Ａ教室の床の上）に眠る。
かくして、トウジ対レイはサキの勝利に終わった。
「いやー全く、今日は面白かったねぇー」
ここは、シンジ・レイ・サキの住む、通称「愛の巣」。
３人は自由気ままな生活を送っていた。
「自由」に慣れていないレイは最初こそ戸惑ったものの、２週間経った今では段々と生活を楽しみ始めていった。
「さて、あと１週間で新たな使徒が来るんだけど……」
「なぜ、知っているの？」
「それはまだヒミツさ」
シンジがニコリと笑いながら答える。
レイはその笑顔に魅了される。
「サキさん、その使徒をどうして欲しい？」
「え？うーん、見てみたい！」
微妙にズレた返答である。
しかしシンジはあまり気にしない。
「よっし！それじゃあ、今度の使徒襲来のときはサキさんもネルフに来る？」
「うん！」
「……碇君」
シンジの笑顔に半トリップ状態だったレイが、切なそうな顔でシンジに質問。
「なんだい？綾波」
「私は、碇君と２人きりにはなれないの？」
リツコの魔の手を逃れるため、今までネルフにサキを連れて行ったことはなかった。
というか、もはやネルフに行くこと自体シンジもレイもあまり無いのだが。
しかし、ネルフに行く時はサキはお留守番。
最近は滅多に無い、「シンジとレイの２人きり」という状況になるのだ。
「あ、綾波……」
それはシンジにとっても願ってもないシチュエーションなのだが、いかんせんもう一人の「家族」がいる。
シンジが恐る恐るその「家族」の方に目を向けると…
「ボクはいらない人間なの？」
サキが思いっきり目をウルウルさせていた。
「違う、違うのサキ！」
サキの反応にレイが激しく動揺する。
ちなみにこの時点での３人の関係は、レイを頂点とした三角関係状態。
しかし、シンジはサキがレイと同性であることから別にライバル視はせず、サキはシンジに対して恩があるので、シンジとも仲良くやっていた。
よって、何の問題も無いかと思われたのだが……。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん！！」
このように、サキがレイのちょっとした発言で号泣、レイがひたすらオロオロするという展開が何度もあるのだ。
「サキさん、落ち着いて……」
「サキ、泣かないで……」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん！！」
サキがよく泣く理由は２つ。
まず、精神が幼いこと。
外見も幼いのだが、精神はそれ以上に幼い。
まるで幼稚園児の如く、周りの目を気にせず泣きじゃくるのだ。
そして、自分が「人間ではない」と思っていること。
別に使徒であったことに劣等感を持っているわけでは無いのだが、それとこれとは話が別。
魂は確かに使徒だが、遺伝子などは１００％人間と同じ物である。しかしそういう理論的なものではなく、感情的なものらしい。
目からビーム、手からパイルなどの必殺技が可能ということで、「明らかに人間とは違う」と思っているのだ。
要するに、「仲間はずれはイヤ」という感情に似た物なのである。
そして、激しい疎外感、孤独感に襲われたとき、彼女は泣く。
「自分は不必要な存在なのでは」という恐怖の中で。
もちろん、シンジにとってもレイにとってもサキは大切な「家族」。
必要でないワケがないのだ。
こんな時のために、レイには泣き出したサキを沈黙させる必殺技がある。
考案は碇シンジ、成功率は今のところ１００％を誇る。
「サキ……」
ぎゅっ。
レイがサキを力強く抱きしめる。
これでサキは安心感に包まれ、精神が落ち着くのである。
だが、これだけでは技としては未完成。
まだ泣き止まないこともある。
さらにここから派生させるのだ。
ペロ…。
学校でサキがしたのと同じように、レイがサキの首筋にゆっくりと舌を這わせる。
「……んぅっ！！」
サキは体を震わせ、妙な声を出す。
レイは、サキの首筋や耳を舌や息で責める責める。
「じゃあ綾波、そろそろトドメを…」
「分かったわ、碇君」
そう言うと、レイはおもむろにサキの唇を奪う。
「んんーっ……ん……っ！！」
さらに、サキの口内に舌を進入させる始末。
「いやー、美しいねぇ…」
シンジは満足そうにウンウンとうなずいていた。
「ん………ん……………」
……くてっ。
そして、サキは力無く倒れた。
「……これでいいのね？碇君」
「うん、いいんじゃない？」
良い子は真似をしないようにしましょう。
でも悪い子ならＯＫ。
ただし、相手を間違えるととんでもないことになるので注意。
ちなみに、シンジは２週間に渡る同棲で、その性格の変化のお陰もあり、レイとの関係は著しく前進中。
まだ一線は超えてないが、それも時間の問題であろう。
というか、あくまで超えていないだけであり、かなり深い仲なのだが。
「うぅ……」
「落ち着いた？サキさん」
「うん……」
「サキ、許して……」
レイがすまなさそうな顔でサキに失言を謝罪。
「あ……ボクの方こそ、取り乱しちゃって……」
サキは快くレイを許す。
その表情はほんのりと赤い。
「サキさん、僕や綾波がサキさんをいらないなんて言うと思う？」
「………」
沈黙するサキ。
「サキは……私達の事を信じてくれないの？」
レイの悲しそうな声に、サキが慌てて反応する。
「ううん！ボク、レイお姉サマのコトも、碇くんのコトも信じてる！」
「よかった……」
ここで事件が無事解決したのを確認したシンジが、スッと立ち上がる。
「じゃ、買い物にでも行こうか」
「分かったわ」
「うん！」
夕焼けの商店街を歩く３人。
「さて、他に買う物はあったっけ？」
「……いえ、もう無いはずよ」
「じゃあ、帰るんだね？」
そう言って並んで歩く３人の前に、一人の少年が現れた。
「み、み、み、水野さん！こんなトコで会うとは、コレも運命でっしゃろか！？」
「あ、ジャージくん」
それは、再起不能状態から時間の経過によって回復したトウジであった。
ここでトウジが、仲良く歩いているシンジとレイの存在に気付く。
「ん！？な、なんで碇が水野さんと歩いとんねん！ しかも綾波まではべらせて！」
「あれ？トウジ、今まで学校で僕とサキさんの仲がいいって、気付かなかったの？」
トウジがライバル視していたのはレイだけであったので、シンジの存在には気付いていなかったのである。
ちなみにシンジはシンジで、学校ではレイとベタベタしていたのでサキとの接触は目立っていなかった。
「サ、『サキさん』やとぉ〜〜！？なれなれしいにも程があるで！」
「なら綾波はどうなるのさ？綾波は呼び捨てだよ？」
「そ、そやっ！綾波、ワシともう一度勝負や！」
「……サキはどう思うの？」
「ボク、レイお姉サマが大好き！ジャージくんは……レイお姉サマに近づかないで」
学校と同じセリフを言われ、またもトウジがグサッとくる。
「ほら、トウジ。サキさんがこう言ってるんだから、諦めたら？ヘタするとストーカーだよ？」
「アカン！諦めるなんてそないな事、男のする事やあらへん！」
そのトウジの声に、周りの視線が何事かと集まってくる。
「は〜、見られてる見られてる」
「なぜ？今すぐここから離れたい……。そう…私、恥ずかしいのね……」
「ねー、もう帰ろーよー」
目の前で、周囲の視線も気にせず「勝負や！」とか「ジャージコーディネイト！」とか叫んでいるトウジに、３人は恥ずかしいやら情けないやら。
シンジが諦めたようにサキに言う。
「もういいや…。サキさん、やっちゃって」
「うん、ボクもそーしたかったトコロ」
「サキ、手加減するのよ……」
３人の意見が一致すると、サキは目の前で騒いでいるジャージを見る。
そして、サキが目をキュピーンと光らせた直後、
ドガンッ！！
トウジは爆発した。
「み、水野さん……ワシは……」
黒コゲになったトウジを、とりあえず死なないようにシンジが宇術で回復させる。
そして、３人はとっとと瞬間移動で愛の巣へと戻った。
「「「いただきます」」」
シンジお手製料理が今日も食卓に並ぶ。
「美味しい……」
「おいしー！」
シンジの料理は好評なようである。
「しっかし、トウジにも困ったモンだね」
「ええ……」
とか何とか言いながら、シンジはぜんぜん困った様子ではない。
レイは無表情。
サキはひたすら食べる。
「でも、なんであのジャージくんってさ、あんなにレイお姉サマに近づきたがるの？」
「「……え？」」
サキの言った意味を理解するのに数秒の時間を要す２人。
「そ…そりゃあ、綾波からサキさんを奪いたいからだろうけど……」
「え？あのジャージくん、レイお姉サマのストーカーじゃなかったの？」
「いや〜、どう見てもサキさんのストーカーだよ……」
それを聞き、サキは目がテンになる。
「あ、あれ？あのジャージくんって、レイお姉サマのコトが好きなんだよね？」
その言葉に、ゆっくりと首を横に振るレイ。
「彼は……あなたを求めているのよ」
サキはポカンと口を開けた後、
「うそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ！？」
愛の巣を揺るがす程の大声を上げた。
「とゆーかさ、なんで気が付かなかったの？」
食後、シンジが呆れ顔でサキに尋ねる。
「一度目」の生活での自分の様子など、完全に忘却の彼方のようだ。
「だ、だって、しつこく何度もレイお姉サマに声をかけてたんだもん……」
「学校ではサキさんに話しまくってなかったっけ？」
「そ、そーいえばそーかも……」
「サキ……」
「な、なに？」
「あなた、天然なのね……」
「うぅぅ……」
「まあまあ、それよりテレビでも見ようよ。アレ、もう始まってるよ？」
シンジがテレビを指差すと、アニメが放送されていた。
「うわぁ〜〜！！もうこんな時間だったの？！？オープニング見逃しちゃったぁっ！！」
「大丈夫、ビデオに撮ってるから」
「はぁ〜〜。碇くん、ありがとう……」
サキが安堵の溜め息をつく。
レイもジッとテレビを見ている。
ちなみにその内容はというと、
『ワシの仲間になれ！でなければ帰れぇ〜〜〜〜〜っ！』
『師匠、裏切ったなぁ〜〜〜〜っ！！兄さんと同じに、オレの気持ちを裏切ったんだぁ〜〜〜〜っ！』
など、かなり熱い内容のアニメである。
「……出るわ！」
「「来た来た来た！ひぃ〜〜っさつ！！」」
「「『フィンガァ〜〜〜〜〜〜ッ！！』」」
アニメでは主役のロボットが、敵のロボットをアイアンクローで破壊していた。
「終わるのね、もう……」
いかにもクライマックスな展開に、レイが寂しそうに呟いた。
しかし、ここまでアニメにのめり込む中２の姿も珍しいかもしれない。
そして、その話のラストシーンを見ている時に事件は起こった。
『そこにいたの、兄さん……』
『すまなかったな……』
チャ〜〜ラ〜〜チャ〜ラ〜ラ、チャラララ、チャラ〜ラ〜〜……
結構泣かせるシーンで、突如電話が鳴った。
雰囲気をブチ壊され、ムッとした表情になる３人。
「……もしもしィ？」
誰が聞いても不機嫌だと分かる声で電話に出るシンジ。
『水野さん！！……ん？その声は……碇か！？』
「なんだ、トウジか……」
溜め息交じりにシンジが言う。
『なんだやあらへん！なぜ、オノレが水野さんの家におんねん！？』
「だって、ココは僕の家だからね」
『なんやと！？ケンスケのヤツ、ワシにニセ情報を売ったんか！？』
「いや、あながち間違ってはいないんだけどね」
『なに？』
「だって、サキさんも一緒に住んでるんだからね」
『………なんやとぉぉぉぉぉぉぉぉぉ〜〜〜〜〜っ！？』
「じゃ、そういう事だから、切るね？」
『ま、待たんかい！！碇、今のはどないな意味……』
ガチャ。
「綾波、サキさ〜〜ん、アニメは？」
「……もう終わったわ」
「これから次回予告だよ〜〜！！」
「そう、今行くから！」
そう言うとシンジは受話器をはずし、居間へと戻った。
ちなみに、その頃のトウジはというと、
「な、なんで話し中になんねん！！｣
愛の巣へ何度も電話をかけるも、一向に話し中状態。
結局、彼が諦めたのは３０分後の事であった。
「で、ジャージくんから電話だったの？」
「まあね。すぐ切ったけど」
「ふぅん………………はぁ…」
「サキ、どうしたの？」
「……あのジャージくんが敵じゃないって分かったからさ、とりあえず謝ろうかなって」
「まあ、確かに目からビームで焼いちゃったしね」
「……必要ないわ。あの時はあれが最良の選択だったもの」
サラッととんでもない事を言ってのけるレイ。
「まあ、そーかもしれないんだけどね……」
あっさり納得しかけるサキもサキである。
「とりあえずさ、明日学校で会った時に決めればいいんじゃない？」
「そーだね」
ここで、サキの頭上で豆電球がピカーンと光る。
「そーだ！いいコト考えた！」
「「？」」
「碇くん、ちょっとお願いがあるんだけど…」
「お願い？」
次の日。
「ジャージくん、おはよー！」
「みみみ水野さん！おはようございます！」
トウジはサキに突然挨拶され、なぜか敬礼していた。
「……ケンスケじゃ無いんだから」
サキの後ろからシンジが登場し、ツッコむ。
「い、碇っ！！昨日の事、詳しく話してもらおうやないか！」
シンジの顔を見た瞬間、いきり立つトウジ。
「まあまあ、それよりサキさんからトウジに話があるんだよ」
「ほ、ホンマでっか、水野さん！」
トウジは慌ててサキに視線を戻す。
「うん！昨日のコトを謝ろうと思って……」
「そ、そないな事！サキさんの口からワシに謝罪やなんて！」
「ジャージくん、昨日はヤケド、大丈夫だった？」
「ハ、ハイ！おかげさまで五体満足、今日も元気だご飯がウマイです！」
早口でまくし立てるトウジ。
「……碇君、彼は何を言っているの？」
「さ、さあ……」
さすがのレイも困惑顔。
シンジもどう言えばいいのか分からない。
「それでね、おわびとしてプレゼントがあるんだ！」
そう言うと、サキはカバンの中から大きな紙袋を取り出した。
「み、水野さん！ワシにプレゼントだなんて！」
感涙にむせぶトウジ。
そんなトウジを男子生徒達が嫉妬交じりに睨み付けている。
ちなみに昨日の夜、サキに頼まれたシンジは瞬間移動でサキをデパートまで連れて行き、トウジ用のプレゼントを購入したのだ。
さらに付け足すと、支払いもシンジである。
これがサキの「お願い」であった。
「じゃあ、受け取って」
「ハ、ハイ！」
サキがポイッと無造作に紙袋を投げる。
トウジはそれをナイスキャッチした。
「あ、開けてもエエでっしゃろか？」
「うん、いーよ！」
ゴソゴソと紙袋を開けるトウジを、クラス中が固唾を飲んで見守っていた。
「おっ！コ、コレはぁっ！！」
その紙袋から出てきた物に、トウジは大きく目を見開く。
それは……ジャージだった。
「おおっ！コ、コレはあの『ＭＩＺＵＮ●』のジャージッ！！み、水野さん、ホンマにもらってエエんですか？」
「もちろん！だって、悪かったのはボクだもん」
「うおぉぉぉぉっ！！ワシは……ワシは……世界一の幸せモンやぁっ！！」
トウジはジャージを抱きしめながら頬擦りしていた。
「あと、ボクからのお願いなんだけど……」
「ハイ！何でも言うて下さい！」
「レイお姉サマや碇くんにケンカを売らないで欲しいんだ」
「分かりました！うおぉぉぉぉぉぉぉぉっ！！ワシは、ワシはぁっ！！」
ちなみに、歓喜の涙を流すトウジを見た某委員長は、焦りを覚えつつ「弁当作戦」の発動を思案していた。
さらに次の日。
トウジはいつも通りのジャージで登校していた。
「ありゃ？ボクが渡したジャージは？」
それを見たサキがトウジに不思議顔で尋ねる。
「ハイ！アレは万が一汚れるとアカンので、ワシの部屋に大切に飾っとります！今朝もアレを拝んでからウチを出ました！」
そのトウジのセリフに、クラス中の全員が一瞬にして凍り付いた。
（（（（（（（（（（意味無いじゃん……））））））））））
上機嫌なトウジを見ながら、クラスの想いは一つになった……。
「ま、いっか☆」
そして、サキはあくまで能天気なのであった。
あとがき？
「うまシン」、第３話でした。
トウジーー！！言葉が分からないよーー！！関西の方々、海よりも広い心でお許しください。作者は佐渡出身なのです。
しっかし、レイがかなり饒舌になってる気がするのは気のせいでしょうか？
今回の話ですが、サキ＆トウジのキャラ立てみたいな物です。あと「うまシン」のノリの紹介。
というか、前回で使徒を倒し終えたので、原作みたいに使徒戦の後半部分ってワケにもいきませんので。
あと、この「うまシン」ですが、よくある「本編再構築の如き逆行ＬＲＳ」にはならない可能性の方が大きいです。
ほとんど「逆行」という名の「異世界」になる可能性も……。あくまで作者の予想ですが。
次回はシャムシェルです……けど、「シャムシェル」と「シャムシエル」、どちらが正しいんでしょうか？
僕は言いやすいので「シャムシェル」と呼んでいますけど。
関係無いですが、「綾波育成計画」が楽しみです。実は自分のＰＣ持ってないんですけどね(泣)。
リナレイに…リナレイに育成できるんでしょうか！？もしそうなら、リナレイストの血が騒ぎかねないです！
いや、アヤナミストでもありマナリアンでもあるのですが。節操無しって言わないで……。
「この先こんな展開希望！」って人がいましたら、メール下さい。
反映される可能性はそれなりにありますので。
それでは！
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感謝の言葉：
あぁ、ひたすら救われないトウジ君♪
せっかくもらったジャージも飾っておくだけじゃ意味なしですよねぇ。
ヒカリの努力も、トウジの発言で救われない状態なのが可哀想な
ところ。
さてさて、次はシャムシエルですが、やっぱり人型にするんでしょうか？
さ、読んだ方は感想を送って、ＢＥＥめーだ さんに気力充填しましょー♪
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第０４話「ラズベリージャム」に進む。
作者の ＢＥＥめーだ さんへの感想メールはこちら（beemeda@mail.goo.ne.jp）まで。
読者からの反響は作者のやる気を湧き出させます。
続きが読みたい人は、感想メールを送りましょうね。