それはシンジの気まぐれから始まった。
（ＭＡＧＩでも超えてみよっかな……）
唐突に浮かんだ考え、それは聞くものが聞けば荒唐無稽と思える様なもの。
しかし、しばらく考えると「ＭＡＧＩを超える」プランを完成させる。
（歴史通りに行けば、たぶん上手く行くと思うけど……）
こうして、また１つネルフの優位性が失われる時が近付いていた。
（有機コンピュータか……ふふ、アレを利用すればなんとか出来るかな？）
シンジが目を付けた物、それは……
歴史は概ね「前回」通りであった。
せいぜい、一部のセリフが違うくらい。
「ネルフの秘密兵器ですが、おそらくは永遠に『秘密』のままかと」
「理由は？」
「なぜなら人類の敵たる『使徒』は、今後は我らが日重の誇る『ＪＡ』により殲滅されるからです」
リツコと人型巨大兵器「ＪＡ」開発者の時田は舌戦を繰り広げていた。
今回の歴史では一度もエヴァが表に出ていないので、時田から「ＡＴフィールド」や「人の心」などの単語も出て来ない。
そして、まだ一度も戦った事の無い兵器の事は、仮定の話としてどうとでもこき下ろせる。
時田はエヴァの事を数少ない資料でＪＡと比較し、ケチョンケチョンにけなしていた。
しかし、それでもリツコはどこか薄い笑みを浮かべていた。
なぜなら、この後大勢のお偉い様方の目の前で動かされるＪＡは、ＭＡＧＩによってプログラムが書き換えられているのだから……。
「じゃ、僕は先に行ってるから」
「レイ、お先に」
「……分かったわ、碇君、昼田さん」
急遽レイと零号機は、暴走したＪＡを止めるためにミサトから呼び出される。
そして、待ってましたとばかりにシンジはジャムを連れてパーティ会場へと瞬間移動。
シンジと一緒のジャムを見て、レイはそこはかとなく不満そうであった。
（シナリオ通りだ……なんちゃって）
落胆している時田の隣に、笑顔のシンジとジャムが現れる。
「時田さん」
「……君は誰だ？」
「あの農協ロボ、僕が止めてあげますよ」
「農……！？ジェ、ＪＡと呼んでくれ。それはともかく、今は子供の戯言に付き合ってる暇など無いんだ……」
「じゃ、もし僕が止める事が出来たら、ＪＡを下さい」
まるで他人の食べている料理をねだるかの様な口調で語り掛けるシンジ。
「ああ、出来ればな」
当然といえば当然だが、時田はまるで相手にしない。
「言いましたね？約束ですよ。……ジャムさんも聞いたよね？」
「はい、御主人様。しっかりと聞きました」
「イザという時に言い逃れしないで下さいね」
そう言うと、シンジは姿を消した。
「ああ、何故だ、何故なんだ……？」
時田は落胆＆混乱していて隣のシンジが消えた事など気付かない。
「時田さん、コレにサインを」
その時、ジャムが時田に一枚の紙を差し出した。
そこには、
「もし碇シンジがＪＡを止めたら、ＪＡは碇シンジの物になる事を約束しまっす！」
と書かれていた。
「こ、こんな物まで用意していたのか……」
そんな事は不可能だと思っているので、深く考えずにサインをする時田。
「それじゃ、契約完了ね」
ジャムはシンジの役に立てた事を、心の底から喜んでいた。
「歩くぅ〜、歩くぅ〜、ジェイ〜エ〜エェ〜〜♪」
なにやら歌いながらＪＡの目の前に立ち塞がるシンジ。
そんな事はお構いなしにＪＡは前進を続ける。
「炉心〜融解そのま〜ま〜にぃ〜♪……と、『静止』！」
ピタッ。
ＪＡの歩行がピタリと止まった。
「さてと、リツコさんがＭＡＧＩを使ってプログラムを書き換えたんだから、ＭＡＧＩとは繋がってるんだよね、たぶん」
シンジはＪＡの胸部を触りながら、目を閉じる。
（さ〜て、ＭＡＧＩは……と）
宇術によってＭＡＧＩとの接続を試みるシンジ。
「あ、コレだね……『模写』」
シンジは、ＪＡのプログラム部分をＭＡＧＩそのものに置き換える。
あのＭＡＧＩの全てがＪＡに入りきるのも、常識はずれな宇術のなせる技。
そして、さらに常識はずれな事をシンジはやってのけた。
「『縮小』」
シンジの詠唱により、みるみるうちにＪＡのサイズが小さくなっていく。
普通の人間サイズになった頃合いを見計ると、目を閉じ、ＪＡの肩の部分を掴み、今度は真剣な顔つきで宇術を使用。
「『変化』」
眩しいくらいに全身を発光させるＪＡ。
バキバキ……
メキッ……
グチュ…
金属的な音や生々しい音が、光の中から聞こえてくる。
「……もういいかな」
シンジが目を開けると、発光も収まってきた様子だった。
「はぁ、使徒の人間化よりよっぽど大変だったなぁ、今回のは」
光の中から現れたのは、一見、普通の人間の少女。
年齢はシンジより少し年上くらいで、漆黒のストレートのロングヘアが美しい。
皮膚の色は、まるでその髪の色に比例する様に褐色である。
ちなみに裸ではなく、ＪＡの装甲をそのままファッションにした様な、少々前衛的な服を着ていた。
「ＪＡ、ジェット・アローンだったから……ＪＡ……ジェット・エンジェルってトコかな？」
これが後に「究極の生体コンピュータ」と呼ばれるアンドロイド、ＪＡ…「ジェット・エンジェル」誕生の瞬間であった。
「ジャムさん、ただいま」
ＪＡを抱えたシンジが、時田の隣に立っているジャムの元へと帰ってきた。
「おかえりなさいませ、御主人様……その方は？」
「ＪＡ。時田さん、約束通りＪＡは貰いますよ」
「ああ……って、何ィィィ！？」
驚いた時田がシンジを見ると、目の前には変わり果てたＪＡの姿が。
「ジェ、ＪＡ？これが？いや、まさか、そんな事が……」
混乱する時田を後目に、シンジとジャムはこっちへ向かっているレイの元へと瞬間移動した。
数十分後、愛の巣。
無事零号機をネルフへと戻し、レイとジャムを連れて戻ったシンジはＪＡを起こそうとしていた。
家族のみんなも固唾を飲んでその様子を見守っている。
「おーい、ＪＡ、起きなー」
ペチペチと軽くＪＡの頬を叩くシンジ。
それに反応するかの様に、ＪＡは目を覚ました。
瞳の色はその髪と同じ漆黒である。
「おはようございます、マイ・マスター」
ＪＡは抑揚の無い、しかし人間らしい声で呟いた。
「僕の事は分かるかい？」
「はい、マイ・マスター。あなたの名は碇シンジ、私（わたくし）を生み出したサードチルドレンと呼称される人間、同時に宇術と呼ばれる力を操る謎の多き人間です」
やはり無表情で呟くＪＡ。
「ちょっとちょっと、御主人様に向かって『謎の多き』は失礼じゃない？」
ジャムがムッとした表情でＪＡに詰め寄る。
「まぁまぁジャムさん、ＪＡの知識はネルフにあるＭＡＧＩのコピーなんだ。だからＭＡＧＩに記録されてる僕のデータをかいつまんで言ったんだと思うよ」
「はい、マイ・マスター。その通りです」
「で、さらにＪＡは知識を吸収しどんどん成長していくんだ。ＭＡＧＩを超えるのも時間の問題じゃないかな？」
「はい、マイ・マスター。その通りです」
「あなた、それしか言えないの？」
「いいえ、シャムシェル様。それは違います」
「シャム……！？」
シャムシェルと呼ばれたジャムの顔が引き攣る。
「ＪＡ、私はそう呼ばれるのが『昼田』って呼ばれるのと同じくらいイヤなの。これからはジャムって呼んでちょうだい」
「シャムシェル様を今後はジャム様と呼称します。よろしいですか？マイ・マスター」
その時、シンジに確認を取るＪＡにラミがキレた。
「あああ、イラつくなぁ！そのくれぇ自分で判断しろッ！！」
「いいえ、ラミエル様。それは不可能です。その様な行動の決定にはマイ・マスターの承認が必要です」
「『そのような行動』ってなぁ、名前の呼び方くらいなんとでもなるだろーがッ！！」
「いいえ、ラミエル様。私の一存で決定できる行動は殆ど存在しません。ほぼ全ての行動にはマイ・マスターの承認が必要です」
「おいシン、コイツのこの性格なんとかなんねーのか？」
呆れたラミがシンジに尋ねる。
「それは僕も思ってたところだよ。ちょっと酷すぎるねぇ、コレは」
シンジは後頭部を掻きながら、困ったような表情で呟いた。
「ＪＡ、もっと自分の判断で動いても良いんだよ」
「………………」
そう言われたＪＡは、しばらくそのまま無言になる。
そしてしばしの思案の結果、
「それは命令ですか？マイ・マスター」
と尋ねた。
「……違う、って言ったらどうする？」
「………………」
また迷うＪＡ。
ちなみに、別に仕草も表情も迷っている様子はせず、あくまで無表情で正面を見据えている。
「……その場合、私は現状を維持します」
「理由は？」
「私の独断の行動により、マイ・マスターに迷惑が掛かる事が懸念されます」
「別にいいよ」
「………………」
あっさりと言うシンジに、ＪＡは再び思考の海へと沈んだ。
「ねーねー、ＪＡ」
「なんでしょうか、サキエル様」
「迷ってるんでしょ？ならさ、『自分の判断で動いてもイイ』って考えもあるってコトじゃないの？」
「はい、サキエル様。その通りです」
「ボクとしては、そっちの方がイイと思うんだけど。ね、レイお姉サマ？」
「……そう、そうね。サキの言う通りなの」
レイは昔の自分と目の前の機械少女の姿を重ね合わせる。
その結果、明らかに今の自分の方が幸福であると思えた。
「オレもそう思うぜ。第一、お前のその態度、見ててイライラするからな」
「そうね。御主人様に嫌われるわよ？」
全員に今の考えを否定されたＪＡは、またも思案する。
「ＪＡ、もう一度言うよ。もっと自分の判断で動かない？」
そして、ＪＡはゆっくりと口を開いた.
「……分かりました、マイ・マスター。今後は『自分の判断で行動する事』を善処します」
「ねー、『ＪＡ』って名前、ヘンだよね」
それからしばらく後、サキがシンジに尋ねる。
「一応『ジェット・エンジェル』の略のつもりなんだけどね」
「ジェット・エンジェル……」
「『漆黒の天使』って意味だよ」
「ふぅん……」
それを聞いたサキはしばらく考え込むと、
「じゃーさ、『ジェル』なんてどーかな？」
と言ってきた。
「ジェル？」
「ジェット・エンジェルなんでしょ？略してジェル」
「ジェル、かぁ……。呼びやすいし、これからはそう呼ぼうかな……」
という訳で、この時からＪＡは「ジェル」と呼ばれる事になる。
「ＪＡ、これからは君のことを『ジェル』って呼ぶよ」
「分かりました、マイ・マスター」
何の疑問も抱かず、その提案を受け入れるＪＡ改めジェル。
「あと、ジャムさんも言ってたけど、みんなの名前を使徒の名前で言うのはやめてほしいんだ」
「分かりました、マイ・マスター。では、何と呼称すれば良いでしょうか？」
「『サキエル』が『水野サキ』、『シャムシェル』が『ラ・ズ・ベリー・ジャム』、『ラミエル』が『迅雷ラミ』という名前なんだよ、今は」
「分かりました、マイ・マスター。以後、彼女達をその名前で呼称します」
「じゃあ、これからもよろしくね、ジェルさん」
「分かりました、マイ・マスター」
「ジェル、お前って……無口だな」
「はい、ラミ様。その通りです」
呆れた様なラミの言葉に、そっけなく無表情で返すジェル。
「『その通り』って……そ、それだけかよ？」
「はい、ラミ様。その通りです」
「もっと他にこう……リアクションとか、ねーのか？」
「必要ありません」
「……お前って、ホントに必要最小限の事しか喋らねーな……」
「はい、ラミ様。その通りです」
「な、なんか単純なプログラムの人形と喋ってるみてーな気分だぜ……」
「……私は機械人形ですから」
そう語るジェルの表情は、あくまで無表情であった。
「ジェル、あなた食事は必要？」
夕食の準備をしていたジャムが、何もせずに、無表情でただ座っているだけのジェルに質問。
「どちらでも構いません、ジャム様」
「食べるのと食べないので、何かメリット・デメリットはあるの？」
「食べた時のメリットは、少々のエネルギー補給が出来る事です。食べない時のメリットは、ジャム様の手間を省くことが出来ます。デメリットは、それぞれのメリットの逆です。全体的に見れば、食べない方が合理的だと判断出来ます」
「ふ〜ん、なら作るわよ。別にこの大家族で一人分くらい増えてもどうって事ないわよ」
「分かりました、ジャム様」
「気にしないの。家族でしょ？」
「家族……私が……」
ジャムは気付かなかったのだが、この時、ジェルは初めて「独り言」を言ったのだ。
「じゃあ、これから作るから、待ってなさいよ」
「分かりました、ジャム様」
「「「「「「いただきます（！）」」」」」」
６人家族となった愛の巣では、晩御飯の時間となっていた。
「どう？ジェル。この私の作った料理は」
「……少々お待ちください、ジャム様」
ジェルは料理を口に含むと、目を閉じてなにやら瞑想らしき事を始める。
そして、数秒後に料理を飲み込むと、目を開いた。
「あなた……そんなに私の料理への判断が難しいの？」
「はい、ジャム様。その通りです」
「え？なんで？」
そんなジェルに、横から口を挟むサキ。
「私は味覚を使用する事が始めてだからです、サキ様」
「へ〜…で、感想は？」
「そうそう、それを聞きたいのよ、私は」
全員の視線を何事も無い様に受け止めつつ、ジェルが感想を述べ始めた。
「おそらく……私は『美味しい』と判断しているのだと思います」
「ふふ、御主人様直伝の私の料理が不味いワケ無いじゃない。でも、もうちょっと嬉しそうな顔をしてもいいんじゃないの？」
「嬉しそうな顔、ですか？」
「そう、普通は……笑うものよ」
「笑う……」
それを聞いたジェルは、ゆっくりと表情を変化させていく。
そして、ジェルは初めて……無表情を明確に崩した。
「こう、でしょうか？」
そこあるのは、１人の少女の微笑み。
「ナイス、良い顔で笑えるじゃない。……その顔、忘れちゃダメよ」
「はい、ジャム様」
笑顔で返事をするジェルは、無表情の時とは印象が大きく異なる。
この瞬間から、自称「機械人形」の少女は喜怒哀楽を覚え始めた。
数日後。
「なぁセンセ、今度お前の家に言っても構へんか？」
学校にて、トウジがこんな事を言ってきた。
「ふふ、サキさん目当てなんだろ？」
「う！！な、な、何を言うんや！ワシはただ、友人の家を一度見てみたいと……」
真っ赤になって反論するトウジ。
「いいよいいよ、明日にでも来る？」
「ホンマか？おう、行くで！！」
「じゃあ、明日ね」
こうして、初めて「愛の巣」にクラスメートを呼ぶ事となった。
（ジャムさんやジェルさんのこと、紹介しなきゃな……）
次の日の放課後。
「ケンスケにイインチョ、何でお前達まで付いてくるんや？」
「つれないなぁ、俺達友達だろ？」
「そ、そうよ鈴原！」
「別に良いけど、洞木さんにはちょっと刺激が強いかもしれないよ」
「どういうこと？」
「来れば分かるよ。じゃあ、帰ろうかみんな」
「分かったわ、碇君」
「うん！」
「…………はぁ」
１人元気が無いラミが、溜め息をついた。
何故なら、家に帰った後のサキとの（一方的な）ラブラブタイムが減るからである。
「オイ迅雷、ケンスケとイインチョはエエとして、オノレまでいるとはどないな了見や！」
「うっさいな、オレの家もこっちなんだよ」
そして一行は愛の巣へと歩き始めた。
「「「「ただいま（〜！）」」」」
「「「おじゃまします」」」
ここでトウジがある事に気付く。
「オイ迅雷、オノレは今『ただいま』と言わへんかったか？」
「さっき言ったろ？オレの家もこっちだって……」
「な！？ま、まさか迅雷もココに住んどるんか！？」
「ああ、そうだよ」
いつもなら、家に帰るや否やサキに抱きつき至福の時間を味わえるのだが、今日はそうも行かない。
トウジの妨害は目に見えているからである。
よって、ラミは不機嫌であった。
「なんやとぉ〜〜〜〜っ！？まさか学校では飽き足らず、家でも水野さんをムリヤリ襲っとるんや無いやろうなぁ〜！！」
「失礼な事言うな！ムリヤリなんてするか！」
いつもの様に睨み合うトウジとラミ。
その時、玄関に２人の人影が現れた。
「お帰りなさいませ、御主人様」
「お帰りなさい、皆様」
ジャムとジェルである。
「ただいま、ジャムさん、ジェルさん」
「２人とも、ただいまなの」
「ジャム、ジェル、ただいま〜！」
「ただいま……」
元気に（ラミを除く）挨拶を交わす家族とは対照的に、ボーゼンと固まる訪問者達。
メイド服＋首輪な大人の女性と、少し年上の美少女が丁寧な挨拶をしているのである。
無理もなかろう。
「いらっしゃい、みんな」
「どうぞ、ごゆっくりしていって下さい」
固まる３人に、ジャムとジェルは笑顔で挨拶をした。
「ね、ねぇ碇君、あの人たち、誰？」
半ば無意識にリビングへと連れて来られた３人は、徐々に再起動する。
「紫色の髪をした大人の人がジャムさん、ウチでは家事を一生懸命してくれるんだ。で、もう１人の人がジェルさん、ああ見えてアンドロイドなんだ」
「へぇ、アンドロイド……アンドロイド！？」
さっきの美少女がアンドロイドだと知り、ヒカリは驚愕。
「い、碇、お前、あんなに沢山の美人に囲まれて暮らしているのか？」
興奮気味に尋ねるケンスケ。
ケンスケにとって、レイとサキが同居人であるという事はかなり羨ましい事実だったのだが、さらにラミ、そしてジャムとジェルの存在も知り、彼の頭の中はかなりスゴイ想像が出来ていた。
「そうだよ」
アッサリ肯定するシンジに、羨望の涙を流すケンスケ。
「裏切り者〜〜〜っ！！」
「大丈夫だよ、僕の恋人は綾波だけだから」
それだけでもケンスケの裏切り基準を充分過ぎる程オーバーしているのだが。
「そういえばセンセ、さっき『御主人様』と呼ばれへんかったか？」
今度は、怪訝そうな顔をしながらトウジが尋ねる。
「まぁね。僕とジャムさんはちょっと変わった出会いをして、それ以来ジャムさんはあんな感じなんだよ」
「御主人様だなんて……不潔、不潔よぉ〜〜〜〜！！」
何を想像したのか、１人で騒ぎ出すヒカリ。
「あなた、名前は？」
そんなヒカリを見て、興味を持ったジャムが接近してきた。
「ほ、洞木ヒカリです」
「ふふ、ヒカリちゃん、そんな事で『不潔』だなんて言ってると、子孫繁栄しないわよ？」
「し、子孫繁栄って……」
ジャムの妖しげな囁きに、たちまち真っ赤になるヒカリ。
「それに……大好きな人に優しく抱かれれば、そんな考え、きっとどこかに行っちゃうわ……」
「だ、大好きな人って……」
「私の場合は、御主人様ね」
「そ、そ、それってジャムさんが碇君と……」
微笑を浮かべながらコクンと肯くジャム。
当然、これらの会話はこの場の全員が聞いている。
「い、碇、お前、綾波と付き合ってるんじゃなかったのか……？」
「やだなぁケンスケ、何を今更当たり前のことを」
「じゃ、じゃ、じゃあ、お前二股か！？」
「違うわ。碇君の恋人は私だけ」
シンジが答えるより早くレイが答えた。
「御主人様はお優しいから、私が求めるとイヤな顔一つせずに応じてくださるのよ……」
どこかトリップしたような表情で呟くジャム。
色々な衝撃的事実の発覚に、客の３人はボーゼンと固まっていた。
「紅茶です、お客様」
３人をこっちの世界へ引き戻したのは、ジェルの一言であった。
紅茶を置くと、ジェルは隣の部屋で本を読み始める
「なぁ碇、あの娘、本当にアンドロイドなのか！？」
興奮気味にシンジへと尋ねる、興味津々なケンスケ。
「本当だよ。だから、喋り方とかがまだ機械っぽいんだよね」
「で、どうしてお前の家にアンドロイドがいるんだ！？」
「ケンスケ、ＪＡって知ってる？」
「ああ、暴走事故を起こして消えた日重の巨大兵器だろ？」
「ジェルさんは、あのＪＡを改造して生まれたんだよ」
「ＪＡを！？」
驚いたケンスケは隣の部屋のジェルを見る。
「……とてもそうには見えないぜ」
「ま、本当なんだけどね。そして、よりたくさんの知識を得るために、最近は読書を趣味にしてるんだよ」
「へぇ、いいなぁ……」
「あげないよ。僕にとっては大事な家族の１人だからね」
「分かってるさ」
そんな会話を耳にし、誰に言うでも無くポツリと呟くジェル。
「家族……ありがとうございます、マイ・マスター……」
その表情は、わずかに微笑んでいた。
「うぉぉぉぉっ、水野さん！水野さぁぁんっ！！」
「サキに近付くな、ジャージ野郎！ニオイが移るだろうが！」
「ふ、２人とも、なかよくしよーよ……」
「年上の美女ジャムさんに、アンドロイド少女のジェルさん……すごい、コレは売れるぞぉぉぉっ！！」
「不潔、不潔よぉぉぉぉぉぉぉっ！！」
「御主人様、今夜、よろしいでしょうか……」
「ダメ、夜は私となの」
「ジャムさん、そういう訳だから浴室で我慢してね」
騒がしい一同の様子を、ジェルは離れた位置から見ている。
（分かりました、マイ・マスター……。私は今、楽しいと思っているのですね）
まだまだ無表情が多いアンドロイド少女、ジェル。
愛の巣でシンジ達が繰り広げるドタバタは、彼女の心の成長に大きく貢献していた。
そう、それはまるでレイが来た時の様に。
「ケーキを持ってきますね、皆様」
魂を持たない「機械人形」は、人の心を持つ少女へと変わっていった。
あとがき？
第７話でした。ボーイッシュの次はメカです。
ＪＡがこうなると予想してた人って、どのくらいいるのでしょうか？（笑）
今回は、ジェルの顔見せのような話でしたので、内容的には薄かったかもしれません。
そのジェルの喋り方ですが、誰に対してもただの丁寧語です。
なので、ジャムのシンジに対する喋り方の様に、気を使うこともあまり無いのでいい感じです（笑）。
イメージとしては「初期のレイ」をなんかこう機械的にして、メカらしさを見せてるつもりですが。
ぶっちゃけた話、「（レイ＋ジャム）÷２」という気がしないでも無いです。
どう彼女達と差別化を図るか、それがこれからのポイントでしょうね。
……しっかし、動かしにくいのか動かしやすいのかイマイチ分からないなぁ、このキャラ。
それでは！
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感謝の言葉：
・・・まさか、人化の法で、Ｊ・Ａが人型になるなんてビックリ。（^^;）
今後はどうなるのか・・・どっちにしても「愛の巣」は賑やかなことに
変りはありませんけど。
次は「アスカ、来日」ですね。さてさてエヴァを使わず使徒が殲滅できる
状況・・・アスカはどう思っているんでしょう？
さ、読んだ方は感想を送って、ＢＥＥめーだ さんに「続きが読みたい」
想いを伝えましょー♪
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第０８話「サルベージ決行！…あとアスカも来日」へ進む。
作者の ＢＥＥめーだ さんへの感想メールはこちら（beemeda@mail.goo.ne.jp）まで。
読者からの反響は作者のやる気を湧き出させます。
続きが読みたい人は、感想メールを送りましょうね。