暁の守護天使
第０７話「血戦」
「いけない！戻して、早く！！」
ミサトの指示によって降ろされていく初号機。
加粒子砲は、初号機が見えなくなるまで照射され続けた。
「マヤちゃん、パイロットはどうなったの！」
ミサトの問いに、マヤが報告する。
「はい、脳波が乱れています。心音は…微弱、いえ、停止しました！！」
「まずいわね、生命維持機能最大！電気ショックを与えてみて！」
リツコの冷静な指示によって電気ショックが与えられ、ユウリの身体がピクリと動く。
「だめです、心音確認出来ません！」
「もう一度よ！」
「はい！……心音確認、蘇生しました！！」
「リツコ、私はケイジへ行くわ！救護班を廻して、それから緊急処置の用意を！！」
言うが早いか駆け出していくミサト。
リツコは、救護班の手配をマヤに任せると、自らは初号機の破損状況を確認し始めた。
ケイジへミサトが到着すると、そこには万一に備えてプラグスーツのまま待機していたレイがいた。
プラグが強制排出されると同時に、加熱されたＬＣＬがプラグ内から排出されていく。
ＬＣＬの排出が終わると、ようやく作業員によってプラグのハッチが開けられ、ユウリが連れ出された。
救護班に託されたユウリは、ストレッチャーに乗せられてＩＣＵへと運び込まれ、処置を施される。
プラグスーツのまま救護班についていったレイは、ＩＣＵの扉の前で震えていた。
（ユウリさん、無事でいて………死んでは駄目…死んでは駄目……）
レイの願いがかなえられるには、数時間の時を必要とした。
本部直上へ移動した使徒が、下部から出た棒状のモノで装甲板へ穿孔を始めた。
発令所に戻ったミサトは、作戦を練るべく行動を開始。
初号機のバルーンダミーや、自走砲等での攻撃によって得たデータをＭＡＧＩに分析させ、スタッフに召集をかける。
もっとも、召集されたスタッフの一部は、そういう事は出撃前にやっておけよ、と思っていたとかいないとか。
葛城ミサト、熱狂的な信奉者である日向マコト以外からは、あまり良く思われていないようである。
それはひとえに、彼女の普段の生活態度故なのであるが、本人にはそれを改める気配が全く無い。
『生活無能者』と影で噂される彼女に、新たに加えられようとしている称号。
その汚名を返上できるか否か、それはこの使徒を殲滅できるか否かに掛かっている。
そして、作戦部による会議が開始された。
「………以上のデータから、目標は一定距離内に侵入した外敵を自動排除するものと推測されます」
資料を片手に、日向が報告する。
「ＡＴフィールドは？」
「依然健在です。移相空間が肉眼で確認できる程、強力なものが展開されています」
ミサトの質問に答える日向。
「…攻守ともに完璧、か。ヤな奴ね、ホント」
「それからボーリングマシンですが、本部直上を穿孔中。現在は、第２装甲板まで到達しています」
「到達時刻は？」
「ＭＡＧＩの計算ですと、明日マルマルヒトマル（００：１０）の予定です」
「あと半日もないワケね。…赤木博士、初号機の状況はどうなっているの？」
ミサトは、オブザーバーとして会議に参加していたリツコに尋ねた。
「直撃を受けた胸部が第３装甲板まで融解、ただ、幸い機能中枢はやられていないわ。もっとも、あと３秒照射されたらアウトだったけど」
「修復に要する時間は？」
「あと３時間ね」
「パイロットの状態はどうなの？」
「はい、加熱したＬＣＬによる軽度の火傷はほぼ完治しています。しかし、フィードバックによる胸部の火傷の方は、かなり時間がかかるみたいです」
再度日向が答える。
「またしてもフィードバックによる怪我か…。その他はどうなの？」
「神経パルスが若干不安定ですが、特に問題ありません。戦闘には、どうにか耐えられるようです」
「難攻不落の空中要塞に対し、こちらの駒であるエヴァ２体はどちらも完調とは言い難い。最悪の状況ね」
「白旗でも上げますか？」
ミサトの深刻なセリフに対して、冗談で返す日向。
豪胆な上司のおかげなのか、大した度胸である。
「ナイスアイデア！でも、その前にやれることやっとかなきゃね」
そう言って、ニヤリと笑うミサト。
この時、彼女の自慢のカンピューターはフル回転していた。
そうして幾つかの作戦案をＭＡＧＩでシミュレートした結果、最も成功率が高かった案を携えたミサトは、司令室を訪れた。
「エヴァによる長々距離からの狙撃、かね？」
資料を一読した冬月がミサトに尋ねる。
同じく資料に目を通したはずのゲンドウは、いつものポーズを崩していない。
「はい、様々なデータを検討した結果、ＡＴフィールドを中和するのではなく、高エネルギー収束帯による一点突破しかないと判断致しました」
「ＭＡＧＩは何と言っている？」
尋ねる冬月。
「賛成２、条件付賛成１です」
「条件とは？」
「防御手段の用意です。それは、既に作戦要綱の中に盛り込んであります」
「それは解ったが、これだけのエネルギーを一体どこから得るのかね？」
「日本中の電力をかき集めます。ですから、司令と副司令には日本政府との折衝をお願いします」
「成功確率は８．７％とあるが？」
「現在実行可能なプランの中で、最も高い数値です」
冬月の質問に対し、見た目は自信満々で答えるミサト。
冬月がさらに何か言おうとした時、ゲンドウが口を開いた。
「……反対する理由は無い。やりたまえ、葛城一尉」
「有難う御座います、司令！」
敬礼をするミサトに、冬月が尋ねた。
「作戦名は？」
「『ヤシマ作戦』です」
「『八州』、か。日本を表す古き言葉、この大袈裟な作戦には似合いの名かもしれんな。日本政府との折衝はこちらで行う、君は準備にかかりたまえ」
「了解しました。では、失礼します！」
冬月の言葉に返事をすると、ミサトは司令室を後に、リツコの元へ向かった。
「……無茶な作戦を立てたモノね…やっぱりあなた、どこか頭のネジがおかしいのね」
資料を読むなり、失礼な事を言うリツコ。
リツコのサポートをしていたマヤも、内心では似たような感想を抱いているようだ。
その態度に少々ムッとしたミサトは、反論を試みる。
「そうは言うけど、これが現在実行可能なプランの中で、最も成功率が高いのよ？ＭＡＧＩも賛成してるし、司令達の承認ももらってあるわ！」
「まあ、それが仕事だからやるにはやるけど…」
「やるけど、何よ？」
渋るリツコに、ミサトが詰め寄る。
「マヤ、あなたはどう思うかしら？」
突然リツコから話を振られたマヤは、焦りつつも再度資料を読み返す。
「…そうですね、変電施設やなんかは、双子山にある変電所を改造すれば何とかなりそうです。ですが、ウチのポジトロンライフルでは、これだけの大出力にはとても耐えられません」
「という事だそうだけど…どうするのかしら、作戦部長さん？」
リツコの言葉に、ミサトが会心の笑みを浮かべる。
「そう言うと思ったわ。無けりゃあ、借りてくればいいのよ！」
「借りるって…まさか！」
「そ、戦自研で造ったプロトタイプ、あれを徴発するわ」
「徴発するって、そんな簡単に……」
「大丈夫よ。今、司令達に日本政府と折衝してもらってるの。許可が下り次第、筑波に向かうわ」
「…解った、準備しておくわ」
「よろしくね、赤木博士」
ミサトは、意気揚々と出て行った。
その頃、レイはまだＩＣＵに居た。
ガラス一枚隔てた先には、ＬＣＬで満たされた医療ポッドに入ったユウリの姿がある。
レイは、そんなユウリをプラグスーツのままずっと見詰めていた。
そこへ、ミサトがやってきた。
「レイ、あなたずっとここに居たの？」
「…はい」
レイの返事にため息をつくと、ミサトはレイに用件を告げた。
「レイ、出動よ。と、いっても戦闘じゃないんだけどね」
「どういう事ですか？」
「作戦に必要なモノを借りに行くのよ、零号機の馴らしも兼ねてね」
「解りました」
レイは、一度ユウリの方を見るとケイジへ駆け出していった。
ミサトと共に戦略自衛隊筑波研究所へ行ったレイは、徴発した陽電子砲を持って一目散にＮＥＲＶへと帰還した。
そこにはリツコと、課長の鈴原ハルアキ以下技術三課の面々が揃っていた。
「任しといて下さい。技術三課の面子にかけて、３時間で仕上げてみせまっせ！」
ハルアキのその一言で散らばっていく、技術三課の面々。
エヴァそのものではなく、エヴァの各種装備を主に取り扱う技術三課。
彼等の士気は、異様に高かった。
何故なら、彼等は課長以下ほぼ全員が、年齢の上下こそあれ子を持つ親であるからだ。
彼らは皆、子供を戦場へ送り出す事に、心を痛めていた。
故に彼等は、自分達の作り上げた装備がパイロットの危険を軽減してくれる、そう信じて日々の仕事を行っているのだ。
そんな彼等の奮闘には全く興味がない様子のレイは、急いで更衣室に向かった。
制服に着替えたレイがＩＣＵに着くと、ユウリは医療ポッドから出されてベッドに寝かされていた。
レイは、ユウリの寝顔を心配そうに、幸せそうに眺め続けた。
目を覚ましたユウリの視界に、白い天井が飛び込んでくる。
「目が覚めたのね…」
声のした方を見ると、そこには制服姿のレイが座っていた。
「もしかして、ずっと居てくれたの？ありがとう」
「も、問題無いわ…」
ユウリの笑顔と言葉に顔を赤くするレイ。
「そういえば、使徒はどうなったの？」
「いまだ健在。現在は、本部の直上からボーリングマシンで穿孔を行っているわ」
「じゃあ、また出撃するの？」
「ええ、これが作戦スケジュール表よ。これによると、あと１時間程で出発ね」
「……レイ、使徒のデータ、閲覧出来るかな？」
渡されたスケジュール表を見ていたユウリが、レイに尋ねる。
「多分、大丈夫だと思う…でも、どうして？」
「勝つ為には、相手の事を知っておかなくちゃ」
プラグスーツに着替えた二人は、作戦部の会議室に移動した。
そして、ユウリは出発の時間ギリギリまで資料とにらめっこしていた。
エヴァの出発時刻、学校の屋上に数人の人影があった。
マナ、マユミ、ヒカリ、トウジ、ケンスケの５人である。
「相田君、ホントにこの時間なんですか？」
マユミが心配そうに尋ねた。
「大丈夫、パパのデータを覗き見たんだ、間違い無いよ」
「あっきれた！アンタそんなことしてたの？いいかげんにしないと、ウチの父さんのところに世話になっちゃうよ！」
「そういや、霧島の親父さんは保安部だっけ？さすがにあれはカンベンだな」
先日、黒服に連行された時のことを思い出したケンスケが肩をすくめる。
「ホンマや、あんなん二度とゴメンやで」
「何言ってるの、鈴原！自業自得でしょ！！」
トウジの言葉にヒカリが怒っていると、付近の山の斜面が割れ、紫と橙の巨人が現れた。
「出てきた、エヴァだ！紫が碇のだから、橙のヤツが綾波だな」
解説するケンスケ。
「「「「「おーーい、がんばってね（れよ）！！」」」」」
５人は、エヴァに向かって手を振った。
それに気づいたユウリは、５人に向かって手を振り返す。
「レイ、みんなが見送りに来てくれてるよ。戻ってこようね、必ず！」
「ええ、解ったわ」
２体の巨人は、友人の見送りを背に戦場へと向かっていった。
二人が双子山に到着すると、早速作戦のレクチャーが行われた。
ユウリの目に、改造を終えて多量の極太な電源ケーブルを接続された陽電子砲が映る。
「こんな野戦向きじゃない兵器、ホントに使えるのかな…」
「仕方ないわよ、間に合わせなんだから」
ユウリの呟きを聞き咎めたリツコが、ユウリに言った。
「大丈夫…ですよね？」
「理論上は、ね。けど、銃身や加速器が持つかどうかは撃ってみないと解らないわ。何しろ、こんな大出力で撃った事ないから。まあ、技術三課の鈴原課長のお墨付きだから、大丈夫だと思うけどね」
「…そうですか、了解です」
ハルアキの名が出た事で、引き下がるユウリ。
この辺りに、日頃の行いからくる信頼度の差が現れているようだ。
そして、二人の会話が終わったと判断したミサトが口を開いた。
「…それでは、本作戦における担当を発表します。ユウリは初号機で砲手を担当、レイは零号機で防御を担当して」
「私が防御じゃないんですか？私の方が、防御に向いていると思いますが。先の戦闘では不意打ちであった為に不覚を取りましたが、ＡＴフィールドによる防御は可能であると思います」
ミサトの発表に、ユウリが意見した。
「今回、陽電子砲への影響を考慮して、防御手段にＡＴフィールドは使いません。さらに、本作戦には精密なオペレーションが要求されます。従って、シンクロ率が高く、より射撃に長けたユウリに砲手をやってもらいます」
「…了解です」
しかし、ミサトの説明に、素直に引き下がった。
「いいかしら、ユウリ。陽電子は地球の自転、磁場、重力など様々な要因の影響で直進しません。その誤差修正はＭＡＧＩが計算してくれるから、あなたは照準がそろったらトリガーを引く。いいわね？」
今度はリツコが説明をする。
「了解です。が、それならシンクロ率や射撃の技能は関係無いのでは？」
「大有りよ。あなたも、長距離の狙撃において、手元の僅かな誤差がどれだけ大きな影響をもたらすのか、知らない筈は無いでしょう？」
「…そうですね」
「さらに言えば、シンクロ率が高ければ高い程、エヴァ自体の誤差が少なくなるわ。その結果、誤差修正の計算に含む要因が減り、照準が合うのが早くなるの」
「……もし、一発目をはずしたら？」
「冷却や再充填などで、次弾発射まで２０秒程。その間は、レイの盾に守ってもらうわ」
「盾の強度は？」
「この盾は、ＳＳＴＯの底部に電磁コートを施してあるの。理論上は、あの攻撃にも１７秒耐えることができるわ」
「２０秒に１７秒…２発目は考えるな、てことですか」
「とにかく、一発で仕留めることだけ考えて頂戴」
「了解です」
「私は…ユウリさんを守ればいいのね？」
「その通りよ、レイ。それじゃあ二人とも、作戦開始までエヴァのところで待機してて」
「「了解です」」
二人は、ミサトの指示通りエヴァの搭乗タラップで待機していた。
「レイは、どうしてエヴァに乗るの？」
「絆だから…」
「絆…碇司令との？」
「みんなとの、絆…。私は、エヴァに乗る為に生まれた…他には…何も…無い…」
「そんな…」
「もう時間ね…。ユウリさん、あなたは私が守るわ。私は死んでも代わりがいる、でもあなたは一人しか居ない。だから守る、何があっても」
レイの様子に後ろ髪を引かれる思いのユウリだったが、作戦開始が迫っていたのでやむなく初号機に搭乗する。
そして、『ヤシマ作戦』が発動した。
「ヤシマ作戦、スタート！ユウリ、日本中の電気、あなたに預けるわ！！」
「了解です！」
順調に各工程が進み、凄まじいエネルギーが陽電子砲に注入されていく。
しかし、発射数秒前に異変が起こった。
「目標に高エネルギー反応！円周部を加速、収束していきます！」
マヤが叫んだ。
「よし、撃って！！」
ミサトの号令によって、トリガーを引くユウリ。
ほぼ同時に発射された二つの光は、互いに干渉しあって軌道を捻じ曲げた。
それぞれの脇に巨大な火柱があがる。
「しまった、ハズレちゃった！」
ユウリは、舌打ちしながらヒューズを交換した。
「第２射準備、急いで！」
「砲身冷却、エネルギー再充填開始します！」
ミサトの指示に日向が応じる。
そして、マヤからの報告に、指揮所全体に緊張がはしった。
「目標に高エネルギー反応！第２射、きます！」
真っ白に染まったユウリの視界に、大きな影が割り込んできた。
零号機が、盾で加粒子砲を受け止めたのだ。
照準は合ったものの、エネルギーの充填が終わらずに焦るユウリ。
零号機の盾はどんどん融解していき、ついには用を成さなくなった。
「ユウリさんは、私が守る！」
両手を広げて、零号機自身を盾にするレイ。
初号機よりもさらに薄い、零号機の装甲がみるみる融解。
そして、ようやく充填を完了した陽電子砲から伸びた光が、使徒の中心を貫く。
地中を掘り進んでいたボーリングマシンが消失し、ゆっくりと地面へと落ちて行く使徒。
陽電子砲を置き、零号機に近寄る初号機。
誰もが作戦の終了を確信していたその時、またしてもマヤの絶叫が響いた。
「目標に高エネルギー反応！第３射、きます！」
「クッ、させないよ！！」
そう言い放つと、ユウリは零号機の前に初号機を出し、ＡＴフィールドを展開する。
その時、ユウリの頭に何かが流れ込んできた。
「初号機のＡＴフィールドが、球状に展開されています」
「球状にすることで、衝撃を分散させるつもりかしら？」
リツコは、青葉の報告に対して推論を口にした。
モニターには、加粒子砲を受け止める初号機の姿が映っている。
「初号機のシンクロ率が、急上昇しています！………シンクロ率、２０１．３％！」
マヤの報告に驚く一同だったが、さらに驚くべき事態が発生した。
「初号機に高エネルギー反応！こ…これは！！」
絶句するマヤ。
「まさか、初号機が加粒子砲を！？」
リツコの顔が驚愕に歪む。
使徒の加粒子砲が消えた瞬間、初号機から凄まじい咆哮とともに光の束が飛び出して、使徒を貫いた。
「パターン青、消失。使徒、完全に沈黙しました！」
青葉の報告に、指揮所内に安堵が広がる。
そして、ミサトが作戦終了を宣言した。
それを聞いたユウリは、零号機のエントリープラグを排出、初号機のＡＴフィールドでハッチを切断した。
プラグを地面に置くと、自らも初号機を降りて駆け寄るユウリ。
「レイ、大丈夫！？レイ！！」
ユウリが揺すると、レイはゆっくりと目を開けた。
「ユウリさん…？」
「よかった！…ひっく…うう…よかったよう…ひっく…」
「何故、泣いてるの……」
「レイが…無事だったからに決まってるでしょ…う…うう…」
「私の事、心配してくれるの…？」
「当たり前でしょ！ねえ、レイ…。他に何も無いなんて、言っちゃだめ…」
「でも…」
「出撃の時見送ってくれたみんなも、そして私も…レイがパイロットだから友達なんじゃないよ？パイロットやめたって、レイはレイだもの」
「ホントに？エヴァに乗れない私に、価値なんてあるの…？」
「何言ってるの…私達の絆には、エヴァなんて関係無いでしょ？出会ったきっかけがエヴァだったとしても…ね？」
「ユウリさん……」
「それからね、死んでも代わりがいるなんて、言っちゃだめ。たとえ見た目が同じでも、それは別人なの。私にとっての綾波レイは、今ここにいるあなただけなの」
「ユウリさん…アリガト…」
レイの頬に、一筋の涙が流れる。
「涙…？悲しくないのに…何故…？」
呟くレイの脳裏に、ユウリの言葉が蘇った。
「私…嬉しいの？これは…嬉しい…涙…。でも、ゴメンナサイ…私…こんな時…どんな顔…すればいいのか…わからないの……」
「嬉しい時はね、笑えばいいんじゃないかな」
そう言って微笑むユウリに、レイは生まれて初めての満面の笑みを浮かべた。
そんな二人を、月が優しく照らし出していた。
＜後書き＞
ラミエル戦、終了しました。
レイがまたしても補完されていますね。
ちなみに『ヤシマ作戦』の『ヤシマ』ですが、本作では、『八州』とします。
これは、日本中の電力を一つにする、という作戦内容からです。
作中に書いてますが、日本は昔『八州』と呼ばれていたんですよね。
那須与一が扇を射抜いた故事になぞらえて『屋島』でもよかったのですが、私個人としては『八州』の方が好きなのです。
ところで、ＳＳＴＯって「Single Stage To Orbit」の略なんですよね？
使い捨ての補助ロケット等を必要としない、単独での衛星軌道到達が可能なスペースシャトル、いわゆるスペースプレーンってやつですか？
次は、農協ロボの話はとばしてアスカ登場です。
時田ファンの方、もしいたらゴメンナサイ。
さらに蛇足ですが、ＪＡって目を描くとボスボロットに見えません？
それでは、次回も広い心でお読み下さい。
咆哮と共に撃ち出される光。
エヴァが自前で遠距離攻撃までできるようになるとはビックリ。
老人達も、シナリオにない事態に焦っていることでしょー。
レイちゃんの心の補完も着実に進んでいて、いい雰囲気ですね。
遺伝子が同じ身体でも、それは別人。
考えてみれば、一卵性の双子は正にそれに該当するわけで、ユウリのいう
ことも、とっても納得。
さてさて、農協ロボの出番はなくなり、アスカの登場、とのことですけど、
ある意味、アスカより、よっぽどプロフェッショナルなユウリとの関係が
上手くいくのか、興味津々です。
さて、読まれた人は Ｔ．Ｈ さんに感想と一緒に気力を送って、執筆活動を
がんばってもらいましょー♪