悪魔に等しい存在　−第１話「開幕」−

　≪東海地方を中心とした関東地方全域に特別非常事態宣言が発令されました。住民の方は速やかに指定のシェルターに避難して下さい≫



　「来ない・・・」



　何やらうるさく流れているがどうでもいい。今問題なのはこのふざけた写真の主（むかえ）が来ないことだ。

　もうじき1時間になる。



「これだけ待てば充分だろう」



　背負っていたリュックからたたんでいた自転車を出し、線路にそって走り出す。

　物理法則は無視したスピードだがかまわんだろう。

　一時間以上経過

「なんでいないのよぉぉぉぉ」

　声がどこぞで響いていたらしい

　「停車した駅で1時間待っても来ず、本来の待ち合わせ場所にも来ないとはどういうことだ？」



　第三新東京市のとある駅の前、不機嫌になるのも当然だろう

　２駅を３０分で走り切り、すでに３０分以上経っている。



　「ほう」



　面白そうな声。

　視線の先には(趣味があまり良いとはいえない)紫色の巨人がいる。



　「２つの魂・・力はあるが統制がとれていない･･機械による阻害・・障害だな。失敗作か。もう片方は・・・意志が感じられない？本能？ちがうな・・・」



　巨人と怪物を見ながらなにやらぶつぶつと呟きはじめる。

　主モニタースクリーンには眼帯をつけた少女が映されている。



　『人がいます』



　初号機からの報告とモニターの一部の映像が変わる。

　そこに映っているのは少年。

　パーソナルデータが出てくる

　　　　　　　　　　IKARI SHINNJI

　と。

　サングラスをかけ黒い背広を着た、体格のいい連中に少年が“連行”されてくる。

　場所はケージ

　目の前の紫の顔らしき物にも少年は反応を示さない。



　「E計画担当の赤木リツコよ。」



　「碇シンジです」



　白衣を着た女性に軽く会釈する。名乗られたから名乗った。ただそれだけの行為とわかっただろうか。

　ただ、興味を抱いていないというのは伝わった。



　「久しぶりだな、シンジ」



　巨人のさらに上から声がかかる。



　「あんた誰？」



　顔を上げると訝しそうに、そしてわずかに不快そうに言う。



　「シンジ君、あなたのお父さんよ」



　「父？あれが？」



　リツコの言葉にもおもいっきり不信そうだ。



　「そうだ」



　「んで、その“おとーさん”が何のようだ？」



　少年が父親に全くと言っていいほど意味も興味も持っていないのがよくわかりリツコが眉を寄せる。



　「―出撃」



　「何を言っている？」



　どこか蔑んでいるような口調。



　「座っているだけでいい。」



　「奴は愚か者か？話しが通じんぞ」



　諦めたのかリツコに話しかける。その言葉は本心からとしか聞こえなかった。しかもそう言いたくなるのがわかりそうなのが辛い。



　「碇シンジ君、あなたが乗るのよ。」



　「何にだ？お前もあ奴の同類か？」



　気を取り直した言葉はあっさりと切り返される。手痛いおまけつきで。



　「乗るならはやくしろ。でなければ―帰れ」



　「じゃ　さよなら」



　あっさりと踵を返す。ショックを受けた様子など微塵も無く、何の未練もありそうに見えない。頭上では「冬月、レイを起こしてくれ」とかいったやり取りがされているが気にする様子も無い。

　扉が開かれる。



　「開いた開いた」



　呟きながら歩いて行く。ベッドに乗せられた重傷らしい少女とすれ違うが関心を払わなかった。



　「シンジ君、乗りなさい！」



　駆け込んで来た人物が叫んだ。



　「逃げちゃだめよ。お父さんから・・・何よりも自分から」



　出て行こうとしていたため向き合った少年の顔を覗き込み、言う。



　「どこをどうすればそんな台詞になるんだ？愚か者だらけだな、ここは」



　呆れたのを隠しもせずに言う。



　「なんの為にここまで来たの？」



　「親孝行」



　「へ？」



　意外な発言。駆け込んで来た女性だけでなく、リツコも同じ呆気にとられた表情をしている。



　「あんな嫌がらせとしか思えない意味不明の不幸の手紙もどき、親孝行でもなければ来るはずないでしょう。」



　事実のみを説明すると女性の脇をすり抜ける。



　「待って」



　「まだなにか？」



　「なんて書いてあったのかしら？」



　「来いの一言。あとは風俗の写真。見たければどうぞ」



　言葉と共に封筒が投げられる。

・ ・・・・・・

　中身を見て絶句するリツコ。次いで一緒に入っていた親友の写真に頭痛を覚える。

　この様子はNERV中に（なぜか）流されていた為、この手紙と写真も流されている。リツコと同じ気持ちになった者が多かったのは救いだろう。



　「ではこれも親孝行だと思って乗ってくれないかしら」



　気力で持ち直したリツコが提案する。



　「何に乗るんですか？さっきから主語がないんですが」



　「ごめんなさい。このEVANGELION初号機よ」



　その言葉に紫の巨人らしきものに向き合う。



　「そーですね。あの嫌がらせでここまで来たのと、今回これに乗ることで両親への親孝行は全て終了。と、碇ゲンドウが認めるのならいいですよ。」



　少し考えると条件を提示する。



　「いいだろう」



　ゲンドウが返事をする。



　「今後、碇ゲンドウも碇ユイも親として何も要求しない。僕も親とは思わない。それでいい？」



　「かまわん」



　「契約成立」



　少年は紫の巨人へ歩き出す。



　『これは酷いのう』



　少女とすれ違う時声が響く。

　少年の影が盛り上がり、漆黒のフードを目深に被った人型になる。その人物は少女の横になるベッドに近づき手をかざす。



　『これでいい』



　「なにをするの！」



　リツコが駆け寄り女性は拳銃を向ける。



　『した。の間違いかの？怪我を治しただけよ』



　「そんな・・まさか・・・」



　少女を調べたリツコが呆然としている。



　「どうしたの？」



　「なおってる・・」



　苦しんでいた少女が苦もなく起きあがる。

　驚いた女性が目を離した隙に怪人物は消え、少年はプラグに乗り込んでいた。

　発令所

　モニターにはプラグ内が映され、少年は目を瞑り座っている。L.C.Lが注入された時もなんの反応も示さなかった。



　「シンクロ率、７０．８０・・・２００・・どんどん上がっていきます！」



　「シンクロカット！急ぎなさい！」



　リツコが慌てて指示を出す。



　「だめです！信号受けつけません」



　「またなの？」



　「シンクロ率３７２・３５０・・下降していきます」



　「シンクロ率２２０％で安定しました」



　「そんな・・理論上ありえないわ」



　呆然と呟く

「碇まずくないか」



　「問題ない。ユイが過剰に反応しただけだ」



　それが間違いだと知る者はいない

　「リツコいけるの？」



　「ええ」



　振り返り頭上を睨むように見上げる。



　「司令、よろしいですね」



　「もちろんだ。使徒を倒さぬ限り、我々に未来はない。」



　「エヴァンゲリオン初号機、発進！！」



　号令によって固定台ごと発射される紫の巨人。エヴァンゲリオン初号機





　「シンジ君・・・・・死なないでよ」



　多くの願いかもしれないが、彼女が口にするのは何かが間違っている言葉。

　聞いた者は１人もいない

いや〜終わった〜〜〜！！

　ミサトさん、名前出し忘れましたね。次回にでも自己紹介してもらいましょう！
　リツコさんはちゃっかりしてるけど。
　へたくそな文ですけど見捨てないで読んでやってください。
　感想いただけると嬉しいです〜

明らかに調査済みの人物評価と違うシンジ…。
そのズレに対応できず、原作同様の行動を取る大人達。

さて…サキエルとのファーストコンタクト、どうなるんでしょう？（＾＾）

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