The Short Story of ARMORED CORE 2
--Side Ene--

序章：Stranger 〜見慣れぬ者〜

レイヴン。 報酬によって動き、常にどの勢力にも属さず、合法・非合法に関わらず依頼を遂行する 傭兵達である。彼らレイヴンが属する唯一の組織である、【ナーヴズ・コンコード】では レイヴンを志す者達を試すため、『レイヴン試験』が行われる。試験内容は、都市の一角 に逃げ込んだ、テロリストの撃滅。成功すればレイヴンになれるが、失敗すれば命を失う という命を賭した試験である。 その日、いつものようにレイヴン試験が行われていたのだが、意外な事に受験者のなかには まだ年端もゆかぬ少女が混じっていた。その少女がこの試験を通過するなど誰が予想できた であろうか。だが、大方の予想を裏切り、彼女は辛くもこの試験を通過した。 『なるほど・・・、それなりの力はあるようだな。認めよう、君の力を。今この瞬間から 君はレイヴンだ』 試験官の言葉に、彼女は張り詰めていた緊張を解き、安堵の表情を浮かべた。 ”良かった・・・。私、レイヴンになれたんだ・・・。” 試験終了後、ＡＣから降りた彼女に試験官は改めて試験に合格した旨と、試験で使用した 機体が今後は彼女自身のＡＣになる事を告げた後に、気にかかっていた事を尋ねた。 「そういえば、何故君のような娘が、このレイヴン試験を受けたんだ？いや、悪い意味じゃな いんだ。知っての通り、レイヴンは依頼に成功すれば金は貰えるが、失敗すれば死んでしま う可能性だってある危険な仕事でね、そのせいか君のような若い娘が受ける事は希なんだ。 もし、良ければ理由を聞かせて貰えるかな？」 少女は試験官の質問に、少し俯いて顔を曇らせたが、やがて少しずつ語りはじめた。 「先週、お母さんが突然倒れたんです・・・。それで、病院で診ていただいたんですが・・・、 手術しなきゃ、治る見込みはないくらい重い病気みたいで・・・、でも、私の家にはそんなに 大きなお金がなくて、それで途方に暮れていたんです。でも、そんな時にたまたま居合わせた 人が、私にこう言ってくれたんです。」 『もし、どうしてもすぐにお金が欲しいのならば、レイヴンになり、アリーナに出るのも一つの 手だ。君にもし死を恐れない覚悟があるのならば、来週行われる、レイヴン試験を受けると いい。』 「それから、数日の間悩みましたが、結局受ける事にしました。確かに危険は賭なのは分かっ てます・・・。でも、私はお母さんに少しでも早く元気になって欲しいから・・・、だから、自分の 可能性に賭けてみたんです・・・。」 事情を知り、試験官は納得したかの如く頷くと、彼女に激励と忠告の意を以って彼女一言だけ 告げた。 「アリーナは、外から見るよりもはるかに厳しい世界だ・・・。勝敗は全て、自分自身の技量に かかってくる。そのことを覚悟しておいた方が良いだろう。辛い事が数多く振り掛かってくるだ ろうが・・・、絶対に諦めない事だ。今日はゆっくりと休むといい。明日からの君の活躍に期待 しているよ、エネ君。」 試験官の激励にようやく笑顔を取り戻した少女・・・エネは、丁寧にお礼を言うと明日からの 戦いに備えて、試験場を後にした。 若干１６歳にして、レイヴンとなった少女エネ・・・。彼女のいつ終わるとも知れぬ果てしない 苦闘が始まろうとしていた・・・。 『第一章 〜Pieceful Wish〜』に続く・・・。