「番組をごらんの皆さん、お待たせしました。アリーナバトルの時間です。
　遂に、パーフェクト勝利も果たして、現在、２４連勝中のエルシィです♪」

　　前回の戦闘で無傷勝利だったこともあってか、お祝いの品も
　　いろいろと届いてたりして、かなり賑やかな雰囲気である。

「　とあるレイヴンからだが、余裕があるうちに次手を考えたほうがいい、と
　いう意見があったぞ」

　　言われてみればこの機体も悪くはないが、資金が潤沢に
　　余っているのに手を加えないのは本職のレイヴンからすれば、
　　見ていて、失笑するところだろう。
　　相手より劣ったＡＣで戦闘をすることになれば…それだけ死が近づくのだから。

「うーん、でも、ちゃんと戦えてるじゃない？」

　やはりＡＣに乗っているとはいえ、実戦をやったことが
　あるわけではないエルシィにとっては、いまいち実感が湧かないらしい。

「今回の相手と戦った後も、そう言えるといいんだが…な」

「相手って、自称”アリーナの処刑人”のデス・マスターさんよね？
　…そんなに手強いの？」

　　前回、パーフェクト勝利をしたヘル・マスターと犬猿の仲とか
　　言われてるくらいだから、それほど苦労はしないだろう、と
　　考えるのもまぁ、仕方のないことかもしれない。

　　エルシィの問いに、アルフはいつものように公表データを
　　大型スクリーンに表示することで応えた。

ＲＡＮＫ　２５ ＰＩＬＯＴ：デス・マスター　 Ａ．Ｃ．；Ｂ．Ｈ．Ｉ．

ＲＡＮＫ　２６ ＰＩＬＯＴ：エルシィ　　　　 Ａ．Ｃ．ジェーン�U

自称「アリーナの処刑人」。 同じような名を名乗っているヘ ル・マスターと犬猿の仲である 事は有名。

一般公募で選ばれた異色の レイブン。収支状態が凹むまで 戦い続けると公約しており、現在 賭けの対象としても注目度Ｎｏ１。

	デス・マスター		エルシィ
ヘッド	ＨＤ−２００２		ＨＤ−０１−ＳＲＶＴ
コア	ＸＣＬ−０１		ＸＣＡ−００
アーム	ＡＮ−Ｋ１		ＡＮ−２０１
レッグ	ＬＮ−５０１		ＬＮ−１００１Ｂ
ブースター	Ｂ−Ｔ２		Ｂ−ＶＲ−３３
ジェネレーター	ＧＲＤ−ＲＸ７		ＧＢＧ−ＸＲ
ＦＣＳ	ＴＲＹＸ−ＱＵＡＤ		ＦＢＭＢ−１８Ｘ
右腕武器	ＷＧ−ＸＰ２０００		ＷＧ−RＦＭ１１８
左腕武器	ＬＳ−３００３		ＬＳ−２００Ｇ
右肩武器	ＷＣ−０１ＱＬ		ＲＺＴ−３３３
左肩武器	ＷＲ−Ｍ７０		ＷＭ−Ｓ６０／６
備考	重量過多		ＳＰ−ＪＡＭ ＳＰ−ＡＸＬ ＳＰ−Ｓ／ＳＣＲ ＳＰ−Ｅ／ＳＣＲ




	デス・マスター		エルシィ
ＥＰ	６７２３／６８１０		５１２１／８２０７
ＬＥＧＳ　ＷＰ	４０２７／３９９０		４６２６／４６３０
ＣＯＲＥ　ＷＰ	１３９４／２４５０		１７４７／２７７０
攻撃力	５４１６		２１２０
防御力	３１８０		３６２４
安定性	８５４		１３２０
機動性能	７７４０		５８４０
移動性能	４５１０		２７２０
旋回性能	１２３０		１１２０
上昇性能	２０００		２０００
レーダー性能	１５９４		２１１５
レーダー有効範囲	６００		１１７０
ＦＣＳの機能性能	９９４		９４５
総合ポイント	１８７８４		１５０１９
評価	ＦＩＮＥ		ＦＩＮＥ
ＡＰ	７９０４		８５４４
ＷＥＩＧＨＴ	５７０２		６９３１
ＰＲＩＣＥ	５７５７００		６７２３００


「重量過多…が許可されるってことは実績があるレイヴンなんでしょ。
　レーダーもちゃんと装備してるし、ＦＣＳはいいモノ積んでるし、
　脚は速そうだし、膠着姿勢にならなくても使えるロケットランチャーも
　装備してるし、弾速度が速いパルスライフルも持ってるし、
　ブレードも３３０３…。　…どうして犬猿の仲なの？」

　　実は総合ポイントで評価負けしてたりすることに気付いたりして、
　　ちょっと笑いが硬かったりする。

「ん？　あぁ、あれか。単にレイヴン同士、仲が悪いだけだ。
　ここにも、書いてあるだろ？」

　　アルフは沢山、並べられている雑誌から、一つの記事を見せた。
　　まぁ、性格が合わない、というのはこの業界、珍しいことではない。

「…なんか詐欺に遭った気分」

マップはランダムに選出され・・・夜間市街地マップとなった。



林立する高層ビルと夜間特有の視界の 悪さが予想以上に影響するＭＡＰ。 遠距離からの狙撃や、地形を利用した 高機動戦によって一方的に戦闘を進める ことも可能。レーダーは必須だろう。


「このＭＡＰ…確か、前回、フィアー・クラウンさんと
　対戦したところでしょ…？」

「その通り。で、デス・マスターはロックオン不要のロケットランチャーを
　装備している。…前回のように武器腕ＡＣでもないから、防御力も高い。
　簡単には倒せない、と思ったほうがいいな」

「気のせいかピンチっぽい…」

「…オマケに軽量ＡＣだから機動力も相手が上。
　距離も位置関係も、なかなか思い通りにはいかない」

「ぅ…で、でも、でも、負けないんだから！」

　勝つ、と言わなかったあたり、やっと、不利な状況を実感したらしい。
　今回は厳しそうである。

　いつものように背後のディスプレイにリプレイ映像が表示されている。
　スタート直後から、パルスライフルを撃ち込まれて、前途多難を予感させるが、
　その勘は外れることなく…ある程度、離した距離で障害物を考慮して
　発射しなくてはならないエルシィお気に入りの６連発小型ミサイルは、
　山形弾道の特性もあって、距離設定を間違えると、とことん当たらない。
　それでも、ビル群を利用してひたすら逃げながら、
　撃った直後にビルに当たるようなミスだけはしないように注意したこともあって、
　なんとか、相手のＡＰを半減させる事に成功した。

　エルシィ　　　　ＡＰ6792　ライフル　181/200　ミサイル　6/60
　デス・マスター　ＡＰ3872　パルスライフル　152/200　ロケット 55/70　レーザーキャノン　55/80

「そう。ここまでは良かったの。ここまでは。
　”ＡＰ差３０００、これなら行ける！”…なんて思ったのが
　いけなかったのかも」

「僅か５秒程度だったな」

「うん」

　高空へと飛翔したエルシィは最後の小型ミサイル６発を放ち、武装を
　ライフルへと切り替えた。…のだが、操作に手間取ったのか、着地時に
　ブースターを噴かさなかったせいで、脚部が大きく曲がってショックを
　吸収し…結果として、動きが止まってしまった。

　バン、バン、バン、バン、バン

　そんな隙を逃すわけもなく、デス・マスターは膠着姿勢になると、
　肩装備のレーザーキャノンをジェネレータが許す限り連射し、
　一気に５発を着弾させる事に成功した。

　エルシィ　　　　ＡＰ4492　ライフル　181/200　ミサイル　0/60
　デス・マスター　ＡＰ3872　パルスライフル　152/200　ロケット 55/70　レーザーキャノン　48/80

「もぅ、真っ青」

　一瞬の油断が大きなピンチを招くといういい例である。

「ここは、デス・マスターの状況判断が見事だった、と言うべきだろう。
　この後は、かなり射撃は酷かったが…がんばったな」

「それを言われると恥ずかしいんだけど…
　軽量ＡＣの怖さがよっくわかったわ」

　この後、エルシィは常にブースター機動をしながらライフルを連射、
　デス・マスターはジェネレータ出力に余裕がある時はパルスライフル、
　休ませる時はロケットランチャーと、上手く使い分けて、一進一退の
　攻防が続いた。

　アルフの指摘したように、ＦＣＳは反応したものの、建物に撃ちこんだり、
　巨大なＦＣＳのはずなのに、その枠内に相手を捕らえられず、無駄に
　弾をばら撒いたり、と今回はかなり翻弄されまくってたりする。

　相手の姿を捉えてない時間が目立ったくらいなのだから。

　それでも、常に隙あらば撃ちこむ、という姿勢のせいか、
　デス・マスターのほうも、頻繁にブースターを使う状況になり、
　結果として、パルスライフルの射撃頻度が低くなったのは、
　エルシィにプラスに働いた、と言えよう。

　エルシィ　　　　ＡＰ1440　ライフル　5/200　ミサイル　0/60
　デス・マスター　ＡＰ0　パルスライフル　125/200　ロケット 　4/70　レーザーキャノン　42/80

「それでも、辛うじて射撃戦で削りきったけど…ライフルの
　残弾数５っていうのは、かなり不味いと思うの」

「デス・マスターに感謝しておくといい。
　戦闘の厳しさを思い出させてくれたのだから」

「…うん」

「収入は４００００Ｃ、残金合計は４３９６０００Ｃだ。
　あと、スポンサーから、グレネード銃が提供されたが…
　どうする？」

「増設弾倉をつけることにするわ。それと、肩レーダーが
　なくなるから、ヘッドパーツも一緒に交換。」

ヘッドパーツ


更新前	HD-01-SRVT	26500　Ｃ
更新後	HD-ONE	68100　Ｃ（＋41600）


左肩


更新前	RZT-333	27700　Ｃ
更新後	M118-TD	96300　Ｃ（＋79600）


「あ、重量オーバーになっちゃった…。
　仕方ないから、ブレードを軽いのに換えて、
　レッグパーツも積載量の大きいのに交換、ね」

左腕武装


更新前	LS-200G	29000　Ｃ
更新後	LS-2001	11500　Ｃ（-7500）


レッグパーツ


更新前	RZLN-1001B	45200　Ｃ
更新後	LN-D-8000R	49000　Ｃ（＋3800）


「これで、最大積載量−１ってことでバッチリ」

「グレネード銃は？」

「売却でしょ。そこそこの火力の弾をぽつ、ぽつって撃つのは
　趣味じゃないもん」

「威力はかなりのものがあるぞ。右腕装備武器の中では
　重バズーカよりも更に大火力かつ、軽量だ」

「この弾数１５っていうのがネックなの」

「じゃ今回も売却か。ま、増設弾倉を使ってくれたから、ま、
　多少はスポンサーからの文句も減る…か」

　アルフは売却金額１１３０００Cを残金に加算した。
　そして、新しくなったエルシィの愛機を眺める。

「な〜に？　問題があるの？」

「イヤ、機体が変わると慣れるまでが大変だろうと思ったのさ」

「平気でしょ。弾数も１．５倍に増えたんだから」

　エルシィはちょっとシルエットも変わった機体を見て、
　単純に、払った金額だけ考えて判断してるようだ。素人だから。

　無論、アルフは”習うより慣れろ”が信条だから何も言わない。
　…そう。この機体には実は問題があったのである。

次回予告

遂に機体を大幅刷新したエルシィ。
だが、ろくに慣熟訓練もしないまま、次の試合に臨もうというのは
あまり感心できるものではない。
もちろん、人気が出てきているために、ＡＣに乗る時間が減っていくのは
芸能活動上、仕方ないことなのではあるが…。

次回「第２６話スプレッドスターの駆るイーグルランダー」
こうご期待♪　更新頻度は皆さんからの声援に比例します。（＾＾；）