「番組をごらんの皆さん、お待たせしました。アリーナバトルの時間です。
　初めてのグレネードランチャー装備機との対戦も、回避にかなりの
　不安材料を残したものの勝利を収め、更に連勝記録更新中のエルシィです。」

　　背後には「祝２３連勝」と描かれた文字が表示されている。

「”棒立ちはマズイ”等、いろんなレイヴンからの忠告メールもきてたぞ。」

　ディスプレイにぼ〜っと突っ立ったまま、遠距離から飛来した
　グレネード弾にどっごーん、と直撃されているのは、確かに
　無様である。

「そうね、今回からちょっと気を付けるようにするわ。」

「なら、ヘル・マスター戦は期待してもいいな？」

「まっかせて。」

　・・・相変わらず、根拠のない自信だけは一人前である。

　ひゅっん　ガッゴーン

「・・・酷い音がしたが。」

「いいの、これくらいしないとわかんないんだから。
　さてさて、今回は、自称”アリーナの死刑執行人”の
　ヘル・マスターさんとの対戦でーす。
　・・・強いの？」

「説明文には、”腕は二流”とあるが、あのラフネックスより
　順位は上なんだ。　あまり評判は宛にしないほうがいい。」

「そうね。」

ＲＡＮＫ　２６ ＰＩＬＯＴ：ヘル・マスター　 Ａ．Ｃ．；エグゼキューター

ＲＡＮＫ　２７ ＰＩＬＯＴ：エルシィ　　　　 Ａ．Ｃ．ジェーン�U

「アリーナの死刑執行人」を自 称するレイヴン。仰々しい名の 割に腕は二流で、機体も平凡な ものである。

一般公募で選ばれた異色の レイブン。収支状態が凹むまで 戦い続けると公約しており、現在 賭けの対象としても注目度Ｎｏ１。

	ヘル・マスター		エルシィ
ヘッド	ＨＤ−Ｘ１４８７		ＨＤ−０１−ＳＲＶＴ
コア	ＸＣＡ−００		ＸＣＡ−００
アーム	ＡＷ−ＲＦ１２０		ＡＮ−２０１
レッグ	ＬＮ−１００１Ｂ		ＬＮ−１００１Ｂ
ブースター	Ｂ−Ｔ２		Ｂ−ＶＲ−３３
ジェネレーター	ＧＲＤ−ＲＸ７		ＧＢＧ−ＸＲ
ＦＣＳ	ＴＲＹＸ−ＱＵＡＤ		ＦＢＭＢ−１８Ｘ
右腕武器	なし		ＷＧ−RＦＭ１１８
左腕武器	なし		ＬＳ−２００Ｇ
右肩武器	ＷＣ−０１ＱＬ		ＲＺＴ−３３３
左肩武器	ＷＣ−ＣＮ３５		ＷＭ−Ｓ６０／６
備考	なし		ＳＰ−ＪＡＭ ＳＰ−ＡＸＬ ＳＰ−Ｓ／ＳＣＲ ＳＰ−Ｅ／ＳＣＲ




	ヘル・マスター		エルシィ
ＥＰ	４１９７／６８１０		５１２１／８２０７
ＬＥＧＳ　ＷＰ	４５６３／４６３０		４６２６／４６３０
ＣＯＲＥ　ＷＰ	１８２７／２７７０		１７４７／２７７０
攻撃力	３９８９		２１２０
防御力	２５０８		３６２４
安定性	１３２０		１３２０
機動性能	５８４０		５８４０
移動性能	２７２０		２７２０
旋回性能	１１２０		１１２０
上昇性能	２０００		２０００
レーダー性能	９９４		２１１５
レーダー有効範囲	０		１１７０
ＦＣＳの機能性能	９９４		９４５
総合ポイント	１４６５１		１５０１９
評価	ＯＫ		ＦＩＮＥ
ＡＰ	８４８８		８５４４
ＷＥＩＧＨＴ	６８６８		６９３１
ＰＲＩＣＥ	４２８３５０		６７２３００


「プラズマキャノンにチェーンガン、１２０ｍｍライフル砲の武器腕。
　今度は、射撃戦に特化しているのが特徴だけど・・・
　やっぱり、このエグゼキューターもレーダーが搭載されていないわ。」

「標準人型の機動力と、高性能なＦＣＳで相手を常に捕捉し続ける
　自信がある、ということだろう。」

「それに、肩武器なんて、降着姿勢にならないと使えないものを
　わざわざ選択するなんて・・・」

「腕に自信がある、ってことさ。」

「うーん、ちょっと不安かも。」

マップはランダムに選出され・・・宇宙ドームマップとなった。



宇宙空間に存在する巨大なドーム施設。 なにもかも巨大な作りで頭部レーダーでは 相手を見失うこともしばしば。壁面を支える 梁はＡＣが衝突するほど出っ張っており、 予想以上に機動運動を阻害する。


「遮蔽物なし・・・機動回避の腕が問われるＭＡＰ♪
　がんばって被弾率１０％以下を目指してみるわ。」

「目標が高いのはいいことだ。がんばれ。」

「はーい。」

　パンパカパーン

　祝、パーフェクト勝利♪

　派手なイルミネーションと共に、煌びやかな文字が踊り、
　スタジオ狭しと、光の花が乱舞する。

「皆さん〜♪、私、やりました。
　初めての”パーフェクト”。無・傷・勝・利♪」

　軽くステップを踏みながらパネルを胸に抱いてクルクルと踊る。
　パネルは、パーフェクト勝利を達成した瞬間を捉えた映像の
　豪華保存版としてアリーナ主催者から送られたものらしい。

「・・・エルシィ、嬉しいのは判るが、そろそろ番組に
　戻ろう・・・な。」

　かなりハイなエルシィの態度にアルフの声も
　どこか遠慮がちである。

「・・・はーい♪」

　いつものように背後にリプレイ映像が表示される。
　開始直後に違いに距離を詰めて、ヘル・マスターは両腕の
　ライフル砲を、エルシィは距離を離しながら定番の
　ミサイル攻撃を着実に行っていく。
　しかし、弾速度の遅いライフル砲では変則的に常に
　飛翔し続けるエルシィを捉えられず、さりとて、機動力で
　劣る分、自分の距離で戦うことも出来ず一方的に
　ヘル・マスターが被弾し続ける状況が続く。

「やっぱり武器腕のＡＣって、装甲が軟らかいでしょ。
　ミサイル攻撃だけでどんどん削れるから、このまま
　押せ押せ、って感じだったの。」

「必要以上に接近しなかったのもよかったな。
　いくら弾速度が遅いと言っても、接近したら
　被弾していた、ところだ。」

「うん。でね、でね、この後の機動回避シーンが
　格好いいと思うの。」

　このままではジリ貧状態と悟ったのか、強引に距離を離し、
　ヘル・マスターは膠着姿勢に移行し、肩のプラズマキャノンを
　ジェネーレータの限界まで乱射した。
　ところが、威力はあるものの弾速度がやはりあまり速くない
　プラズマキャノンの光弾が飛び交う中を、エルシィは
　先ほど同様、機動回避し続けて軽やかに飛翔し、
　ミサイル攻撃を続け、膠着姿勢のヘル・マスターは立て続けに
　被弾し、２０００以上のＡＰをこのやり取りで失った。

「ほら、暗闇を飛び交う光弾に照らされたジェーン�Uが
　なんだか格好よく見えるでしょ？」

　確かに、２０発近く連続で乱射されるプラズマキャノンの弾幕を
　１発も被弾せずに舞う姿は、ある種、幻想的ですらある。

「結局、機動力に劣り、弾速度の遅い兵装しかない
　エグゼキューターではジェーン�Uは捉えることは
　できなかった、ということか。」

「チェーンガンを使われ続けたら被弾したかもしれないけど。
　あんまり好みじゃないのかも。プラズマキャノンに最後まで
　拘ってたみたいだもん。」

　結局、エルシィの望む距離で常に戦わされ続けたヘル・マスターは
　１撃も命中させることができずに、ミサイルを撃ち切った後の
　定番ライフル射撃で蜂の巣にされ残りのＡＰを削りきられた。

「試合終了後も、灰のように燃え尽きた表情をした
　ヘル・マスターは一言も言わずに退場したって話だ。」

「ＡＣには相性があるし、仕方なしでしょ？
　ヘル・マスターさん、気を落とさないでくださいね〜。」

　満面の笑みを浮かべて、本人はフォローのつもりで言っているが、
　どこかで番組を見ているであろうヘル・マスターの傷口は
　更に広がったことだろう。

「さて、終始決算なんだが。」

「貯金ね。」

「・・・だろうな。」

「なんだか最近、絶好調なんだもん。」

「そういう時こそ、次への布石を考えるという思想も
　大事だと思うが。」

「いーの、いーの。」

次回予告

　結局、自称”アリーナの死刑執行人”はあまりにも
　惨めな退場をさせられてしまった。

　”絶好調♪”などと取材に応じているエルシィの笑顔からも
　今後の挑戦への不安は感じられない。

　次の対戦相手は苦手な軽量人型の高機動ＡＣである。
　なのに、調子のよさに慢心しているのか、自信があるのか、
　資金が有り余っているのに機体の更新を今回も見送るエルシィ。

　いいかげん、微笑み過ぎたと反省したのか、ランダムに選択
　されたＭＡＰは長距離戦が難しく高機動ＡＣが有利な
　「夜間市街地」となる。
　青くなるエルシィ。鳴り響くチャージングの警告音。
　デス・マスターのパルスライフルが着実にＡＰを削る・・・。

　次回、「第２５話デス・マスターが駆るＢ．Ｈ．Ｉ」
　こうご期待♪