「番組をごらんの皆さん、お待たせしました。アリーナバトルの時間です。
　戦闘前の評判では苦戦必至と思われていたエカノーミヤＢさんとの対決も
　終わってみれば、ＡＰを半分以上残しての勝利♪　もー、嬉しさで
　表情緩みっぱなしのエルシィです。」

「気のせいか週間番組のはずが、随分、放映期間が空いていた気が
　するんだが？」

「そういえば、ちょっと前までそろそろ夏とか言っていた気が・・・」

　ＡＣの世界は地下都市であり季節感はない。
　気にしてはいけないんだ、うん。（＾＾；）

「視聴率（読者からの反応）で放映順（更新コンテンツ）を決めるからって
　ちょっと期間が空き過ぎよね〜。これはちょっとＹＯＫＯに文句を
　言わなくっちゃ。」

　ナ、ナレーションを脅すのは反則ですよぉ、ね、ね？

「ま、そういうことは番組が終わってから、ゆっくりやろう、な。」

　アルフの眼光が一瞬、モニター越しにＹＯＫＯを射抜く。

「そうね、じゃ、今は番組に専念しましょ。
　・・・っと、軽量ＡＣの動きに翻弄されながらも、結構、いい戦いが
　できるようになった、って雑誌にも書いてあるし、嬉しいことよね。」

　エルシィの手元には、いつものようにレイヴン関連の雑誌が
　集められている。一冊だけ、妙に皺くちゃにされているモノが
　あるのだが・・・。

「概ね、そんなところか。それと、どの雑誌も今回のフィアークラウン戦は
　エルシィの初敗北必至、と書かれているのが印象的と言える。」

　アルフの言葉にエルシィの瞳が皺くちゃになった一冊の雑誌を捉える。

「・・・ほんと、頭っくるのよね、この雑誌。
　前回の戦いなんて、両者の残ＡＰ、残弾数と勝敗結果しか書いてないし、
　今回なんて、私が何回負けるか、読者投票なんてやってるんだもん。
　私、こういうの見ると、ぜっっったい、その予想に逆らってやる、って
　気になるのよね！」

　エルシィの開いたページには、読者が予想した敗北回数ランキングが
　掲載されていた。ちなみに多い予想は３〜６敗、大穴がここで凹むと
　いうのと０敗である。

「・・・日刊レイヴンだな。まぁ、レイヴンは口で語らず結果で語る！
　いつまでもマシンガンが苦手だ、なんて言われ続けるエルシィじゃ
　ないってところを見せてやるといい。」

「・・・それ、ちょっと自信ないの。」

　大見得切った割には早くも腰砕けな雰囲気である。

	フィアークラウン		エルシィ
ヘッド	ＨＤ−Ｘ１４８７		ＨＤ−０１−ＳＲＶＴ
コア	ＸＣＬ−０１		ＸＣＡ−００
アーム	ＡＷ−ＭＧ２５／２		ＡＮ−２０１
レッグ	ＬＮ−５０１		ＬＮ−１００１Ｂ
ブースター	Ｂ−Ｔ２		Ｂ−ＶＲ−３３
ジェネレーター	ＧＲＤ−ＲＸ７		ＧＢＧ−ＸＲ
ＦＣＳ	ＣＯＭＤＥＸ−Ｇ８		ＦＢＭＢ−１８Ｘ
右腕武器	なし		ＷＧ−RＦＭ１１８
左腕武器	なし		ＬＳ−２００Ｇ
右肩武器	ＷＭ−Ｓ４０／２		ＲＺＴ−３３３
左肩武器	ＷＣ−ＸＰ４０００		ＷＭ−Ｓ６０／６
備考	なし		ＳＰ−ＪＡＭ ＳＰ−ＡＸＬ ＳＰ−Ｓ／ＳＣＲ ＳＰ−Ｅ／ＳＣＲ

	フィアークラウン		エルシィ
ＥＰ	５５３４／６８１０		５１２１／８２０７
ＬＥＧＳ　ＷＰ	３４９６／３９９０		４６２６／４６３０
ＣＯＲＥ　ＷＰ	１１９３／２４５０		１７４７／２７７０
攻撃力	１７５８		２１２０
防御力	２４９０		３６２４
安定性	８５４		１３２０
機動性能	７７４０		５８４０
移動性能	４５１０		２７２０
旋回性能	１２３０		１１２０
上昇性能	２０００		２０００
レーダー性能	７４０		２１１５
レーダー有効範囲	０		１１７０
ＦＣＳの機能性能	７４０		９４５
総合ポイント	１３５８２		１５０１９
評価	ＯＫ		ＦＩＮＥ
ＡＰ	７１１４		８５４４
ＷＥＩＧＨＴ	５１７１		６９３１
ＰＲＩＣＥ	４０３９００		６７２３００

「・・・何これ？　レーダー搭載してないじゃない？」

「ん、あぁ、これだけ軽量なＡＣになると、レーダーなんていらないって
　いうレイヴンも結構、いるもんなのさ。
　見失うようなことはない以上、レーダーなんざ積まずに、その分を
　他の装備にあてるって訳だな。」

「アリーナ特有の考え方ね。」

「実戦でそんなことは言ってられないのは確かだ。」

「前評判通り、肩に２連ミサイルとパルスキャノン。
　いつもみたいに蜂の巣にされたら、ほんと、凹んじゃうかも。」

「小型ミサイルは２発同時発射は無理（ＳＰ−ＪＡＭに邪魔される）だし、
　パルスキャノンは膠着姿勢にならなくては使えない。
　そういう意味では十分、回避しながら戦える可能性はある。
　最後まで勝負を諦めなければ勝機はあるぞ。」

「・・・がんばってみるわ。」

マップはランダムに選出され・・・夜間市街地マップとなった。

林立する高層ビルと夜間特有の視界の 悪さが予想以上に影響するＭＡＰ。 遠距離からの狙撃や、地形を利用した 高機動戦によって一方的に戦闘を進める ことも可能。レーダーは必須だろう。

「初めてのＭＡＰね。地形が複雑だから、ちょっとミサイル戦は
　無理っぽいけど、相手だってミサイルは使いづらいんだから
　考え方を替えて行けば十分、勝機はありそう。」

「今回は最初はライフルで撃ち合うのかい？」

「そのつもり。」

「みゅぅう・・・、出会うたびに撃ち込まれて蜂の巣なの。」

「結局、そこだけは変わらなかったな。」

　いつものように背後のディスプレイにリプレイ映像が表示されている。
　開始と同時に射撃可能な距離までブースター機動で接近する
　エルシィに対して、ロックオン可能距離に近付いた途端に、
　針のような光の雨が降り注ぎ、慌てて応戦しながら機動回避を
　繰り返す。

　エルシィ　ＡＰ４５７１　ライフル　　１２１／２００　ミサイル６０／６０
　フィアー　ＡＰ４５９４　マシンガン　１５６／４００　ミサイル３８／４０　パルス１００／１００

「このままじゃ、マズイって思ってここから距離を離してのミサイル戦に
　切り換えたの。」

「確かに近距離で撃ち合ってたらボロボロだったろうな。
　ま、この時点でもボロボロと言えるが。」

「もー、意地悪。」

　遠距離からのミサイル戦に切り換え、フルロックオンをするたびに
　ミサイルを発射するが、林立する高層ビル群に阻まれ、なかなか
　相手までミサイルが届かない。
　しかも夜間のため、相手を視認できず、もっぱらレーダーとＦＣＳに
　頼って相手を探る状態が続く。

　エルシィ　ＡＰ３９２２　ライフル　　１２１／２００　ミサイル４５／６０
　フィアー　ＡＰ４００８　マシンガン　１１６／４００　ミサイル３８／４０　パルス１００／１００

「で、ここで気がついたの。」

「何にだ？」

「相手の移動パターンから予測して、ビルの影から出現した瞬間に
　ミサイルが降り注ぐようなタイミングで発射すればいいってことに。」

「誰もが考えることだが実践するのは難しい話だな。」

「でも、成功したんだから、いーじゃない。」

「確かに。」

　エルシィが言うように、ここで、エルシィは６発フルロック状態のまま、
　相手の移動パターンをＦＣＳのロックから予測して、相手がビルの
　影から出現するタイミングでちょうど、着弾するようにミサイルを
　全弾、発射する。

　結果としてその策が功を奏し、フィアークラウンはエルシィを視認した途端に
　降り注いだミサイルを回避できず、大量のＡＰを失った。

　エルシィ　ＡＰ３１０８　ライフル　　１２１／２００　ミサイル３４／６０
　フィアー　ＡＰ２２５０　マシンガン　５６／４００　ミサイル３８／４０　パルス９７／１００　

「で、少し気が緩んだところを蜂の巣にされたわけか。」

「ほんとビックリしたわ。ビルの上でジェネレータの回復を
　してたら、下からマシンガンの雨を撃ちこまれて、
　慌てて逃げ出したんだもん。」

　その後、両者ともに慎重な機動を続け、攻撃が無駄にビルを破壊する
　行為が続く。見えない位置でジェネレータの回復を計るシーンが
　どちらも続き、長期戦の様相を呈して来たのだが、その途中、
　エルシィがビルの屋上で休んでいるときに下からフィアークラウンが
　残りのマシンガンの弾を全て叩きこみ勝負をかけたのである。
　だが、互いの位置関係の問題で、その殆どがビルの壁面に当たり、
　エルシィはなんとか、彼我の位置関係を立て直すことに成功する。

　エルシィ　ＡＰ２１９６　ライフル１２１／２００　ミサイル２４／６０　
　フィアー　ＡＰ１６６４　マシンガン０／４００　ミサイル３７／４０　パルス９７／１００

「ここが一番危ないシーンだったけど、この後は距離を保ってミサイル攻撃を
　続けて勝利♪　かなり苦戦したけど、なんとかなっちゃったわ。」

　エルシィ　ＡＰ２１９６　ライフル１２１／２００　ミサイル８／６０
　フィアー　ＡＰ　　　０　マシンガン０／４００　ミサイル３７／４０　パルス９７／１００

「ＭＡＰがフィアークラウンの特徴を生かせる場所でなかったのが
　良かったな。なんにしても勝利には違いない。よかったな。」

「うん。」

「今回の賞金は３３０００、残金合計は３２９６００だ。
　どうする？」

「まだ、この機体、使いこなせてない感じがするから・・・。
　着地したときに一瞬、動きが止まっちゃうんだけど、
　それがなんとかなれば、今のままで十分だと思うの。
　どう思う？」

「それなら、着地の瞬間に、ブースターを吹かすようにすればいい。
　そうすれば勢いが相殺されるから、レッグパーツが衝撃を中和
　するために大きく曲がることもない。」

「ふーん、じゃ、今回はこのままでいいわ。
　ちょっと着地膠着なんてならないように練習するから。」

「膠着時間が少なくなれば、被弾率も当然、低下する。
　・・・がんばって腕を磨いておくといい。
　次は間違いなく強敵だ。」

「はーい。」

４連装マシンガンの猛攻にも何とか耐えきり勝利を掴んだエルシィ。
それが慢心を呼んだのか、機体変更は行わなかった。

軽やかに飛翔し、ガトリングガンを乱射するラフネックス。
しかもミサイル、リニアガンまで駆使し、エルシィは予想通り苦戦する。
ガトリングガン攻撃を凌ぎきった時点で残りＡＰ１３６２！！！
遂に敗北するのか？

次回「第２１話ベーコン・フライの駆るラフネックス」
こうご期待♪