「番組をごらんの皆さん、お待たせしました。アリーナバトルの時間です。
単武装ＡＣ群を全勝で突破して、今後の活躍が期待♪　と各雑誌で
　評価を受けているエルシィです。」

　異例の全勝状態を維持し続けるエルシィの実力に、各雑誌もどこまで
　昇り詰めることができるのか、予想などをし始めている。
　特に公言している条件、凹んだら挑戦権を失う、というものがあるために
　論争好きの者達の格好の話題となっていた。

「一番厳しい見方をしている日刊レイヴンは、２８位戦までで凹むって予想を
　してるんだが、な。」

　そういって、アルフは日刊レイヴンの最終順位予想特集のページを見せる。
　それによると、３０位エカノーミヤＢの機動力と的確な射撃に削られ続けて
　連敗が続き、２９位フィアークラウンに蜂の巣にされ惨敗が続くが特攻による
　偶然の空中斬撃で辛くも勝利し、２８位ラフネックスで凹む・・・という予想である。

「こーんなに自信満々に書いているけど、根拠があるの？」

「例えば、今回のエカノーミヤＢはスナイパーライフルを使ってくるんだが、
　エルシィはシムーン戦では一方的にミサイルによる間接攻撃をやったんで
　まともに戦うのは始めてだよな？　弾速の早い攻撃・・・マシンガン系なんかが
　苦手だっていうのは今まででバレている。」

「・・・うん。」

「３０、２９、２８位はどれも軽量ＡＣだ。ローゼンリッター戦で立証されているが、
　機動力に勝る相手にはエルシィの得意とするミサイル攻撃はほとんど命中しない。」

「みゅぅ。」

「そして、複数武装を保持しているが故にＡＰを削る能力は今までのＡＣと比較して
　２〜３倍は優れている・・・。ここまで悪条件が重なれば、こういう予想だって
　強気で出してこれるさ。」

「２６万Ｃあるから、１敗１．６万Ｃとすると、１６回は敗北しても大丈夫って計算に
　なるから、最悪の場合でも突破はできると思うわ。」

「なんとも心細い予定だな。」

「あくまでも、さ・い・あ・く・の場合よ。当然、ストレート勝利を目指すもんね〜。」

　・・・相変わらず根拠のない自信だけは一人前である。

「ちょっとそこ！　いちいち人の決意に文句をつけるんじゃないの！」

「？　誰に文句を言ってる？」

「無粋なナレーションに。」

	エカノーミヤＢ		エルシィ
ヘッド	ＨＤ−２００２		ＨＤ−０１−ＳＲＶＴ
コア	ＸＣＡ−００		ＸＣＡ−００
アーム	ＡＮ−Ｋ１		ＡＮ−２０１
レッグ	ＬＮ−１００１−ＰＸ−０		ＬＮ−１００１Ｂ
ブースター	Ｂ−Ｔ２		Ｂ−ＶＲ−３３
ジェネレーター	ＧＲＤ−ＲＸ７		ＧＢＧ−ＸＲ
ＦＣＳ	ＴＲＹＸ−ＱＵＡＤ		ＦＢＭＢ−１８Ｘ
右腕武器	ＷＧ−ＲＦ／５		ＷＧ−RＦＭ１１８
左腕武器	ＬＳ−２００Ｇ		ＬＳ−２００Ｇ
右肩武器	ＲＺ−Ａ０		ＲＺＴ−３３３
左肩武器	ＷＭ−Ｓ４０／２		ＷＭ−Ｓ６０／６
備考	なし		ＳＰ−ＪＡＭ ＳＰ−ＡＸＬ ＳＰ−Ｓ／ＳＣＲ ＳＰ−Ｅ／ＳＣＲ

	エカノーミヤＢ		エルシィ
ＥＰ	５１１０／６８１０		５１２１／８２０７
ＬＥＧＳ　ＷＰ	４０５８／４１００		４６２６／４６３０
ＣＯＲＥ　ＷＰ	１３８１／２７７０		１７４７／２７７０
攻撃力	２３１０		２１２０
防御力	３１０６		３６２４
安定性	９０４		１３２０
機動性能	５９６０		５８４０
移動性能	２８００		２７２０
旋回性能	１１６０		１１２０
上昇性能	２０００		２０００
レーダー性能	２１４４		２１１５
レーダー有効範囲	１１５０		１１７０
ＦＣＳの機能性能	９９４		９４５
総合ポイント	１４４２４		１５０１９
評価	ＯＫ		ＦＩＮＥ
ＡＰ	８３２２		８５４４
ＷＥＩＧＨＴ	５９５０		６９３１
ＰＲＩＣＥ	４０９１００		６７２３００

「高性能ＦＣＳ、長距離レーダー＆スナイパーライフル、それにミサイルがあって
　接近戦用のブレードもジェーン�Uと同じものを装備・・・なのね。
　機体重量がジェーン�Uより軽い分、機動時間は長いと見たほうがいいでしょ？」

「Ｂ−Ｔ２は燃費が一番優れている。推力は落ちるが機体重量が２割も軽いから
　厳しいだろう。ま、ジェネレータは少し落ちる分、機動性能は少し劣る程度、と
　見てもいい。
　それよりは射程距離の違いと弾速の違いを生かして遠距離戦に徹するような
　ことをされた場合は対処方法は難しいな。」

「・・・なんだか厳しそう。」

マップはランダムに選出され・・・渓谷マップとなった。

山岳、深い渓谷が隣接する複雑な 地形。それらが天然の遮蔽物となる ためミサイル戦は予想以上に厳しい。 開始時の距離があるため、遠距離戦 に持ちこむことも可能である。

「遮蔽物が少なくてやたらと広いＭＡＰになっちゃったわ・・・」

「相手を見失わないように気をつけるんだな。」

「はーい。」

「疲れた・・・。もう二度と戦いたくなーい。」

　いつものようにリプレイ映像が背後のスクリーンに表示されている。
　離れた距離から戦闘開始、ということになったが、いきなり弾速の
　速いスナイパーライフルの攻撃で先制されてのスタート。
　開始早々、空に舞い始め遠距離から的確にスナイパーライフルを
　撃ち続けるエカノーミヤＢに対して、エルシィは着地と同時に着弾する
　ようにミサイル使って応戦するが、軽くブースターを吹かされるだけで
　軽がると回避されてしまう。
　今までのレイヴン達と違ってほとんど空中を飛翔し続けるために
　捉え続けるのも難しく、エカノーミヤＢのペースで戦闘が続く。

　エルシィ　　　　５１９６　ライフル１９１／２００　ミサイル　０／６０
　エカノーミヤＢ　７１２２　ライフル　　６／８０　　ミサイル３８／４０

「予想通り、ミサイルは当たらなかったな。」

「だって、ほとんど空を飛び続けているんだもん。あれじゃ当たらないわ。」

　エカノーミヤＢは効果の高かったスナイパーライフルの攻撃から
　ミサイル攻撃に主体を切り換えて攻撃をし始める。
　だが、２連装のはずだが１発ずつしか攻撃してこないために
　エルシィはそのほとんどの攻撃を回避し、逆にライフル弾を叩き込み
　反撃を開始する。

　エルシィ　　　　４６０２　ライフル　５９／２００　ミサイル　０／６０
　エカノーミヤＢ　１１０９　ライフル　　０／８０　　ミサイル　０／４０

「ＳＰ−ＪＡＭで５秒ごとにロックオンを解除されるせいで２発目を
　ロックオンすることができなかったようだ。付けておいてよかったな」

「うん。２連発より、単発のほうが避けやすいもの」

「４６０２／８５４４まで、削られたが、ミサイルでやられたのは６００程度。
　後は、ぜーんぶ、長距離ライフルで狙い撃ちされた結果というわけだ」

「弾速が速いせいで、かなりの弾がヒットしちゃったのよね」

「一撃１２５程度のダメージ・・・ということは２７発命中ってことだな。
　なんだ、半分以上、避けてるんじゃないか。結構、避けられてたわけだ。
　かなり、撃たれたよーな印象しか残ってないが。
　相手が追加弾装を持ってなくってよかったな。もし、装備していたら
　残ＡＰは２０００くらいになっていたところだぞ？」

「二つ追加（スナイパーライフルの弾数×２ということ）してたら敗北ってことね？」

「ま、軽量ＡＣが追加弾装を２つも付けたら重量過多になるが、な。」

　その後、弾切れ状態に陥ったエカノーミヤＢが斬撃距離には遠い位置から
　ブレードを振ると、光輝く衝撃波が発生し襲い掛かるが、辛くも回避。
　不可思議な攻撃に警戒心を強めたエルシィは距離を置いて
　射撃戦に徹してＡＰを削り切った。

　エルシィ　　　　４６０２　ライフル　４４／２００　ミサイル　０／６０
　エカノーミヤＢ　　　０　ライフル　　０／８０　　ミサイル　０／４０

「・・・ところで、ピーク２が、ライフル、ミサイルを撃ち切った
　後で、一回だけ放ったビーム兵器みたいな攻撃、何？」

「あぁ、ブレード光波のことだな。一部のレイヴン達はビームブレードが発生させる
　エネルギーを衝撃波のように前方に撃ち出すことができるんだが見たことは
　なかったか？。」

「何それ？　だって人の身体じゃないんだから、誰が振るったって、ブレードの
　威力、効果はいっしょのはずでしょ？　命中個所とか、踏み込みの速度とか、
　次の斬撃に繋げるタイミングなんかは、個人差があるとしても」

「・・・ん、確かに普通はそのはずなんだが、ＡＣの出力とかは、あくまでも
　連続稼動時のものなのさ。だから、ブレードを振り上げるときにブレードの
　出力、ブレード形成フィールドの出力を瞬間的にタイミングよく跳ね上げることで
　高出力エネルギーの衝撃波を前方に撃ち出すことができる・・・らしい。」

「でも、そんな制御、人ができるとは思えないけど？」

「確かにな。出撃前のＡＣチェックでも特に特別なオプションなんかが
　付けられているわけじゃないことは確認されている。もっとも、ブレード光波を
　使う時のモーション・・・覚えてるか？」

「前方に向かってブースター機動をしつつ、踏み込んでブレードを下から上に
　振り上げるとビームブレードから、ブレード光波がでるのよね。」

「そう、正解だ。俺も気になって、上位ランカー達がブレード光波を使うシーンを
　比較してみたことがあるんだが・・・全員、同じタイミング、モーションで
　放っていることが判明したんだ。」

「それって、同じ人に操縦を教わったってこと？」

「あるいは、ブレード光波を放つためのオプションパーツというものが
　存在しているか、ということだな」

「でも、そんなパーツはついてないって・・・」

「・・・確証はないんだが、ブレード光波を使える連中は＋（プラス）
　なんじゃないか、と言われている。」

「何、＋（プラス）って？」

「病気や怪我で、身体を人工物にしている人っているだろ？　＋（プラス）って
　いうのは、失われた機能を補うためじゃなくって、持っている能力をより
　高めるために、身体を改造している人のことをいうんだ。」

「つまり？」

「ブレード光波を使うためのノウハウというか、経験に当たるデータを
　追加するための手術、というか人工身体があるんじゃないか、って
　ことさ」

「とにかく、そーいったことでもしない限り、ブレード光波は使えないのね？」

「そーだ。だから、エルシィが使おうとしても無理」

「そんなことしてまで、使いたくないもん。ただの趣味にそこまで
　のめりこむつもりはないわ」

「そうだな。」

「・・・で、威力はどれくらいあるの？」

「ＡＰにして５０００ぐらい、一気に削ることができるみたいだぞ。
　過去の上位ランカーが放った威力を見ている限りでは。」

「・・・嘘・・・」

「本当だから、冗談より質が悪い。」

「なんか、特徴とかないの？　貰いたくはないんだけど」

「さっき言ったように、ブレード光波を放つモーションは同じだ。それに、
　今まで過去の対戦記録なんかを見た限りでは、答えは簡単。地上で
　正面、しかも同じ高度でない限り、ブレード光波は当たらないと
　いうのが弱点だ。」

「そーなの？　よかったぁ。それなら、ほとんど貰うことなんて
　あり得ないもの」

「まぁ、エルシィの戦法だと立ち止まることがないから確かに怖くないかも
　しれないな。これが膠着状態になるような背面武装を使うＡＣだったら、
　恐怖以外の何物でもないだろう」

「ま、わかったわ。基本を守っていれば、それほど怖くない攻撃
　というわけよねぇ？」

「段差を利用した位置取り、常に正面を避ける機動をする、という
　意味ではその通り。ま、今後も心の片隅には置いておくといい。」

「はーい」

「今回の賞金は３２０００、合計残金は２９６６００。
　どうする？」

「貯金にしておくわ。かなり苦戦はしたけど、結果を見てみれば
　ＡＰは５０００以上も残っていたわけだし。」

「・・・そうか。」

飛翔し続ける軽量ＡＣを捕捉することの難しさを痛感したエルシィ。
だが、予想していたよりも残ったＡＰに自信をもったのか機体の
変更は行わなかった。

　軽量ＡＣ、しかもＷＧ−ＭＧ２５／２を装備しているフィアークラウン。
　しかも両肩に武装を満載し経戦能力は各段に撥ね上がっている。
　ミサイル攻撃が通用しない相手にエルシィは勝ち目はあるのか？

次回「第２１話フィアークラウンの駆るマジェスティ」
こうご期待♪