「番組をごらんの皆さん、お待たせしました。アリーナバトルの時間です。
　”機動回避の腕の無さを遠距離からのミサイル攻撃で補っていたことも露呈し、
　今後のバトルでの苦戦は必至！”・・・なんて書かれた　エルシィ　です。」

　無理に笑顔で話しているが、目が全然笑っていないため、かなり
　険悪な雰囲気のエルシィ。そんな表情にアルフも引き気味である。

「・・・気分を一新して、新たな対戦相手との戦いについて語り合おう、な。」

「受けた屈辱は１００倍にして返してやるぅ・・・」

「レイヴンは結果で語る・・・とりあえず４２位　ギアクラッシャー＆アンチタンク７との
　対戦結果で、相手の見る目の無さを立証するということにしないか？」

「ギアクラッシャーさんには悪いけど・・・絶対ぃぃぃぃ、勝つわ！」

「あんまり酷い真似だけはしないでくれよ・・・」

「何？」

「・・・気にしないでくれ。」

	ギアクラッシャー		エルシィ
ヘッド	ＨＤ−Ｘ１４８７		ＨＤ−０１−ＳＲＶＴ
コア	ＸＣＨ−０１		ＸＣＡ−００
アーム	ＡＷ−３０／３		ＡＮ−２０１
レッグ	ＬＣ−ＨＴＰ−ＡＡＡ		ＬＮ−１００１
ブースター	なし		Ｂ−Ｔ００１
ジェネレーター	ＧＲＤ−ＲＸ６		ＧＢＧ−１００００
ＦＣＳ	ＴＲＹＸ−ＱＵＡＤ		ＣＯＭＤＥＸ−Ｃ７
右腕武器	なし		ＷＧ−RＦＭ１１８
左腕武器	なし		なし
右肩武器	なし		ＲＺＴ−３３３
左肩武器	なし		ＷＭ−Ｓ６０／６
備考	なし		ＳＰ−Ｓ／ＳＣＲ ＳＰ−Ｅ／ＳＣＲ ＳＰ−ＣＮＤ−Ｋ

	ギアクラッシャー		エルシィ
ＥＰ	４５８５／６０００		４８６６／９９８８
ＬＥＧＳ　ＷＰ	２３３４／４１３０		４２７８／４４７０
ＣＯＲＥ　ＷＰ	４８０／３６００		１５６６／２７７０
攻撃力	８３０		１１７０
防御力	２９２５		３５７６
安定性	６３０		１０１８
機動性能	４６８０		５９２０
移動性能	２５００		２７７０
旋回性能	１１８０		１１５０
上昇性能	１０００		２０００
レーダー性能	９９４		１７０８
レーダー有効範囲	０		１１７０
ＦＣＳの機能性能	９９４		５３８
総合ポイント	１００５９		１３３９２
評価	ＯＫ		ＯＫ
ＡＰ	８３６６		８３９６
ＷＥＩＧＨＴ	５２４９		６２４４
ＰＲＩＣＥ	２７６７００		４７３７００

「防御力、安定性、機動性能が悪くてレーダーも搭載してないなんて
　破壊してくださいって感じのＡＣよね。」
「まぁ、両腕のミサイルも、1発当たりの破壊力はエルシィが装備して
　いるＷＭ−Ｓ６０／６と同じ８３０だから、特筆するほど高い攻撃力を
　もっている、というわけでもない。」
「・・・で、どうしてこんなＲＡＮＫにいられるわけ？」
「遠距離戦でミサイル戦を続けられれば、これまで下位にいたＡＣだと
　結構、苦戦しそうだろ？」
「うーん、そうかも。」

マップはランダムに選出され・・・宇宙ドームマップとなった。

宇宙空間に存在する巨大なドーム施設。 なにもかも巨大な作りで頭部レーダーでは 相手を見失うこともしばしば。壁面を支える 梁はＡＣが衝突するほど出っ張っており、 予想以上に機動運動を阻害する。

「広くて遮蔽物なんてなんにもない始めてのＭＡＰね。ミサイル戦
　にはもってこいじゃない♪　間合いは好きにできるし、今回は
　ミサイル戦！、これしかないわ。」

「・・・？ミサイルに頼らずライフルで戦うのかと思ったが。」

「前回、遮蔽物にミサイルが当たってばっかりで、とっても
　不満だったのよ。だから、ミサイル戦。」

「相手のミサイルをうまく回避することだな。アンチタンク７の
　ミサイルは水平発射型、エルシィのミサイルは山形弾道型という
　違いがあることを忘れないように。」

「はーい。」

「せっかくミサイル戦で戦おうと思ってたのに、思ってたのにぃ」

「意地張って前半戦でミサイル戦を続けたせいでかなり被弾
　したのは痛かったな。」

　いつものようにリプレイ映像が背後に表示されている。
　戦闘開始と同時に間合いを詰めて、相手を捕捉、ミサイル
　攻撃をし始めようとした途端に、アンチタンク７から発射された
　ミサイルが襲いかかってきた。

「まだ、1発目のロックオンもできてなかったのに・・・」
「ＦＣＳのロックオン速度は相手のほうが速かったから、な。」
「機体紹介の時、わざとＦＣＳがＴＲＹＸ−ＱＵＡＤだってこと、
　言わなかったでしょう・・・」

　不機嫌そうな表情を隠そうともせず、エルシィが詰め寄る。

「４３位戦の時に、ＴＲＹＸ−ＱＵＡＤだったら苦戦は必至、と
　言っておいたからなぁ・・・別に重ねて言う必要はないと
　思ったわけさ。」

「・・・そう。」

　この後、１４発もミサイルを被弾し、エルシィＡＰは４８７７に減少。
　機動回避しながら懸命にミサイルをロックオンしようとするが、
　１発目をロックオンする頃にはギアクラッシャーの放ったミサイルが
　迫ってくるため、ほとんどミサイルを撃つことができなかった。

エルシィ　　　　　　ＡＰ　４８７７　ライフル２００／２００　ミサイル　５３／６０
ギアクラッシャー　ＡＰ　７８４８　ミサイル　３６／８０

「ここから人格が入れ替わったかのように射撃戦に転じるんだよな。」
「ミサイル戦は諦めたの。続けても不利だと悟ったから・・・」
「だが、あの機動運動は・・・ちょっとイメージ悪かったぞ？」
「軽やかに舞い、的確に射撃をし続けただけでしょ・・・」
「リプレイ時のギアクラッシャー側の映像、見たか？　まるで前半戦の
　憂さを晴らすかのように露骨に相手の目の前に着地してロックオン
　する直前に機動運動でＦＣＳ範囲外に移動するようなこと、３回も
　やっただろ？」
「べ、別に、たまたまそうなっただけ。偶然、そう、偶然なのよ。」

　エルシィの言い分が正しいかどうかはともかく、ライフル戦に
　切り替えた後の戦闘はそれまでと全く逆のものになった。
　近距離を高速機動し続けるエルシィをギアクラッシャーは
　ロックオンすることができず、ＦＣＳ内に捕らえるだけで精一杯と
　いう状況であった。
　そしてエルシィはライフルを撃ち続けて、７８４８のＡＰを相手に
　反撃のチャンスを与えることなく、いっきに削りきった。

エルシィ　　　　　　ＡＰ　４８７７　ライフル１１５／２００　ミサイル　５３／６０
ギアクラッシャー　ＡＰ　　　　０　ミサイル３６／８０

「前半戦はひやひやしたが、なんとか勝ててよかったな。」

「・・・ぜんぶ・・・」

「全部？」

「ＦＣＳが遅いのがいけないのよ！！！　なんで、あんなに
　ロックオン速度が遅いの。こっちがロックオンする前に
　相手が撃ってきているじゃないの！　ねぇ、アルフ、
　聞いてる？」

「も、もちろん」

「こーなったら、オプションパーツをみーんな売却してでも、
　購入するわ！”板切れ”」

「今回の賞金１５０００、残金が２２０００、オプションパーツの
　合計額が９２５００、今のＦＣＳが１１１００で、合計が・・・」

「ちょっと待って・・・」

「何かな？」

「もしかして、前回までの所持金＋オプションパーツの売却資金で
　”板切れ”って買えてたの？」

「・・・そういうことになるな」

「なんで、前回の収支決算時に言ってくれなかったの？
　おかげでミサイル戦はボロボロだしぃ、ライフル乱射で
　相手を蜂の巣にしちゃったじゃない。
　次号の日刊レイヴンの記事が予想できるわ・・・
　”下手なミサイル戦で負け、逆恨みして相手を蜂の巣に。
　接近戦時にはわざと相手の前に降り立ち兆発行為まで。
　遂にその本性を現したか！？”・・・なんて書かれるのよ。
　あぁ、なんて可哀想な私。」

　オーバーな身振り手振りを交えながら、少しずつ話しかたまで
　ゆっくりと小声に変えていく。そして、話し終えるタイミングで、
　少しうつむきてアルフから目が見えないようにして、いつのまにか
　取り出したハンカチで目元を拭う仕草をしている。

「・・・ＯＫ。で、お姫様は何がご所望なのかな？」

「ル・カフェ・トゥルーのコースセット」

「・・・あそこは正装じゃなきゃ入れないじゃないか。」

「服はアルフが選んでくれたのでいいわ。」

「・・・そこまで要求するのか？」

「駄目？」

「・・・・・・・・・・・・・・・仕方ないな、今回だけだぞ。」

「・・・うん。」

ＦＣＳ：

変更前	ＣＯＭＤＥＸ−Ｃ７	１１１００Ｃ
変更後	ＦＢＭＢ−１８Ｘ	１０８０００Ｃ（＋９６９００Ｃ）

オプション：

変更前	ＳＰ−ＣＮＤ−Ｋ ＳＰ−Ｓ／ＳＣＲ ＳＰ−Ｅ／ＳＣＲ	９２５００Ｃ
変更後	ＳＰ−Ｓ／ＳＣＲ	３８５００Ｃ（−５４０００Ｃ）

残金　７１００Ｃ（機体費用合計を含めた資金　５２３７００Ｃ）

「ところでな、エルシィ。涙を流すところまでは名演技だったが
　完璧さを狙いすぎたな。」
「？」
「最後の涙を拭うところ、しっかりカメラ目線になってたじゃないか。」
「・・・・・・でもぉ、悲しかったのは本当だもん。」
「俺もそう思ったから、要求を飲んだのさ。」
「・・・ありがと。」

※検閲により放送できない箇所については、特別処理が施されていますが
　　ご了承ください。

戦い方に問題はあったもののギアクラッシャーを倒したエルシィ。
その前にブレードを装備したポワッソンが立ち塞がる。
「ミサイル戦で削って、射撃戦で撃破すれば接近戦で
　斬られないことはないわ。」
インタビューにそう答えるエルシィ。
だが選択されたＭＡＰは天井の低い鍾乳洞だった。
ミサイルの使えない始めての戦闘！　エルシィに勝機はあるのか？

次回「第０９話　ポワッソン　駆る　シングルピスケス」
こうご期待♪