やっとＣパートが書けました。
ちょっと書くのに難航しました。
やっぱり登場人物の一人が寝ていると話が書きにくいですね〜。
Ｄパートにはシンリに起きてもらわないと。
感想メールをくださる皆さん、ありがとーなのです。
忙しいなか、執筆が続けられるのは一重に皆さんから
戴く熱意があるから。
これからも応援してくださいね。
プシュー
「…ただいま」
疲れの残る声が玄関から聞こえる。
結局、シャムシエル戦の事後処理に手間取り、ミサトの帰宅は
朝になってしまった。
リビングに来て見ると、淡いクリーム色のパジャマを着たレイが
ぼ〜っとこっちを見ている。レイの横にある枕、膝の上にある毛布。
リビングで寝ていたようである。
「おはよ、レイ」
「…おはよう…ございます…・ミサト…さん」
寝起きが悪いのか、半分、夢の中にいるような感じがするレイ。
よく見てみると、頬に涙の流れた跡が残っている。
目も充血して少し赤くなっているのがわかる。
ミサトが観察しているうちに、レイも少しずつ意識がハッキリしてきたらしい。
「…ミサト…さん…碇くんは？」
「まだ入院してるわ。…顔洗ってらっしゃい。
涙の跡がついてるわよ」
「…」
洗面所で顔を洗うレイ。
「…あの…葛城一尉…お見舞い…行ってもいいですか」
仕事絡みでは未だにレイはミサトのことを「葛城一尉」と呼んでいる。
「お見舞い？ シンちゃん、まだ意識が戻ってないから、
行っても寝顔を見るだけ…だけど、行く？」
「…はい」
「じゃ、怪我人より不健康そうな見舞客じゃ洒落にならないから
しっかり朝ご飯を食べて、身だしなみを整えてから
出発するってことでいいわね？」
コクンと頷くレイ。
レイは納得したのか、エプロンを身につけると食事の支度を始める。
「レイ、済まないけど、ご飯の準備ができたら起こしてくれる？
…毛布、借りるわね」
「…はい」
レイの使っていた毛布と枕を手に入れるとすぐに横になる。
一睡もしてなかったのが堪えたのかすぐに規則正しい寝息が
聞こえ始めた。
ガチャッ
急遽、仮設された巨大なプレハブの中にシャムシエルの巨体が
横たわっている。その中に野戦用の戦闘指揮車が設置され、
技術部が陣取っていた。
「あら、早かったのね、ミサト」
昨夜から一睡もせずに陣頭指揮を取っているリツコ。
疲労が見えるが、初めて調べる使徒に対する興味のほうが
勝っているように見える。
「やっぱ興味あるから、ね…」
リツコの見つめるモニター群の一つに、病室の監視映像が映っている。
白金の髪の子供が眠り、ベットの隣には蒼銀の髪の少女が椅子に腰掛け
ジッと見つめている。
「…まだ、目覚めない…？」
表示されているグラフの一つは寝ている子供…碇シンリの意識が
未だに戻らない状況を示している。
「活動レベルは低下しているけど、安定しているわ。
医師の見たてでは、あと１日もすれば意識は戻るそうよ」
作業状況とその報告データを確認しながら、淡々と告げる。
その表情は硬い。
「で、マヤちゃん、シンちゃんの怪我が治らなかった理由はわかった？」
ミサトは隣にいたマヤに話を振る。
「いえ。ただ、エントリープラグ内に同乗者がいた影響かもしれません」
「普通の怪我との違いはどんな感じなの？」
「通常、身体が損傷を受けてその状態を神経網が検出、ダメージを最小限に
抑えるために周辺組織が動くのですが、シンリちゃんの場合は、その順序が
逆になっているものと思われます」
「怪我をしたと意識が感じ取り、身体が怪我を受けたものとして反応する、と
いうわけ…か。怪我があの程度で済んだのはシンクロ率と関係があるの？」
救出時の検査で、シンリは初号機の損傷と同一部位に怪我を負っていたが、
怪我の程度は重度の打撲に近いものであり、通常の怪我と異なるのは、
貫通された箇所全てが同様の状態になっていることにある。
「はい。腹部に二箇所、ちょうど貫通位置にある組織全体が約４割近く壊死
状態に陥っていますが、これまでの治療の結果、既に滲み出ていた
出血も止まっています」
「シンクロ率に近い数値ね…」
「でも、サキエル戦の時のように頭部の貫通「マヤ！」」
話していたマヤの声を突然、鋭い声が遮り、
車内が水を打ったように静かになる。
「…せ、先輩…すみません…」
「発言には注意しなさい…情報漏洩は例え第一発令所メンバーでも
処分対象になるわ。…ミサトも気をつけてちょうだい」
「…はい」
「はいはい」
「赤木博士、コア摘出作業ならびに腕部光鞭発生器官の検査作業は
３０時間後に完了します」
技術部の一人が作業報告を行う。
「…そう」
「少しお休みになられたほうがいいのではありませんか。
…見舞いに行かれるのでしょう？」
「…」
「ここは私達だけで大丈夫ですから」
「シンリちゃんに俺達も心配してたって伝えてください」
他の技術部のメンバー達が笑顔で話し掛ける。
どの顔も疲労の跡が濃いが、表情に嘘はない。
「…そうね…悪いけど休ませてもらうわ。なにか…」
「緊急事態のときはいつものように携帯端末に連絡を入れます」
リツコはセリフを取られて、ちょっと驚いてる。
「…後はよろしく。…あなた達も無理はしないでね」
リツコは軽く微笑むと戦闘指揮車から出て行った。
「よーし、みんな、あともうひとがんばりだ、がんばっていこう」
「「「おぉー！」」」
「…なんか、異様に元気ね」
静かだが熱意溢れる技術部のノリにちょっとだけ引き気味のミサト。
「そうですか？ いつもこんな感じですけど」
「そりゃ結構なことね〜。それじゃ私も本部に戻るわ。後、よろしく」
「「「はい」」」
なぜか来た時より疲れた感じを覚えてミサトは巨大プレハブを
後にした。
シンリが眠る病室。ベットを囲んで医療機器が設置されてる。
ベットの隣にあるテーブルには、様々な見舞い客が置いて行った
品がある。夜になり、集光ビルが集める月明かりがブラインド越しに
室内を優しく照らしている。
午後の訓練を終えたレイは、その後、ずっとシンリの病室で
シンリの寝顔を見ている。
お見舞いの品
相手が喜ぶモノ
嬉しいこと
碇くんの笑顔
心が温かくなること
独りでいること
寂しいこと
弐号機パイロットが教えてくれたこと
お見舞い
治って欲しいと願うこと
気持ちを伝えること
私の気持ち
モノに気持ちを込めること
私の用意したモノ
碇くんは喜んでくれる？
テーブルの上に所狭しと置かれている見舞いの品の数々の中に、
携帯端末から取り出したデータディスクをそっと置いた。
「ジオフロントの森
ウサギ
ハト
シラサギ
リス
スズメ
タカ
撮影者：綾波レイ 」
ラベルにはそう書いてある。
「…おやすみなさい…碇くん」
レイは静かに告げると扉を開ける。
振りかえって病室内を見てみる。
ブライド越しの月明かりに照らされて、ベットに眠るシンリの顔がよく見える。
今にも起きそうな穏やかな寝顔。
周りにある様々な治療器具、計測機器がなければ怪我をしているとは
思えないほど。
起きるかもしれない…
・
・
・
ピッ、ピッ
…面会の終了の時を報せる音
しばらくシンリを見ていたが、携帯端末の小さなアラーム音に
それを中断する。
「…おやすみなさい…碇くん」
もう一度、静かに告げてレイは帰路についた。
やっとＣパートが書けました。
ちょっと書くのに難航しました。
やっぱり登場人物の一人が寝ていると話が書きにくいですね〜。
Ｄパートにはシンリに起きてもらわないと。
感想メールをくださる皆さん、ありがとーなのです。
忙しいなか、執筆が続けられるのは一重に皆さんから
戴く熱意があるから。
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