プシュー
「ただいま」
意識が戻ってから４日後、ボクはひさしぶりに家に戻ることが
許可された。もちろん、怪我が完治したわけじゃなくって、
２４時間の容態監視がいらなくなっただけ。
不用意に腹部を動かさないようにコルセットを付けて固定してるし、
食事もできるだけ素早く消化してお腹に負担をかけないように
僅かな流動食と点滴だけで栄養補給をしなくちゃいけない。
ペタ、ペタ、ペタ、ペタ
「ん、ひさしぶりだね、ペンペン」
「クェ」
軽やかな足取りでキッチンから歩いてきたペンペンが
ボクに身体を擦り寄せてくる。
「あ〜ら、ペンペン。私が事故で怪我したときだって、そんなに
愛想よくなかったわよねぇ…」
後ろから少しだけ非難めいた声でミサトさんが話し掛ける。
「クゥゥゥゥ…」
ボクとミサトさんの顔を交互に見るペンペン。
ミサトさん…その張り付けたような笑顔、怖いですよぉ。
ペタ、ペタ…ペタ…
「クェ、クェ、クェ」
ゆっくりと後ずさりしていったペンペンは、一声、愛想よく鳴くと、
そのまま同じ鳴き声を繰り返しながら、キッチンに戻っていった。
パタン
「チッ…逃げたわね」
あぅ…ミサトさん、そんなあからさまに不機嫌そうな声で
言わなくても…。
とりあえず、いつまでも玄関先で立っているわけにもいかないので
靴を脱ごうとする…だけど腰が曲がらないからうまく脱げない。
「ごめんごめん、気が利かなくて」
ミサトさんが荷物を置いて、ボクが座るために手を貸してくれる。
「あ、あの、ありがと…ミサトさん」
「どういたしまして」
一週間いなかっただけなのに、なんだかずいぶん、懐かしく感じる。
ミサトさんがバックの中から、大きな箱を取り出す。
真空パックされた赤い液体。ちょっと見ると血液みたいにも
見えるけど、トマトみたいに赤い野菜をベースにした流動食。
パックにストローを刺して紙パックのジュースみたいに飲む。
ボクの摂れる唯一の食料。
他にもいろんな錠剤の入った袋を取り出す。
定期的に飲まなくちゃいけない薬の数々。
「シンちゃん、さっきの説明、覚えてる？」
さっき、というのは薬を渡して説明してくれたお医者さんの話。
どれが何の薬で、何時間おきに飲まなくちゃいけないのか、
病院には毎日、何時にいく必要があるのか、点滴を受ける
時間は何時間なのか？ といったことを丁寧に教えてくれた。
「えっと、さっきデータをもらっておきましたから」
ボクは携帯端末の表示をさっきもらった医療データに変えて見せる。
投薬時間とスケジューラがリンクして、時間になると警告音を出して
教えてくれる。
「準備がいいわね…しばらくの間は、ジオフロントの病院に
通ってもらうことになるけど、それ以外は、学校に行くだけで
ＮＥＲＶの仕事はないから安心して身体を治してね」
「あの、体育は休んでいいんですよね？」
「行き帰りの徒歩と違って腰に負担が大きいから駄目ね。
…体育、嫌いだったっけ？」
「あまり…好きじゃありません」
「そっか。学校には私が連絡を入れておくわ」
「はい」
「とりあえず、学生は勉強するのもお仕事。結局、一ヶ月近く、
勉強が遅れちゃったのは本当、申し訳ないと思ってるの」
「…それは仕方ないですよ。ミサトさんが悪いわけでも
ないんですから」
「でね？ レイも入院していたせいで、ちょっち困ってるわけ」
「そーなんですか」
「そう。で、二人に家庭教師をつけることになったから」
「家庭教師？ 誰が先生なんですか？ ミサトさん…？」
「私？ 無理よ。戦争全般の知識、技術なら教えられるけど、
学校の授業内容とは違うから。
誰だと思う？ シンちゃんの知ってるＮＥＲＶ関係者よ」
ミサトさんが違うなら、日向さんも同じ作戦部だから違うと思う。
青葉さんは、通信設備の復旧で大変って言ってたから駄目。
リツコさんとマヤさんも技術部総出で、シャムシエルの屍体処置と
初号機の修理をしているって言ってたから、やっぱり無理。
お父さん…はサキエル戦、シャムシエル戦の後始末をするために
出張が多いって言ってたし。
あとは…冬月副司令？ そういえば昔、先生をしてたって言ってたっけ？
「あの、もしかして冬月副司令ですか？」
ボクの答えに、不思議そうな顔をするミサトさん。
「あんまり驚いてないのね。そーなのよ、昨日の会議でちょっち
シンちゃんとレイの学業の話が出たときに、副司令が、
自分が家庭教師をやるって言いだしたのよね」
ちょっと気難しい所があり発令所メンバーからはゲンドウとは
違った意味で、苦手意識を持たれていた冬月である。
「これでも私は昔、教鞭を握っていたことがあるのだよ」
そう説明する姿は、老教授と言っても違和感がなく、その場に
いた誰もが冬月の意外な一面を見たと感じていた。
…ゲンドウが教え子だったと告げたら、反対意見が出たかもしれないが、
幸い、そのことを話す流れにはならなかった。
嘘をつくことは罪だが、選択した事実だけを告げて相手がどう解釈しようと、
それは相手の自由…さりげなくいつもの対外折衝で使う話術を駆使する
冬月の態度に、誰もがそうすることが当然であるかのように、同意したのだった。
「それはＮＥＲＶのお仕事としてですか？」
「それがね〜、”あくまでもこれは私が一個人として行う”って
副司令が言ったから、この件についてだけはＮＥＲＶは
一切、関与しない」
「わかりました」
「教育スケジュールは後で通知するそうだから。
たぶん、病院での治療の前後に毎日、１〜２時間程度の
時間が割り振られることになると思うわ」
「はい」
その後、帰宅した綾波さんも一緒に、冬月副司令との勉強会に
ついて話をしていたら、アスカから連絡が入って、いろいろと
話をすることになった。最後はなぜか魚釣りの話になってたけど。
ず〜っと定速航行している船内ではやることもなくって、
船縁から、釣り竿を立ててトローリングをするのが最近の日課。
見渡す限り蒼い空、白い雲。天候が変化することはあるけど、
来る日も来る日も周りは海ばっかり。
アスカのガードをしている加持さんと艦の中をいろいろと見学
してたけど、それも一通り終わって暇になっちゃったんだって。
何枚も写真を送ってくれたけど、どの写真も嬉しそうな笑顔の
アスカが映っている。なんだか見ているだけでボクもニコニコ、
笑顔になってくる。
…それにしてもやることがなくて暇！ って言ってるけど、
話をするたびに尽きることなく話題が出てくるのは何故なのかな？
ビジフォンを切ったあと、ふとそんなことを考えた。
翌朝、かなり早めに学校に出発。
普段よりゆっくり歩いていたから、途中でクラスメイトの
みんながボク達を追い抜いていく。
なぜか、誰もがボクの怪我の心配をしてくれる。
なんとなく雰囲気も始めて会った時より穏やかな感じがする。
「おはよう、碇さん、綾波さん」
「おはよう、洞木さん」
「…おはよう」
「碇さん、怪我、もう大丈夫なの？」
洞木さんも同じことを聞いてくる。
「うん、歩くくらいなら平気。…あの…」
「なに？」
「なんでみんな、ボクの怪我のこと知ってるの？
それになんとなく…優しい感じがするんだけど…」
「それがね…」
洞木さんの話では、戦闘が終わった後、シェルターの外に出て
エヴァに乗り込んだってことがバレて、クラスメイトから、
鈴原君と相田君は質問責めにあったらしい。
そのとき、ボクが怪我をしたことも話したんだって。
その…使徒相手に恐怖を覚えながらも懸命に戦い、シェルター内に
いたみんなを守るために、使徒に対して相撃ち覚悟で決戦を挑み、
見事これを撃破…ってのは脚色し過ぎだと思う…。
「それでね、自分達は戦えるわけじゃないから、できるだけ碇さんと
綾波さんの学校生活に問題がないようにしていこうって、決めたの」
そんな話をしているうちに学校に到着。
クラスに入ったら、すでに全員、登校してきている。
みんな、ボクのほうを見ている。だけど前と違って目が怖くない。
「…あの…おはよう…それと、ありがと」
ボクの声だけが室内に響く。
「気にすんな、大したことじゃないさ」
「そうそう。それに礼ならトウジに言うんだな」
「あんな鈴原君、初めてみたもの」
何人かが照れ笑いを浮かべながらそう告げる。
「鈴原…君？」
「ホームルームの時間を使って、俺達に熱い想いをそれはそれは
熱心に語ってくれたのさ」
”あのとき、わいは思ったんや！ 自分ができることをせな
あかん、と。”
”わいも少しは格闘技をやってるからわかる。
エヴァの大きさに比べたら、人間なんて蟻みたいな大きさや。
足下の蟻に気を付けながら戦うなんてできるわけがあらへん。”
”わいは、碇にひどく身勝手なことをいってしもた。”
クラスメイトの何人かがオーバーアクションを交えて、
わざわざ鈴原君の口調まで真似て説明をしてくれる。
「…鈴原…君…」
「…なんや…」
すこし、ぶっきらぼうに答える鈴原君。
「…ありがと」
感謝の気持ちが伝わるように…笑顔で言葉を口にする。
…あれ？ どうしてみんな、固まってるの？
シンリが不思議そうに首を傾げても、クラスメイトは固まったまま
動くものはいない…一人だけ…”シャッターチャンスが…”などと
後悔の涙を流している眼鏡の少年はいたがそれは例外である。
「…あの…どうしたの・・？」
ボクの声に、金縛りが解けたかのようにみんな、動き出す。
「と、当然のことをしただけや。気にすることやない」
少し頬を赤くしてそっぽを向く鈴原君。
なんだか、アスカに似てる…雰囲気というより仕草が。
「…でも…」
「人からの好意は素直に受け取るもんさ」
相田君が穏やかにそう告げる。
「…うん」
オホン
え？
後ろを振り返ると、にこやかな笑顔を浮かべた先生が
ボク達を見ている。いつのまに来てたの？
「あぁ〜、心温まる交流も一区切りついたということで、そろそろ
授業を始めたいのだが、いいかね？」
笑顔と、少しだけ申し訳なさそうな表情を浮かべた先生。
「は、はい」
慌てて席につくクラスメイト達。最後にボクが席についたのを見て、
先生が授業を始める。
一週間前と変わらない授業風景。
だが、クラスの雰囲気は少しずつ、変わり始めていた。
そのころ、ＮＥＲＶ第一発令所メンバーは定例会議を行っていた。
作戦部からはＵＮ軍、第三新東京市の被害、復旧状況と支援物資の
供給状況について説明があった。
技術部からは、エヴァの修理、シャムシエルの解体・分析作業に関する報告、
それとシンリに対する医療活動…エヴァにも使われている超技術が惜しげもなく
使われているため、技術部が関与している…の途中経過について報告がなされた。
広報部からは、シャムシエル戦の事後処理に関する情報操作等に関する説明と、
関係組織に対する交渉状況、各国の民意動向について説明が行われた。
そして保安諜報部の説明となったのだが、どうも歯切れが悪い。
「…では、現在、第三新東京市の保安ガードシステムはほとんど
稼働していない、とそういうことかね？」
問い掛ける冬月の声もどこか硬い。
「元々、人員不足と予算削減の煽りを受けて、ＭＡＧＩを使って効率を
引き上げて何とか保安レベルを保っていたわけですが、サキエル戦、
シャムシエル戦で第三新東京市が受けた被害により、ＭＡＧＩの
監視網は寸断され、現在、都市全域に対する監視状況は２０％にまで
落ち込んでいる状況にあります」
シャムシエルの通過した地点の周囲１ｋｍに存在した巨大なビル群が
すべて倒壊するという惨事は、たった一週間程度で復旧するものでも
なく、未だに大量の瓦礫の山は撤去されていない。
また、倒壊の際に地下ケーブル網もかなりの被害を受けてしまい、
非常時の無線ネットワークがカバーしているが、それとて有線の時に
比べれば、扱える情報量は格段に落ちてしまっていた。
「そのため、ＭＡＧＩによる監視網が復旧するまでの間は、危険度Ｃ以下の
対象については、監視レベルを落とします。それによって生まれた
余剰人員を危険度Ｂ以上の対象への監視に回すことで、シャムシエル戦
以前のレベルの監視状態を維持します」
軍事関係者、他国政府関係者、政治活動者、宗教団体、犯罪者…つまり
直接的な驚異となる対象はこれまで通りに監視を行うが、それ以外の者、
犯罪歴のない一般市民、工事関係者等については、第三新東京市との
出入りの際のチェック以外は行わない、ということである。
「…対人設備の費用削減がこれほど影響を与えるとは…な」
「保安諜報部としては、予算、人員の増額を要求します。
また、各国諜報機関に対する一時的な命令権の交付についても、
交渉をお願いします」
「…ずいぶん、大事だな。 理由は何だね？」
「第三新東京市の監視体制の不備を、他国からの監視対象者流入量の
減少でカバーするためです。 減少が見られない場合には、戒厳令を
発動して戴く必要があります」
「…そうか。各国の監視対象者リストと、緊急性に関する資料について
後で提出するように」
「わかりました」
「そういえば、Ａ３シェルターから出た男だが、調査はどうなったのかね？」
「残念ながら、現時点で遺体、遺留品は発見できていません。
聞き込調査を実施しましたが、人物の特定は困難な状況です」
「監視対象者ではなかったということか」
「はい」
「調査方法については任せる。なにか質問はあるかね…
では、これで会議は終了とする」
会議が終わり、関係者が持ち場に戻る。
「リツコ、ちょっちいい？」
「…何かしら？」
「保安諜報部はあぁ言ってたけど、ＭＡＧＩの監視網、そんなにマズイの？」
「…鉄道網に設置されている改札口にある武器検出、人物のＩＤ確認、
サテライトシステムを使った全域監視、道路網に設置された検問、
周囲の山林に極秘設置されているセンサー群と遠距離からの
光学監視…どれも完全稼働しているわ。
そういう意味では不法侵入者、監視対象者に関するチェック体制に
問題はないわよ？」
「じゃ、なんであんなに心配してるの？」
「前科があったり、どこかの組織と繋がってたりする人物以外は
いちいちチェックする人も余裕もないからよ」
「いちいちそんなところまでチェックしてたの？ ずいぶん、
大変ね」
「第三新東京市が完全稼働していれば、住民を常時監視することだって
できてたのに…残念だわ」
「ま、武器も持ち込めない状況の素人なら、それほど心配する
こともないわね」
「そういうこと。だから、危険度Ｂ以上の対象については現状維持って
結論に落ち着いたのよ」
ミサトもリツコもそこでその話題については打ち切った。
他にいくらでも片付けなければならない問題が山積していたために。
シンリとレイは途中までケンスケ、トウジ、ヒカリと一緒に下校し、
そのままジオフロント内に入っていった。
今日は、病院での治療が先に行われ、その後、冬月の指定した
部屋に二人は入る。
「こんにちは…冬月先生」
「…こんにちは」
仕事でもないのに、役職で呼ぶのは変。
それに勉強を教えてくれるんだから、「先生」って呼んでみた。
「…あぁ…こんにちは」
なぜか、少し遅れたテンポで先に来ていた冬月が答える。
視線が和らぐのがわかる。
「あの…どうかしました？」
「いや、少し懐かしくなってね。キミから”冬月先生”と呼ばれるのは
何年ぶりか…」
「ボクから？」
「…む…済まない。雰囲気が似ていたもので勘違いをしてしまった。
昔、私はキミのお母さんに教えていたことがあったのだよ。
キミがお母さん…ユイ君に似ていたもので…ね」
「お母さんが…あの…お母さんってアルビノだったんですか？」
ボクの質問に冬月先生が苦笑する。
「髪の毛や肌の色が似てるというわけではない。雰囲気、仕草が
似ているということだな」
「よく…わかりません」
「ふむ…今度、昔撮ったユイ君の映っている写真を持ってきて
あげよう。…ただし、このことは碇には内緒だぞ？」
「あの…どうしてですか？」
「ユイ君を思い出さないように身の回りにあったものは全て
処分したくらいだから…な。
だが、碇が見たくなくとも、シンリくんが見てはいけない、という
ことににはならん。
だから、これは私とキミ達だけの内緒のことだ。いいね？」
「…？」
急に話を振られて、綾波さんが不思議そうな顔をする。
「シンリくんとレイは家族なのだろう？」
こくん、と頷く綾波さん。
「ならば、シンリくんの母親ならば、レイにとっても母親ということだ。
だから、レイにも写真を見る権利があるということなのだよ」
「…私に…お母さん？」
「そうだ」
冬月先生の言葉を聞いて、困惑している綾波さん。
…いきなりお母さんが増えたら驚くかもしれない。
「さて、雑談はこれくらいにして、今後の勉強について話を始める
ことにするがいいかね？」
「はい」
「…はい」
冬月先生とボクと綾波さんだけの小さな小さな勉強会。
なんだかおじいちゃんができたみたいで、嬉しかった。
綾波さんも、初めは表情が硬かったけど、少しずつ
慣れてきたのか、最後の頃には落ち着いた感じに
変わっていた。
「これで今日の分はお終いだな」
「はい…ありがとうございました」
「…ありがとうございました」
「うむ。二人とも帰りは気を付けてな」
「「はい」」
ジオフロントから出ると外はすっかり夜になっている。
少し離れた距離から、ガードの人がついてきてくれる。
「綾波さん、冬月先生の説明ってわかりやすいね」
「…そうね」
綾波さんも慣れたのか表情が軟らかい。
これなら、勉強の遅れも取り戻せそう。
どこか足取りも軽く、帰路につく二人。
…だが、二人を見ていたのは、ガードだけではなかった。
暗い部屋。
望遠カメラを覗き込む男女。
「…あら、さっきのアルビノの姉妹じゃない。やっと帰宅とは不用心ねぇ〜」
「ＮＥＲＶ関係者の子供だろーが、とりあえずチェックだな。
明日以降の観察対象に加えておこう」
彼らは手元にある携帯端末に、シンリ達のカラー写真を取り込む。
既に記録してある映像…学校の校門を出ていくシンリ達の映像と
一緒にファイリングされる。
そして、もう一つのディスプレイに映る映像を見る。
「いったいどこにいるんだろうな」
「中学生だもん、学校にくるわよ。不登校児ってわけでもなかった
わけだし。今日はたまたまこなかっただけじゃないの？」
「あの碇ゲンドウの子供だからな…ま、普通の学生とは違っても
不思議じゃない…」
彼らが見ている映像。
それは第二東京市に住んでいたころのシンリの写真と身元調査の結果。
・黒髪、黒瞳のごく普通の大人しい感じの中学生。
・特に友人はなく、一人でいることが多い。
・家事業務を行っているが、配達網を利用しているため外出は希。
・碇ゲンドウの唯一の肉親。
・サキエル出現と同じ日に第三新東京市に到着。
・前日に第一中学校への編入手続きを実施。
そこにはサキエル戦以降の情報はまったく掲載されていない。
「こんな危険な街に呼び寄せるくらいだ…ＮＥＲＶに関係している可能性は高い。
…それに噂じゃエヴァンゲリオンのパイロットは中学生くらいの少女だっていう話だ。
その子と接点があっても不思議じゃない」
「碇シンリがパイロットだ、という可能性は？
女の子にしか見えないわよ？」
「来たそうそう、いきなり訓練もなしに実戦？ そんな話があるか？
碇シンリとＮＥＲＶが第二東京市を出発する直前まで、まったく
接点がないことは調査済みだ。
いくら、碇ゲンドウが子煩悩だった、という噂があったって、
そんな馬鹿なことをするわけがないさ」
「…それもそうね。…まったく、学校の公開データベースにアクセス
すれば、生徒の情報なんてすぐ入手できるはずのなのに」
女が愚痴る。
「…第三新東京市が誇る監視システムに自分で出頭する馬鹿がどこにいる…？
だいたい、学校なんざ校門から出入りする特定多数の集まる施設だろーが。
何日か観察してりゃわかる程度の努力を惜しむようじゃ、この業界、成功しないぜ？」
「…はいはい」
「とりあえず、明日以降、ジオフロントに出入りする中学生を中心に
調査継続だ。それと碇ゲンドウ、冬月コウゾウ、赤木リツコ、葛城ミサトの
４名については発見した場合は速やかに連絡させろ」
「ＯＫ」
観察する男を見ながら、女が無線オプションをつけた携帯端末を使って、
メールを同報発信する。
ＭＡＧＩの監視するネットワーク網をまったく経由しない無線連絡。
…その通信は彼らの目論み通り、ＮＥＲＶの監視網を潜り抜けることに
成功していた。
Ver1.01 2000/06/12 ＹＯＫＯ
「起承転結」の「承」。
シンリの新たな日常が始まりました。
色々と問題はあるけど、クラスメイトとも和解できて、嬉しさ一杯なシンリ。
冬月先生♪ との勉強会も始まり、これからがんばっていこー、と
いうことになりました。
しかし、状況は変化していきます。
ボロボロに壊れている第３新東京市に頭を悩ませるＮＥＲＶ。
ＮＥＲＶの監視網を潜り抜けて活動を続ける謎の男女。
水面下の変化。それが目に見える形になった時…。
それはもうしばらく先のお話です。
読まれた方からの反響は、とても助かります。
感想をくださった皆様、ありがとーです。
これからも応援してくださいね。