さーてやっと残り２パートになりました。
関係者の準備も整い、全てが動き始めます。
準備が整ってないのはＮＥＲＶだけ。（T_T）
感想を下さった皆様、ありがとーです。
皆様から気持ちを分けてもらって、やっと活動レベルが
通常に戻りました。
これからも思ったこと、感じたことを教えてくださいね〜。
学校が終わった後、ジオフロントの病院での治療と冬月先生の授業を
受ける日が３日間過ぎた。
今日も、学校が終わった後にジオフロントにある病院で点滴を受けている。
これをやっておかないと、栄養不足で倒れちゃうから。
点滴を受けてる間は冬月先生の授業の予習をしたり、
冬月先生からコピーさせてもらったユイさんの写真を眺めたりと、
いろいろしている。
この人がお父さんのお嫁さんだった人かぁ…。
言われてみれば、綾波さんに似てる気がする…。
うーん、アスカがいうように綾波さんってボクの従姉妹なのかな？
それともボクの前か後にすぐ生まれた姉妹…とか？
…そういえば綾波さんの誕生日っていつだったっけ？
写真の中のユイは微笑むだけで何も答えてくれない。
ま、いっか。後で聞けばいいことだし。
「はい、お疲れさま」
「ありがとうございました」
看護婦さんに点滴を外してもらってお医者さんの
ところに行く。
「…だいぶ、回復してますから、明日からは点滴は止めて
栄養補給は食事だけに絞りましょう」
やっと普通の食事に戻れるんだ…よかった…。
「なにか気を付けることってありますか？」
「いままで、お腹はずっと休んでいたから、いきなり負担に
なるような食事はいけない。
だから、初めのうちはお粥くらいで止めておくこと。
いきなりステーキを食べたりしちゃ駄目だよ」
「はい…」
「どうしました？」
「ボク、元気そうに見えます？」
「初めよりはだいぶ良くなったね。どうして、そんなことを
聞くのか、よかったら教えてくれるかな？」
「えっと、友達の妹さんが入院しているんです。
それでお見舞いに行こうと思ったんですけど、ミサトさんに
”病人より不健康そうな子がお見舞いに行くのは
ちょっち問題があるわね”って言われたんです」
「…ふむ。その子は食事は普通にできるのかな？」
「脚を何カ所か骨折しているという話なので、
たぶん、食事は大丈夫だと思います」
「それなら、お見舞いはあと２、３日は待ったほうがいい」
「どうしてですか？」
「よくあるパターンだが、お見舞いなんかで食べ物をもらって
いる場合、来てくれた別の見舞い客に、それを振る舞うということがある。
せっかく来てくれたんだから持てなそう、という気持ちからそうするわけだ。
シンリちゃんは、それをうまく断れるかい？
できれば、入院している子に負担になるような心配事は
増やさないほうがいいということだよ」
「そうですね。…もう少し待ちます」
うーん、そうすると左手の握力が弱いこととか、右目が見えない
こととか、右耳が聞こえないこととか、最近、アルビノに
なったこととか、お腹の怪我があるからコルセットで固定
してあることとかは言わないほうがいい…のかな？
制限が少し増えただけなんだし、問題ない気もするけど…。
それから更に三日が経過し、シンリがなんとか通常の食事が
できるまでに回復したと診察されたその日に、懸案となっていた
試験等が急遽、実施された。
「では、本日、実施された初号機起動実験、シャムシエルの
追跡調査、Ａ．Ｔ．フィールドの周囲への影響力の調査に
ついて報告を行います」
リツコが大型ディスプレイに、様々な映像記録を表示しながら説明を開始する。
会議室には、第一発令所の主立ったメンバーは全員が揃っている。
「まず、初号機の起動実験ですが、シンクロ率３２％、ハーモニクス誤差２．６％で
起動に成功しました。シンクロ率の低下はパイロットが怪我のために集中力が
持続できないことが原因です。
ハーモニクスが前回よりも０．２％、上昇した理由は現時点では不明です」
「…ハーモニクスの誤差減少によって、使徒の意志を認識する感覚に
影響はあったのかね？」
「はい。これまでよりも意志を捉える感度があがったものと予想されます。
…これをご覧ください」
リツコが示したウィンドウには、シンクロテスト中のシンリの姿が表示されている。
聞こえてくるシンリの声は、いつものようにシンリの思考波を検出して
スピーカーから流しているものである。
『…何？』
『名前…？』
『碇シンリ…キミは？』
『…そうなんだ…』
『…え、だって…澄んだ感じがするから…』
『…そ…それって…』
ここで、サブモニターに表示されているシンリの脈拍がみるまに上昇していく。
『…』
心拍数の急増、体温の上昇、精神の高揚が検出される。
『…うん…』
なぜか頬を染めて俯いたまま、シンリの小さな声が聞こえて映像が終わった。
「…赤木博士…説明したまえ」
ゲンドウの低い声が響く。
「映像をご覧戴いておわかりのように、明らかにサードチルドレンは
何者かと会話を行っています。これについて全テスト終了後にヒアリングを
行った結果、会話の相手はサードチルドレンが言うところの磨りガラスの
向こう側…つまり３次元空間以外の場所にいる意志であり、言葉を
駆使したこと、サキエル、シャムシエルと異なり、距離は近く意志も強いものの、
シャープさに欠ける…ことが判明しました」
リツコの言葉が全員の心にゆっくりと浸透していく。
「…相手は言葉を行使する使徒だ…ということか」
「この件についてＭＡＧＩは判断を保留しています。
シャープさに欠ける感じ、というのがいったい何を意味しているのか
不明である以上、結論は早急に出すわけにはいかないと思いますが、
使徒である可能性は高いと私は考えます」
「で、相手はなんて言ってたの？」
ミサトが興味津々という面持ちで質問する。
それに対して、リツコが疲れた表情をして、動画の再生操作を行う。
「…ヒアリング結果を元にＭＡＧＩに使徒の声と思われるものを
先ほどの映像に追加したわ…とにかく見てちょうだい」
オヤ？
『…何？』
落チ着イテイルネ…君…ナンテ呼ベバイイ？
『名前…？』
ソウ、君ヲ認識スルタメニ必要ナ言葉サ
『碇シンリ…キミは？』
名ハナイ 僕ニハ必要ガナカッタンダ
『…そうなんだ…』
君ノ心ハ水ノヨウニ静カダ 僕ガ怖クナイノカイ？
『…え、だって…澄んだ感じがするから…』
君ハ不思議ナ心ノ持チ主ダネ
繊細ナノニ強サモ感ジル…君ノ心ハ好意ニ値スルヨ
『…そ…それって…』
ここで、サブモニターに表示されているシンリの脈拍がみるまに上昇していく。
好キッテコトサ
『…』
心拍数の急増、体温の上昇、精神の高揚が検出される。
しんりノ心ハ疲レテキテイルヨウダ
今ハココマデトシテオコウ
『…うん…』
ここで映像が終わる。
「…リツコ…これ、新手の冗談かしら？」
ミサトが引きつった笑顔のまま、リツコに話し掛ける。
「私がこの手の冗談は言わないことは知っているわね。
この再現映像は、シンリくんにも確認してもらっているわ。
声質は少し違うかもしれないけど、会話の内容に間違いはないわ」
「あの先輩、…シンリちゃんに告白しているように聞こえたんですけど…」
マヤが遠慮がちに言う。
「念のためにＭＡＧＩにも審議させてみたけど、全会一致で、会話の相手は
シンリくんに好意を寄せている、と判定されたわ」
会議室を妙な静寂が支配する。
誰もが想定していなかった事態に、何と言っていいか判断に
迷っているようである。
「…この件については赤木博士に一任する。
この件について作戦部はサードチルドレンに対して一切の
関与を禁止する」
沈黙を破ってゲンドウの声が会議室に響く。
「説明を求めます」
「対象と心で接触している以上、作戦部の入れ知恵が直接、相手に
伝わる可能性がある。 言葉を理解する以上、こちらの手は
できるだけ伏せておかなくてはいかん」
「…わかりました」
ミサトは憮然とした表情のままである。
理屈は判るが、作戦部がないがしろにされている気がして
感情が収まらないようである。
「次にＡ．Ｔ．フィールドの周囲への影響力に関するテストですが…」
リツコが実験を行う根拠などの説明を始める。
本題に入るまで、しばらく時間がかかりそうである。
とあるアパートの一室。
連日の報告結果を基に一組の男女が壁掛けテレビにデータを表示し、
議論している。
「で、これが得た情報を元に割り出した碇シンリの周囲にいる
ガードの配置状況・行動パターンだ」
ディスプレイの表示では、シンリの前後、数十メートル離れたところに一人ずつ、
黒服の男が位置し、周囲を警戒しているのがわかる。
周囲の地理・状況に応じて、シンリとの距離を調整しており、できるだけ
シンリに自分がいることを感じさせないように努めているようにも見える。
「表に見えるガードの人数の２倍は覆面のガードがいるのが普通だから、
２＋４で合計６人…しかも毎日、歩いているコースは復旧が優先
されていて、ほとんどの地点で工事が完了しちまってる」
被害の復旧終了は、ＭＡＧＩによる監視システムの機能復旧と
同義である。
「接触は難しいわね…ＮＥＲＶの保安システムが常時監視していて、
直接、ガードしているのが６人もいるんじゃ…」
「１人に６人のガードってのは多過ぎる。たぶん、いつも一緒に
いるアルビノの少女をガードする分と合わせて６人ってことだろう。
…なんとか、普段と違うコースを、しかも碇シンリが
一人で歩くような状況にでもならない限り、接触は中止する
しかないな…」
男はタバコを吹かしながらぼやく。
「収穫ゼロなんてことになったら大損じゃない！」
「…とにかく今は待つしかない…無理は禁物だ…」
「…」
女は窓の外で着々と進んでいる復旧工事をみて
溜息をついた。
「以上の理由から、今回は初号機との距離８００ｍの地点から、初号機の
機体表面に３ｍｍずつ隙間を開けて積層化した厚さ４ｍｍの鋼板に対して、
アンチマテリアルライフルＩＷＳ２０００Ａ２カスタムを使って狙撃を行い、
鋼板の貫通状況を調査しました」
リツコの説明の後に表示されたのは今回、テストに使用された
ライフルのイメージ映像である。
歩兵が扱う銃の中では最強クラスの言われるこの銃は、
６０口径ＡＰＦＳ−ＤＳ弾（材質：タングステンカーバイト）を撃ち出し、
距離８００ｍから、６０ｍｍの鋼板を貫通するという化けものである。
３ｍｍ間隔で傾斜もなく設置された厚さ４ｍｍの鋼板…
合計１０枚が積層化されているが、この程度は簡単に
貫通する威力を持っている。
「射撃テストを繰り返した結果、最大でエヴァの機体から１．５ｍの位置に
ある４ｍｍ鋼板で、発射された弾を完全に防ぐことに成功しました」
リツコが示した映像では、たった厚さ４ｍｍの鋼板が、音よりも
早く飛翔してきたＡＰＦＳＤＳ弾をあっけなく弾いた瞬間が
捉えられている。
「…常識を疑うわね…」
ミサトも日向も呆れかえっている。
実際に測定機器の操作を行っていた青葉すら、自分が撮った
映像がフェイクにすり替えられたのではないか、と疑ったほどである。
「ＭＡＧＩに映像を解析させた結果、命中前の弾の移動速度と
命中寸前の弾の移動速度を比較した結果、移動速度が
大幅に減少していることが判明しました」
「ほぉ…どれくらいかね？」
「元の速度のおよそ１／３０です。運動エネルギーを大幅に失った
弾は鋼板を突破できずに弾かれたと考えられます」
「速度が１／３０ってことは威力は１／９００ってことよね、単純に
考えれば」
「以上のテストから、シャムシエル戦で初号機の落下に巻き込まれた
鈴原トウジ、相田ケンスケ両名が軽傷で助かったのは、エヴァの
周囲に恒常的に展開されているＡ．Ｔ．フィールドによって、二人に
衝突した破片類が運動エネルギーを大幅に失い、ほぼ無力化
されていたためと予想されます。
ただし、起動していない状態ではこの現象は観測されなかったことから
チルドレンとシンクロし起動していない限り、恒常的に展開される
Ａ．Ｔ．フィールドは発生しないものと思われます」
「影響範囲は機体から１．５ｍまで…じゃ、二人がもう少し近ければ
エヴァに押し潰されてたし、遠ければ衝撃をもろに受けて
どっちにしても死んでたってことか」
「エヴァの指の間に二人が収まっていたのが幸いだった…
幸運としか言いようがないわね」
「３０って、シンちゃんの今日のシンクロ率とだいたい一致してるけど、
もしアスカが同じテストをやったら、平均７０だから、速度は
１／７０に減衰、威力は１／４９００に減少ってことになるわけかしら？」
「アスカが到着したら同じテストを行ってみるけど、たぶん、
そうなると思うわ。まさに神秘の力Ａ．Ｔ．フィールドってところね」
「仮に使徒のシンクロ率…シンクロしてると見なした場合だけど、
１００としたら、威力は１／１００００に減少ってことか。
道理で熱変化すら起きないはずだわ…通常の着弾で１万℃の
高温を発生させる攻撃が実質１℃しか上昇させられないって
言ってるようなものでしょ？」
「大雑把な理論だけど、まあ、そういうことね」
「頭が痛いわ…」
露骨に嫌そうに顔を顰めるミサト。日向の表情も渋い。
「検討は会議が終わってからゆっくりやってちょうだい。
…以上で、本日のテストに関する報告を終了します」
「…ご苦労だったな。今日の会議はここまでとする。解散」
冬月が解散を告げる。
長い会議が終わり、参加者は部署に戻っていく。
興味深い現象に意欲を燃やす技術部、新ためて使徒の非常識さを
認識させられて少しだけ意欲が減退している作戦部。
関係者の表情は対照的であった。
「お疲れさんやったな」
ジオフロントへのゲート付近で、トウジとケンスケがまっていた。
シンリは初号機を使った試験で、レイは零号機との再シンクロに向けた検査の
ために、帰宅時間が遅くなっていた。
「ありがと。鈴原君と相田君は何をしていたの？」
「基礎訓練や」
「…トウジ、”地獄の”って言葉を忘れないでくれ…」
ヘロヘロな中にもまだ僅かに体力が残っていそうなトウジと違って、
ケンスケはボロ雑巾のように、気力も体力も残っていないかのようである。
「…地獄？」
ポツリとレイが呟く。
「めっちゃハードなトレーニングだった、ちゅーのは確かや。
けどな、男やったら、あれくらいで音をあげてはあかん」
拳を握り締め力説するトウジ。
いったい、ヘロヘロな身体のどこにそんな根性が残っているのか
不思議なものである。
「…トウジ、無理してるだろ…」
「わいは無理なんかしてへん」
「元気がなくなると赤木博士に連れていかれるからじゃないのか？」
「はは、何をいっとんのや。わいは元気や。治療の必要なんかあらへん」
リツコの名が出た途端にはっきりとわかるほどカラ元気を発揮して
顔に微笑を張り付けている。
…いったい何があった、というのであろうか？
たわいのない話をしながら帰路につく４人。
「あの…鈴原君…」
「なんや？」
「妹さんのお見舞いに行くことを許してくれる？」
「…ナツミのことを碇のせいやない、そういったはずや」
「…うん。そのことはミサトさんにも言われた」
「なんて言われたんや？」
「全てが自分の責任だと思うのは傲慢だ、って」
「…さよか」
「今回は…友達の家族が入院している。そのお見舞いに行く。
それだけってことで考えて欲しい…」
トウジはシンリの言葉を聞いて、しばらく星空を眺めていたが、
再びシンリを見たときには、どこか吹っ切った表情に変わっていた。
「なら、全然問題なしや。ナツミもいつもわいの顔ばっかり
見て退屈だって言っとる。見舞いに来てくれるのは
大歓迎や」
「…ありがと」
「碇、明日、学校帰りに行くのか？」
「そのつもり。…鈴原君、それでいい？」
「問題なしや」
「トウジ…俺はお前が羨ましいよ…俺なんか明日は疲労回復の
スペシャルメニューだ、って赤木博士のお誘いだぜ？」
ケンスケが乾いた笑みを浮かべる。
「よかったね、相田君。リツコさんなら安心だもんね」
シンリが透き通った笑みをみせる。
「…安心？」
シンリの言葉をどうしても納得できない表情のケンスケ。
救いを求めるようにレイのほうを見る。
「赤木博士が言った以上、約束は守られるわ。
…よかったわね」
レイが淡々とした口調でポソリと告げる。
言葉とは裏腹にどこか哀れみを含んでいるように感じられたのは
ケンスケの被害者意識の仕業なのかもしれない。
「綾波の言うとおりや。赤木博士は嘘はいわん。
治るって言った以上、治るのは間違いないんや。
…嘘は言わんのや…全部言ってるとは限らんだけで」
途中から急に小声で話すトウジ。
ケンスケの肩を叩きながら語り掛ける視線はどこか達観した感がある。
「…裏切りもん…」
ケンスケの呟きは闇に消える。
昨日の次の今日、今日の次の明日。
毎日続く非日常という名の日々。
深夜の街を歩き、他愛のない会話をしながら歩く四人は
いつしか、それがいつまでも続くものと信じていた。
「明日はトウジ君と市内の病院にお見舞いか…」
思わず笑みを浮かべる男。
携帯端末を操作して第一中学校からトウジの妹であるナツミが
入院している病院までの経路を表示してみる。
そのまま、表示されたＭＡＰと工事状況の調査結果を重ね合わせて
女に見せる。
「…やったわね。やっぱり日頃の行いがいいから、幸運が
舞い込んでくるんだわ」
女が指し示したポイントは工事中のために、ガードとシンリの距離が
空いてしまい、会話内容をガードが聞くことはできない。そして
復旧工事中なので、当然だがＭＡＧＩの監視システムも機能していない。
「後は本番でどれだけうまくやるか、だな」
「笑顔の練習でもしてみたら？」
女がおどけた表情でからかう。
「問題ない。俺はこれでも子供受けはいいんだ」
笑顔を張り付けたまま、双眼鏡でシンリ達の姿を見つめ続ける。
「バックアップを配置してくれ。…明日でケリをつける」
「…４人…いえ…６人配置するわ」
水面下での準備を終えた男女。
そして…第３新東京市は次の日を迎えた。
Ver.1.01 2000/07/05 YOKO
さーてやっと残り２パートになりました。
関係者の準備も整い、全てが動き始めます。
準備が整ってないのはＮＥＲＶだけ。（T_T）
感想を下さった皆様、ありがとーです。
皆様から気持ちを分けてもらって、やっと活動レベルが
通常に戻りました。
これからも思ったこと、感じたことを教えてくださいね〜。