第０６話「決戦、第三新東京市」Ｃパート

　ヤシマ作戦…冬月先生のネーミング…に従って、初号機と零号機は、巨大な盾を持って移動。
　エントリーする前に、鈴原くんと相田くんが励ましにきてくれた。
　去り際に、たくさん約束させられたのが不思議だった。
　ナツミちゃんのお見舞い、クラスメイトへのお礼、アスカ歓迎の準備、洞木さんとの料理…
　ほんと、たくさんのことを約束した、と思う。でも、わざわざ再確認するなんて、どうして？
「ボクって信用ない？」、そう聞いた時の二人の表情は、なんだか不思議だった。
　それは、どこか寂しい印象の笑顔だった。





探

　移動している際中、ずっと感じたラミエルの心。地下のアダムを見ながらも、気になるのか、
　ちらちらと、ボク達の動きを捉えている。
　気になってしかたがないのか、貫通するまでは注意している必要がないのか、穿孔行為に
　専念している、という感じじゃない。

　見た感じ、ラミエルはぜんぜん変化がなくって、穿孔だけをしているように見えるけど、それは外見だけ。

寂

　双子山までたどり着いた僕達がエントリーを解除するとき、絡みついたラミエルの意識。
　後ろ髪を引かれる想いで、再開の約束をしてからエヴァを降りた。

　ここにくるまで、計画の概要すら教えてもらっていない。
　盾を持って、双子山までくるように言われただけ。
　表示される情報もMAGIが補正をかけて、最低限のものしか教えてくれなかった。

　野戦指揮車の前で、リツコさん、ミサトさんが作戦の説明を始める。

「ラミエルの穿孔作業完了前に、この位置から狙撃を行ってラミエルのコアを破壊するわ。
　攻撃には、戦略自衛隊から借用してきた陽電子スナイパーライフルを使用し、
　防御にはこれまで装備してきたシールドの上に、SSTOの底部を利用したシールドを
　とりつけたものを使用するの。射手はレイ、防御はシンちゃんにやってもらうわ」

「防御は私がやります」

　綾波さんが計画の修正を上申する。

「この担当は変更することはできないの。陽電子スナイパーライフルの扱いは狙撃訓練を受けた
　レイのほうが適任だし、そもそもシンちゃんは左手の握力がないから両手武器は使えない。
　それに、これが一番重要だけど、シンちゃんにはラミエルとの意思疎通をやってもらう必要がある。
　銃を構えながら意思疎通をするのは意味がない…。だからシンちゃんには防御を
　やってもらわなくてはいけない…いいわね」

　綾波さんが無言のまま肯く。

「ボクはラミエルが攻撃してきたら、盾で守るのはわかりました。
　意思疎通のタイムリミットはいつですか？」

　そう、それが一番、重要なこと。

「ボーリングマシンがジオフロントに到達する５分前よ。それ以降は作戦は止めることはできない。
　それと作戦内容のうち、ラミエルに伝わると困る部分については、今、説明はしないわ。
　シンちゃんにその気がなくても、意思を重ね合わせれば情報が伝わってしまうから。
　…みんなの生き残る可能性を低くするわけにはいかないの。わかってね」

「…はい」

　チクリと胸を刺す痛みを無視して応える。
　ミサトさんの話が終わり、リツコさんが説明を始める。

「レイ、　零号機はまだ本調子とは言えない状況にあるわ。だから、補助プログラムを使って、その動きを
　補正しなくてはならない。今回は、初号機捕獲作戦の時とは違って、インダクションモードに特化した
　ものに変更しているから、歩行以上の行動はできないと思って頂戴。
　陽電子は重力の影響をうけて直進しない、その分をMAGIが補正するから、狙撃訓練のイメージを
　思い出して、零号機の制御がスムーズにいくように集中すること…いい？」

「…はい」

「シンリくん。盾はラミエルの砲撃に対して、シールド１枚で１５秒は持つわ。
　念のために、零号機が運んできた分と合わせて、二重化したシールドを２セット、用意したから
　合計１分間は砲撃に耐える、ということ。レイを守ってあげて」

「…わかりました」

　一通りの説明が終わり、零号機は銃の隣で、初号機は並べてあるシールドの横に立って、
コンタクトを開始することになった。





「この世に神なんていない、いるとしても悪魔だけだ…ほんと、そんな気がするわ」

「…ミサトはラミエルは侵攻を止めることはない、と思っているのね」

「永年、準備をしてきた計画を止める要素がない状態で、中止を指示する指揮官はいない」

　リツコの問いに、ミサトが穿孔中のラミエルを見据えたまま応える。

「意思疎通を行える自分と同等の他者…初号機…シンちゃんが穿孔先のジオフロント内に
　いるわけでもない以上、危害が加わるのを避けるために侵攻を停止する、という発想も望み薄。
　…加粒子砲を撃たないのは唯一、明るい材料だけど、それだけに望みを賭けて人類の命を
　危険に晒すわけにはいかない」

「…理解はしていても、納得できないことはある…か」

　リツコはジオフロントに留まっている二人の上司のことを思いだした。
　最悪の事態に備えて、松代へ移動することを進言したとき、冬月は告げた。

「ジオフロントの自爆装置は２人いないと作動させることはできないんだよ」

　いつものように手を組んだままのゲンドウは何も語らない。
　だが、その態度だけで、硬い決意が伝わってくる。

　結局、ジオフロントには冬月とゲンドウ以外のほとんどの人員が退去している。
　今回は時間があるため、第三新東京市から、市民も半径５０ｋｍ外への退去を完了している。

「ミサト…指揮車に入る時間よ」

「…わかったわ」

　結線作業が終わり、全ての作業者が対爆仕様の装甲車内に篭る。
　動くもののない双子山に、コンタクト開始の合図が静かに響いた。





探

　ボクの意識に擦り寄ってくるようなイメージを感じる。

"君は何をしているの？"

覗

"…どういうこと？　アダムと接触するんじゃないの？"

　見えないものを見たい、という純粋な意識。
　それは、どちらかというと好奇心に近いもののように感じる。

知

"ジオフロントのイメージならあげるから、穿孔は止めて。"

　ボクが歩いた、眺めたジオフロントの光景を次々に思い浮かべる。
　触れた水の冷たさ、月明かりに照らされた木々、元気よく走り回る動物達。
　大切な思い出の場所。

覗

"駄、駄目！　君がアダムに近づいたら撃たれちゃうんだから！
　お願いだから止まって！"

『ラミエル、穿孔速度、急激に上昇！　このままではあと８分で
　ジオフロントまで貫通します！』

覗

"止まって！！！"

『ボーリングマシン、デッドラインを通過！』

『ヤシマ作戦開始！』

　浮上航行していたタイフーン級大型原潜の片側のサイロが全て開き、全長１００ｍ近いミサイルが姿を表す。
　ミサイルというよりは、航空機を引き伸ばしたかのような形状。尾部のロケットモーターが猛烈な勢いで
　火炎を吹き上げ、天空に向かって、飛び立っていく。
　目標を第三新東京市に定め、内蔵ロケットモーターでマッハ６まで加速を終えると、燃焼を終えた１段目を
　切り離し、スクラムジェットエンジンの吸気口を開く。
　あまりの高速に、吸い込まれた空気が瞬時に圧縮され、プラズマバーナーの点火で爆発を開始する。
　それは人類が持つ最も激しい燃焼反応である水素と酸素の結びつく爆発。
　吸い込む空気を燃料として、予定通りに成層圏を超えた希薄な密度の空を、"グングニルの槍"は
　速度を上げて飛翔し続けた。己が身を神の使いへと激突させるために。





『第一次接続開始！』

　日本中から集められた膨大な量の電力が収斂されていく。

察

"気がついた！"

　ラミエルの意識がボク達を、周囲から集まる電気の流れを捉える。

『全冷却システム、出力最大。第二次接続へ移行します』

乾

　ボク達の…人々の傷つけようと、滅ぼそうとする気配を感じて
　ラミエルから感情と言えるような想いがなくなっていく…。

『ラミエルの内部で粒子加速開始、加粒子砲、砲撃きます！』

閃

　青白い凶暴な輝きがボクに向かって放たれてくる。
　どんどん、解けだしていく盾。だけど、ボクにできることはただ耐えることだけ。

『碇くん！！！』

『レイ、集中して！　射撃を外したら全てが終わってしまうわ』

『…』

『強制収束機作動、第三次接続、開始します』

　持続発射されていた加粒子砲の流れが一瞬、途切れたのを見て、
　予備の盾に持ちかえる。

閃

　まるで、持ちかえるのを待っていたかのように叩き付けられる加粒子砲の砲撃。
　初号機だけを狙い続ける攻撃のために、LCLの温度調節も間に合わず、
　排熱しきれない熱がボクの身体を少しずつ焼いていく。

　だけど、加粒子砲の砲撃も、泣いている子供の振り上げる拳のように感じる。

"君はなぜそんなに強い身体をもっているのかな…"

　そう、いつも思っていたこと。意思疎通を困難にしていること。

『最終安全装置、解除』

『撃鉄、起こせ！』

観

『ボーリングマシン、ジオフロントに進入！
　…先端エネルギーフィールド消失、侵攻も停止しました』

『なんですって？』

落

　送られてきたのは、ジオフロントのイメージ。ボクがさっき送ったもの。
　でも、サイズがめちゃくちゃ。全部、エヴァが基準なんて。
　残念そうな気配すら感じる。

”違うの。ボク達はキミみたいに大きくない。”

　ボクのイメージと、エヴァのサイズの比較をした感覚をいっしょに送ってみる。

興

　それがラミエルにとって驚く内容だったのか、気配が少し変わるのがわかる。

"そう…君と心を重ね合わせているボクは、こんなに小さい…
　どうしてこんなに互いの力が違うのかな…。
　君が犬や猫みたいに小さくて力が弱ければ、みんなもこんなに怖がらなくて済むのに。"

　ふと、思いついたことを想い描く。

『全エネルギー、ポジトロンライフルへ収束！』

問

　え、猫？
　えっと、こういう感じ…そう、小さくてふわふわして鳴き声が可愛いの…
　ボクと比べてこれくらいの…両手で抱き抱えられるくらいの大きさ…
　リツコさんの家にいた猫達を想い出しながらイメージを伝える。

『シンちゃん、後少しだけ耐えて！』

　ミサトさんからの通信…射撃までもう間がない。

知

　ラミエルの気配が変わる。
　…なに、この感じ…上？

　　『知られるわけにいかない情報は今は言えない』

　大気を引き裂いて打ち下ろされる殺意の光。

　…駄目…こんなの受けたら死んじゃう…

護

　どうして…

　ボクの問いかけに応えたのはジオフロントのイメージ。

『撃てぇ！』

　天空から一筋の光が夜空を真昼のように照らしてラミエルの外部展開したA.T.フィールドに
　激突し、A.T.フィールドの展開と同時に加粒子砲の砲撃が止む。
　入れ替わりに、綾波さんの放った陽電子の凶暴な輝きが放たれ…
　天空から襲いかかった衝撃から完全には回復していないA.T.フィールドごと、ラミエルは貫かれた。
　後から遅れて到達した衝撃波が第三新東京市を襲う。

　ラミエルの意識が小さくなっていく。
　結局…また…こうなっちゃった…。

　　ズキッ

　痛ッ…胸に走った痛みに思わず手を当てる。

　衝撃波に凪ぎ払われ、あまりの高温に大気が歪むなかを、ラミエルは静かに浮力を失って
　落下していくのを、ただ、眺めているしかないのが悲しい。

『初号機、ＬＣＬ温度、６０度を突破！　生命維持装置、限界です！』

『シンちゃん！』

『碇くん！』

逢

　　え？　どういうこと？
　消えていく意識から最後に感じ取ったのは、消滅のイメージじゃない。
　別れでもない。ボクがさっき、コンタクトを一時中止したときにおくったイメージに似ている。

『レイ、初号機のプラグを強制排出して、シンちゃんを救出して！』

『了解』

　消えていく気配を探ったけど、もう感じられない。
　意識を第三東京市全域に広げても、太平洋まで広げても、「向こう側」まで広げても
　感じ取れない。
　いないけど、消えたわけじゃない。去ったわけでもない。

　…どういうこと？

　ガコン

　強引に引き剥がすような音とともにエントリーが強制解除され、プラグ内の
　映像表示が全て消える。

　プシュー

　LCLが強制排出されていく。

　ガチャ

「碇くん！」

　　綾波さん、どうしてそんなに慌ててるの？

　ボクのプラグスーツの生命維持装置の稼動状況を確認すると、ボクの体温を感じ取ろうと
　するかのように、抱きついて首筋に顔を埋める。

「…泣いて…る…の…？」

　声がうまく出ない。煮立ったLCLのせいで全身が火傷を負っていたせいだけど、このときは
　そうだとはぜんぜんわからなかった。

「…嬉しいのに…涙が止まらないの・・」

　問いかけに、泣きながら、それでも答えてくれる。
　ボクが生きていること、そのことを喜んでくれていることがはっきりと感じ取れる。

「…嬉しいときは…笑わないと…ね」

　涙を流しながら綾波さんが見せてくれた笑顔は、月明かりに照らされて幻想的な雰囲気に
　包まれていて、触れると消えそうな感じなのに、砕けそうなボクの心を繋ぎ止めてくれる…
　そう思える温かさを感じさせてくれた。





　成層圏を亜音速で飛行して、ＮＥＲＶ第二支部へと向かう特別チャーター機。
　その機上で睡眠タイムを満喫していたカヲルだったが空間を駆け巡った意識に、
　目を見開き、跳ね起きた。

「…シンリくん」

　月明かりに照らされた雲海しか映らない窓を見て呟くのを見て、警護の女性が
　声をかける。

「ん…カヲル、怖い夢でも見たのかな？　まだ到着まで時間はあるわよ」

　マイペースなカヲルに振り回されっぱなしだったせいか、少しからかいの色が混じる。

「…グラスは砕け散り、リリンは零れ落ちる…まだ…間に合うか…？」

「どうしたの、カヲル？」

　怪訝そうな表情を浮かべた女性に、カヲルがいつもの笑顔で応えた。

「何も問題はない。渚カヲルは日本に派遣されている」

　明らかに月明かりによるものでなく、紅い瞳が淡い輝きを放つ。

「…何も問題はない…です」

「そう。何も問題はない。この飛行機には５ｔｈチルドレンは搭乗していない」

　カヲルの心が、周囲へと語りかけ、世界がそれに応える。

　諾

　後には、搭乗予定者がくることなく、”空席となっていた”席だけが残っていた。





ラミエル撃破から２日が経過し、待避していた人々も第三新東京市に戻り、
落下したラミエルの巨大な残骸が街の中央にあるものの、なんとか日常を
取り戻しつつあった。
今日は土砂ぶりの雨となり、さきほどから雷も鳴っていて、あいにくの天気である。

「ニャ？」

　土砂ぶりの雨だというのに、そんなことなど気にしていないかのように塀の上で
　のんびり昼寝をしていた子猫を、通りかかった少女が見上げている。
　腰まで伸びる豊かな黒髪が印象的な少女だが、メガネをかけていて
　表情はよくわからない。

　見られているほうも野良猫と呼ぶにはあまりにも奇異な外見をしている。
　青みかかった白い毛並みと紅い瞳。種類は三毛猫っぽいのだが、
　アルビノなのだろうか？

「…」

「ニャ？」

　無言のまま子猫を見る少女に興味をもったのか、子猫のほうもあくびをしながらも、
　特に逃げるようなそぶりは見せない。

　それから５分ほども、向き合っていただろうか。
　遠くから、年のころ４０才くらいの男が歩いてきて声をかけた。

「…猫か」

「…」

「…面倒を全部見るなら飼ってもいい」

　少女は男を遠慮勝ちな目で見ていたが、おずおずと子猫のほうへと手を差し出した。
　傘から出た手に雨が当たるが、気にしている様子はない。

「…私と一緒に来ますか？」

「…」

　少女の真意を推し量るように、紅い瞳で少女の黒い目の奥を覗きこむ子猫。
　しばらくそうしていたが、「ニャン」と小さく鳴いて、少女の手の中に飛び降りた。
　ポケットから取り出したハンカチで濡れた身体を拭いている少女に、男が問いかけた。

「名前はどうする」

「…ライ、としようと思います」

「雷の鳴る日に出会ったからか」

　無言のまま肯き、肯定の意思を示す。

「…そろそろ、ホテルへ戻ろう。雨の中、いつまで立っていても仕方がない。
　何もないが、ここよりはマシだ」

「…はい」

　静かに応え、少女は男と一緒に歩き始めた。

「ニャ」

　子猫が小さく視界の片隅に見えるラミエルの残骸のほうへ一声、鳴くと、コートの裏側に潜りこんだ。
　それは、別れの挨拶のようにも聞こえたが、雨音にかき消された声を聞くモノはいなかった。

ラミエル戦はこれにてお終い、です。
結果としてラミエル撃退は成功しましたが…どうするんでしょう、この後。（−−；）
しかも、謎の少女（＾＾；）が登場しているし。

　どげしゃ

「はぅぅぅぅ…いきなり何するんです、アスカさん？」

　げしげし、どげしゃ、ぐしゃ

「あ・・ぅ…ぅぅ…、もしかして出番がなくて怒ってるとか？」

「あんた、馬鹿ぁ？　どーしてラミエルを止める手段がこんなの（↑）しかないのよ！！！」

「浮遊しているからベークライト詰めはできないでしょ？」

「なら、ワイヤーでぐるぐるってやればいーじゃない」

「周囲にビル、ないです。シャムシェルが切り刻んじゃったから」

「他の案をだせばよかったのよ、ほら、手伝ってあげるから案を出しなさい、案を！！！」

　かっくん、かっくん

「あぅ、あぅ、死んじゃいますよぉ、アスカさ〜ん。（T_T）」

「出しなさい」

「…？　何をです？」

「台本よ、台本。第７話の。まっさか、出来てないなんて言うんじゃないわよね」

「あることはあるんですが…」

「いいから寄越しなさいよ…なになに…こっちはナルシスホモ主体の話…か。
　…ふむふむ……却下ね。議論の余地なし！　私のシンリに近付くだけで厳罰もんよ。
　で…次は茶髪のタレ目女…論外。だいたい、「アスカ、来日」の後にしようって
　キャラを今出してどーすんのよ、まったく…。
　で、最後のは…ふむ…これよ、これ。（＾＾）

　　他のシナリオは焼き捨ててぇ…

　ＹＯＫＯ、このシナリオで決定よ。
　他のシナリオは不幸な事故で使えなくなったから」

「不幸な事故…」

「…文句あんの！？」

「…ないです」

　最初の不機嫌が嘘のように上機嫌になって金色の髪の少女は去っていった。
　…ＹＯＫＯの手元には１冊のシナリオと、灰が残っている。

　ヒョイ

「へ？」

「…これじゃ駄目」

　空色の髪の少女が、赤ペンで唯一、残った台本に書き込みを加えている。

「あの…綾波さん？」

「二号機パイロットが到着するまで、あと１話しか残ってない。
　だから、直すの。　…間に合わないから」

「…何が間に合わないんです？」

「それは…（ぽっ）」

　頬を赤らめて台本をギュッとする。

「あのぉ」

「…ちゃんと、台本通りにしてね」

　皺くちゃになった台本を返して、空色の髪の少女も去っていった。
　YOKOの手元には、赤ペンの書き込みが入りまくった台本と、灰が残っている。

「…どんなこと書いたのかな………うーん…これだと…
　…ま、いっか。なるようになるっしょ。（＾＾；）」

　ＹＯＫＯの呟きは当然だが、聞く者はいない。

　さてさて、次回、第７話「ヒトの造りしモノ」、ご期待ください♪