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「赤木博士、これはどういうことでしょうか」
リツコの研究室に訪れた時田は、手に持った資料を渡していきなりそう告げた。
その内容は、零号機が主に使用しているスナイパーライフルの性能諸元、
ジェットアロンが実際に１００ｋｍを超える超長距離から狙撃を受けた際の被害、
両者のどちらを基に相手を予測しても、まったく別者になることが書かれている。
スナイパーライフルの性能表を基にすればジェットアロンの被害は大幅に減少し、
全部で１０ｍ近くも全身を覆っている複合装甲の全１０層中、９層目まで
撃抜かれるようなことなどありえない。
ジェットアロンの被害を基に、攻撃兵器を推測すると、スナイパーライフルより
数段階、強力でなくてはならない。
その差は誤差等で済ませられるものでなく、明確な矛盾を含んでいるのは
間違いない…ということである。
「…興味深いデータですね」
「スナイパーライフルの性能諸元に誤りがある、という訳ではない、と？」
「…時田博士。
我々、ＮＥＲＶは貴方にクラスＡ−のパスを発行しています。
これは、外部製造を依頼しているあらゆるエヴァの武装に限定した場合、
最上級権限を保有していることに等しいのです。
もう少し、信頼してくれてもよいと思いますが」
リツコが僅かに非難の色を添えると、時田は、それまでの堅苦しい表情を崩して、
面白いモノを見つけた時の子供のように楽しげな笑みを浮かべた。
「失礼。
あまりにも矛盾した情報だったもので、つい邪推してしまったのです。
他意はありませんよ。
それにしても、全てが正しい情報とすると、何かが足りない、ということになる」
「時田博士もお人が悪いですわね？
予想はついているのでしょう？」
「これも性格でして。
…Ａ．Ｔ．フィールドですな」
「これのデータはありますか？」
時田は懐からデータディスクを出すと手渡した。
リツコはそれをマシンに読み込ませると、ＭＡＧＩに推論を指示する。
「ほぉ…これが第７世代コンピュータＭＡＧＩ。指示の方法は、簡略化されているが
ほとんど、人に対するモノと変わりませんな」
「そうです…ＭＡＧＩの推論でも、零号機の恒常展開フィールドが
発射されたスナイパーライフルの弾丸にまで影響を与えていた可能性を
示唆していますね」
画面に表示されたＭＡＧＩの結論はシンプルだった。
恒常展開フィールドの影響下にある白兵戦武器と同じ特性を示している、と。
「ですが、以前の射撃テストではそういった傾向は見られなかったのでは？」
「当時と比較してレイのシンクロ率は変化している…でもアスカの
シンクロ率は８０％近くあってもこんな現象は発生させることはない…。
パイロットの精神状態の違い…？ …不確定要素が多過ぎるわ…」
「イスラフェルとの再戦前に一度、テストをしませんか？」
「…そうですね…」
Pi,Pi,Pi,Pi
「失礼…赤木ですが」
『あ、リツコ？ 済まないんだけど、これから一時間後に零号機の
シンクロ試験やりたいの。準備、お願いしてもいーかしら？』
「…もう一度、言ってちょうだい」
『一時間後に零号機のシンクロテスト、やりたいの』
「…ミ、サ、ト！！！
貴女、午前中の会議で、今日一杯は零号機、弐号機の機体性能の差を
修正するための検査をするから、余計な仕事はいれないように、と
うちから依頼したのを、もう忘れたのかしら！？？？？」
『それがねぇ、レイが零号機にもっと根性入れて働いてもらうように
働きかけてみるって言うじゃない？
もし、ほんとに効果があったら、作戦部のほうでも、ぜーんぶ再検討を
しなくちゃいけないから、なるべく早くしたいの』
「レイが？」
『アスカの入知恵。 いーでしょ、ね、赤木博士〜♪』
電話から聞こえるミサトの声が年柄にもなく、妙に甘ったるい音色を
奏でて、リツコの背筋を寒くする。
反射的に諌めようとしたが、ふと手元の時田から渡された資料を見て
考えるそぶりを見せた後、口を開いた。
「…いいわ。
シンクロテストついでに、零号機、弐号機を使った超長距離射撃試験を
やることにするから、日本政府にはそっちで話をつけること。
それくらいは仕事しなさいよ、ミサト」
『超長距離射撃試験ねぇ…ま、いいわ。
青葉君にちょーど頼みたいこともあったし、こっちでやっとく。
じゃ、１時間後には子供達を連れて行くから準備はよろしく〜♪』
カチャッ
電話の向こうにいていつものチシャ猫笑いをしているミサトの姿が
目に浮かんで、コメカミを押さえつける仕草をしてしまう。
「…話はついたようですな。
では、私は技術部のほうに戻るとしましょう。
面白いことになりそうですね、これは」
「うちの職員が過労で倒れないことを願ってますわ」
「でも、技術部の人達が直訴してまで仕事に熱中しているわけですし、
よい傾向だと私は思いますが」
「…だから困る…おわかりでしょう？
ＮＥＲＶは超法規的組織で労働基準法の適用外とはいえ、仕事中毒者の
養成施設ではありませんわ。…これが作業の効率が悪くて残業時間が
多くなるというなら、改善のしようもありますが、効率は世界最高水準、
それでもやるべき事が山積し過ぎ…手の施しようがありません」
リツコは深い溜息をついた。まるで手のかかる子供を持つ親のような仕草。
そう、告げたら喜ぶだろうか？ と時田は心の中だけで考えた。
「だから、ですか。
一部限定として、家族のジオフロント内の職場への訪問を許可したのは」
「えぇ。多少なりとも効果が出ているようでよかったですわ」
最近、リツコが技術部の者達の家族に打診したのは、場所は限定されるものの、
ジオフロント内への立ち入りを時間制限なく許可する、というものだった。
異常ともいえる残業時間に不安を募らせていた家族は続々と訪問し、
仕事に熱中し過ぎている者を諌め、不在がちな職員がどれだけの熱意を持って
仕事に取り組んでいるのか家族が認識することにもなり、
それぞれが抱えていたストレスが僅かながら減少傾向を見せ始めていた。
「部下を持つと苦労が耐えませんな…」
上司は部下の仕事をこなす能力と結果だけに注意すればいいのではない。
第二東京市等、日本全国ではその傾向がかなり強まっているが、
非常識とも言えるほどの仕事中毒者の集まりであったジェットアロンの
開発チームを率いていた時田も、リツコの苦労がよくわかっていた。
それぞれの精神、健康状態はもとより、交友関係、家族関係まで考慮し、
しかも過干渉と言われないように、管理は最小限に留める…。
いくら最近ではそれを支援するコンピュータシステムがあるとはいっても、
なかなか上司の苦労は減らないものなのだ。
「一人でできることには限りがある…だから人は寄り集まって
より多くのことを成し遂げようとする。
…私も最近、ミサトの悪癖が増えてきたみたいですね」
「葛城さん？ ありゃ、日向くんが可哀相でしょう」
「そうですわね」
リツコはこき使われる日向のことを思い出して、穏やかな笑みを浮かべた。
つられて時田も笑い出し、束の間とはいえ、リツコの研究室に笑いが戻る。
激務の中に生まれるちょっとした休息の刻。
それが生み出す空気の大切さを噛み締める二人だった。
それから一時間後。
零号機にレイが乗り込み、シンクロテストが開始されることになった。
試験開始直前に、リツコがＭＡＧＩに特権命令でそっと極秘指示を行ったが、
それを知る者はゲンドウと冬月のみ。
一見、普段と変わらない状況の中、試験は始まった。
”シンクロ、スタート”
心を静めて、目の前でシンクロ時に乱舞する色彩が落ち着くのを待つ。
感じ取れるもう一つの心、零号機のコア。
今までは零号機の心の形に、自分の心を合わせていた。
器に満たされる水。
どれほど器が複雑な形状をしていても、水は隅々まで入り込み、
密着し、隙間なく一体化する。
…でも、私はもっと強い力が欲しい
手に入れたモノを抱え続けられる力が欲しい
独りの時…私には何もないと思っていた。
以前の私は何も持ってなかった。
心も、家族も、友達も、何も。
今は、私はみんなから沢山のモノを貰った。
人を想う心を、暖かい家族を、心地よい友達と過ごす刻を。
零号機…
もう一人の私が形作る器。
そこに満たせる力の量は限られている。
でも、私はもっと強い力が欲しい。
もっと強い力が。
もう一人の私…滅びを望む私…同じ私なら…
私に手を貸して…
抗
モノではないエヴァが形作る器は壊れることはない。
だが、中に満たされた水が器を押し広げ、望みの形へと
形を変えるように働きかける耐えがたい圧力は、
反射的に恐怖にも似た拒絶の心を生み出す。
”大丈夫。アナタは私、私は一人じゃない。
…私は独りじゃない。”
ゆっくり力ある言葉をレイが紡ぐ。
一言ごとに、紅い瞳に満ちた輝きが強まっていき、
抵抗する零号機の心を少しずつ溶かし、強固な拒絶の壁を
和らげ続ける。
『し、信じられません！！！ レイの精神パターンが零号機の
波長パターンを引き寄せています！！！
そんな…理論上、ありえません！』
通常のシンクロでは、エヴァの波長パターンに合わせて、
チルドレンの側が精神パターンを同調するのに、今、レイが
行っているのはその逆。
それは人が道に沿って歩くのではなく、人が歩くのに合わせて
道に曲がれ、というのに等しい不可能な行為。
人の身にはできるはずのないことなのである。
『現実は目の前にある、まずはそれを事実として捉え、
解明するのが私達の仕事よ、マヤ』
『なぁ、渚、あの紅い光、Ａ．Ｔ．フィールドじゃないのか？』
『ん？ 別に警報は鳴っていないから別の現象だと僕は思うよ』
『ニャーォ』
零号機の身に纏わりつくように時折、淡く赤い輝きが結晶構造の
ような煌きを伴って、浮かび上がる。
それは、その場にいる誰もが、ケンスケが疑問をもったように、
何度も見たＡ．Ｔ．フィールドの発光現象だと思ったのだが、
モニターに表示されるＭＡＧＩの監視状況報告画面には、
検出されれば「警告！」の赤い文字と供に現れる非常事態の表示はなく、
まったく熱の検出されない特異な現象であることだけが映し出されていた。
”変わることを怖がることはない…”
古い衣を脱ぎ捨てて踏み出す一歩。
零号機の周囲に発生していた光の壁が空に消え去る。
伴
『零号機との波長パターン、安定しました！
シンクロ率は５３％です！！！』
『やるじゃない、レイ！』
ミサトの賞賛の声が響く。
これまでのシンクロ率を一気に２０％近くも上回る急激な上昇。
制御室の空気が一気に沸騰し、驚嘆の声が飛び交い始める。
『レイ、次は超長距離射撃実験よ。
アスカ、弐号機の起動準備を』
『はーい』
サブモニターに、実験の概要と今後の行動が表示される。
レイは、零号機に武器の収納ケースからスナイパーライフルを
取り出させると、リニアカタパルトへと向かい歩き出した。
以前よりズレなくスムーズに心のままに動く零号機の反応を感じて
ハードルを一つ乗り越えた達成感に、静かに安堵の表情を浮かべた。
超長距離射撃実験を行うエヴァを監視する第一発令所。
今後の役に立つかもしれない、ということでチルドレンとして
登録されている子供達は、ここで主モニターを眺めている。
「両機、嘉手納基地沖の仮設目標へＭＡＧＩのサポートを
受けた上で、スナイパーライフルで攻撃！」
『了解』『…了解』
零号機と弐号機が第三新東京市を囲む山々の上に立ち、水平線の彼方、
沖縄にある戦略自衛隊基地の協力で、行われることになった超長距離射撃試験。
衛星とＭＡＧＩの支援を受けて、直接視認することのできない
洋上にある２０００ｍ近い大きさの洋上空港に設置された
５０ｍ立方の複合装甲板に対して、２機は、改良型スナイパーライフルを
撃ち放った。
…ズガァァァァァァァァァン
発砲後、マッハ７の超高速で撃ちだされた弾丸が２発、大気を引き裂きながら
ターゲットに向けて飛翔し、しばらくして、１発は目標を、１発は洋上空港の脇、
３０ｍの地点へと着弾した。
複合装甲に大きく穿たれる穴と、高さ２００ｍにも達する水飛沫。
「零号機、目標に命中。弐号機の射撃は外れました」
『ちょっと、ちょっと、ちょっとぉ、なんで私のほうだけ外れるのよ！！！』
アスカの困惑の声が響く。
まぁ、文句を言うのも無理はない。
同時発砲し、同じようにＭＡＧＩの支援を受けたのに、自分だけ大きく外れ。
時田とリツコ以外の誰もが、技術部がミスをしたのではないか？ と
疑いの眼差しを向けている。
「アスカ、レイ、もう一度、射撃をしなさい」
『えぇぇぇ、また外れるのイヤよ、私。整備不良なら…』
「その銃はちゃんど整備されているわ。次は命中するから撃ちなさい」
『？ …まぁ、いいわ。レイ、やるわよ』
『えぇ』
２機が再度、射撃を行い、今度はどちらの弾丸も目標に命中した。
しかし、１発は大穴を穿ったのに対して、もう１発のソレは
孔の大きさ、深さのどちらも大きく劣っている。
「やはり、Ａ．Ｔ．フィールドですか」
「そうですね。アレだけの威力差、命中精度差はそれ以外に説明できない」
時田とリツコが納得顔で謎な会話を続けている。
今回の試験目的は誰にも伝えられていないため、周囲は困惑の色を深める
ばかりである。
「あの、リツコさん。どうして、あんなに違うんですか？
同じ銃で撃ったのに」
改良型って言われたスナイパーライフルだけど、どっちも同じ形状で
違いはぜんぜんわからない。
「よい質問ね、シンリくん。
最初に皆にも説明した通り、２機が使った銃はまったく同じ性能よ。
ただ、零号機が撃った弾は２発とも通常弾なのに対して、
弐号機が撃った弾は最初は通常弾、２発目は誘導弾なの。
もちろん、誘導性能がついても威力は変わらないわ」
「でも、アスカが撃った弾、最初は外れたし、２発目も威力は
綾波さんが撃ったものより、かなり弱かったですよ？」
ボクの言葉に鈴原君たちも頷いてる。
「そうね。ちょっと考えてみて。
ここから沖縄まではかなりの距離があるのはわかるわね？
スナイパーライフルの弾は撃ちだされた後は最初に与えられた
運動エネルギーに従って、決められた方向に飛んでいくだけ。
いくらＭＡＧＩの支援があっても、あの距離じゃ風の影響も
あるから、まず命中はしないわ。
アスカの撃った弾が誤差３０ｍで着弾したのだって、通常の射撃精度で
考えれば、奇跡に等しい結果なのよ。
それに、着弾した際の破壊結果を見ても、弐号機の撃った弾が
穿った穴はほぼ計算通り。５％の誤差もないわ。
それに対して、零号機が撃った弾は、計算予測を何倍も上回ってる。
つまり…弐号機の結果が普通であって、零号機の射撃は
理論上、あり得ない結果なのよ…一般的な理論ならだけど」
「えっと…あの…つまり…どういうことなんですか？」
綾波さんが撃った弾はよく当たるし、威力も大きいってことはわかるけど、
どうして、そうなるのか、全然わからない。
「前に、アナタ達のシンクロ方法が違うかもしれない、ということは話したわね？
アスカは支配。エヴァの能力を隅々まで操ることで超機動を行う。
シンリくんは、親和。エヴァや使徒の心を感じ取ることができる。
レイは同化。エヴァと心を一つにして、Ａ．Ｔ．フィールドの中和ができる、と。
レイの同化は、今回の結果を見る限りは、近接用武器だけでなく、
射撃用武器にも影響を与えるようね」
「銃も同じ…？」
うーん、リツコさんがこういうもったいつけた話をする時って、ほんと嬉しそう。
目が輝いてるもん。
「エヴァが振るう武器は設計強度より頑丈で威力も大きくなる。
それは、恒常展開フィールドが影響を与えていると予想されているわ。
レイの場合は、弾自体が自分の体のように、恒常展開フィールドで影響を与え、
まるで誘導性能があるかのように、周囲の物理現象を捻じ曲げて、
ターゲットに吸い込まれるようにＨＩＴしたのよ。
しかも、白兵戦武器同様、威力も高まって」
「それは…ちょっと外れそうな弾も当たるってことですか？」
「限度はあるはずだけど、そうなるでしょうね。
ミサト、この結果は作戦部の計画に影響を与えるんじゃなくて？」
リツコさんが流し目でミサトさんに話を振る。
少し細められた眼差しと笑顔が、猫のような雰囲気を漂わせてる。
「…まぁね。
日向くん、シミュレート、済まないけどこの結果と、シンクロ率の上昇分を
合わせてやり直してくれる？」
「わかりました。この分だと、かなり作戦の幅が広がりそうですね」
「そうね」
ミサトさん達もかなり嬉しそう。
さっき、綾波さんのシンクロ率が上がった時も、そうだったけど、
やっぱり今回の作戦はかなりマズイ状況だったらしい。
作戦部の皆さんも、いつも険しい表情をしていたし、たぶん、
前のままだったら、かなり無理をすることになってたんだ、と思う。
「ミサトさん、これなら弐点同時荷重攻撃も大丈夫そうですか？」
「ん？ たぶん平気よ。これだけプラスの要素が増えれば、
誤差もたぶん、１、２％くらいまで許容範囲になるから」
二人が完全に息を合わせてのユニゾン、１、２％のズレがあっても…。
その時、青葉さんの席の下に置いてあるギターケースが目に入った。
以前、青葉さんが弾いてくれた時のことを思い出した。
まだ練習中ってことで僅かだけどズレがあった演奏。
楽譜にある曲の流れから僅かに外れた音、僅かなズレ…
…似てる…今回の作戦と。
旨い演奏者二人による同じ音階で奏でる僅かにズレのある曲と、
少し技量は劣るけど二人の演奏者による完全に同調した曲。
演奏、と考えると前者は明らかに劣る。
それなら、二人が別のパートを弾いたほうが曲に深みが出るし、
聞いてても、僅かな誤差は二人の特徴の違いが生み出す音色が
カバーしてくれる。
それに最後の１音だけ合わせればいいなら、それほど難しくない。
ボクはなんとなくそう思った。
やっぱり、単独で演奏されることが少ないチェロを趣味で
弾いているから、そういう発想になったんだと思う。
「あの、リツコさん、ちょっといいですか…？」
「何かしら？」
作業に戻ろうとしていたリツコさんに、自分の考えを伝えてみる。
それと、シミュレーション訓練への提案を一つ。
技術的に出来るか不安だったから聞いてみたんだけど、
最初は何のことか不思議そうに聞いていたリツコさんも
ちょっと考えた後、ミサトさんに話してみる、と言ってくれた。
「というわけだけど、いいわね？ ミサト」
え？ 慌てて振り返ってみると、いつのまにか、ボクの後ろで
日向さんとミサトさんが二人揃って、うん、うんと頷いてる。
「い、いつからいたんです、ミサトさん！？」
「２体の制御を一人でできないか？ ってところから。
うちじゃ、そのあたりはＭＡＧＩにやらせようと思ってたんだけど、
確かにそのほうが実践的になりそうね、日向君」
「さっそく、今の話を加味して訓練方法、作戦を検討してみますよ」
気が付かなかったけど、長い間、話をしてたみたいでボクの
周囲には、第一発令所の人達はみーんな残ってたみたい。
マヤさんが青葉さんと、ボクがどれだけ熱心に話していたかについて談笑してる。
隣では、鈴原君達が「えーもん、見せてもらったわ」なんで言ってる。
「ボ、ボク、これから森で訓練が、っと…、失礼します」
皆が注目してるのも気が付かないでずっとリツコさんに話をしてたことを
自覚して、なんだか急に恥ずかしくなって、逃げ出しちゃった。
集中してるとそれ以外を見ない
前に訓練中に日向さんから何度か指摘されたことを思い出した。
そういえば、最初にお父さんと会った時も、目の前にプールが
あったのに追いかけようとして落ちそうになったこともあるし、
使徒の心に集中してると、発令所からの通信も聞こえなかった。
全然気が付かなくて、気が付くとちょっと怖い表情で睨まれる
ことも多かったりする…。
問題あるよね、やっぱり…。
…そんなことを、恥ずかしくて火照ってた頬が冷えたことを
自覚するまで、考えてた。
目の前にはジオフロントの森が広がってる。
ボクの手にはデジカメが握られてるけど…。
「…いつのまにきたのかな…ボク」
森林の中を踏破する訓練の準備をして森に佇み、ポツリと一言。
どこをどう歩いてきたのか、いつのまに準備を整えたのか。
全然、覚えてない。
「…はぁ…」
手にもったデジカメを持って溜息を一つ。
ボクは人生で何度目になるのか忘れたけど、悪い癖を治そうと思った。
ユニゾン訓練その２、キリがいいのでここまでです。
次回、シンリの提案を加味した訓練が行われ、決戦前夜を迎えます。
ミサトは最後の詰めを行うためにジオフロントに泊まり込み。
３人の子供達だけで迎える晩。
何が起きるのか、楽しみ、楽しみ〜♪
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