Ｍｉｓｓｉｏｎ：１７　「Ｃｒａｓｈ」

今日は久々にアリーナ出場だ。
うーん、確か、別の都市のアリーナとの交流試合って言われてた様な………ま、いいか。行けば分かるよね。
っと、出かける前に……ここんとこ端末いじってなかったからなぁ………何か来てるかな？あれ？メールが来てる……依頼メールだ。どこから？ん、と、クローム？
何々？『遺跡強襲』………ストラグルの隠れ家を強襲、ねぇ………ドラグナ地方のバエラ遺跡にいるストラグルのメンバーを撃破せよ、か。
報酬は前払い１８０００Ｃの成功報酬２００００Ｃ。払いはいいけど、確実に仕留めろってのは面倒ねぇ。
依頼受諾期限までまだ日数があるし、ちょっと保留かな。
他の依頼はあるのかな？
え〜っと、うーん、他はまともなの無いなぁ……２、３日待ってまだ残ってたら受けようっと。
さて、もうやる事は残ってないかな？うん、無さそうだ。じゃ、行くか…………
　
ピンポーン────
　
ありゃ？誰だ？
こんな時間に来る奴なんていたっけか？
　
「はーい。今開けますよぉ。」
　
っと軽く答えてドアを開ける。
おぅ？
　
「お早うございます、マリィさん。」
　
「ユーリ……何？今日はテストじゃないでしょ？」
　
そう。アリーナ事務局からオファーが有ったのでテストは休ませて貰ったのだ。
しかし、なんでまた………
　
「知ってますよ、そのくらい。マリィさん、試合するんでしょ？」
　
「いや、そうだけど…………何で知ってるの？」
　
「ふっ………アリーナ通をなめないでください！」
　
………拳握ってまで力説する事か？なんか泣きたくなってくるよ、お姉さんは。
　
「いや、マリィさん、呆れ顔しないで下さいよ。ほんの冗談なんですから。」
　
「…………じゃあ何で？」
　
「仕事柄、アングラの掲示板なんかも見る事有るんですけど……そこに載ってたんです。」
　
う〜む、恐るべし情報マニア………って、こいつも予備軍?
　
「………やな世の中ね……」
　
「マリィさ〜ん、冷たい目で見ないで下さいよぉ〜。」
　
うーん、泣きそうな顔してる。そろそろ虐めるの止めとくか。
　
「はいはい、分かったから。で、本題は何よ。」
　
「あ、えーと…………付いていっていいですか？」
　
はい？何でまた…………もしかして？
　
「………関係者としてタダで入ろうとか考えてる？」
　
「お金なら払いますよぉ。」
　
「………あのお姫様なら来てないけど？」
　
「エルシィさんはまた別の機会に置いといてですねぇ。」
　
「………全然理由が思いつかないんだけど？」
　
「マリィさんの試合を見るのっていけないんですか？」
　
「……勝手になさい。」
　
疲れた。もう行こう。
私が歩き出すと、ユーリは慌てて付いてくる。
　
　
ユーリと別れて、控室へ向かう。
普段見ない様な連中が集まってるわね。
適当に挨拶を交わしながら、私はガレージに行く。
　
「……今日はＡ装備だっけ……」
　
目の前に立つＡＣを眺める。
フォート・テクニカの工場から昨夜のうちに運び込まれた、我が乗機、ブラッドウィドウ……いや、ホント、赤って目立つわねぇ。
今の組み立ては、頭部がＨＤ−Ｈ１０、腕はＡＮ−２５、ＦＣＳは……試験依頼されたＰ／ＣＶ。
重量があり、ロック数は１、利点はロック時間が短めってとこ。ま、ミサイル使わなきゃこれでもいいかなってレベル。
マジにやってくれって話を受けてるんで、右手はこの前から使ってるＷＧ−ＸＭ１１、左手はＭＯＯＮＬＩＧＨＴ。
肩は右にＲＺＴ−３３３、左は追加弾倉のＭ１１８−ＴＤっといった所。
アリーナ向けとしては、メイン武装一つきりってのはちょっと考える所だけどね……後は腕の問題か。
　
「よう、姉さん。どうした？」
　
「ちょっと機体を見に来ただけ………他の出場機体はどれ？」
　
顔見知りの整備士に声をかけられ、ついでだし、と他のＡＣを確認してみる。
　
「あ？他の機体？こっちにゃ無いぜ。」
　
「そうなの？」
　
「ああ。って他の奴は誰が出るか聞いてないのか？」
　
「……まぁね。ってことは、他はランカーとかスペシャルアリーナの連中なんだ。」
　
納得……どうりで暇そうにしてるわけだ。
　
「………事務局に聞いてみたらどうだ？」
　
「自分が出場する理由？完全勝利じゃつまらないからじゃないの？」
　
とはいえ、相手がどこのレイヴンで、どれだけの腕を持ってるかなんて分からないけどね。
　
「ま、いいわ。控室でノンビリしてる事にするわね。そんじゃ、また。」
　
「おぅ、頑張れよ。」
　
有り難い声援だこと……さて、軽く寝てようかな。
　
　
「ありがと。今度食事でも奢るわね。」
　
ふぅ………事務局から出場者と組み合わせを聞き出したけど………こっちはランカー６位のオートラングとマスターアリーナのシュナーベル・５にファーストレディ、逆間接アリーナトップのブロックバスター……何で私がいなきゃならない………って、一応２足限定のトップだったっけか。
それに対して、アンバー＝クラウンの機体は………４脚のモールニャ４号にタンクのＰｚＫｅｒｎ．�Y、逆間接の一式機動猟兵とブリュンヒルデ、それと、クー・ド・ヴァン……組み合わせは……あー、最後かぁ。クー・ド・ヴァン……重量２足か、手間掛かりそう。
　
コンコン────
　
「はい？どちら様？」
　
「……失礼する。」
　
初めて見る男だけど、声には聞き覚えがある。
　
「もしかして………アリュマージュさん？」
　
「ああ……そうだ。」
　
刈り込んだ金髪に整った目鼻立ち。いわゆる“いい男”って感じかしらね……私の趣味ではないけど。
　
「何の御用？対戦カードには無かったけど、来てたんだ。」
　
「先日、アンバー＝クラウンに来たそうだが、何故勝負に来なかったか聞かせて貰えないか。」
　
「ああ……あん時は長居するつもり無かったから……結果的には１月もいたけどね。」
　
まぁ、概ねそんなとこ。面倒だったからってのも無いワケじゃないけどねぇ。
　
「……都合が悪かったと言う事か。なら、それはいい。今日、対抗戦の後、戦って貰えないか？」
　
「連戦しろって？………諦めそうにないわねぇ、別にいいわ。それで納得してくれるってんならね。」
　
「感謝する。」
　
そう言って踵を返す彼……立ち居振る舞いは冷静だけど、内面はかなりの熱血漢ね。
久々のアリーナ戦、結構しんどそう………まぁ、なるようにしかならないか。
　
　
目の前にいるのは、青い重装型ＡＣ────トゥールビヨンの駆るクー・ド・ヴァン。
両肩に拡散ミサイル、右手にバズーカ、左手に輝くはＭＯＯＮＬＩＧＨＴと完璧な攻撃型機体よねぇ。
しかも、どうやら事務局は勝ちを臨んでるらしく、今までの戦闘資料なんぞ見せてくれたんだけど………９割方プラスよね、あれ。
まぁ、誰に当たっても良い様に大量に見せてくれたんだけどね、ここ（事務局）の連中…………はぁ、期待してくれたんだと思う事にしましょうか。
　
「さて………その実力を拝ませて貰いましょうかねぇ。」
　
なんて、ちょっと言ってみたりして。
今日の舞台はアリーナドーム。純粋に腕だけで勝負しなければならない、小細工など役に立たない場所だ。
頭部ならともかく、肩レーダーならほぼ全域がカバー出来る。
ＦＣＳのタイプがＮＤ（ＮＡＲＲＯＷ＆ＤＥＥＰ）で武器の射程が１５０００以上なら端から端まで充分、弾が届く。
高さがある分、機動回避が決め手になるし、重装備でごり押しするのも悪くない。
良くも悪くも、そいつの実力が全部さらけ出されるって事かな？
まぁ、御挨拶代わりに飛んできたバズーカの弾をかわしてみる。
　
「様子見、か………そんじゃこっちも、軽めに始めますかね。」
　
避けられるのを前提に２、３発パパッと撃つ。
数条の黄色い光が空間を薙ぐ。
おーぅ、あの重そうな機体でよく動く事。
お互い、数発ほどギリギリのモノもあったが、決定的な被弾は無く、嫌な間合い────ブレードの距離に近付いている。
ヤバいなぁ………来るよ、コレは。
クー・ド・ヴァンが左手を構える……やっぱ、プラスってダメね。
この子のスピードなら、相手の右側に抜ける！
　
ガリッ！
　
軽く擦った様だけど、ここで躊躇しちゃいけない。
左肩から旋回し、やや左後方に機体をずらしていきながらブレードを振る。
まぁ、予定通り、機体が１８０度廻る頃には、振ったブレードが、ようやく光波の硬直が解けて動き始めたクー・ド・ヴァンの脇腹を薙いでいた。
　
『くっ…………思ったよりやるな。』
　
「伊達に２足のトップは張ってないってね。」
　
お互いに急速後退して、若干の間合いを取り直す。
　
『あいつが珍しく戦いたい相手がいる、と言っていたが、君の様だな。』
　
「あいつ？誰よ………」
　
と言って、つい先程合った顔を思い出した。
　
『フッ。つれないな、お嬢さん。』
　
「思ったより軽めね、あなた。」
　
『いいね、気に入った………これから君を倒す。』
　
「簡単にやられるつもりはないけど？」
　
とは言え、予想通りだと、決着はブレードになりそう。
ってことは、若干あちらさんが有利か…………ま、悩んでもしょーがない。
それに、こっちには一つだけ有利な点があるのよね………この私の個人的な能力が、ね。
さて………思考開始………目の前の相手の動きを頭の中で先に動かす……記憶から予想される行動パターンはおよそ１９………その内、可能性の高い物は３つ。そのどれもに対処出来る行動は………右後方にバックステップしながら射撃！
　
『うぐっ！やるな！』
　
「………次は、どうする？」
　
『こう、だっ！』
　
………予測パターンのうち、一番可能性の高い行動。
踏み込みながら振り下ろされるブレードを、予測通りに攻撃範囲ギリギリで回避すると、軽いジャンプで踏み込みつつ、こちらから斬りつける。
　
『うぉっ！』
　
「………ノーランクのレイヴンだからって甘く見てると、手痛いしっぺ返しを喰らう事になるわよ。」
　
急速後退するクー・ド・ヴァンの視界から機体を消す。
敢えてレーダー範囲から出きらずに、相手に位置を認識させたままにする……ただし、一歩も止まる事はしない。
柔らかな波を描く様に、一定の距離を保ちつつ射撃を繰り返す。
ブースターを小刻みに噴かし、真紅の機体が赤い炎を纏いながら舞う………気の利いた人が、私の機体名から『舞踏（タランテラ）』なんて呼んでたけど、それほどたいしたもんじゃない。
中軽量級の機体を扱うベテランなら、多かれ少なかれ身に着けてる技量だ。
今のこの子は重量級だけどねぇ………そのくせ、人一倍動き回るからね、私は……上下左右、航空機の様に飛び回るのが、私の空中機動。
特に、ブラッドウィドウの専用ジェネレータとブースターは、この重装二脚のＡパーツでさえ、中量級並に飛び回れる。
それに巻き込まれて相手が動く様こそ、真の『死の舞踏（タランテラ）』なんだけどね。
さて、バズーカなんぞ当たってやる気もないし、行動半径と行動パターンも全部解析済み。
あとは削り倒すだけ、ってね。
　
『まったく、よく動くね。』
　
「力負けしちゃうからね、機体的にはさ。」
　
『冗談だろう？こっちと同じ重量級じゃないか………君も、強化されてるのかい？』
　
「答えは………ひ・み・つ。さて、そろそろ本気出してくれる？」
　
『いいだろう………行くぞ！』
　
………さっきまでより速くなったわね。
でも、避けられないほどじゃない……悪いけど、戦闘パターンを把握してた以上、私は負けられないのよね。
タイミングはずっとシビアになったけど、バズーカと光波を回避して隙間を縫って斬りつけ！
　
『マジか?』
　
「……有名税よ、受け取りなさい！」
　
回避が間に合わないタイミングでブレードを叩き付ける！
　
『黙ってやられる気はないぜ！』
　
………そっちこそマジか？ここでバズ撃たれたら交わしようが無いじゃない。
　
ガゴン！
　
くっはぁ〜っ、キクわぁ、コレ………ブースターで姿勢制御して着地すると、あれ？ちょっと、動きなさいよ！
まさか、ギリギリで負け？
はぁ………溜息をつきつつモニターに眼をやると………ＷＩＮ？
あ、勝ったんか…………はぁ、疲れたぁ………
　
　
「はふぅ………生き返るぅ。」
　
シャワーで汗を流して、バスタオルで髪を拭く。
さっきまでの戦闘でかなり疲れたよ、私は………悪いけど、今日はパスさせて貰おうかな………いや、ダメか。
約束、守らないとね。
　
「うっし、次に参りますか！」
　
両手で頬を叩き、気合いを入れ直す！
やるからには、勝利あるのみ！
　
　
『ご来場の皆様、本日は特別にもう一戦御座います。先程の雄志をお見せしたマリィと、死闘を繰り広げたトゥールビヨンと同門のレイヴン、アリュマージュとのスペシャル・マッチです。マリィは連戦というハンデを負っていますが、変わらぬ激戦を見せてくれると思います。お時間のある方はどうぞ引き続きご観戦下さい。』
　
言いたい放題言ってくれることで………実際に戦うのはこっちだっちゅうに。
　
「補充、済んだ？」
　
「おお、バッチリよ！頑張れよ！」
　
整備のおっちゃんに声援を受けて、私は再びシートに腰を下ろす。
では、本日の第２ラウンド、開始と行きますか。
　
　
こっちと同じ赤系統のカラーリングながら、あちらさんは見事に軽量級。
プラズマライフルとスラッグガン装備……よく考えりゃ、重量過多だよね、アレ。
それでも、軽い動きしてたよね、前見た時は、さ。
　
「戦闘力はあるわよね。」
　
『重量級でも充分に相手出来るつもりだ。貴女が相手では、射撃で勝てるとは思っていないがな。』
　
まぁ、そうだろう……自分の知り合いが斬り負けたんだからね。
斬り負ける、イコール、回避されるって事と同義だもんね。
　
「まぁ、いい試合にしましょう。」
　
『……無理な願いを聞いて貰って、感謝する。だが、手加減はしない………全力で来てくれ。』
　
開始の合図が聞こえる。
プラズマが宙を切り裂き、こちらのレーザーも壁に火花を散らす。
場所は引き続き、アリーナドーム。
今度は向こうが速い分、ちょっと手を変えるしかないか。
　
「速いわね。やっぱりやりにくい相手だわ。」
　
『……俺は楽しいぞ。』
　
お互い、舌戦は軽く済ます。
試合開始から数分、お互いに被弾が数発程度だけど、若干こっちの分が悪い。
　
「………８ビート、Ｒ＆Ｒのリズムね。」
　
『……いきなり音楽の話か？嫌いではないが、戦闘中にする話じゃないな。』
　
「気にしないで、独り言だから。」
　
１、２………攻撃、４、攻撃………６、７、そこ！
唯一のサイドステップに併せて光条が重なる様に撃つ。
　
『ちっ！やるな！』
　
「……そろそろ、こっちもペースアップさせて貰うわ。」
　
ジェネレータを限界まで酷使する事になりそうだけど……空中に軽く浮いてからレーザーを放つ。
　
『そうそう当たると思うな。』
　
当てるつもり自体無いけどね。
攻撃の手を少なくさせて、間合いを計る。
…………６、７、８、また１、ここ！
　
『何?』
　
急に視界から消えたんだから、驚くのも無理はない。
ショートダッシュの繰り返しから、急にフルブーストで距離を縮めたのだから。
鋭角に、まるで跳弾の様に機体の軌道を無理矢理に曲げて動く、普通のＡＣじゃブースター的にも、乗り手の安全性的にも不可能な技………
　
「………デス・ハーケン……」
　
言葉と同時に、青白い刃がコンビュスシオンの胴を薙ぐ。
相手の死角から飛び出す、死神の鎌……実行する為には、今みたいに尋常じゃない機動をする必要が出てくる。
　
『くっ、今の動き、普通の人間じゃ出来ないぞ！』
　
「悪かったわね、普通と違って………プラスじゃないけどね！」
　
斬撃のダメージから回復しきらないうちに、レーザーを数発浴びせる。
そして、ショートジャンプからの一閃！
　
「これは、おまけよ！」
　
ジャンプ斬りを叩き込んで、急加速で間合いを離す。
　
『………やはり、貴女は戦う相手としては最高の部類だ。』
　
「褒め言葉として受け取っておくわ。」
　
まだ動くか………斬ってくるな。
あちらとこっちのダメージ量から考えれば直ぐ解る………逆転勝利には、斬撃での瞬殺以外にない。
問題は、どう踏み込んでくるか、だ。
さぁ、思い出せ………さっきまでの動き、８ビートのリズム、以前見た戦い………想定パターンは７、対処しきれない数字じゃない。
実際には、そのうち４つ………左右からの揺さぶりか、ブースター飛行からの攻撃か……いや、違う………さぁ、来い！
　
『うぉおおおおおおおっ！』
　
「正面、ビンゴ！」
　
ライフルなど撃つ気はない………正面からなんて、嫌いじゃないのよ、そう言うの。
私の全力、見せてあげるよ！
ブレードが光るのと同時に、フルパワーでジャンプ！
足元を光波がすり抜けていく……と同時に、こっちもブレードを振る。
刃の光が、反応したコンビュスシオンのプラズマライフルに当たり、銃身を切り落とす！
　
『やるな！だが、まだだ！』
　
スラッグガンを起動させようとするけど、遅い！
普通ならやらないんだろうけど、私は動き始めたスラッグガンを蹴り飛ばす！
　
『馬鹿な?ＡＣで蹴るなんて！』
　
「戦場では何があるか解らないわよ！」
　
更に着地間際にブースターを噴かし、再度のジャンプ斬りを敢行。
吸い寄せられる様に、ブレードが頭部パーツを撫で、機体が止まる。
完全に頭部を飛ばしきる前に、ブレードへのエネルギー供給が停止………試合、終了。
　
「………むぅ、ちょっとやり過ぎたかな？」
　
『いや………見事だ。自分の負けだな。』
　
「…………まあ、有名なだけに研究されてたって事で。」
　
『………了承した。』
　
よし、これでエンド…………つっかれたぁ………
　
　
汗ばんだ体の上を冷たいシャワーの水が流れる。
火照った体に、とっても心地よい。
　
「ふぅ〜」
　
タオルで残った水を拭き取りながら、控室のソファーに腰を下ろす。
　
コンコン────
　
ん？
　
「誰ェ？開いてるよぉ。」
　
「そんじゃ、お邪魔します。」
　
ユーリ…………あのさぁ、君ねぇ…………
　
「………どうやって入ってきた、あんた。」
　
「え？関係者だって言ったらすぐ入れましたよ？」
　
「………嘘吐き。」
　
「嘘じゃないですよぉ。ちゃんと会社の社員証まで確認して貰ったんですから。」
　
………そりゃそうか………あの子、『借り物』なんだよね。
所有者は会社、か………間違っちゃいないけどさぁ………それでいいんか？受付…………
　
「………すごかったですねぇ……私、感激しちゃいました。」
　
「何を？」
　
「だって、あの相手って、アンバー＝クラウンでも１０位内のランカーレイヴンですよ？それを、連戦で、両方とも勝つなんて………マリィさんって、結構強いんですねぇ。」
　
「…………どーも。」
　
「でも、何でランカーに挑戦しないんですか？」
　
………来たよ、やっぱり…………
　
「趣味じゃないから。」
　
「へ？」
　
「あんな面倒な事、好き好んでやりたくない。今の２脚トップだって鬱陶しくて適わないんだから。」
　
「もったいないなぁ……」
　
ほっとけよ、そんなの………私の事だろうに。
何か興醒めだなぁ………帰って寝るか。
　
「帰るよ。」
　
「え？あ、待って下さいよぉ。」
　
無視………すると五月蝿いしなぁ…………
　
「早くしなさい。」
　
「は〜い。」
　
なんて楽しそうに………はぁ、この後、飲むんだろうなぁ………
　
　
むぅぅ………まだ酔いが残ってるなぁ…………ま、今日は何かあるわけでないし、二日酔いでもいいか………
さてさて、わりのいい仕事なぞありませんかねぇ………って、昨日の今日で仕事の数なんぞ、そうそう変わりっこないやねぇ。
さて、この依頼、受けるか、パスするか…………むぅん、テロ屋相手なら、クローム絡みでもいいか。
オッケーの返事、出しますか。

ご無沙汰でした、ＡＢＣです。
えー、本編ですが、次回へ続きます。
気長にお待ち下さい。
　
今回のタイトルは「Ｃｒａｓｈ」…………破壊。
今までのマリィから、ちょっとだけ変わってます。
コンピュータ張りの思考……ミリ単位の見切りが出来る人じゃなきゃやれないような技術を見せてます。
ちなみに、私はこんなに上手く動かせません。
　
では、また今度。

凄い技の応酬だったんですけど…なんとなくほのぼのしてますね（＾＾）
やっぱり、マリィさんにはこういう「時間」があったほうが良さそう。

でも、やっぱりレイヴンという職業は…。

さ、続きが読みたいと思った人は感想メールで催促しましょ♪