Ｍｉｓｓｉｏｎ：１８　「Ｋｉｌｌｉｎｇ−Ｍａｃｈｉｎｅ」

クロームからの依頼を受け、指定された場所で『パートナー』とやらを待つ事になった。
約束の場所へ出向いた私を待ち受けてたのは…………
　
「……何であんたがここにいる？」
　
「言ったでしょ？敵とは限らないって。さ、昔みたいに一緒にやろうじゃない。」
　
目の前にある白にグレーの虎縞のＡＣ……その前で私を待っていたのは紅虎（ホンフー）。
　
「あんた………クロームに雇われてたのか。」
　
「そう言う事。さて、仕事しようじゃないの。」
　
納得し難いけど、仕事じゃ仕方ない………
　
「解った。とっとと終わらせるよ。」
　
「りょーかい、隊長。」

「それは止めろ！」
　
ムッとして振り向きつつ怒鳴ったら、紅虎はそ知らぬ顔でＡＣの中に姿を消すところだった。
やがて、白いＡＣが動き出した……両手がマシンガン（ＡＷ−ＧＴ２０００）でレーダー頭部（ＨＤ−０６−ＲＡＤＡＲ）、脚は４脚で背中にスラッグガン（ＷＣ−ＳＴ１２０）と小型ミサイル（ＷＭ−Ｓ６０／４）………そういえば、昔から弾数の多い武器ばかり使ってた様な…………
　
　
ある程度潜った所で、道が二手に分かれている。
　
「私は右に行く。あんたは左を頼む。」
　
『いいですよぉ。じゃ、隊長………また後で。』

「だから止めろって言ってるでしょ！」
　
私が吠えるのを無視して、あいつが道の先に消える。
それを見送ってから、仕方無しにウィドウを先に進ませる。何となく、イヤな気分だ………
出来れば、とっとと終わらせて帰りたい。
目の前に現れる雑魚のＭＴを倒しながら、私はそんな事を考えてた。
　
　
曲がりくねった通路の先、マイクが銃撃の音を拾った。
ちっ、もう始めてるのか………
私は急いで通路の角を曲がる。
その前に広がったのは…………銃弾で穴だらけにされた数機のＡＣ。
　
『遅いねぇ、隊長。もうろくなモン残ってないよ。』
　
紅虎の声………そっちを見ると、十数人の男達が、乗ってたＭＴから降りてきていた。
両手を上げ、武器を放棄する…………こいつ、派手にかましたな。
　
「ふぅ、もうこいつ等だけね。じゃ、ふんじばって帰りましょうか。」
　
『何言ってるの隊長。依頼内容、忘れたんじゃないだろうね………あたし達の仕事は────完全殲滅だよ。』
　
何言ってる？こいつ………まさか？
　
ガララララララララッ！
　
ガトリングが火を噴き、男達が肉塊へと変わっていく………
　
「やめろ！戦意のないヤツまで撃つな！」
　
ウィドウを体当たりさせ、銃口を逸らす………が、遅かった………生きてるヤツなんて、いない。
　
『あ〜あ、邪魔してくれちゃって………契約違反だねぇ。』
　
「違反だ？何言ってるんだ、あんたは！無抵抗のヤツを撃つなんて………」
　
『貴女の言葉じゃないよ、隊長………昔反政府ゲリラを攻めた時は、貴女なんて無表情にゲリラ共を踏み潰してたじゃないか。それこそ、命乞いしようが泣き喚こうが、さ。』
　
………思い出したくもない事を思い出させる………そりゃ、あの頃はそうだったさ……自分を育ててくれた彼等に恩を感じてた頃は………でも、それが違うって解った時、私は無駄な殺戮を止めようと決めたんだ。
　
「昔がどうだろうと、今は違う！あんたもいい加減変わったらどうなんだ？」
　
『ご冗談………あたしが今更変われるかい？………契約違反は黙っててやるさ。無事に殲滅出来たしねぇ。』
　
………こいつ、壊れてやがる……
　
「………紅虎……あんた、死ぬまで治りそうにないね………」
　
『隊長、貴女はいつからそんな腑抜けになったんだろうねぇ………そんなんじゃ、いずれ死んじまうよ？』
　
………私は、何も言わずその場から去った。
　
　
………翌日、私の口座には契約通りの金額が振り込まれていた。
全部、忘れて呑み込めって事か……分かる。言いたい事は分かってるつもりだ。
でも、どうしても晴れない気分は……元を絶つしかないんだろうな。
気が付くと、私の脚は路地裏へと向かっていた────
　
　
トム爺から聞き出した紅虎のアドレスに連絡を入れる。
内容は単純…………私は自分で思ってた以上に気が短いって事だ。
　
「………どうしても決着を付けたいんだけどね。」
　
『………へぇ？あたしはいいけどね……ただ、貴女とやるっていうなら………死合だねぇ。』
　
「そう…………殺し合いになるわね………怖い？」
　
『冗談……そうさね、明後日の深夜………場所は解体予定の地下駐車場ってのはどうかしらねぇ。』
　
「いいよ、それで…………逃げるなよ。」
　
通信機の向こうで含み笑いしてる………余裕だね、紅虎。
でも、悪いけど………私は情けはかけないよ。
　
　
待ち合わせの場所………地下駐車場に赴く。時間はもう真夜中。
照明がほとんど取り払われているせいか、かなり暗い。
私はコアの中で眼を閉じて精神を落ち着けていた。
　
「…………来たか。」
　
『待たせたかしらね………それじゃ、始めましょうか。』
　
機体の駆動音に向けて頭部を巡らせる……僅かに残っている照明に照らし出されたのは、不格好に歪んだ機体……どう弄ったのか武器腕が３組も付いている。
頭部は０６−ＲＡＤＡＲ…………脚は４本か。ハッキリ言って、まともじゃない………乗り手の性格そのものか。
　
「それが今のアンタの乗機か………」
　
『そうさ。３対の腕を持てるように改良された特注のコアを基本に、強化されたジェネレータを内蔵したハイパワーの殲滅用ＡＣさ。名は…………ドゥームズ・デイ。』
　
ドゥームズ・デイ――――破滅の日だぁ？なめた名前だ事で。
　
「……はっ、醜いガラクタだことで。今のアンタそのものだよ、紅虎。」
　
『見た目が全てじゃないさ。それに、これだけの火力は他に無い！』
　
当たり前だ。武器腕３組に肩武装まで付けてるんじゃあねぇ………確かに攻撃力は高そうだけどね、あまりにも薄すぎるよ。
　
「それじゃ、そのオモチャを潰してあげるわ……アンタごとね。」
　
『潰されるのは貴女だ、隊長！』
　
おーおー、吠えること吠えること。でもね………
　
「弱い犬ほどよく吠える、ってね。」
　
『言ってろ！いくよ！』
　
挑発に弱いねぇ。カッとなり易いのは変わってない。凶暴なところもだけどね………早速マシンガンの弾が飛んでくる。
　
「下手くそなりに弾数だけは撃とうって考えたのかい！」
　
『そっちこそ、昔と違ってよく喋るようになったね！』
　
確かにそうかも知れない。でもまぁ、精神的に余裕が出来たって事でもあるんだけどね。
しかし、見れば見るほど歪んだ機体だ。間違い無く過重限界を超えてる。それで十二分に四脚の性能を発揮してるんだから………２連装マシンガン（ＡＷ−ＧＴ２０００）、デュアルキャノン（ＡＷ−Ｒ／４）、プラズマキャノン（ＡＷ−ＸＣ６５）の腕にグレネード（ＷＣ−ＧＮ２３０）とスラッグガン（ＷＣ−ＳＴ１２０）。どれもこれも嫌な武器ばかりだ。
鬱陶しいったらありゃしない。とはいえ………
　
「単調な攻撃じゃ当たってやれないよ！」
　
『そうだね………そろそろ本気でいかせてもらうよ！』
　
本気？何を考えてる？…………と思いながら見ていると、何だありゃ？全部の武装が稼動する？マジか？
　
『フル・ファイア！喰らいな！』
　
誰がそんなもん喰らうか！
ブースターを全開で吹かしながら、ブラッドウィドウを柱の影に入れる。
全く、冗談みたいな事やってくれちゃって。
ん？暑いな………って、柱が赤くなってる！くそっ、集中攻撃のせいで加熱したのか！
止むを得ない……後方へ下がろう。
　
『アッハッハッハ！嬉しいねぇ………貴女があたしから逃げるなんてねぇ！』
　
「正面からまともにやりあうだけが能じゃないわよ！」
　
正直、こっちも重量オーバーだけどね…………自分の攻撃力に酔って、こっちの武装をろくすっぽ確認してないだろ、アンタ。
　
『ふん、ステルスか……セコいねぇ。』
　
「レーダーで見えないのは事実でしょ。狭い駐車場だもの、探してみたら？」
　
『探す？そんな面倒なことしないわ………柱も壁も、全てぶち壊してやるよ！』
　
また全力射撃始めたよ、まったく、単純だね。
そんじゃ予定通りやってやる。
狙いはあのバケモノ………の上、天井を走るスプリンクラーの配水管！
　
「いっけぇーっ！」
　
右手のハンドガンを連射する。
　
『ハッ！外れだよ！』
　
「いいえ、狙い通りよ。」
　
そう、狙い通り………配水管がボロボロになり、水が溢れ出す。
そして、異常を感知した全てのスプリンクラーが滝の様なシャワーを降らせる。
　
『何がしたいんだい、隊長！』
　
悪いけど、答えてやる気なんて無い。
ブラッドウィドウをＣｒａｗｌｅｒ−Ｍｏｄｅに切り替えると、水の轟音に紛れて天井へと這い登る。
ステルス装置、威力の高いハンドガン、地下駐車場…………ブラッドウィドウのＡモードにはお誂え向きのシチュエーションだからねぇ。
　
『ちぃっ！何処へ行ったのさ！まさか、逃げたんじゃないだろうね！』
　
「誰が？」
　
『なっ、何処だ！』
　
左右を見ても居ないんだけどねぇ。
まぁいいか。もう真上まで来たし。
　
「ここよ……アンタのう・え。」
　
『上？』
　
今更頭を上に向けても遅い！
ハンドガンを撃ち込みながら、ブラッドウィドウを相手の上に落とす。
空中でブースターを利用して姿勢を戻して、勢いに任せて四足で踏ん付ける！
　
『うあっ！』
　
「機体性能だけで勝負は決まらないわ。状況を最大限に利用して、初めて勝てるのよ。」
　
『飛び回る音を消すためだったって言うの！』
　
「似たようなものね。正解を教える気は無いけどさ。」
　
『まだだ！まだ終わってない！』
　
何だかなぁ。腕武器は角度の関係上こっちには当てられない。
肩も、グレネードは砲身が長くて無理………まぁ、これしか撃てないやね。
私の指はスムーズにハンドガンのトリガーを引く。
狙う先は、スラッグガンの接合部………発射前に撃ち壊す。っと、流石に間に合わないか！
　
ガゴン！
　
緑色の光がブラッドウィドウを揺らす。
痛いなぁ………スラッグガン至近で浴びちゃったよ。
でも、もうお終い。銃身は肩から落ちていった。
　
『直撃だ！さぁ、落ちて来い………って、何故落ちない！』
　
「この子は特別製でね、安定性は尋常じゃなく高いの。」
　
そう言いながら、私はフフン、と鼻で笑ってやった。
　
『バカな！そんな機体あるはずが無い！』
　
「自分の機体を棚に上げて言うか、それ？」
　
まぁ確かに、ブラッドウィドウのＡ装備は非常識さではいい勝負かも知れないけどさぁ。
　
「そんじゃ、バイバイ。」
　
後ろに飛び降りながらハンドガンを叩き込む。
揺れて硬直する機体………着地間際、一瞬だけブースターを吹かして、前に進む勢いを乗せてＭＯＯＮＬＩＧＨＴの一閃！
煙を上げ始めたバケモノを視界に収めながら急速後退っと。
　
『殺す、殺してやる！』
　
「今更何が出来るのよ、その機体で。」
　
『アハハハハハ！あたしが何を得意としてたか忘れたの、隊長。あたしはもともと潜入工作が……いや、暗殺が専門なのをさ！』
　
「はっ！そんで、ゴキブリの様にコソコソ生きてくってかい？」
　
『……必ず、貴女を殺してあげる！もちろん、貴女の周りの人間もね！』
　
「………よく言った……気が変わったよ………さっさと機体を降りな。今、ここで、この手でアンタを消してやる。」
　
………虎じゃない、蛇みたいな女だったね、アイツは。
挑発に乗った形になったけど、いいさ……因縁はここで断ち切ってやる！
ハッチを開けて、拳銃を手に床に下りる。っと、まだ水が振ってるし、かなり滑るね。結構注意しないとマズいなぁ。
　
『……さっきとは逆に、こっちが不意打ち出来そうねぇ。』
　
「やってみな！」
　
なんて強がってみたものの、言った通り、アイツの方が有利なのは間違い無い。
手の平に嫌な汗を感じる………
　
「ハッ！」
　
っとぉ、いきなり来るか！
横合いから飛び込んできた紅虎の蹴りを掠らせると、拳銃を向ける。
　
バン！
　
銃声は空しく響くだけ………チッ！やっぱり後からじゃ当たらないか！
にしても、ただ格闘の達人だというには速過ぎる…………ってことは？
　
「アンタ、強化してるの？」
　
『ようやくお分かり？貴女を超えるために、あたしは強化手術を受けた……結局、ＡＣでは勝てなかったけどね。』
　
「何で、そこまでして私に勝ちたい？」
　
『………さっき、人の機体をバケモノ呼ばわりしてたけど、それは貴女自身にお返しするわ。生身であたしの動きについてくるなんて、ね。』
　
「よく言う……あれで本気なんて言わないわよね。」
　
軽口を叩きながらも周囲に気を配る。
しかし、流石に暗殺を得意としてるだけのことはある………まったく気配を感じさせない。
　
「ところで、質問の答えは？」
　
『質問？』
　
「強化してまで私に勝ちたい理由よ。」
　
『ああ、それ？単純よ。ただ単に、プライドの問題。年下の貴女に負けっぱなしが嫌なだけ。』
　
「………ホントに単純。聞かなきゃ良かったわ。」
　
ダメだ………音が反響して位置が特定出来ない。
もうスプリンクラーの放水は終わっている。これだけ濡れた床を音も立てずに動き回ってるのは驚嘆に値するけど……さて、どうする？
　
タン！
　
硬いものを叩く音がした。と同時に、素早い影が視界の端に飛び込んでくる………思わず銃を握る右手で払おうとして………
ゴキッと鈍い音がした。
　
「くっ！」
　
「浅はかだったね、隊長。あたしは得物なぞ使わない。この体自身が凶器なんだからねぇ。」
　
冷笑を浮かべる紅虎を前に、私は痛みを忘れるように思考を巡らす。
　
「あの手応えだと、砕けたかな？」
　
「……みたいね。暫くは使えそうに無いわ。」
　
ここで強がるのも馬鹿らしいので、素直に答えることにした。
　
「でもね、まだ終わってないよ！」
　
そう言って、紅虎は矢継ぎ早に拳を繰り出す。
仕方なしとはいえ、折れた右手も使わないと捌ききれるもんじゃない。
　
「おや？息があがってるねぇ。」
　
「体力が無尽蔵にあるわけじゃないからね………」
　
それも事実だけど、何より骨折の痛みがキツい。
　
ドン！
　
え？何？
背中に感じた硬く平たい感覚………壁！
そう思った瞬間、左の脇に蹴りが食い込んでいた。
　
「ガフッ！」
　
息が、途切れる！肺に衝撃が来た。
　
「いい声ねぇ。貴女の口からそんな声が聞けるなんて。」
　
ヤバイなぁ……足に力が入らない。
壁に背中を預けるようにして、私はその場にへたり込んだ。
　
「さぁて、止めを刺してあげますかね。」
　
………損傷………認識………破壊………戦闘………排除………
いやな言葉が頭に浮かんできた………誤魔化す為なのか自分でも分からないけど、思わず口を動かしてしまう。
　
「………言っておきたいことあるんだけど、いい？」
　
「命乞いなら聞く気は無いわよ？まぁ、貴女の泣き言なんて珍しいから喋らせてはあげるけどね。」
　
勝ち誇った余裕の笑顔で私を見下ろす紅虎。
でもね………
　
「違うわ…………私を殺すなら、確実に、一撃で仕留めろって事………私は、アンタ以上にしつこいからね。」
　
あっ、この女、鼻で笑いやがった…………いいさ、勝利者の気分に酔ってなよ。
悪いけど、こっちは奥の手を使うからね────何せ、嫌な声がさっきから頭の中に響いてるんだから。
…………発動………解放………起動………再生………ああ、鬱陶しい！
全身が熱い………力が漲る………ダメだ、抑えられない……いや、ここは従う。そう決めたんだから………ああ、世界が……変わる。
　
「それじゃあ、ご期待に応えて………死んでもらうよ！」
　
紅虎は右腕を引き､手刀を構える………角度、スピード、共に申し分ない。
普通の人間なら、確実に鳩尾を貫かれるだろう………普通なら。
だが、生憎、私は普通じゃない。
全身の力を右足に集中させ無理矢理に身を起こすと、そこから半身にずらした姿勢で攻撃をかわし、向かってくる相手の体のど真ん中に右肘を叩き込む！
　
「な………っ……」
　
今の衝撃で肺の中の息を全部吐き出したようだね。弛緩したのが解るよ。
　
「悪いけど、私はこのままやるわね。」
　
そう言い放って、私は紅虎の右肩を左手で掴み力任せに引き倒す。
うつ伏せに倒れこんだその頚椎に右肘を全体重を乗せて落とす。
　
ゴギッ！
　
かなり鈍い音がした。この感触だと、確実に砕けたろう。
だが、念のため、動かなくなった後頭部を両手で掴んで支点にして体を浮かせ、同じ所に今度は体重を乗せた膝を落とす。
　
ゴジュッ！
　
先ほどよりも鈍い、肉を潰すような音がする………多分、首の筋や血管をすり潰したんだろう。
排水溝に流れていく水に、油の混じった赤い液体が加わる。
　
「多分聞こえてないだろうけど、アンタは幾つか間違いを犯した。一つ目は、有利なうちに止めを刺さなかったこと。二つ目は、自分の技能に慢心してたこと、三つ目は……私が普通の人間と違うって気付かなかったこと……」
　
そう言いながら、私は右手の様子を確かめる………案の定、自己再生が終わりかけていた。予想通り、痛みももう残ってない。
　
「私自身が、この世界に有り得ない技術の塊だって事さ。機械を使わずして、アンタのような強化人間と同等の能力を持つ、アンタの言った通りのバケモノなんだ………教えてれば、こんなことにならなかったかな？」
　
動かない相手を見下ろしつつ話ながら、右手を握ったり開いたりしてみる。
うん、もう違和感無く動く。
　
「………せめて、アンタの機体と共に火葬してやろうかね。」
　
そう言いつつ、私は視線をＡＣの残骸に向ける。
哀れな、力の亡者の、物言わぬ骸。
目線を逸らすと、足早にブラッドウィドウに駆け寄った。
　
　
ブラッドウィドウに乗ろうとして、私は溜息を付いた。
　
「はぅ………びしょ濡れだよぉ………」
　
そうだよねぇ。シャワーの中でハッチ開けて飛び出してったんだからねぇ。
取り敢えずブラッドウィドウを起動してみる。うん、ちゃんと動く。
遺体を拾い上げると、ＡＣに乗っけてやる。
そして、ハンドガンを全力で撃ち込む。それこそ、全弾、使い尽くすまでだ…………じきに、残弾に引火したのか、大爆発する。
アンタを送ってやるにはちょうどいいくらいの派手さだろ、紅虎。
　
　
「一体、十何機相手に戦闘したんですか、コレ？」
　
「いや、まあ、その、何？…………まぁ、気にしないでね。ね。」
　
苦笑いで誤魔化す私に、工場のスタッフの目が痛い。
帰ってきたのはいいが、至近で受けたスラッグガンの他にも、マシンガンやキャノン砲の跡が残ってるからねぇ。
苦笑いしつつ、その場を誤魔化して逃げ出す私…………うう、しまらないなぁ。
でも、そんな自分は、昔の自分よりは何倍も愛おしく思う………でなけりゃ、生きていくのも辛いもんね。
　
「よし、帰るか。」
　
人工の青空を見上げ、私は家路を急いだ。

アクション映画並みに、生身の戦闘まで行っていますが………この世界ではまだ存在していない、生体改造を受けているので、マリィはリミッター解除されると強いです。
タイトルはそのまま、「殺戮機械」……暗殺者にして強化人間（プラス）の紅虎と、その強化人間以上に戦闘能力の高いマリィ…………何の為に存在するのか………本人は、普段は気にしてないようですがね。
　
さて、次回からはいよいよ終末へ向けて話が進んでいきます。
何とか、最後まで行きたいモノですね。

忘れることのできない過去。
その過去から、抜け落ちてきた「部下」。

辛いものですね…。戦いに生きる者の定めとはいえ…。

さ、続きが読みたいと思った人は感想メールで催促しましょ♪